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【完結】笑顔の破壊力が物理的な破壊力!  作者: ぽこむらとりゆ


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笑顔の破壊力 lv.44

 何だろうと、皆に否定されるよりは肯定される方が良い。


「そう言ってもらえるとありがたいよ。少し不安だったから。じゃあ、作戦の始まりは、私が目に見える範囲の魔物を倒すという事でいいよね」


 私が聞くと、四人は頷いた。


「そろそろお茶でもしない?」


 話を進めようとした所で、ゼンが指をパチンと鳴らすと、ティーセットとお菓子がテーブルに現れた。


 お茶という言葉にルルがいち早く反応する。


「さすが大神官。皆さんお疲れでしょうし、少し休憩しましょう」


 ルルがお茶を始めたのを見て、ゼンがニコニコと笑い口を開く。


「お茶を飲みながらでいいから聞いてよ。五十年前を最後に、ぼくはゴウカの魔物を見ていないんだけど、今の魔物の情報を一旦整理したいんだ」


 確かに、最新の情報は細かく伝えた方が良いだろう。


「それなら、直接見に行った方が早いんじゃないですか? 聞くのと見るのじゃ全然ちがいますよ」


 アークの言葉に、ゼンはフッと笑う。


「それはわかっているよ。今日この後にでも皆でゴウカに偵察に行こうと思っていた所だ」


 どうやら、まず、事前情報を集めてから、現地に行くつもりだったらしい。


「ははは……そうなんですね」


 アークは落ち込んだ様子を見せた。


 オルレアは、前に自身が書いたゴウカの魔物の絵を取り出した。


「今わかっているのは、外見が黒くこのように縦に長くて、口の中が真っ赤で四本足という事です。口の中は見えていましたが、何故か歯があるかは分かりませんでした」


 そう言って、オルレアは絵の口の部分を指さした。


 そう言われれば、あのガリッガリッという、頭に残る嫌な音をたてながら結界を削っている割に、歯が見えた事はなかった。


 もっと言うと、口以外が無い。これから目や鼻や耳が生えてくるのだろうか。


 想像するだけで寒気がする。

 

  歯がないのに、結界を口で削っているというのはどういう事なのか。


「本当に全然情報がないね。あと、わかっている事は、何もかもを砂に変える毒……くらいかな」


 私は、そう言ってから情報の少なさに恐ろしくなった。


 大規模な精神操作は、国に相当効果があった。


「ちなみにですが、大神官は五十年前にゴウカの魔物が毒を撒くところを見ましたか?」


 ルルが聞くと、ゼンは少し考える素振りをする。


「あの時は、ゴウカに存在する全ての個体が毒を撒き散らしていたよ。こちら側は何も出来ずにそれを眺めるしかなかったから、記憶に残ってる」


 当時を思い出して何か感じたのか、表情が暗い。


「その段階では、まだ精神操作されていなかったのですか? あと、当時の毒の攻撃は魔物のどの部分から出ていたか思い出せますか?」


 ルルは立て続けに質問した。


 確かに、精神操作がどの段階なのかは謎だ。そもそも誰がどうやって国中に魔法をかけたのだろうか。


「うーん……そう言われると、その時点ではゴウカに危機が迫っていると認識していた気がするよ。毒は、頭頂部あたりから出ていたかな」


 ゼンはまた、空中に五十年前のドッシリとしたゴウカの魔物が、頭頂部から毒を飛ばす様子を描いた。


 絵で見ると、ものすごくシュールだ。


 可愛くも見えてくる。


「なんか……弱そう……ですね」


 オルレアが言った。


 五十年前のゴウカの魔物は、誰が見ても弱そうな見た目をしている。


 この魔物が、オルカラ王国の大きな街を一つ滅ぼす事になるとは、当時は誰も思わなかっただろう。


「そうなんだよね。この見た目でしょ? 皆、自分が倒すって息巻いて挑み砂になっていったんだよ」


 ゼンは、悲しそうにため息をつく。


「先人達が、命をかけて残した記録を無駄にしてはいけませんね」


 オルレアはそう言って、祈った。


 私は力強く頷く。


「今は見た目もだいぶ変わってるし、毒を撒くのか、他に攻撃の選択肢が増えているのかもわからない。だから、絶対に無理をしないって約束しよう」


 何度だって言う。誰も欠ける事のないように。


「当たり前じゃないですか! ルルはご主人様と共に、いつまでもこの世界で暮らすのですから!」


 ルルが明るい笑顔で言った。


「絶対に勝つぞ! 俺たちが負けることは許されない。国を背負う戦いだ」


 アークの声が少し震えている。


 まだ戦いは始まってもいないのに。みんな段々と実感が湧いている。


 負けられない。


「もし、お怪我をされた場合はすぐに私を呼んでください。結界の中で安全に治療します」


 オルレアが、自身の胸の辺りを拳でトンッと叩いた。


「まあ、ぼくも治癒魔法が使えるから、君たちに何かあったら助けてあげるよ」


 ゼンはニコニコしている。


 全く緊張などしていない様子だ。


 五人のパーティーに治癒魔法が使える人が二人もいるというのは、すごく贅沢なのではないだろうか。


「二人共、頼りにしてる。もし何かあればお願いします」


 私が言うと、二人は嬉しそうに笑った。


 するとルルが頬を膨らませる。


「ゴウカの魔物は情報が少なすぎて、こうして知っている情報を話し合っても、そこまで有益なものは出ませんでしたね」


「ぼくも思った以上に収穫がなくて驚いたよ。アークの言う通り、先にゴウカに行った方がよかったかもしれないね」


 ゼンが申し訳なさそうにアークを見た。


「では、ご主人様が見える範囲の魔物を倒した後に、勇者が結界内に入り、残りを倒す、という流れで良いですね? もし誰かが攻撃を受けそうになったら、聖女か大神官が結界で防いでください。あとは臨機応変に!」


 ルルが指示を出す。


 だが、これは作戦とは言えない。


 誰にでも思いつく、戦略も無いただの大まかな流れだ。


 だが、実際出来る事はこれくらいしかない。


「じゃあ、ゴウカに行こうか。見るだけのつもりだったけど、少し数を減らしておきたい。手前にいる魔物だけ頼めるかい?」


 ゼンがこちらを見て言った。


「はい、大丈夫です」


 私は少し震えていた。怖いからではない。


 あの、楽しい時をまた経験できるからだ。


 本以外の娯楽無しに生きてきた私にとって、あれほど爽快でワクワクする出来事はなかった。


 早く撃ちたい。


 感情が顔に出ていたらしく、ゼンが笑った。


「いいね。それでこそ『未来の英雄』だ」

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