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【完結】笑顔の破壊力が物理的な破壊力!  作者: ぽこむらとりゆ


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笑顔の破壊力 lv.43

「余は席を外した方がよいか?」


 王様が私達に聞いた。


「あー……とりあえずハンスは、ゴウカの見張りをどうにかしといてよ。すぐに戦闘になるだろうし、今見張りがいてもなんの意味もないからね」


 ゼンが答える。


「確かに、この状況では、見張りは要らないのかもしれないな、撤退させるとしよう」


 そう言って王様は部屋を出た。


 もう、戦いが目の前に迫っている。


「そうだよね、すぐ戦闘になるんだよね。どれだけ安全に犠牲を出さずにゴウカを取り戻せるのか。しっかり考えよう」


 私は皆と目を合わせる。


「ゴウカを取り戻す……か。良いな! 魔物を殲滅(せんめつ)するより、街を取り戻すって言った方がやる気が出る!」


 私の言葉を聞いたアークが嬉しそうに言った。


「そうですね。この戦いの目的は魔物を倒すことでは無く、『ゴウカを取り戻す』というので良いのではないでしょうか」


 オルレアは、胸の前で両手を合わせた。


「ルルは参戦すると消えてしまうので戦えませんが、戦う目的は前向きな方が士気も上がります! それでいきましょう!」


 珍しく、ルルがオルレアに同意した。


「ぼくも作戦会議には参加しても戦力にはならないけど、サポートはするつもりだから、少しは役に立てると思うよ」


 ゼンは魔法使いだ。


【ゴウカの魔物】に魔法は効かない。


 どれだけ天才的な魔法使いだとしても、相手に効かなければ意味がない。


「ルルは本当に雑用くらいしかできませんが、大神官であれば、結界が張れますし、危ない時にはワープで回避する事もできます! なので、たくさんこき使いましょう!」


 そう言ったルルは、悪い顔をしている。


 ゼンは苦笑いを浮かべながら、


「お手柔らかに頼むよ。ところで、この会議の名前なんだけど、『作戦会議』は言い方がちょっと子どもすぎないかな? 『戦略会議』の方が、ぼくはしっくりくるんだけど、どう?」


 本当にどうでも良い提案をしてきた。


 作戦でも、戦略でも話し合う内容は同じだ。これが男子という生き物なのか。


 これにはルルが反応した。


 どちらでも良い、と言うのかと思ったが、


「大神官! それはダメですよ! 『作戦会議』というのは、我らが『勇者様』が仰った事なのですから! まさか! 勇者様が子どもだと言うのですか?」


 ここぞとばかりに、ニヤニヤとアークを見る。


 アークは顔が真っ赤になっている。


「ああ、それはごめんよ。確かに『勇者様』がはじめに言ったんだっけ? それなら『戦略会議』だなんて、ぼくが訂正するのはためらわれるね。うん、『作戦会議』カッコ良くてすごく良いと思うよ」


 ゼンも乗っかり、ニヤニヤとしている。


 ここでオルレアが、ゼンとルルを交互に見た。


「お二人とも! アークさんが恥ずかしそうに顔を赤らめていらっしゃるじゃないですか! やめてあげてください!」


 そう言うとアークと目を合わせる。


「『作戦会議』はアークさんらしくて私は良いと思いますよ。多少子どもっぽくても良いじゃないですか。それはアークさんの個性です」


 笑顔でアークにトドメを刺した。


 オルレアはピンポイントでアークにダメージを与える言葉を繰り出す。


 わざとじゃないのか疑うレベルだ。


 アークがここまでダメージを負うのには、オルレアが『嘘をつかないから』という理由がある。


 ルルやゼンのように、完全なる悪意により、人を追い込むのではなく、純粋な善意でアークに接しているのだ。


 オルレアが本心を言っているのがわかっているからこそ、トドメの一撃になりえるのだ。


「俺は……子どもっぽいのか。もう十八歳だぞ。勇者なんだぞ」


 アークは小さな声で何かを言っている。


 よっぽど恥ずかしかったようだ。


「まあどっちでも良いよ、多数派の『作戦会議』で決着にしよう。ゴウカの魔物の討伐の仕方についてなんだけど、やっぱり私が遠距離攻撃で数を減らした方が効率が良さそうだよね」


「そうだね。正直、レイルちゃんがいれば勝てるんじゃないか、とぼくは思ってしまっているよ。実際この思考はすごく危ないんだけどね」


 私の言葉にゼンが同意した。


「たぶんこの部屋にいる全員がそう思っています! ご主人様はまさに、対魔物用兵器のようなお方ですから」


 ルルは嬉しそうだが、私にとって中々不名誉な例えだ。


 魔物に特化した能力でこの世界で活躍できる、という事は嬉しい。だが、この力で魔物を殲滅した後、私はどうなるのだろう。


 少し不安になった。


 今は戦いに集中しないといけない。

 自分の事は後回しだ。


「対魔物用兵器って……まあ間違いではないんだけどね。とりあえず、当日はゴウカに張られている結界の外から見える魔物を手当たり次第に撃っていこうかなと思ってるんだけど、作戦が適当すぎるかな」


 私はゴウカに行った時に、結界の外から魔物を倒した事を思い出して提案した。


「それが一番安全だと思います。でも、本当にレイちゃん一人に任せてしまうことになりますね。私も出来ることを探します」


 オルレアがこちらを向く。


「私はしんどくないよ。むしろ、前にゴウカの魔物を撃った時、不謹慎だけどすごく楽しかった。私の能力は笑わないと使えないけど、まさか、本物の(まと)を撃つのがあんなに楽しいとは思わなかった」


 私は興奮気味に言った。


 周りを見ると、皆、驚いたような顔で私を見ている。


「あ……私やっぱり変なこと言ったよね……」


 完全に引かれた。


 当たり前だ。


 魔物を倒すのは私の義務でしかないのに、魔物を撃つのが楽しいなどと言うのは、頭がおかしいと思われても仕方がない。


 現に、自分自身でさえ、こんな考えを持っていることが少し不安だ。


 ルルは何かを堪えるような顔をしてから、満面の笑みを見せた。


「素晴らしいです! ご主人様が戦いを望まれないのは誰もが知っています! そのご主人様が……楽しいと言ってくださるなんて! ルルは嬉しいです!」


 声が大きい。


 喜ばれている。


 軽蔑されるでもなく、歓迎されている。


「私もルルさんと同じ意見です。レイちゃんが楽しいのが一番ですから。それが魔物の討伐でもです! むしろ、義務と化していた事柄が趣味になるかもしれないなんて素晴らしいのではないでしょうか?」


 オルレアも賛成のようだ。


「俺もレイルみたいな能力だったら、魔物に撃ちたくなるかもしれない。というより、なるだろうな」


 と言ってアークは笑った。


神力(しんりょく)を持っているレイルちゃんがそう言ってくれるのは、国としては喜ばしい事だよ。撃つのが怖い、だなんて言われたら説得に時間をかけて、その間に魔物側の侵攻が始まるかもしれないからね」


 ゼンまで。


 魔物を撃つのが楽しいと言った私を全員が肯定した。


 よくよく考えると、この中にまともな人なんていなかった。

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