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僕たちが出来ること  作者: 環流 虹向
九夏三伏
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カーテン

待っているせいさんたちの元に行くと、向日さんと憲治さんが来ていた。


虎雅「お疲れ様です!今日もまたせいさんの稽古ですか?」


入った戸の近くでSNSを更新しようとしている憲治さんに声をかける。


憲治「今日は東京の山車だしを持ってきたついでに、世永さんが連れてきたい所があるって言ってたのでここで待機してました。」


虎雅「そうなんですか!お待たせしてしまってすみません。」


樂「で?どこ行くって?」


憲治「シークレットって延々と言ってます。」


樂「…だるいな。」


世永「ちょっとぉ。終わったなら声かけてよ。」


と、せいさんが少し怒りながら僕たちの元に来た。


虎雅「すみません!お待たせしました。」


樂「で、どこ行くんだよ。」


世永「夏夜にぴったりな場所だよー。」


せいさんはいつにも増してご機嫌そうだ。

団員たち数班に分かれてせいさんが教えた山の中へ飛ぶ。


世永「2、4、6…、OK。みんな来てるね。」


と言って、せいさんは先頭に立って歩き出す。

みんなでどこに行くのか考えていると、せいさんの足がぴたっと止まる。


せいさんの目の前には葉っぱのカーテンが出来ていて、その奥は洞窟になっているのかみんなが一斉に入っても問題ない大きさ。


世永「みんな、静かにね。ここら辺動物が多いから。」


みんなが小さい声で返事をする。


向日「世永…。暗いとこ怖い。」


世永「あ、ごめんね。そうだったそうだった。」


と言って、せいさんは向日さんの手を繋ぎ、一番にカーテンを潜っていく。


絢愛「じゃあ私たちも手、繋ごう!」


樂「何でだよ。」


絢愛「お化け屋敷みたいで面白いじゃん!」


と言って、絢愛さんは隣にいた樂と憲治さんの手を握ってずんずんカーテンに向かっていく。


真司「怖がってないのに面白いのか?」


虎雅「絢愛さんは雰囲気を楽しむ人だからなぁ。」


「わぁっ‼︎」


と、カーテンを潜った向日さんの驚く声が洞窟に響く。


絢愛「わぁ!びっくりした!何だろ?」


樂「知らねぇよ。離せよ。」


憲治「大丈夫ですか!?」


憲治さんは手を繋いだまま、カーテンの向こう側に入ってく。


虎雅「僕たちも行こう。」


真司「うん。」


葉っぱのカーテンを潜り、少し歩くけれど先に入った人たちが見当たらない。

と言うより真っ暗すぎてよく分からない。


僕は人の色で追えるように見透極通を使った。

すると遠くで動く淡い薄緑色の光を見つける。


虎雅「真司、清くん。僕の手掴んで。」


分かったと言って、二人は僕の腕を掴む。

僕は他の団員さんたちに声を掛け案内しながら進んでいくと、L字の角から淡い光が漏れてきた事に気づく。


せいさんたちは、ここに居るのだろうか。


僕たちは角を曲がり、光の元を見るため顔を上げる。


「「「わぁあああっ…!」」」


僕たちはその光景を見て思わず声を出して感動した。


その洞窟の天井には鍾乳洞と星空が広がっていた。

いつも見ている星よりもとても近くに感じるほど、大きく力強く光っている。


世永「蛍だよ。すごい綺麗だよね。」


と、せいさんが上を見ながら教えてくれる。


虎雅「すごい…。蛍、初めて見た…。」


真司「俺も。」


清「僕も。」


絢愛「私も!」


樂「俺も。」


憲治「一度だけ。けど…、この数は見たことないです。」


みんなでその光景に見惚れながら初体験を共有する。


世永「ここは人が来た形跡が見られないから、もしかしてって思ったんだ。

けど、この数は凄いよね。今の時代、これだけの数を見るなら養殖になるんだろね。」


向日「…そうね。娯楽として、ね。」


と、向日さんは少し寂しそうに言った。


世永「…やっぱり、自然は凄いなぁ。人の技術も素晴らしいけど、自然の美しさには敵わないって思うなぁ。」


向日「うん。…人は自然には敵わないよ。」


世永「だからこそ心惹かれるのかもね。失いたくないねぇ…。」


と、二人はちょうど腰掛けられる所に座ってその景色を見始める。


他の人も座ってこの景色を楽しむ。


きっと、今を生きる人間なら迷わずカメラで写真を撮り始めるだろう。

けれど、ここにいるみんなは誰一人出す事なく今ここの空間を肌と目で感じて楽しんでいる。


本当に素晴らしい物を見てしまったら、眺める事に集中して余計な事を考えないんだなと思った。


僕もその一人。


屋敷に帰った後、団員さんの一人が写真撮っておけば良かったと言っていた時に気づいた。


でも、僕の記憶と目に焼き付けた。

写真としての記録も大切だけれどやっぱり自分の目で感じたい。


また来年、みんなであの洞窟に行けるように自然を守ろうと改めて思った。


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