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退職代行”モーヤダ”社員、異世界にて勇者を代行する~最強スキル『退職代行』の前では、誰もが無職となり果てる~  作者: 柳原ミツキ
第0章 ネオシュラーフバッハ村編

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隻眼の魔人①

寂寥感とでもいうのだろうか。

すっかり変わり果てた故郷を見て、私はなんとも形容しがたい悪感情を覚えていた。


ほとんどの建物に破壊された形跡があり、ささくれ立った木片がそこかしこに散らばっている。

鼻の奥にこびりつくような死臭に顔をしかめ視線を向けると、血糊の付いた家屋が音を立てて崩れ落ちた。


私は沸々と湧き上がる殺意を胸に、足音を殺して村を見て回る。

村のシンボルともいえる広間の噴水はとっくに水が枯れており、積み上げられた石材には所々ヒビが入っていた。


皆で豊作を祝った酒場は、形だけは保っているもののひどく埃を被っている。

床に染み付いた赤黒い色は、はたしてワインによるものなのだろうか。

......そばに転がっている死体を見れば、説明は不要だろう。


3年前の地獄から、この村は何も変わっていない。


途中、まだ新しい死体を見かけた。頭部だけが欠損し、それ以外が綺麗に残されている死体。

こみ上げてくる吐き気を何とか抑え、横たわる死体を観察する。

着ている服から見て、どうやら行商人の様だ。


この村を発見し、見て回っている中で殺されたのだろう。

死因は言うまでもなく頭部の欠損。

死臭はまだしないことから、死んでからそれほど時間が経っていないことがわかる。


「やっぱり、ここにあいつがいたんだ.....」

それを自覚した瞬間、背筋をなぞるような怖気を感じ身震いしてしまった。


その事実が腹立たしくて、拳に力をこめた。

視界が赤く染め上がる。

嫌悪感を上塗りするように、怒りで脳を沸騰させるのだ。でないと恐怖で体が震えてしまうから。


「殺す殺す殺す殺す.....!!」

私はあいつを殺しに来たんだ。今更ビビってどうする。

震えるな震えるな震えるな。

情けなく震えだした足をゴンゴンと叩き、深く息を吸ってはく。


「戦う前からこんなんでどうするのよ、私」

自分を叱咤し、頬を思いっきりはたく。

......少し平常心を取り戻せただろうか。心臓の鼓動がゆるまるのを感じる。


そんなことを思っていると、ふと違和感に気が付いた。

いや、気づくのに遅れたというべきか。


怒りで思考にもやがかり、周りの環境の変化に気づくのが遅れたのだ。

やけに周りが静かだ。


いくら無人とはいえ、先ほどまで聞こえていた鳥の鳴き声や虫のさざめきはどこへいった?

それに、どうも視界がおかしい。

目の前の死体がやけに鮮明に映っているではないか。


ゆっくりと時間が流れる感覚。思考が加速する。

緊張し凝り固まった脳内がはじき出した違和感の正体。

いつもなら気づけたはずの大きな変化。


私はその正体を確かめるように上を向く。

今、私は室内にいるはずだ。ならば。


———どうして光が差している?


「.......っ!!!」

直後、反射的に背後へ飛びのく。

轟音とともに床が崩れ去り、木片や埃が舞い上がった。


「あ~ア、はずしちまっタ」

私が一秒前までいた場所には、血なまぐさい鉄製の剣が深々と突き刺さっていた。

視線を少し上にあげると、土煙から姿を見せたのは。


「生きのいい女は大歓迎だゼェ?首を噛みちぎる触感がたまんねえからヨォ」

黒い皮膚に引き締まった体。体格は2mほど。

裂けた口からはよだれが滴り、片方の目が欠損していた。


傷のついた二本の角が光に照らされ、さながら物語の中にでてくる悪魔のような姿をしている。

忘れもしない。


三年前に村を襲った隻眼の魔人が、そこにいた。

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