第87話「不気味な」
20年前、ヴァネッサが齢3歳の頃だ
ソルベルト「初めまして、私はソルベルト・ラッツァゴーラ」
ソルベルト「悪魔崇拝者です」
【ヒルンベルト、アルンベルトの父 ソルベルト・ラッツァゴーラ】
ベルルム『………』
ベルルム『人間、我を呼び覚ましたのは貴様か』
【第二の騎士・ベルルム】
ソルベルト「はい、この世を壊していただきたく」
ベルルム『貴様如きが我に何かを要求するのであれば、同等のものを我に与えよ』
ソルベルト「………」
インペリウム『ベルルム、それは後に考えればいい』
ベルルム『支配よ…何を言う……』
インペリウム『寛大な心を持て』
インペリウム『ソルベルト…我が友人がすまないな』
ベルルム『我は貴様の友などではない』
ベルルム『人間、貴様の代価はなんだ』
ソルベルト「………」
ベルルム『どうした、代価も要求できんのか』
ベルルム『黙示録の四騎士である我を呼び出したからにはその身滅びゆくまで我に仕うか死ぬかだ』
ソルベルト「であれば…我が息子を滅びるまで仕えさせましょう」
ベルルム『…息子だと?』
ソルベルト「はい、何も持たぬ愚鈍な子です」
ベルルム『…ふざけているのか貴様』
ベルルム『貴様が呼び出したのだろう、ならば貴様が払え』
ソルベルト「……私は何も持っていません」
ベルルム『愚か』
ベルルム『葬ってやる』
ベルルム『"グラディウス"』
とてつもなく凝縮された魔力の塊の短剣がベルルムの手のひらに現れる
ソルベルト(なんという密度…………!!)
ベルルム『死せよ』
その短剣を軽く振り下ろすと、ソルベルトの真横をとてつもない威力の魔力の一撃が通り過ぎる
ソルベルト「…………!」
ベルルム『避けぬか』
ベルルム『いいだろう、貴様の代価を受け入れる』
そこはラッツァゴーラ家の地下だ
研究所のような、牢獄のような異様で不気味な雰囲気がそこには漂う
数あるその部屋の中のひとつひとつには幼い子供たちが怯えている
インペリウム『見よ、ベルルム』
ベルルム『……契約者か?』
ソルベルト「はい、契約者の牧場…とでも言いましょうか」
ソルベルト「契約者を作り上げ、黒絶に成る者を探し育てる」
ソルベルト「それが私の目的です」
ベルルム『ほう』
ベルルム『成果を聞いてやろう』
ソルベルト「0です」
ベルルム『……』
インペリウム『早まるなソルベルトよ』
インペリウム『儂の目に狂いが無ければ1人おる』
インペリウム『第5号だ』
ソルベルト「……」
ベルルム『…聞いてやろう』
インペリウム『彼女はまだ幼い』
インペリウム『だが悪魔との親和性が高い』
ベルルム『連れてこい』
ソルベルト「はい」
ソルベルトが第5号と呼ばれるその少女を連れてくる
その子は右目が包帯で隠されておりただ痛々しく無言だ
ベルルム『…此奴か』
ベルルム『………』
ベルルム『…真似事の悪魔か』
ベルルム『なるほどな』
第5号「…………」
ベルルム『…よかろう、下がれ』
第5号「…」
ベルルム『全く…人間というのはなんとも不気味』
インペリウム『それが人間の良いところだ』
ベルルム『相変わらず貴様はくだらん』
そこは何も無い真っ暗な空間だ
契約者にはよくある現象で、契約した悪魔と対話出来る唯一の彼岸だ
第5号「…………」
ソムニウム『…大丈夫?』
第5号「………うん」
第5号「ごめんね…わたしがよわいから……」
ソムニウム『ううん…あなたのせいじゃない』
第5号「……………」
再び第5号は現実へと戻る
その現実は石のように硬いベッドと、奇しくも月明かりが照らす独房のような部屋だ
彼女は自分の全身の傷を癒すように静かに優しく撫でる




