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鳶に油揚げをさらわれた狐

前回のあらすじ!

 オークのクロ君と模擬戦!負けちゃったけど、ナイルちゃんはわたしの事を認めてくれた!晴れて魔王軍の仲間入りだーい!




「こ、こんなに!?こんなにいいの?」

「ハルちゃんが仲間になったお祝いだから、いっぱい食べてね!」

 わたしはあの後、食堂へ戻ってきていた。ラウネちゃんに来てって言われたから。そしたらパンと、あと見たことない食べ物が何種類か、いっぱい並んでて。

「ついでに、ウチのメンバーを紹介しようと思って。まぁ、みんな自由人だから、来るかは分からないけど……。」

「オレは来たっすよ。」

 ドアが開いて、クロ君が入ってきた。

 そういえばお城の中は広くて、全部がわたしの家よりはるかに大きく作ってあるな~と思っていたけど。そりゃクロ君や、たぶんクロ君よりもっと大きいひとが居るんだから当たり前だったね。小さいドアじゃ、クロ君は通れないもん。

「ライムさんは『さっき顔見せたからいいでしょ』って言ってたから多分来ないんじゃないっすかね。そもそもあのひと、食事もほぼ必要ないっすから。」

 スライムって、そこら辺の草とか石とかだいたいなんでも食べちゃうから、わざわざ食べ物を探すことはほとんど無いんだっけ。便利だなぁ。

「よ~っす。あたし参上!」

「あ、ナイルちゃん。良かった、来てくれるか分からなかったけど、ナイルちゃん用の油揚げも用意してたから。」

「ほんとに?やったーラッキー。」

 ナイルちゃんはわたしの右隣、クロ君は少し離れた左奥に座った。そういえばこの椅子、サイズがまちまちだね。クロ君みたいに大きいひとも居れば、わたしやナイルちゃんみたいに小さいひとも居るから、それら両方に対応出来るようにしてるんだ。流石、魔王城なだけあるね。魔物にやさしい!

「そういえばクソザコ魔王様は、友達の所に行ったみたいで不在だったよ。」

「そっか。じゃああとは……リュウ君?」

 ……クソザコ魔王様、って言ったのには誰もツッコまないんだね。それはそうと、リュウ君ってのはどんなひとなんだろう?

「まぁ、あの駄龍(だりゅう)はそのうち来るでしょ。いくら怠惰でも、流石にあいつはパーティするってなったら来るよ。」

 前に言ってた『ダリュウ』と同じひとかぁ。怖いひとだったらどうしよう……。

「そっか。じゃあちょっと待ってれば……」

 その時、またドアが開いた。入ってきたのは……角やら翼やら尻尾やらが付いてる、男の子?身長はナイルちゃんとクロ君のちょうど中間くらいで、体格はあんまり強そうじゃないけど……。魔法系で戦うひとなのかな?

「俺様が来てやったぞ。新入りってのはそいつか?」

「リュウさん、来たっすね。そうっす、この子が新入りのハルさんっす。オレはこの子にまんまとしてやられたっすよ。」

「何?クロが?」

 いや、クロ君との勝負は完全にわたしの負けだったけどね……。

「完全に隙をついて、ミドリ君の胴体に体当たりが一撃入ってたよ。まぁ、体格差のせいで弾かれちゃったけどね~。」

「オレはミドリじゃないって、何回でも言うっすよ……?」

「ほう……中々やるじゃん?てか、俺様と同じで空中戦が得意なタイプなんだろ?なんで体当たりなんだ?わざわざ自分から近付いたら、攻撃されちまうだろ?」

「ああ、それに関しては、ハルちゃんは魔法がまだ使えないみたいなの。今度ライム君のところで教えてもらうってさ。」

「ほー……?魔法使えないのにどうやって生きてきたんだよ、今まで?」

「あ、それ、あたしも気になってた。」

 全員の視線がわたしの方に集まる。えぇ、どうやって生きてきたか……?

「木の実とか、小さい獲物を狩ってた……よ?」

 あの、ラウネちゃんとナイルちゃんに出会う切っ掛けになった大きい虫とか。

「そっか。でも、他のハーピィ達が居なくなってもハルちゃんだけが森で生き残ったのは、なんか理由があると思うんだよね、私は。」

 理由……か。

「思えば、わたしは今までずっと、直感に従って来たかも?」

 ……沈黙が流れた。わたしなんか変な事言った?

「そういう系の話は、ライム君なら興味を持ちそうだね。まぁとりあえずさ、リュウ君も座って。」

「おう。」

 リュウ君は、ラウネちゃんの隣、わたしの真向かいに座った。

「他のひとは居ないの?」

「うん、あたし達は少数精鋭だから。ここに居ないのはライム君と、クソザコ魔王様くらいかな。」

 へぇ~、魔王軍ってこんなに少人数なんだ。数千や、もっといっぱいいるものかと。でもその分魔王様より強い戦力もあるし十分なのかな。

「よし!そろそろ始めよっか?」

ラウネちゃんが大きく手を叩いた。

「ハルちゃんの加入を祝って!宴だぁ~!」

「いぇ~い!」

「よ、よろしくおねがいしますっ!」

 わたしは立ち上がって、目の前にあったパンを掲げた。みんなもそれぞれ近場にあった食べ物を手に取った。

 わたしはパンをひとかじり。美味しい!

「これって、さっきのと違う?」

「ライム君が新しく焼いてたよ。さっきのと同じだけど、焼きたて!」

「そうなんだ。美味しい!」

 ちょっと周りを見渡してみると、みんな別の食べ物を手に取っていた。

「リュウ君のそれはなぁに?」

「馴れ馴れしく呼ぶんじゃねぇよ。あー、これは肉だ。その……」

 リュウ君は口を塞いだ。え、なんで?

「あー、それは……鳥だね。鳥の肉。」

 ナイルちゃんが小声で呟いた。

「もしかして、わたしがショック受けると思ったの?嫌だなぁ、わたしだって鳥くらい食べるよ。同族……ハーピィじゃなければね。」

 ちょっと前まではちょくちょく鳥も狩ってたんだけど、寒くなってきてからはあんまり見かけなくなっちゃってたなぁ。

「そうなんすか。オレもよく豚だって言われるっすけど、普通に豚食べるし、同じようなものっすかね?」

「考えすぎだったか。まぁ、なんなら同族を喰う種族だって居るわけだしな。」

 え、こわい。共食い?

「それ、あんたが筆頭じゃない?ドラゴンって同種族でも争い合って、喰らい合うでしょ。」

「そうだな。ここらにはそこの女狐のせいで、他のドラゴンは寄り付かないから、そんなことも忘れてたけどな。」

 ど、ドラゴン!?リュウ君が!?

「リュウ君……リュウさまってドラゴンだったの?」

「あ?様付けはやめろよ気持ち悪い。それよりかは元の『君(くん)』の方がマシだ。俺様はドラゴンだが、低俗なドラゴンと違って弱い奴らを虐げたりしないしな。そもそもそんな事したら、そこの女狐に殺されちまうよ。」

「さっきから、誰が女狐じゃこの駄龍(だりゅう)!」

 もしかして、魔王様より強いもうひとりって、リュウ君なのかな?いや、そうに違いない。ライム君はブレーンって言ってたし、クロ君とラウネちゃんもたぶん違うはずだから。

 でも、最強なのはナイルちゃんなんだ……。ドラゴンより強いって、妖狐っていったいどんな種族なんだろう?

「リュウ君、そのお肉、ちょっと貰ってもいい?」

「いいけど、食べづらくねーか?お前のその翼じゃ。」

「ふふん!ハーピィを舐めて貰っちゃ困るね!この羽根は、硬化出来るから!」

 実はクロ君との戦いでもやってたんだけど、それでも弾かれちゃったんだよね……。

 わたしは鋭い羽根の先で肉の端っこを切り取って、それを刺して持ち上げた。

「おお、意外と器用なんだな。すげぇな。」

「そんな事出来たんだハーピィって、ライム君は知ってたのかな?」

「魔法じゃないけど、これは魔力を通すことによって硬化させてるっぽいね。やっぱりライム君の言う通り、魔力自体はあるんだ。」

 なんか、みんなが興味津々な目でこっちを見てくる。食べづらいよ!

 それでもわたしは思い切って肉を口に運び、食べてみた。

「美味しい!パンもだったけど、ちょっとしょっぱいね?」

「塩っていうのを混ぜてるんだよ。それがしょっぱい味のもと。」

「ちなみに、塩もパンと一緒で、人間が使ってたものをライム君が真似したものなんだよね。」

 そうなの!?ライム君、流石ブレーンなだけあって、何でも出来るなぁ……。

「みんなの食べてるものもちょっとずつ分けてほしいな!」

「いいっすよ。オレのは葉野菜のサラダっす。」

 クロ君がお皿を差し出してくるけど、これは……美味しそうだけど、羽根では刺しづらそう?

「あ、あたしが食べさせてあげるよ。はい、あーん。」

 ナイルちゃんが察して葉っぱを3枚くらいつまんで、わたしの方へ渡してくれた。わたしはそれを食べてみた。

「おいしい!これも、塩?」

「当たり。大抵の種族は生きていくのに多少の塩が必要みたいだし、美味しくなって栄養も取れてなら一石二鳥……いや、一石二ハーピィだよね。」

「な、なんで言い直したの!?ハーピィは石程度じゃ落ちないって、クロ君との戦いで見せたでしょ!」

「わぁ、ごめんって。ちょっとしたからかいだよ。」

 まぁ……それならいいか。ナイルちゃんって割とこういう事言いがちなのかな?みんなのこと変なあだ名で呼んでたりするし。

「ナイルちゃんのこれはなぁに?」

「これは、油揚げ……ってちょっと!?」

 わたしはナイルちゃんの前に置いてあった何かを1つ刺して、口に運んだ。面白い食感!

「あ……鳶に油揚げをさらわれるってやつだ、これ……。」

「……大丈夫っすか、ナイルさん?」

「…………どう?あたしから奪った油揚げの味は。」

「美味しいけど……これも塩をもうちょっと入れたらいいんじゃないかな?」

「そっか。」

 



 その後もみんなから食べ物を分けてもらったり、パンを食べたりして、宴を楽しんだ。

 そして、宴の終わり……

「ちょっといい?ハルっち。」

 ナイルちゃんから声をかけられた。かなり低めの声で言われたけど、なんかシリアスな話……?

「不味い、逃げろ、ハル!」

 リュウ君のその言葉を聞き終わる前に、わたしは直感に従い1歩右に動いていた。元いた空間をナイルちゃんの拳が通過する。

 ただのパンチで、この風圧……!受けてたらめっちゃ痛かったでしょ、これ!

「避けるなぁっ!食べ物の恨みは怖いんだぞ!!」

 もしかして、さっき油揚げとったの怒ってる!?

「ハルちゃん!窓開けた!」

 ラウネちゃんが逃げ道を確保してくれた!わたしは慌てて窓から飛び出す。でも、ナイルちゃんも空飛べたよね?

「待てぇ!『空蹴(そらけり)』!」

 やっぱり!だ、誰か助けてぇぇ!



 

 ナイルちゃんに追いかけ回されるわたし。果たして、無事に生還できるのか……?

 第4話につづく!

tips:「ドラゴン」

言わずと知れた、天変地異を巻き起こす魔物。全ての能力値が非常に高い。

ドラゴンの中でも上位の者は人の姿に変化出来るという。なおその場合はほとんどの能力値が大幅に低下するが、それでも人間はおろか中位のドラゴンでも敵わないレベル。

下位種は気性が荒いが、上位種ともなると達観した価値観を持つため意外と安全だったりする。

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