新見咲という女
数分後、憲治さんが大一さんを連れて屋敷に戻ってきた。
世永「忙しいところすみません。」
大一「いいんだ。咲の名前が無いんだってな。」
大一さんが自分の懐から本を出して、見せる。
そこには咲さんの名前が書いてある。
樂「失礼します。」
と、樂が大一さんの本を取り、のりを確かめる。
樂「…大一さんはいつも懐に入れてますか?」
大一「ずっと入れてるぞ。」
憲治「でも、酔って寝たら一度も起きませんよ。」
樂「そういう事か。」
大一「あ?どういう事だ?」
樂「新見 咲は元々俺たちの仲間では無い。」
大一「なんでだ?あいつから入れてくれって言ってたぞ。」
世永「咲さんとはどこで出会ったんですか?」
大一「森の中で咲が1人凶妖と戦ってる所に俺がたまたま遭遇した。」
憲治「1人で戦ってたんですか!?」
大一「そうだ。あいつは怪我の治りが異様に早い奴だったから印象に残ってる。」
樂「大一さんがスカウトしたんですか?」
大一「だからさっき言っただろう。咲が入れてくれって言ってきたんだ。やる気があるなら男でも女でも関係無いからな。」
虎雅「その時、この本で確認しましたか?」
大一「その頃、俺はその本が出現してなかったから確認してない。しばらくして世永たちの本で確認したら後ろの方に出てたぞ。」
世永「ここですか…?」
せいさんがさっきのページを開く。
大一「そうそう。咲は仕事外でも凶妖狩りをやるくらいだったから、普通の者では無い感じはしたがな。」
樂「咲さんっていくつか知ってますか?」
大一「知らん。誕生日も教えてくれなかった。」
虎雅「咲さんの事で知ってる事あります?」
大一「戦闘と酒と気が強いくらいか。」
大一さんの証言は、あんまりあてにならないな。
世永「咲さんは、この子たちみたいに凶妖に噛まれて力を得た人では無いみたいです。」
大一「はあ?そんなわけ無いだろう。俺らのような血を持ってる訳じゃない。そういう血だったら嵐か豪の鼻で分かるだろう。なんで凶妖が見えてるんだ。」
世永「そこが分からないんです。」
大一さんが腕を組み、考える。
大一「…人妖か。」
世永「そう考えるのが妥当ですよね。でもこの時代に生まれるんですか?」
大一「咲の念次第だな。あいつ、いつ死んでもいいみたいな面してるのにな。」
樂「…何ですか?」
世永「人が妖怪になるの。動物が凶妖として生きてるみたいに。」
「「「!」」」
樂「そんな事あるのか?」
世永「前に話したでしょ。昔は人の魂が妖としていたから、妖退治の人がいたって。
だから、俺たちはその人の血を受け継いで特別な力を頂いてる。
最近は凶妖の方は数が多くて、人妖はもういなくなったと思ったんだけどな。」
大一「まあ、これだけ災害で人が死んでるんだ。不思議でもない。確定では無いがこの本に名前が無くて、俺らの血が流れてるわけでもなく、凶妖が見えているならその線が濃厚だな。」
憲治「…だから、老けないんですか?」
大一「…確かに俺と近い年齢のはずなのに、若々しいよな。」
虎雅「咲さんが妖怪の類だったら、封印しないといけないんですか?」
世永「人妖は、歯止めが効かない欲望に脚が生えてるみたいなものなんだ。その望みが叶えられないと封印してもそれを解いて出てくる。」
大一「人妖は殺すか、叶えるかどちらかしか存在を無くす方法は無い。」
虎雅「凶妖の様に一緒に生きる道は?」
大一「咲が共存を望むなら、生きられると思う。だが、望みが自分本位で生き物を傷つけるものであれば消すしか無い。」
虎雅「…凌太さんは今無事なんでしょうか。」
大一「咲とずっと一緒にいる仲だ。ある程度あいつは気に入られているから大丈夫なはずだ。」
樂「まずは、あの2人の拠点を見つけて捕まえるしか無いな。」
世永「この事を知ってる団員は虎雅と樂と憲治だけだね。」
と、せいさんは辺りを見渡す。
世永「今の話はみんなに内緒にしておこう。」
樂「何でだよ。」
憲治「みんなにも知ってもらわないと危ないです。」
世永「咲さんと凌太さんが戻ってきた時、みんなの輪に入りにくくなるでしょ。」
せいさんが2人の肩をポンポンと叩きなだめる。
大一「黙ってるのは良いが、これからどうする。」
世永「この3人も凌太さん探しに行ってもらう。」
憲治「良いんですか?」
世永「うん。3人は琥崙、嘉蘭が教えてくれた場所に向かってまずは凌太さんを助けよう。」
「「はい。」」
大一「咲は?」
世永「…まずは、人の安全を取って俺がやります。」
大一「その時はまた呼べ。」
世永「…ありがとうございます。」
大一さんはそう言って、嵐さんのいる高知に戻っていった。
世永「この事は俺らの秘密。向日には憲治の事、借りるって言っとくね。」
憲治「分かりました。」
琥崙さんと嘉蘭さんがまず2人を見つけるまで、僕たちは自分の鍛錬をし凌太さん達を救出するための準備を始めた。




