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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
九夏三伏
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追い風

僕は真司と絢愛さんに覆いかぶさり死を覚悟する。


樂「走れ!」


虎雅「…ごめん。もう間に合わない…。」


遠くにいる樂と目の前にいる2人に声を震わせながら謝り、背中の死の羽音が近づいてくるのを耳で感じる。


走れないならこの2人の身だけは守らないといけない。

この2人の命は僕が守る。


「…いてる。」


僕の腕の中で絢愛さんがつぶやく。

絢愛さんの持つ剣がギリギリと音を立てる。


絢愛「私の大好きな人が泣いてる…。」


と言って、絢愛さんが白目を向きながら立ち上がる。


虎雅「絢愛さん!伏せて!」


バチっと瞬きをし、黒目を取り戻した絢愛さんが真司を抱きかかえた僕を見る。


絢愛「…その子の事、ちゃんと守ってあげてね。」


絢愛さんがまた体を捻らせ、風を起こす体制を取る。


絢愛「よく分かんないけど、あの羽根が私たちを殺しに来てるのは音で分かる!」


ガンッ!と地面に足を突き刺し、捻りを止める。


絢愛「もう…、大好きなみんなを傷つけるなァア!」


そう言って、絢愛さんが振り上げた刀は今まで以上の突風を起こし、近くにあった木をなぎ倒しながら羽根を粉々に砕く。


真司「…あや、めさんが怒ってる…。」


真司が目を覚まし、立ち上がる。


樂「…お前ら、動けるのか?」


樂が清くんとせいさんを抱えながら戻ってきていた。


『なんだこの突風は。』


その声がして凶妖に目を向けると始めてよろけている所を目にする。


樂「もう一度、いけるか?」


絢愛「封印するまでやるよ!」


樂「分かった。虎雅、俺と凶妖がいる場所まで飛ぼう。」


虎雅「絢愛さんの風だけで…」


風だけで飛べるか悩んでいるとズザザザと大きい物を引きずる音が聞こえる。

その方を見ると真司が鼻血を出しながら近場に倒れていた木を運んできた。


真司「2人ともこれに乗って。俺が近くまで届ける。」


樂「…分かった。」


虎雅「大丈夫なのか?」


真司「一回だけなら出来る。」


虎雅「…ありがとう。」


僕と樂で真司が持ってきた木に掴まり、みんなが配置に着く。

せいさんは意識があり、清くんを抱きかかえながら絢愛さんの足元に掴まる。


真司「絢愛さん、行きます!」


絢愛「いいよ!」


真司が木の根っこから持ち上げ、ぐるんぐるんと回す。


真司「虎雅にぃ、ぼんにぃ、行ってらっしゃい!」


鼻血を大量に出しながら笑顔で僕たちを凶妖の元に投げ出す真司。


虎雅「行ってきます!」

樂「行ってくる。」


真司が投げた木は凶妖の半分の高さまで飛んだ。


そこから僕たちが自分の力で飛ぶ。

すると樂が自分の吐いた血で銃弾を濡らし、まじないを唱え始める。


樂『一発で決めろ。』


虎雅「うん!」


絢愛「行くよー!」


絢愛さんのよく通る声が下から聞こえたと同時に強風が僕たちの背中をめいいっぱい押し上げる。

すると目の前には油断した凶妖。


僕は銃を構えるが手が震える。

まだ力が上手く入らずにいる。


すると樂が僕の手を支えるよう握る。


樂『一発だ。』


虎雅「うん!」


僕は自分のもう一方の片手でも支え、凶妖の首元の狙いを定める。

すると、喉にフワッと白い光が見える。


僕はその光一直線に腕を持っていき、引き金を引く。


『やめろ。』


凶妖がまた叫ぼうと口を開けた途端、僕が放った銃弾が喉に届き凶妖の喉を壊す。


凶妖は痛みと叫ぼうとしていた意識でガラガラと声を出しながら血を吐く。

僕たちは追い風で凶妖の体に飛び乗る。


虎雅「僕が君の思いを受け取った。もう休め。」


僕は母さんの指輪を凶妖の肌が見える喉元に当て、封印させる。

白くふわふわと光始める凶妖。

大きいからか普段より収まりが悪い。


『お前1人が抗った所で何も変わらない。』


と、言葉を残し、指輪の中に封印された。


僕たちはそのまま地面に着地する。

あんな高さから飛び降りた事がないので足がジンジンする。

その痛みに樂と一緒に耐えているとみんなが駆け寄ってきた。


世永「おヅかれ、と言イダいとこダゲど、まだ終わっデないね。」


虎雅「…はい。」


僕は凶妖からの言葉を1人噛み締めていた。

しかし今はそんな余裕はない。


世永「もうひド仕事、みんナ出来る?」


みんなでその言葉に頷く。


世永「よヂ、行こヴ。」


と言って、みんなで手を繋ぎ場所を移動した。



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