1話 婚約者——選ぶのは私ですわ!
「この中から夫を選べ?冗談でしょう。」
目の前に並んでるのは、見目だけは美しい7人の男たち。
化粧で肌を整えたもの、髪を真っ直ぐにセットしたもの、軍人のように鍛えられたもの。
しかし……皆様目がいやらしいですわ!目尻が下がっていてよ!
公爵家と縁を繋ぎたいだけなのが丸わかりですわ。
「……ですから言ってますでしょう。ポリニャック家に相応しいと判断出来れば結婚しますわ。」
殿方たちはむっとしてますが、知ったことではありませんわ。
「ぐぬぬ……では——この男はどうだ!」
最後の手段と言わんばかりに、お父様の後ろから現れる凛々しい殿方。私が目をやると、ぺこりとお辞儀をする。
その動きは妙に正確で、まるで訓練された兵の礼のようでしたわ。仕官されてる方かしら?
きめ細やかな肌に整えられたミドルロングヘアー。清潔感は合格。ですが——少々、軍人気質が出すぎていますわね。
切れ長の目からはきりっと光を感じられますし、しっかりと閉じられた唇からは知性を感じますわ。
上等ですわね。さすがお父様が後継に選んだお方。
「ハンス・グザヴィエ・ド・ギーシュ様だ。殿下の親戚で、公爵家のご出身だ。軍に仕官しておられ、最近遠征から帰ってきたそうだ。」
「まあ。初めまして。サブリナ・ド・ポリニャックと申しますわ。」
スカートの裾を持ち上げて挨拶すると、お父様がくすっと笑うのが聞こえる。
「初めましても何も、お前……。」
「コホン。」
ハンス様が咳払いでお父様を遮る。
あら、以前お会いしたことがあったかしら?
一拍置いた後、ハンス様はにこりと微笑む。
「初めまして。サブリナ様。噂はかねがね。……なるほど。確かに“噂通り”だ」
「……は?」
「美しい。だが——冷たい目だ」
「殿下が離れた理由も、よく分かる」
「飾りとしては及第点だ」
「……値踏みするなら、せめて自分の値札を見てからにしてくださる?」
後ろの殿方たちがざわざわと困惑する。
私をどこぞの安い女とお間違えでして?
「ま、まあまあ。今日は顔合わせだけなんだ。今日はもう休みなさい。」
側女に連れられて、自室に戻る。
この私に人目がある中で恥をかかせるなんて、許せませんわ!
しかし、あの胆力。ぜひポリニャック家に……ええ。この男、必ず私のものにしてみせますわ。
愛なんて初めから求めてませんもの。
「ハンス様、いくらなんでもあんまりでは……。」
「誠実に振舞ったところで、あの方の目には止まらない。」
「しかし、これでは誤解されてしまいます。」
「弱く見える者に価値はない」
「……それで、十分です」
婚約破棄騒動を乗り越えた私に、
今度は婿取りの話が降ってきた。




