弟から見た姉の片想い遍歴
海の国のエルネストは双子の弟で四人兄弟の一番下、末っ子だ。
末っ子といえば、甘えっ子だと相場が決まっているが……彼はそうではない。
甘えっ子なのは蝶よ花よと育てられた唯一の女の子であるクラリーチェの方だ。
けれども、クラリーチェは双子なのにもかかわらず、お姉さん風を吹かせてエルネストを甘えん坊扱いする。甘えん坊で寂しがり屋のエルネストがクラリーチェの後を付いて回るのだと勘違いしている。
甘えたがりで癇癪持ちで我が儘で後先考えず進むクラリーチェが、エルネストを引っ張り回しているのだ。
それは、クラリーチェ以外の人々の共通の認識であった。
クラリーチェが第一公子コラードのキラキラスマイルにやられて、「エルネスト!王子しゃまよ!ほんもにょにょの王子しゃまだわ!!」と騒いでいた時も、その兄公子を知らないお姉さんに盗られて(?)床に大の字で泣き喚いた時もエルネストは隣にいた。
泣き止まないクラリーチェにほとほと困ってい侍女に「ごめんなさいごめんなさい」と謝り、いつも一緒に遊んでくれる直ぐ上の兄公子ベルナルドを呼んでくれるよう頼む。
ベルナルドのお陰で機嫌の直ったクラリーチェにほっと安堵の息を落とし、兄に「お疲れさま」と労われ、エルネストも微笑み返す。だが、彼に安息の時はない。
「あたち、ベルお兄ちゃまのお嫁しゃんになるの!」と言ったクラリーチェの言葉に新人侍女が、「姫様?お兄さまとは結婚できないんですよ」とばか正直に言ってしまったのだ。
クラリーチェは物を手当たり次第に投げまくって癇癪を爆発させた。
エルネストは大変困った。頼みの兄公子達は揃って失恋(?)相手。この爆発が更に悪化するかも知れない。しかしそこに天の助け!!
宰相の息子アルフォンソが通りかかったのだ。
頼むに悩む相手ではあったが、彼は大公一家であれば無下には扱わない筈。
彼は一瞬、剣呑な瞳を見せたが二つ返事で承諾。
五分も掛からずにクラリーチェを宥めすかして、彼女の心を捕らえてしまった。
エルネストはいたく感心し、その後の姉対策の参考にするのだった。
アルフォンソは先程の剣呑な瞳を見せてしまったことを気にも留めてないようだ。六歳程のエルネストが気付く筈もないと高を括っているのか。大公位には縁の無いエルネストにもおべっかを使ってご苦労な事である。エルネストは微笑み兄公子達にも彼の活躍を伝えるとお礼を言った。
因みに、新人侍女は配置替えとなった。
クラリーチェのお喋りの内容がアルフォンソ一色となった。
侍女達にも人気があるようで、皆でキャーキャー騒いでいる。こういう時はエルネストは空気の様に椅子に座っている。輪には絶対に加わらない。
ひさしぶりにと、クラリーチェが散策に出掛ける。勿論彼も付いて行く。
姉がうっかり踏み潰してしまった花を慌てて救いだし(土を払ったり)、目撃してしまった庭師に「ごめんなさいごめんなさい」と謝る。自分の世界に夢中な姉は気付かずどんどん先に行ってしまう。
エルネストは姉を追い掛け、追い付き、ぽけっと突っ立っている姉の横に立つ。
何だろうか?と視線の先を追って行けばアルフォンソが居た。彼の従者らしい年上の男と居た。
二人とは離れていたが、風に乗って所々声が聞こえて来る。
「子供の面倒は疲れる」「公女でなければ誰が子供の相手を……」などといった内容だった。
クラリーチェは青ざめていて、隣にいるエルネストも見えないかのようにふらふらと歩いていった。
姉に護衛が付いているのを確認すると、エルネストはアルフォンソの元まで歩いて行く。
「貴方だって子供じゃないですか」
微笑みながら詰問すれば、アルフォンソは片眉を上げて子供らしくない笑みをした。
「お気に召しませんでしたか、殿下?」
「もっと、優しく言って欲しいです」
「こういうのは、はっきり言って上げた方がよろしいそうですよ?殿下」
「人それぞれだと思います」
「そうですか……それは、申し訳ございませんでした、殿下」
端から見れば二人は微笑み合い仲睦まじい様子だが……間に挟まれた従者は堪ったものじゃなかった。
(どっちも子供の笑顔じゃ、ねえ!)
「そろそろよろしいですか、殿下」
「はい、子供のままごとに付き合ってもらってありがとうございました」
「いいえ、子供のままごともたまには楽しかったですよ。殿下」
アルフォンソは笑みを崩さず礼をして従者と共に去って行った。
エルネストも微笑んだまま彼らを見送り長い息を吐くと、姉の行方を追った。
本編に入れられなかった作者のツッコミ。
侍女達もキャーキャー騒いで……ショタかっ!!
あれ?
エルネスト……どうして、こうなった?
純真無垢な天使のような庇護よくをそそる可愛い末っ子の予定だったのに……クラリーチェとアルフォンソのせいだっ!!
読んでいただきありがとうございました♪




