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豆鉄砲を食ったようなハーピィ

 前回のあらすじ!

 わたしは風魔法を習得した!わたしは未来視の魔法の本を読んだ!なんとなく、いろいろ分かった!たぶん!




 わたしが無意識のうちに使っていたという、未来視の魔法。それは『未来を見る』というよりも『未来を予測する』と言った方が正しいらしい。

 『使用に際して、イメージを具現化する事が難しく、使用できる者はかなり限られる』と本には書いてあった。どうしてわたしがそれを使えるのかは、わたし自身にもわからない。だって、使っていた事にすら気付いていなかったんだから。

 あと書いてあったのは……『未来視の魔法は、より先を見ようとすると、魔力の消費量が爆発的に上昇する』って。カオスがなんちゃらかんちゃら……って書いてあったけど、まぁ要約すると、ずっと先の未来を見ようとすると考える事が多すぎて、エネルギーがいっぱい必要ってことらしい。わたしの場合は2,3秒先の、いちばん良さそうな未来だけを見ていて、それが直感として無意識の中に出てきている……みたいな?

 それと、応用すると世界がゆっくりに見える『思考加速』が出来るようになるって。未来視で考えるはやさが上がるから余裕ができてまわりが遅く見えるだけで、実際に世界が遅くなるわけじゃないらしいけど……。

 他には……なんだっけ。忘れたかも。こんなんじゃ、またナイルちゃんに鳥頭って言われちゃうなぁ……。



 

 わたしが食堂に辿り着くと、ラウネちゃんとナイルちゃんが待っていた。

「あ、その焦りよう、本当にあたしがハルっちの分まで食べちゃうと思った?」

「まぁナイルちゃん、本当にやりかねないからね……。」

 わたしもラウネちゃんに同意だ。冗談に聞こえなかったよ、ほんと。

「ちょっと、どういう意味!?」

「あはは。私はちょっと用事があるから、あとはふたりでごゆっくり~。」

 ラウネちゃんは足早に去っていってしまった。わたしが来るのを見届けるために待っててくれたのかな?

 わたしは昨日座った席に置いてあるパンに手を伸ばす。一口かじってみたら、ちょっと昨日とは違う味?

「そういえばそれ、ラウ姉(ねえ)が焼いたんだって。」

「え、そうなの!だからちょっと味が違うんだ!」

「材料から、一からこしらえた、手作りパンだよ~って。まぁ、味の違いが分かるのなんてあたし達くらいだよね。ライムっちの完成されたパンとはまた違った趣(おもむき)があってさ……。」

 わたしは『ちょっと味が違う』くらいにしか感じなかったけど、ナイルちゃんはしっかりと違いが分かってるみたい。わたしはどっちも美味しいと思う。優劣はつけられない。

「ねぇハルっち?」

「ん?なーに?」

 パンを頬張りながらナイルちゃんの方を見たら、ものすごくまじまじと目を見つめられた。こ、怖いよ?そんなじっと見られたら。

「ラウ姉(ねえ)さ、ハルっちを拾ってから、前より元気に見えるんだ。」

 神妙な面持ちで話すナイルちゃんは、わたしの頭に手を置き、話を続ける。

「ラウ姉(ねえ)は、自分が若くて経験値が低いのに、魔王軍の大将という地位についてる事をちょっと思い悩んでて。周りがあたしやライム君、駄龍(だりゅう)とかだから、仕方がないんだけど。」

 そっか、ラウネちゃんは特に長命の種族とかでもない、アルラウネだもんね。そりゃ、周りに比べたら、まだまだ若葉みたいなものって思っちゃうかも。

「戦闘能力が低いことも本人は気にしてるみたいだけど、やっぱり一番気に病んでるのは年齢。でもそんな中で、自分より若いハルっちを拾ってきた。ラウ姉(ねえ)の目には、ハルっちは妹みたいに映ってると思う。」

「それって、わたしに言っちゃっていいの?」

 何となく、この話はトラブルの火種になる気が……。

「あ……ダメかもね。じゃあ、やっぱ今のナシ!忘れて!」

「……分かった。」

 分かったとは言ったけど、今の出来事を忘れるのはちょっと難しいかも……。ナイルちゃんでもあんな顔するんだってのが、衝撃だった。こういう時に鳥頭を発揮したいんだけどなぁ。

 あと、ナイルちゃんもラウネちゃんの事を『ラウ姉(ねえ)』って呼ぶんだ。いつもは『ラウネっち』呼びだったけど、ラウネちゃんが居ない所だからかな?

「そういえば、今日は魔王様が居るから、顔を見せに行こうよ。魔王様も新入りの事は気になるだろうし。」

 そっか、他のみんなとは少しはお話したけど、魔王様とはまだ会ってないんだった。昨日は確か、お友達のところへ遊びに行ってたとかで……。

「うん、行く!」

「じゃ、それ食べ終わったらすぐ向かおう。今日は他にもやってほしい事があるし。」

 やってほしいことって何だろう?まぁ後で分かるかな。それよりも、魔王様がどんなひとなのかが気になって仕方がない!

 

 

 

 と言う訳で、ナイルちゃんに連れられて、魔王様の部屋の前までやってきた。もっと大きい部屋かと思ってたけど、わたしの部屋よりちょっと大きいくらいの普通の部屋っぽい。わたしの部屋は身体の小さい種族用の部屋のはずだから、おそらく身体の大きい魔王様にとってはかなり狭い気もする……。

 ナイルちゃんは左手でわたしの腕(翼)、右手でドアノブを掴むと、勢いよくドアを開けた。

「失礼しまーす!」

「おい!ノックくらいしろ!!」

 そりゃ怒られるよね……。

「あれ、ラウネっち、ここに居たんだ。何してるの?」

「あ、ハルちゃんの事とか報告してたところだよ、丁度良かった。魔王様、この子がハルちゃんです。」

「何?ちょっと待て……。」

 机に向かっていた魔王様は、立ち上がると、わたしの方へ振り向いた。

 魔王様の容姿は……クロ君よりも少し低いくらいの身長、そして魔王らしく悪魔っぽい角や翼とかが付いてる。わたしの思い描いていた魔王様像とほぼ同じ。身長はもう少し高いかと思ってたけど。

「お前が新入りのハルか。むむ、なるほど……。」

 なんかじろじろ見られてる。やっぱりわたしは弱そうに見えるのかな?もっとクロ君みたいなどっしりしたのを求めてたかな……。

「まぁ、ラウ姉(ねえ)さんが連れてきたのだから、大丈夫だろう。今後よろしく頼む。」

 魔王様も、ラウネちゃんのことをラウ姉(ねえ)さんって呼ぶんだ。ラウネちゃんが大将って、完全には信じられてなかったけど、みんなから信頼されてるし、この様子なら本当なんだなぁ……。

「愚王(ぐおう)様、まずは自己紹介したらどう?ただ凝視するだけじゃ変態みたいだよ。」

「な……すまぬ。」

 ナイルちゃん、魔王様本人の前でもこの口の悪さ……!しかも魔王様は言い返せてないから、この魔王軍のパワーバランスがはっきりと見える……。

「我はマオ。現魔王で、役職は運営者だ。」

「わたしはハルです!えーと、役職ってなぁに?」

 ナイルちゃんとラウネちゃんが、ライム君のことを参謀とか言ってた、アレの事かな?

「役職は、この魔王軍での役割だね。ラウネっちは大将、あたしは側近。ハルっちは……何になるんだろう?」

「そっか、ハルちゃんの役職も決めておかなきゃね。一番ちゃんと見てるのはナイルちゃんでしょ?何か、案はない?」

 ラウネちゃんに意見を求められたナイルちゃんは、顎に手を当てて、首を傾げた。わたしも一緒に首を傾げてみる。うーん、わたしの、役割かぁ……。

「あれだ、『斥候』とかじゃない?生存能力と機動力が高くて、攻撃力はあんまりだから、一番向いてるんじゃないかな。」

 ラウネちゃんは手を叩いて、閃いたようにそう言った。

「セッコウってなーに?」

「斥候というのは偵察役みたいなものだな。敵の動きや地形などの情報を確認して、持ち帰る係だ。」

 なるほど。それなら確かに、わたしの飛行能力が活かせるし、攻撃はめったにすることはなさそう。

「我には異論はないぞ。ラウ姉(ねえ)さんはどうだ?」

「うーん、ハルちゃんがそれでいいなら。」

「わたしはいいと思う!」

「決まりだ~ね。ハルっちは斥候!まぁ尤(もっと)も、すぐに斥候が必要になることは無いと思うけどね。」

「え、どうして?」

 せっかく役職を貰ったのに?わたし要らない?

「ここ1年くらいは、平和だからね~。前の魔王様の時はめちゃくちゃ戦争してたんだけど、2年前に今のクソザコ魔王様に代替わりしてからは、人間の国との戦争も終わったし。」

「へぇ~。魔王様って代替わりするんだ?」

 わたし、よく考えたら『魔王』についてのこと、全然知らないかも?

「するぞ。前の魔王が死んだから我が生まれたのだ。」

 ん?前の魔王様から2年前に代替わりして、前の魔王様が亡くなった時に、今の魔王様が生まれて……?ってことは。

「……え、じゃあ、魔王様って2歳?」

「そうだ。なんだ、ハル姉(ねえ)さんと呼ばれたいのか?」

「え、いや、ちが……え?」

 魔王様、まさかの、わたしより年下!?




「と、狐につままれたように……じゃなくて、鳩が豆鉄砲を喰らったように驚くハルちゃんであった。」

「ちょ、ナイルちゃん、わたしのセリフとらないで!」

「おっと、バレたか。それじゃ、第6話へつづく!」

「それもわたしの~!!」

tips:「魔王」

実は魔物とは少し別の存在である。死亡しても記憶を引き継いだ次の個体が生まれるのが特徴。

能力値は高めだが、上の中くらいで最強ではない。とはいえ人間からしたら十二分に脅威である。

引き継ぐのは記憶だけで、技術や性格などは記憶による影響は出るが受け継がれるわけではない。

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