ラディカールの苦悩③
「男ウケはしにゃいだろうけど、そこらの騎士よりかは全然やると思うにゃ。腹筋だって割れてるの知ってるニャ。......それに、ウチの勘は結構当たるからそこも信用してほしいにゃ~」
「あんたは一言余計なのよ!でも、そうね.....私、頑張ってきたんだもの....うん。行ける気がしてきたわ!実は私、結構強いんだから!魔人なんてサクッと討伐してやるわよ!」
いつの間にか震えは止まり、暖かなものが胸の中で広がっていた。
この子はいつも、私の背中を押してくれる。大切な、大切な......
「その息にゃ~。......はぁ、手のかかる幼馴染にゃ。ほんとは怖がりなくせに、皆の前では虚勢張るから苦労するんだにゃ。もっとウチを見習ってありのままに生きたほうがいいと思うにゃ」
「あんたはありのまますぎるから少しは隠すことを覚えたほうがいいわよ......そんなんじゃ、男の一つもできないんじゃないかしら?」
ペルに励まされたことは事実だが、それはそれ。これはこれだ。
この変態に男ウケだのを言われるのは心外である。
「んにゃ?ウチは作らないだけで、貰い手はいっぱいいるにゃ。最近だと隣町の地主さんからプロポーズされたにゃ」
「.....は?うそでしょ!?聞いてないんだけど!......でも確か隣街の地主って、中年の小太りのおっさんじゃなかった?そんな人に迫られたって嬉しくは」
「ちなみに結構タイプだったから前向きに検討すると言っておいたにゃ。運動後のラディに負けず劣らずのナイススメルの持ち主だったからにゃ~。正直濡れたにゃ」
「そうだこの子変態だった!守備範囲が広すぎてもはや恋愛強者!」
「そんなに褒められると照れるにゃ~」
「褒めてないわよ!!」
なんということだ。このまま男ができなくてもペルという独身仲間がいるから大丈夫だと高をくくっていたら、まさか残されるのは私だけだったとは。
私も少しは男を探したほうがいいのかしら。
まあ、それも全てが終わった後。復讐の後考えたらいいだろう。
「とりあえず、わかった。行ってくるわ。魔人のゴミ共の顔をぐちゃぐちゃにしてきてやるんだから」
「その息にゃ~。できれば魔人の体毛を持ってきてほしいにゃ。きっとすんごい......ふふっ、えぐい臭いがしそうにゃぁ」
「絶対嫌なんだけど!?それ運ぶの私ってこと忘れてない!?」
ええ~だめかにゃぁ、と上目使いで見られても嫌なものは嫌だ。
服に悪臭がついて取れなくなりそうだし。
「どうしてもっていうなら、ぺルも一緒に来たらいいじゃない」
「うにゃ?......ああ~ウチもできるなら行きたいんにゃけど、言ったにゃ?鉱山に行く用事があるにゃ。今回はごめんにゃ」
ポリポリと頬を掻き、尻尾を振って断りを入れてきた。
「そんなのいつでもいいじゃない!それとも、今日いかなきゃいけない理由でもあるの?」
「実は......今日は炭鉱夫が各地からたくさん集まる日なんだにゃ。きっと男の汗臭い匂いがこれでもかと充満して......お”っ///、想像しただけでトビかけたにゃ」
恍惚とした表情を浮かべるぺルに、大きなため息をつく。
ある意味彼女は幸せ者ね。
「聞いた私がバカだったわ。......はぁ、どうせ来いっていってもこないんでしょ」
「すまないにゃ~。ま、期待して待ってるから無事に戻ってくるにゃ。帰ったらラディの家でパーティにゃ」
「あんたの奢りなら行ったげるわ......じゃ、行ってくる」
「いってらにゃ~」
なんにも心配していない顔で、欠伸交じりに手を振ってくるぺルヴェール。
そのだるそうな姿に怒りが湧きそうになったが、すぐに消えてなくなる。むしろ、喜びの感情があふれ出してきた。
きっとそれは私の実力に対する信頼からくるものだろうから。
ぺルと別れると、私は物音を立てないようにこっそりと装備を整え始めた。
かつて父が使っていた剣に、弓矢。その他防具の数々。
「......行ってきます。お父さん。見守っててね」
父への言葉もそこそこに、ひっそりと家を出る。
母に伝えるべきだろうが、きっと引き留められる。
せっかくペルに勇気をもらったのだ。このまま行かせてほしい。
だから。
「行ってきます、お母さん。......ごめんなさい。帰ったらゆっくり話すから」
小声で愛する母へ言葉を向けると、玄関のドアをゆっくりと開けた。
今日はいい天気だ。
私はずんずんと大股で村の門をくぐり、道の先を見据える。
この時のために私は剣に身を捧げてきた。父の無念を晴らすため。あの日から止まったままである、自分の人生を動かすため。
あの魔人だけは絶対に殺さなくてはならない。
「隻眼の魔人......首を洗って待ってなさい。今日があんたの命日よ」
両目に殺意をたぎらせ、かつての故郷へと歩き出した。




