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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
九夏三伏
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再会

樂と2人で河原に向かって走る。

走っている間にも雨粒が大きくなるのが分かる。


樂「なんでそんなに心配なんだ?」


虎雅「この雨の降り方は僕の家が流された時に似てる。川の氾濫が起きてもおかしくない。」


樂「…そうか。」


僕たちは川が見える大きい橋までやってきた。

川を覗くとやはりいつも以上に水量が増して、このまま雨が降り続いたら溢れてしまいそうだ。


樂「これはどっちだ…。凶妖だったらもうこの川を氾濫させてるはず。けど、何かおかしくないか?」


虎雅「何が?」


樂「この雨の量で増水するのは分かるが、何でこんなにゆったりとした流れなんだ?」


僕はその言葉を聞いて川をもう一度見る。

雨に打たれていつもよりは早い流れだけれど、この雨量に対して遅すぎる。


虎雅「上流で何か塞き止めてるのかな?」


樂「…その塞き止めてくれているものが水圧に

耐えられなくなったら、ここは終わるぞ。」


その言葉に僕は父さん母さんを思い出す。


虎雅「…行こう。」


樂の手を握り、川の上流付近まで飛ぶ。


目を開ける前から分かる。

上流の方がさらに雨が強く、降雨量も多い。


砂利を踏みしめながら川を覗き込める場所に行くと、そこから見える川の水量はさっき見た場所のものとは桁違いの量と白波。

これが流れたらあの町は沈む。


樂「凶妖の声は聞こえるか?」


僕は耳を澄まして、頭の中の凶妖の声を探す。

雨音で全く何も聞こえないし、頭の中で文字も現れない。


虎雅「ここら辺にはいないのかも。」


樂「そう…、ん?」


樂が何もない横を振り向く。


虎雅「どうしたの?」


樂「人の声が聞こえた気がした。」


虎雅「怖がらせないでよ。ただでさえ真っ暗で怖いんだから。」


僕は樂の後をついて行きながら耳を澄ますが、未だに雨の雑音の方が入ってきて人の声は聞こえない。


落ち着け、聴静保通をするんだ。

僕は深呼吸をしながら自分の心を高める。

少し騒ついているだけだ。今の僕なら大丈夫。

今の僕だからこそやらないといけない事がある。


自分の肺をドンっと強めに叩き、気合いを入れる。


樂「止まれ。」


走っていた所を樂の腕が伸び、僕を静止する。

すると微かに足音と暴風が吹き荒れている音がする。


虎雅「さっきまで風は吹いてなかったけど…。」


「動くなァッ!…ゲホッ…、グゥァ…。」


樂「世永だ。」


樂がそのがなり声に向かって走り出す。

僕もついて行こうと体を上げた瞬間、頭鳴りがしてその衝撃で体が倒れる。


なんだ今の鳴き声は。


耳と喉が針金を刺されたように痛い。

僕の脳みそは無事なのかと思うほどの劈く鳴き声で凶妖が叫んでいた。


樂「ンヴッ…。なんだ、今の…?」


世永「がグ…、ダイ雅!耳ふザゲ!」


せいさんは僕たちに気づき、喉をガラつけさせながら指示する。


言われた通り耳を塞ぐため、団服の一部を破いて頭の巻きつける。


樂「何があってそんな声になってんだよ。」


世永「いやぁ…。大ギいブグろうが暴れデるんダよ。」


せいさんは僕たちの顔を引き寄せ、上を指差しながら耳元で説明してくれる。


僕はせいさんの指差す方を見上げると、真上にジェット機のように大きいフクロウが翼を羽ばたかせて暴風豪雨を操っている。


世永「…虎雅。ごメんね。」


と、急にせいさんが僕に謝った。


虎雅「何でせいさんが謝るんですか。」


世永「あのふグろう、4年前にドり逃ジたんダ。ダイ雅の親を殺ジたのはあいヅ。ゴん当にごメンね。」


せいさんは雨に打たれながら目を潤ませている。

涙を流しているのかは分からない。

けど、僕の肩を掴んでいる腕が力強く僕を抱きしめる。


樂「…もう喋るな。使い物にならなくなったら俺らが困る。」


虎雅「そうです。せいさんは喉を休めてください。僕たちがなんとかします。」


世永「…ぐやジいなぁ。この日のダめに努力ジたのに。」


せいさんは下を俯きながらさらに僕たちを力強く抱きしめる。


世永「…ズぐ、戻ってグる。ちガクの団員呼んデ来る。だガら、自分の命を第一優ゼんに。」


樂「分かったから休んでこい。」


虎雅「なんとか食い止めます。」


世永「ヴん。ズぐ…っデ来る。」


と、せいさんは喉を抑えながら団員を呼びに飛んで行った。


樂「お前、大丈夫か?」


樂は腹から声を出し、僕に話しかける。


虎雅「大丈夫!今の僕なら出来る!」


樂「…れた…、だろ。」


雑音と耳当てのせいで樂の言葉が聞こえない。


虎雅「何!?」


樂「今の“俺たち”だろ!単独で物事を考えるな!死ぬぞ!」


…樂、ありがとう。


虎雅「分かった!樂、やろう!」


樂がマスクをつけ、僕は銃を持ち刀をベルトに差す。


助けられなかったみんなの思いを僕は思い起こす。

この凶妖を僕たちが今日封印する。

そうしないとまた人が理不尽に殺される。


今、僕たちがやるしかない。


体の底から怒りを沸き起こさせる。

封印出来なかった自分の未来を考えろ。

今日を楽しみに待っている人たち、この豪雨が不安で寝れない人たち、この川の先に住んでいるみんなの命を助けるんだ。


僕たちならやれる。


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