表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/7

3話 弱虫ハンス

「……弱虫ハンスですわね?」


「ち、違います!断じて違います!」


あまりにも早すぎる否定。

思わず笑みがこぼれる。


「あらあら。随分と饒舌ですのね」


「違うと言っているでしょう!」


「では――“あの時のあなた”は、どなたでしたの?」





『やーい!やーい!弱虫ハンス!』


『えーん……。』


幼い頃、ハンスは親に連れられてよく王宮に出入りしていた。

次の国を担う少年の圧倒的な強さを前に、ハンスはしばしば涙を流した。


『ちょっと!殿下!』


『げっ、サブリナ!』


『王太子殿下ともあろうお方が弱いものいじめだなんて、はしたないですわ!』


『うるせえ!俺は認めてねえぞ!お前との婚約!』


『うるせえ、ではありません!俺ではなく私!私の未来の夫になる方にはそんな言葉遣いは許しませんわ!この前だって───。』


『あー、うるせ!お前嫌い!』


サブリナの口数が増えると、王太子はいつも逃げていた。


『大丈夫ですの?』


『えっ、く……。ありがとう……。』


『全く、いくら相手が殿下とはいえ、毎度泣かされてどうしますの!そんなことではお家は守れませんわ!』


『……サブリナ様は、強い方が好き?』


『え?まあそうですわね。嫁ぐなら殿方には強くあってもらわなければなりませんわ。』

ハンスは顔を赤らめ、指先をいじりながらしばらく黙り込んだ。

『……殿下より、好き?』

『えっ?』

サブリナ様はふっと失笑する。


『殿下のことは好きでも嫌いでもありませんわ。お父様と陛下がお決めになったことですもの。婚約ってそういうものですわ。』


サブリナは強く、光り輝いたかんばせを少年に送る。


『……ぼく、殿下より強くなる。』


『は?』


落ちていたツツジの花びらを持って、夢中でサブリナ様に迫る。


『ぼく、大人になったら殿下と決闘する!強くなって殿下に勝つ!そしたらサブリナ様……ぼくと結婚して?』


いつものサブリナなら躱しそうなものだが、ハンスはあまりに必死に映ったんだろう。サブリナはしばし言葉に詰まってしまった。


『……そうね。もし殿下に勝ったら考えてあげますわ。』


『……!絶対だよ!絶対!約束!』


サブリナは返事をしなかった。少年はそれを肯定と受け取った。





「あの弱虫ハンスがここまで力をつけたのは褒めて差し上げますわ」


「……そうだ。私は弱かった」


ハンスはテーブルの上で強く拳を握る。


「だからあの頃、誓った」


「……強くなると。何があっても、あなたを守ると。」


「は、ハンス……?」


あまりにギラギラした眼差しに、思わずたじろいでしまう。


「……失礼しました。今のはお忘れください。」


しばしぎこちない会話が続き、ハンスとの2回目の顔合わせは終わった。


「……なんだか最後のハンス、変でしたわね。まあ私にゾッコンでしたものね。つもる思いもあるのでしょう。」


自分の部屋から庭に咲き誇った白いツツジを眺める。


「白のツツジの花言葉、なんだったかしら。」


それは次のハンスとの顔合わせで知ることになる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ