6話 誓い
「全く、貴族の方々の面前で殿下に決闘を挑むなんて、何を考えてますの!?」
ハンスが王太子に決闘を挑んだ夜、ハンスは正座させられ、鬼のような形相のサブリナに烈火のごとく絞られていた。
「……ですか。」
「はい!?」
「あなたを奪い、捨てた男に剣を向けることの、何が悪いのです?」
「子供じみたことお言いでないの!ド・ギーシュ家はどうなりますの!?このポリニャック家だってタダじゃすみませんことよ!!」
「……分かっています。」
ハンスは膝で拳をぎゅっと握った。
「それでも、引けなかった。」
「あの時、何も出来なかった自分を――もう一度繰り返すことだけは、出来なかった。」
ハンスは真っ直ぐサブリナを見つめる。
「ド・ギーシュ家を危険に晒すつもりはありません。もちろんポリニャック家も。」
「ですが――あなたを踏みにじる者を、あなたの命を奪おうとしたものを、見過ごすことも出来ない」
サブリナの中で何かがきれた。気づけば渾身の力でハンスの頬を叩いていた。
「さっきから何を仰ってますの!?あの場で殿下がお許しにならなかったら、ド・ギーシュ家もポリニャック家もただでは済んでいませんのよ!?」
サブリナの怒号は止まらない。
「殿下がお嫌い!?私を守りたい!?でしたら想いは全て胸におしまいなさい!!そしてそのために本当にご自分ができることを見極めなさい!!それが出来ないあなたは子供の頃と何も変わりませんわ!!」
言い切ったサブリナは肩で息をする。
ハンスは崩れたまま動かない。
伝わったかしら?この小さな子供に。
ハンスは恐る恐る口を開いた。
「……申し訳ありません、サブリナ様。私は、あの頃と何も変わっていない。弱虫のままでした。」
「ふん。分かればよろしいですわ。」
むしろ分からなければ決闘を理由に婚約は破棄してましたわ。
「しかし、私の想いは変わっていない。」
「は?」
ハンスはサブリナの手をとり、そのままキスを落とす。
「このハンス・グザヴィエ・ド・ギーシュ。すでに身も心もあなたのものです。今この時より私はあなたのものです。この先は剣となり、盾となり、あらゆる災いからあなたを守りましょう。」
「なっ……!」
ハンスのあまりの熱量に、サブリナの体から熱が込み上げる。
「そ、そういう安い言葉は婚約前に生娘に吐いておくべきでしたわね!」
荒々しく手を振り払うサブリナ。
「何故ですか?あなたでなければ意味などないのに。」
「……!!!この話は終わりですわ!お帰りなさい!」
半ば追い出すように、サブリナはハンスを追い出す。
「……全く。あの男……。」
サブリナはその夜、なかなか寝付けなかった。
ろうそくの火に照らされながら、夢に誘われるまでキスされた手を眺めていた。




