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ダイソアー店員は異世界で導師となる  作者: 毒味係りの直岡
ミルテ村の救済編

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第5話後編 ミルテ村の人たちと拡大解釈品の実演



 幾つかの事情を聞きだし、

 ダイソアー商品のどれが最適であるか、記憶している脳内リストから商品を探り当て。


 手鎌と合わせて、どんな拡大解釈と意味付けをすべきか、どうにか早めに算段し終え。

 リヒトは『木柄のこぎり鎌』と『薄手の花柄ガーデニンググローブ』を生成して。


 それを目にした村人たちから驚きの声が上がる中、

 ゲン親方とその奥さんにそれぞれの商品を手渡した。



「なんだこいつは……!? 贅沢にもノコギリ刃を鎌にしたってのか!

 しかも、なんて上等な仕上がりをして――って!! 何だこの目の細かさは~~!?

 に、人間ワザとは思えん……! 一体全体どうやって作ったんだ……??」


「あらあらまあまあ、随分とシャレた手袋だこと。

 ちゃんと洗って返すけど……、作業で汚れてしまうのが忍びないわね」


「いえ、どちらも全員分差し上げますよ?

 レイラから魔力を分けてもらえば、予備だって生成することが可能なんすよ」



 水を打ったようになった後、一転してどよめきが走った。


 村人たちはあまりにも善良な故に、全員分を用意しますと言われて、

 まさか貰えるとまでは思ってもみなかったからだ。


 よって、リヒトに押し寄せるようなハしたない真似はせずとも、

 だいぶ落ち着きを失った村人たちに対し、

 地面をカンッと杖で突いたミゲルの一突きによって、場はシン……と静まった。



「村の皆が失礼しましたな導師殿。さあ、説明を続けてくだされ」


「わかりました――、と言っても、百聞は一見に如かずなんで。

 親方は試しに小麦をふたふさ刈って、奥様は試しにふたふさ束ねてみてください」


「おうよ! こいつあ切れ味が楽しみだ」

「手袋がオシャレなだけで、不思議と気分が上がるものね」



 そうして二人が意気揚々と、最寄りの畑で刈り取りの実演に移ったところ、

 それはそれは不思議なことが起こったのだ。


 ゲン親方がひとふさ刈って、次に移った瞬間にはもう、そこに親方の姿は無く。


 どういうわけか先を見やれば、20ふさ分先まで、

 親方が刈り取りを終わらせていたのである。



「は……?」

「え……?」



 リヒト以外の全員が呆気に取られた。

 当の親方でさえ自分が何をしたのかわからないでいる。


 となると奥さんも、いつの間にやら主人が先まで刈り取りを終えていて、

 理解が追いつかずに目をぱちくりとさせている。


 しかし実を言うと、拡大解釈したリヒト自身も目で追うのはやっとだったりしたのだ。



「はい! では皆さんはこれから、親方のところまで、

 奥様の動きを注意して見ておいてください。

 と言うわけで奥様~! 親方が刈った分をふたふさ束ねてみてくださ~い!」

「は、は~い……!」



 そうしてあらかじめ注意を促してから、

 小麦を藁で縛って『麦束』にしてもらう作業をしてもらったところ、

 皆の目には衝撃の光景が映った。


 ひとふさを束ねるところまでは普通で、次に取り掛かろうとした瞬間――、

 奥さんの動きには倍速がかかり、まるで映像を早送りするかの如く。


 残像を残しながら親方のもとまで、

 20ふさ分をあっという間に束ね終えてしまったのだ。


 その尋常ならざる現象に、再び辺りがシン……と静まり返った。



「あら……! あなた、いつの間に?」

「いや、違うっ……! お前の方が来たんだ、ここまで!」

「へ?」



 と振り返れば、本人からすればいつの間にやら、

 自分が居た場所から20ふさ分も先の地点に居て、奥さんもぶったまげた。



「あらまあ!? ウソでしょう……? どういうことなの……!

 あたしいつの間に、これだけの数を……?」


「こいつあスゲえ、魔導具もかくやじゃないか。おーい、導師様~! 説明してくれ~!」

「もちろんっすよ~!」



 というわけで二人に戻ってきてもらってから、リヒトは商品ステータスをオープンにした。



■――――――――――――――――――――――――――――――■

 楽々安全のこぎり鎌


 固有効果は『作業効率20倍速』『楽々体勢維持』

 『腰痛・関節痛回避』『怪我防止率100%』

 安全かつ身体に負担をかけずに作業効率が20倍速となる。

■――――――――――――――――――――――――――――――■



■――――――――――――――――――――――――――――――■

 楽々パワーグローブ


 固有効果は

 『作業効率20倍速』『楽々体勢維持』『労働能力上昇』『疲労激減』

 長時間の重労働が誰でも可能となり、作業効率も20倍速となる。

■――――――――――――――――――――――――――――――■



 こうして商品ステータスが公開され、

 のこぎり鎌とガーデニンググローブにどれだけの力が秘められているのかわかって、

 一同に衝撃が走った。


 何故ならこの世界にも、

 日常生活に役立つダンジョン産・低級魔導具が存在しているからだ。

 しかし低級魔導具と言っても、

 燃料の要らないライターやランタン代わりになるくらいの物で。


 ここまで突き抜けて魔法のような効果を持つ魔導具ともなると、

 それは神器と呼ばれる等級となる。


 さらに神器と言えば、基本的には戦いに関する物ばかりで、

 いくら高価であっても農業などに役立つケースは無いと言っていいくらい。


 そんな価値観の世界に、常識を覆すバケモノ級の奇跡アイテムが出現したのである。


 よって村人たちは、便利すぎる道具を前にして、

 純粋な喜びよりも、本当に自分たちなんかが使っても良いのだろうか? という、

 恐れ多い気持ちの戸惑いを見せたのである。


 なので、もっと素直に喜びの雄叫びでも上げてくれるものかと、

 そう思っていたリヒトが困惑したところ、誰あろうクレセト自身が声を上げたのである。



『あ~もう! だからミルテ村の人たちは推せるのよ!

 導師リヒト! 私の代わりに言ってやってちょうだい!』



 自分の好きな人間たちが下界でしいたげられているのを見て、

 女神は歯痒い思いをしていたのだろう。

 リヒトは思わず「ハハハハハ!」と笑ってしまった。



「皆さん、クレセト様が仰ってますよ?


 あなた方は! 子爵の息子に! レイラを売り渡すような真似はしなかった!


 ミルテ村の民は! 今こそ報われるべき時であると! 素直に喜び女神を称賛し!

 慈悲を享受することを! クレセト様自身が強く望まれております!」



 短くも、自分たちの納得のいく言葉で促され、

 村人たちはようやく「ワーー!!」と大歓声を上げたのだった。



「さあ、一列に並んで! 順々に! 女神様からの奇跡をお受け取りください!

 レイラは一応、俺に手をかざしておいてくれないか? 疲れたら休み休みでいいから」

「はいっ、任せてください!」



 かくしてリヒトとレイラは、楽々安全のこぎり鎌と、

 楽々パワーグローブを生成しては村人たちに配っていった。


 ありがとうございます、ありがとうございます。女神様に感謝を!

 我々をお救い下さり、心よりお礼を申し上げますと。


 皆は商品を受け取る度に、天のクレセトへと自身の思いを捧げ。

 時には、導師様もご尽力してくださりありがとうございますと、

 たびたびお礼を述べられたのだった。



 そしてそれからあちこちで沸き起こったのは、

 小麦の収穫が死ぬほど楽になったことに対する喜びと楽しさの声である。


 商品を受け取ったペアから次々と自分の持ち場へ戻っていき。

 刈り取りを始めれば、あっという間にスイスイと進んで。


 麦束の運び手を担う子どもや老人たちも、

 楽々パワーグローブのおかげで疲れ知らずなのだ。


 本来であれば追い立てられている状況で、

 焦燥感の漂っていた麦畑が、あちらこちらで次々と明るい雰囲気になっていき。


 仮に事情を知らぬ者が通りがかったら、

 何かのお祭り騒ぎかと勘違いしかねない様相となっていった。

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