2話 お茶会ゲーム
「サブリナ様、ド・ギーシュ様がお見えになりました。」
「今行きますわ。」
今日はハンス様とのお茶会。
――正式な婚約の話を進める場。
先日は恥をかかされましたけれど。
ふふ、甘くってよ。
今日から主導権は、このサブリナがいただきますわ。
2話 お茶会ゲーム
「ふっ、まさか二度目があるとは。存外被虐趣味がおありのようだ。」
「勘違いなさらないで。これはポリニャック家のためですわ。」
私を下に置くことは許しませんわ。先手はとらせていただきますわよ。
「ハンス様はどんなご婦人がお好みで?」
「そうですね。私の邪魔にならない聡明な方です。」
「あーら、では私はぴったりですわね。」
視線が交差する。
「ちなみに私、このポリニャック家を共に背負える方が好みですの。」
紅茶に角砂糖を入れ、スプーンでくるくるかき混ぜる。
「――ですから、ハンス様のような強い殿方を婿に迎えられること」
角砂糖が琥珀色に染まる。
「喜ばしく思っておりますわ。」
微笑み返すと、ハンス様はほんのわずかに顔を赤らめる。
「それになんだか、初めて会った気がしませんの。あなたのような素敵な方、見たら忘れられないはずですのに。」
紅茶のカップに指を添える。
「ご冗談を。殿下にかなう殿方などいるはずも無い。」
ハンス様はシナモンの入ったポットをすっと差し出す。
「あら、何故私がシナモンを使うことをご存知で?」
ハンス様の肩がぴくりと揺れる。
「それは……宮廷で聞きました。あなたが紅茶にシナモンを入れるのが好きだと。」
「私がいつ紅茶にシナモンを入れると?私はサボワ菓子にかけていただくのが好きですわ」
「なっ、き、聞き間違えました。」
思わず口角が上がる。
「嘘ですわ〜!私シナモン入り紅茶が大好きですの〜!む、か、し、か、ら!」
「は!?だ、騙しましたね!?」
「随分お詳しいこと〜!よほど私に興味がおありなのね~?」
高笑いで勝利を強調すると、ハンス様は顔を真っ赤にしてテーブルに握りこぶしを作る。
「い、意地悪な方だ!昔からそうだ!」
サブリナが一瞬だけ目を細める。
「……その言い方。」
「思い出しましたわ。あなた、『弱虫ハンス』ですわね?」
「!だ、誰の話を……。」
「隠しても無駄ですわ。名前で気づくべきでした。ハンス・グザヴィエ・ド・ギーシュ。公爵家のご子息で、殿下の遊び相手。そして、私に告白してくださいましたわね。」
「な……。」
ざあっと一陣の風が通る。運ばれてきた白いツツジの花びらは、私たちをあの頃へ誘う。




