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笑顔の破壊力が物理的な破壊力!  作者: ぽこむらとりゆ


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笑顔の破壊力 lv.89

「集まんの早すぎだろ! 俺らが遅刻したみてえじゃねえか」


 扉を開けたジェットが、大きな声で言った。


「だからボクも、もうちょっと早く行った方が良いって言ったんですよ」


「イシス、それはボクもじゃなくて、ボクはなんだろ? 行くタイミングがわからなくて、遅れてすまないんだろ?」


 魔人達は、こちらに来るタイミングを見計らっていたらしい。


 意外にも、この三体の中ではグランが一番まともだ。


「やあ、君たちも来たんだね。今日の集まりは時星がどこにある時かを細かく決めていた訳じゃないから、これだけ早く来てくれたら文句ないよ」


 ゼンが魔人達にニコニコしながら言うと、オルレアの方を見た。


「オルレアはまだ、この三体とちゃんと話してなかったよね。この黒髪の口が悪いのがジェットで、紫色のツインテールがイシス、ぽっちゃりして優しそうなのがグランだよ」


 ゼンが言うと、魔人達はオルレアを眺めて少し驚いたような表情をした。


 もちろんイシスは無表情のままだ。


「てめ……お前、ゴウカにいたよな。雰囲気が似てると思ったが、やっぱりあの方とそっくりじゃねえか」


「ジェットさんほぼ出会い(がしら)の女の子にそんな話し方をしたらダメですよ。それにしても……本当に似ていますね」


 イシスもオルレアをまじまじと眺める。


「ほぼ出会い頭じゃなくて、ほぼ初対面なんだろ? イシスもそんなに見つめるのは失礼なんだろ?」


 グランがイシスを注意した。


 オルレアは、初めて私とルルに会った時と同じように、背筋を真っ直ぐ伸ばし、右足を斜め後ろに引き、青いワンピースの裾を持ち、スカートを軽く上げた。


「皆さんの事はゴウカでお見かけしました。私はオルレアと申します。よろしくお願い致します」


「おう、よろしくな」


「宜しくお願いします」


「これからよろしくなんだろ?」


 三体がオルレアとの対面を果たす。


「ゼンさん、ボクらを『(たい)』で数えるのをやめてもらえませんか? 一応ボクらって魔人ですし、『(ひと)』が入っているのなら『(ひと)』で数えるべきだと思います」


 イシスが、魔人を数える単位について抗議した。


「それは俺も気になった。てめえら俺らの事何だと思ってんだよ。魔物じゃねえぞ! もっと気遣え」


 ジェットが喧嘩腰でイシスに同意する。


「イシス、数える時は、『(ひと)』じゃなくて『(にん)』なんだろ? ジェットもそんなに怒らないんだろ?」


 グランが焦ったように言った。


「確かに『体』と数えるのは失礼だったね。申し訳なかったよ。これからは『(にん)』で数えると周知しておこう」


 ゼンが謝り、にこやかに言うと、『(にん)』を勝ち取った魔人達は嬉しそうに頷いた。


 そこにこだわるのは、ゴウカの人々の記憶がある事で、自身が人間に近い存在であると認識しているからなのかもしれない。


 ゼンは扉の方をじっと見つめる。


「ダン、あの二人は来るんだよね?」


「昨日から、あの方が衣装や装飾品からセリフまでを入念に準備されていたので、間違い無く来られるはずですが、緊張されているのかもしれませんね」


 ダンは困ったように答えた。


「セリフ……ですか。劇団の方でも呼んでいるのでしょうか」


 オルレアが不思議そうに言った。


 ゼンとダンは、ヴェルデとローズがいつ来るのかを話している。ローズはセリフまで考えているらしい。


 五十年ぶりに娘と会う事になり、何を話せば良いのかわからないのだろう。


 それに、ローズは魔人になっている。人間であった母親が、魔人になって五十年ぶりに現れたとなると、オルレアも驚くだろう。


 言葉を選ばないといけないのは当然かもしれない。


 ガチャッと扉が開く音が聞こえた。


 オルレアは扉の方を見て、立ち上がり目を丸くする。


「マ……ママ? 何で? ママは五十年前に……本当にママなの?」


 いつものオルレアとは違う、くだけた話し方。


 徐々に目に涙が溜まっていく。


「レア! 本当に会いたかった! こんな姿でごめんね? ママ、色々あって魔人として帰ってきちゃったの」


 ローズも涙を流し、オルレアに駆け寄り抱きしめた。


 ヴェルデは二人の肩を抱く。


 その光景を見ていると、少し羨ましくなったが、五十年もの間、親に甘える事も出来ず、聖女になるために毎日を過ごしたオルレアが、母親と再会出来たという事実が自分の事のように嬉しかった。


「ママね……魔人になっちゃった。怖いよね、ごめんねレア」


 ローズは改めて、自身が魔人になってしまった事を謝る。


「もう二度と会えないと思ってたママと再会できたのに、魔人になったから怖いなんて言うわけないでしょ? ママはママだよ」


 オルレアは目を赤くしながら、イタズラっぽく笑った。


「ありがとう……もお! レアは何で、こんなに可愛くて優しいの?」


 ローズが泣きながらオルレアに言うと、


「レアは本当に優しくて可愛い、僕達の自慢の娘だよ。国で唯一の聖女に選ばれて、魔力量も桁外れで、こんなに可愛いのにたまに凛々しい姿を見せてくれる時が――」


「ママ、パパ! もう十分だから、皆の前で恥ずかしいよ……」


 ヴェルデの言葉を遮ったオルレアは、顔を真っ赤にしている。


 オルレアの言葉を聞いたローズとヴェルデは、顔を見合わせて笑った。


「じゃあ、感動の再会はその辺にして、皆そろったところで、話し合いを始めようか」


 ゼンが言うと、オルレアは私の隣の席に座った。


「良かったね」


 私が小さな声で言うと、オルレアはニコっと笑う。


「はい! こんな奇跡が起こるだなんて想像もしていませんでした……神様に感謝ですね」


 神様……というよりも、今ローズがここにいるのは、ローズ自身の能力と判断のおかげなのだ。


 この話し合いで、オルレアも何が起こっていたのかを知る事になるだろう。

 

 それぞれが席についた。


「まずは、ここにいるジェット達三人の魔人と、ローズの関係を知りたいな」


 ゼンが魔人達と目を合わせると、ジェットがゆっくりと立ち上がった。


「俺らは、ゴウカの人間達の記憶を持ってんだ。誰がどの記憶かなんて、もう混ざっちまってわかんねえが、ほぼ全員の記憶にローズ様がいた」


「ボクの記憶の中にも、ローズ様との思い出が沢山あります。誰もがローズ様を慕っていました。ローズ様の姿がボクには神様に見えました」


イシスは言葉を間違えなかった。


「グランの記憶にもなんだろ? ローズ様は素晴らしい方なんだろ?」


 グランは目を瞑り、ローズとの記憶に浸っているようだ。


「具体的なエピソードをお聞きしてもよろしいでしょうか。その説明では、ローズ様がどのように慕われていたのかがわかりません」


 ダンが魔人達に言った。


「普段からローズ様は俺ら……ゴウカの住人に優しかったんだよ」


 ジェットは少し照れ臭そうに言った。


「いつも誰かを助けていたローズ様ですが、ボクが神様と呼ぶ手がかりになったのは、五十年前のゴウカへの魔物侵攻です」


 イシスが真剣な声で五十年前の出来事に触れる。


 そこにグランがツッコミをいれた。


「イシス、手がかりじゃなくて、きっかけなんだろ? 大事な所で間違えると台無しなんだろ?」


「五十年前の魔物侵攻で何があったんですか?」


 オルレアがイシスに向かい言った。


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