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9:魔道士の娘。

トビーに娘がいることにしちゃえと思いついてUP。

長文になります。ご了承ください。

 父が結婚する気になったのは、親友の宰相閣下に続き国王陛下が結婚を決めたことがきっかけだったらしい。

 そして親友たちと同じ年齢の子供を持った。計画したのか偶然か。それは父にしか分からない。



「フィラーナ、待ってください」

「誰が待つものですか!」

 そう言うと私は、相手を無視して王宮をずんずん歩く。目指すは父のいる魔道士長室。

 私の名前はフィラーナ・ブランデル、年齢は15歳。父は魔道士長のトビアス・ブランデル。今は父の下で魔道士修行中だ。母は私が10歳のときに病で亡くなってしまった。周囲は再婚を勧めてるみたいだけど、父は再婚する気はなさそうだ。

 私はブランデル家の跡取りとして、いずれは王太子であるエドを宰相の息子であるウィルとともに支えるようにと期待されているらしい・・・。

 ドレスじゃなくて見習い魔道士の制服でよかった。これなら早歩きができるもの。だけど、相手もしつこくて、私の後を追ってくる。

「フィラーナ!!」

「もう!しつこい!!」

 相手を振り切るべく、私は移動魔法を使って一気に魔道士長室に行く。

「お父様!!」

 ドアを開けると、父は執務中だったらしく机のうえで書類を見ていた。

「フィリー、王宮では魔道士長と呼びなさいと言ってるだろう」

「魔道士として来たのじゃないわ!!娘として来たのよ!!」

 私がそういうと、父はふっと笑って私に椅子をすすめてきた。

「それで、どうかしたのかな?」

「・・・どうかしたのかな?なんて、とぼけないでよ!!お父様の差し金なのは分かってるのよ」

「だから、何が」

「・・・・コンラート・バルマーのことよ。なんで、私の承諾なしに彼が私の婚約者になってるのよっ!!」

 すると父は一瞬まずいという顔をしたが、すぐにそれを打ち消して楽しそうに笑った。

「フィリーの出した婿の条件に合ってるのが彼しかいなかったんだよね~。年齢も彼は18歳。お前は15歳でちょうどいいじゃん。それにお前・・・」

 そこまで言うと、父は私の顔を見るとニヤリと笑った。

 ああ・・・父は分かっててやらかしたんだ。私は3ヶ月前のやりとりを激しく後悔していた。



-3ヶ月前-

「フィリー。お前って自分の夫になる人の条件ってなんかある?」

 夕食の最中、父が持ち出した話題に私は食べたものを吹き出しそうになった。

「何を突然お父様」

「じいさまが俺の二の舞は避けたいと言い出してね。お前の見合い話を見繕い始めてんだよ」

 じいさま、というのは先代のブランデル公爵で父の父にあたる。私にとっては祖父だ。大好きなんだけど、少々心配性なのが玉に瑕。

「まだ私15なのよ?」

「でも、早すぎるというわけじゃないからねえ」

 確かに、生まれたときから許婚がいるなんて人もいるけど、それはごく一部だろう。

「お父様たちみたいに、いずれは国王様やエドを支えられる魔道士になるのが先よ。」

「俺もフィリーにその気はありませんよ、って言ったんだけどね。じいさまは、時として強引だから」

「でも、お見合いなんて嫌よ!!」

「そうは言ってもね。お前に必要最低限の条件を聞いてくれと言われてしまったのだよ」

 父に言われて、私は考えた。

 無理難題なことをいえば、おじいさまだって該当者を探すのに苦労する。うまくすれば見合い話じたいが遠のく可能性がある。よし、それなら・・・。

「だったら、お父様。私の夫になる方には次の条件が最低限必要です」

「うん、言ってごらん」

「まず、私は魔道士としての道をまい進したいので公爵家の実務部門を全てこなせる能力のある方。魔力は私が持っていますから特に気になりません。あ、家柄しかとりえのない貴族の坊ちゃんなんて絶対にお断り。外見も、それなりの方がいいわ。

 それから、公爵家の実務部門を任せられるからといって余計な野心のある方は困ります。さらに家の威光をあてにするような係累がいないというのも絶対ね。あとは、ちゃんと私と向き合ってくださる方。変態的な思考や言い交わした方がいないことは当たり前。それと・・・・」

「フィリー・・・どれか妥協する気はないのかい?」

「ないわ。」

 苦笑いする父を前に、私はきっぱりと言いきったのだった。こんなむちゃくちゃな条件に見合う相手なんて早々見つからないだろう・・・私はそう踏んでいたのである。



 魔道士長室から出た私は、そのままぶらぶらと王宮の南にある庭園に向かった。誰も見てないのをいいことに芝生の上に寝転がる。

 どうやれば、この婚約話を解消できるのか。おじいさまは当てにならないどころか、確実に話が進んでしまう。やっぱり親友のアンに相談してみようかしら・・・。

「あ~。どうすればいいのよう」

「僕と結婚すればいいんです。探しましたよ、フィラーナ」

「な、なんでここに!!」

 私を上から覗き込んでいるのは、コンラートだった。

「公爵令嬢なんですから、芝生の上に寝転がるのは止めませんか?」

 そう言って、許可も与えてないのに彼は私の隣に座った。

「どうして、ここが分かったの?」

「フィラーナは、ここを散歩するのが好きでしょう?髪の毛に芝がついてますよ」

 そういうと、私の髪の毛から芝を払ってくれる。どきどきしてるのが伝わったらどうしよう。

「あ、ありがとう。」

 私がお礼をいうと、コンラートがどういたしましてと笑う。

「ねえ、コンラート」

「何でしょうか?」

「どうして私との婚約を了承したのよ」

「トビアス様が言うには、フィラーナの出した結婚相手の条件に該当するのが僕しかいなかったからだとのことでした。

 ご存知のように、僕は宰相閣下の右腕であるラルフ様の補佐として働いていて、陛下や閣下からもお褒めいただいてます。

 ついでに言うなら、我が家の家訓は“現状維持。身の丈生活が一番”で両親も親族も自分の領地に満足しておりますし、領民とも良好な関係です。僕は4男ですから、婿に行っても文句はでません。

 それに変態的な思考も嗜好もありませんし、言い交わした女性もいませんからね。」

 もっとも、お父様がコンラートを選んだのは、それだけじゃない。

 どうしてアンにしか話してない私の気持ちに気づいたんだろう・・・まさか、娘の心を読んだとか。まさかね~・・・いくらお父様でも・・・・。だけど、その可能性を否定しきれない。

「フィラーナ?」

「な、なんでもありませんっ。コンラート、父に言われて断れなかったんでしょう?私から断っても・・・」

「そんな必要はありません」

「へっ?」

「僕は身分が高くても嫌な相手との縁組に首を縦にふるような男ではありません。だから僕との婚約を解消するなんて言わないでくださいね?」

 そういうと、コンラートは私の手をとって、唇をおとした。

「な、なにするの?!」

 コンラートにキスされた手の甲を私はあわてて引っ込めた。

 その様子をみていたコンラートにくすっと笑われ、私はますます恥ずかしくなる。

「式はいつ頃にしましょうか」

「私が魔道士になって、父に認められてからに決まってるでしょう!!」

「それはそうですね。僕もまだ学ぶことがたくさんありますし。お互い頑張りましょうね」

「う、うん。」



 フィラーナ・ブランデルとコンラート・バルマーが結婚したのは、それから10年後のことであった。


読了ありがとうございました。

誤字脱字、言葉使いの間違いなどがありましたら、お知らせください。

ちょっと感想でも書いちゃおうかなと思ったら、ぜひ書いていただけるとうれしいです!!



まさかの番外編その2です!

「天使~」がUPできたことでちょっと浮かれて

思いついてしまいました。


ちなみに登場人物は以下のとおりです。

フィラーナ・ブランデル(15歳)

ブランデル公爵家令嬢で跡取り娘。魔道士見習い中。


コンラート・バルマー(18歳)

バルマー家四男。実家は地方領主で、跡取りではないので

好きな学問をしようと王都にやってくる。

優秀な成績で学校を卒業後、セオの部下として働く。

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