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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
九夏三伏
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運搬

お祭り前日の早朝、人がいないうちにせいさんの屋敷から必要な物全てを桜岸神社に運び込む。


僕は行き来出来ないので、みんなが運んできてくれた物を固定の位置まで運ぶ作業を延々と繰り返す。


すると、こんな朝早いのに複数人の声がこっちに近づいてくる。


…どうしよう、見られたらめんどくさい事になる。


僕は近くにあった白紙にボールペンで『立ち入り禁止』と書き、急いで出入り口に貼りにいく。


間に合ってくれと願いながら走るけど、きっと貼っている所を見られてしまう距離感いるのが耳で分かる。


僕は門の石碑に隠れながらパッと貼り、中に急いで戻ろうとすると名前を呼びかけられる。

なんだ?知り合いなのか?


僕は後ろを振り返り、その人たちの顔を見る。


虎雅「あ!北棟の…」


「お前も朝帰りかー?高2の中だるみはえぐいぞー。」


と、笑いながら優善一宅の北棟に住んでいるアキ、シュン、ライの3人がこっちにやって来た。


虎雅「あぁあっ!ちょっと、今ここ立ち入り禁止なんだ!ごめん!」


アキ「そんな事言うなよ。てか、それなら何で虎雅が入れてるんだよ。」


虎雅「僕は準備係だから大丈夫なんだよ!」


僕は冷や汗が止まらなくなる。


アキ「何の?」


シュン「知らないんですか!?明日ここで祭りやるんですよ。」


ライ「俺、彼女と約束してるんです。」


アキ「なに惚気ぶちかましてるんだ。…じゃあ手伝うか。」


え…。


虎雅「いやいや!大丈夫!3人ともさっきまで遊んで来た帰りなんでしょ?一旦寝た方がいいんじゃない?」


アキ「あ?遊んでねーわ。お百度参りしてたんだよ。」


シュン「しかも今回は3軒はしごだよー。」


ライ「俺、足ブルブルだよ。」


アキ「体が出来てねぇからだ。寝る前に一仕事するぞ。」


「「ぅ…へぇえー…。」」


2人が脱力しきった声を出す。


虎雅「手伝ってくれるのはありがたいけど、今は大丈夫!もし、時間あるなら昼からまた作業始めるからその時来てよ。」


アキ「今からでもいいだろ。何でそんなに拒否るんだ。」


うわぁ…、だめだ。

全く引いてくれない。


時間間隔的にあと少しで誰かが飛んでくる。


どこかに行って欲しいけど…、あっ!


虎雅「あ、じゃあさ、これから他の人の為にも買い出しに行ってくれない?

昼から結構人が来るから、お茶とかつまめるものあったら嬉しいかなって。」


アキ「コンビニか?」


虎雅「うーん、お茶っ葉で入れたいから多分スーパーかな?」


アキ「今の時間、開いてねぇだろ。」


あっ!そうだった…。


虎雅「あ、えっと…、じゃあとりあえず、コンビニでアイス8個買ってきてよ。」


アキ「1人2個は腹下すぞ。」


虎雅「違うよ。今運搬お願いしてる人たちのも合わせてだから。よろしく!」


と、アキにお金を渡し3人の背中を押して追い出す。


アキ「そんなに押すなよ。どんだけ食いてぇんだ。」


と、僕の顔を見ようとするアキたちの背後にふわっと風が吹く。


僕は焦って、体を大の字に開いてどうにか後ろを見せないようにする。


樂「…お前、サボってんじゃねーよ。」


と、樂の声が後ろから聞こえる。


アキ「あ?誰かいんのか?」


と、アキが僕の腕を潜り、向こうを見る。

え、大丈夫だった?見てないかな?


アキ「あ!樂じゃーん!」


と、アキが樂の元に駆け寄ると2人もそれについていく。

樂は大きい看板を自分の顔面が見えないように持ち上げる。


アキ「何で俺らも誘ってくれねぇんだよ。楽しい事は共有しようぜ。」


「「そうだぞー。」」


3人とも樂にとても親しげだった。

まあ、4人とも同じ北棟に住んでるから僕の知らない所で交流があるのかも知れない。


樂「…なんでこいつらが居るんだよ。」


樂は僕だけに顔を見せ、睨んでくる。


虎雅「通りかかって、話しかけられた。」


アキ「樂がいるなら俺もっと頑張るわ。」


「「俺らも!」」


樂はそれを聞いてさらに嫌そうな顔をする。


虎雅「あ、あのー。買い出しを…」


アキ「ああ、そうだった。樂は何アイス?」


樂「ミントタブレット。」


アキ「アイスの味を聞いてるんだよ。」


樂「ミントタブレットとチョコもなか。」


アキ「だったらチョコミントでいいだろ。」


樂「その2つだって言ってんだろ。」


虎雅「ごめん。樂、わがままだからタブレットもお願い。」


僕はアキに近くにあったバックを渡す。


アキ「金余ったら他にも菓子買っていいか?」


虎雅「うん、お茶っ葉3つ分は残しといて。」


アキ「分かった。」


と言って、3人はコンビニに向かった。


樂「…何で手伝うことになってんだ。」


虎雅「シュンがお祭りあるの知ってて準備してる事知られたんだ。そしたらお願いしてないのに手伝うって。」


樂「迷惑な奴らだ。」


虎雅「ここから近いコンビニは往復20分だけど間に合いそう…?」


樂「…やるしかねぇだろ。」


と言って、看板をその場に置き、またせいさんの屋敷に飛んで行った樂。

すると数分後、ここの担当ではない団員さんも運搬を手伝ってくれる。


「これで最後!」


虎雅「ありがとうございます!」


「お互い楽しいお祭りにしようね!」


虎雅「はい!」


どこも時間に追われて忙しい中、僕のミスをカバーしてくれるみんなに心から感謝する。


僕、樂、絢愛さん、真司、清くんで設営準備をしているとアキたちがコンビニから帰ってきた。


アキ「はぁ…?俺たちが買い物してる間にこれ全部運び込んだのかよ。」


樂「お前らのせいで疲れた。アイス。」


と言って、樂が顔を見ることなく手を伸ばす。


絢愛「わぁ!樂のお友達だ!よろしく、よろしく、よろしく!」


絢愛さんは3人に握手をして挨拶をする。


アキ「…絢姐あやねぇは、何にしますか?」


アキは袋を開いてアイスを選ばせる。


絢愛「いっぱいだね!うーん、どれも美味しそうだけど…、やっぱこれだね!」


と言って、手に取ったのはチョコもなか。


樂「それ俺の。」


アキ「お前はこっちだ。」


と言って、樂にタブレットの缶とコーンのチョコアイスを投げる。


みんなでアイス休憩をする中、ずっとアキは絢愛さんと2人で話している。

きっと波長があうんだろうなぁと眺めているとパチっとアキと目が合い僕の肩を掴み、みんなから離れた場所に連れて行かれる。


虎雅「どうしたの?」


アキ「絢姐の年は?」


虎雅「えー…と、20歳。」


アキ「結婚は?」


虎雅「してないよ。」


アキ「よし。」


と、満足げな顔をして元の絢愛さんの元に戻っていったアキ。

あれくらい絢愛さんに聞けばいいのに。


アキ「絢愛さん、俺と付き合ってください。」


絢愛「良いよ!」


「「「えっ!?」」」


みんな突然の公開告白からの即答に驚く。


絢愛「で、どこに行くの?」


アキ「どこ…?」


絢愛「ん?どこかに行くんじゃないの?」


アキ「いや、違います。恋人になってください。」


改めてアキは絢愛さんに告白した。

え、えぇ…、琥崙さぁーん!ピンチですよー!


僕は1人心の中で叫んだ。


すると絢愛さんはとても複雑そうな顔をして歪ませ頭を抱え出す。


アキ「…すみません。迷惑でしたね。」


ライ「タイミングってもんがあるだろ。」


シュン「姐さん、答えなくていいのでまずはデートからはどうでしょう?」


2人がアキをサポートし始める。


真司「いやぁ、びっくりした。これが大人かぁ。」


清「違うと思う。」


樂「…。」


絢愛「…あのね。」


と、絢愛さんは顔上げた。

見ると何故か目が潤んでいた。


アキ「あ、ごめ…」


絢愛「ごめんね。私大好きな人ほど守れない人なんだ。付き合う意味も恋もまだ理解出来た事ないんだ。だから私の愛は均等に分ける事しか出来ない。それでも良かったら友達でいてくれる…?」


アキ「…はい。」


絢愛「ありがとう!大好きだよ!」


絢愛さんはアキに抱きつく。

それに合わせてシュンとライが抱きつく。


真司「これから準備あるけど…、大丈夫なの?」


樂「仕事は仕事だ。」


清「そうだよ。昼にはお手伝いの人来ちゃう。」


虎雅「…うん。とりあえず僕たちで始めよっか。」


と言って、僕ら4人でやるべき事をやっていると、アキたちは一度家に帰って睡眠を取るらしい。


見送ってすぐにアキの泣き声が住宅街に響く。


会って数分で告白にもびっくりだったけれど、絢愛さんの言葉にも驚いた。

だから『大好きなみんな』といつも言ってるんだなと理解した。


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