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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第三章

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第九七話「喜怒哀楽の何れでも無い“壊”と言う感情……前編」



《――帰還直後


一行の目に映った光景


瓦礫(がれき)の山……兵士達の死体……


……(ただ)(ごと)では無い状況に慌てた主人公は

思いつく限りの者達へと懸命(けんめい)に魔導通信で呼び掛け続けた


だが、誰一人として(こた)える者は居らず……


……それでも、幾度(いくど)と無く呼び掛け続けた主人公。


だが……そんな彼の隣で突如として悲鳴を上げたメル

震えながらも彼女が指し示した場所には

焼け落ち、崩れ去ったヴェルツ……そして

主人公(かれ)が“第二の母”と(した)って居た

ミリアの亡骸(なきがら)()った――》


………


……



「そんな……嘘だ……戻って来てくれ……お願いします……


頼むッ!! ……頼むッ!!!


ミリアさんッ!! ……」


《――脇目も振らず()()

ミリアに対し幾度(いくど)と無く治癒魔導を使用し続けた主人公。


彼は……幾度(いくど)と無く

考えつく限り、全ての治癒魔導を使用し続けた

だが、彼女が息を吹き返す事は(つい)ぞ無く――》


………


……



「ミリアさん……俺……帰って来たんですよ

ねぇ……ねぇッ! ミリアさん……ッ!

あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ゛ッッ! ……」


《――彼は、ミリアに(すが)り付き()いて居た。


……声を掛ける事すら躊躇(ためら)う程

憔悴(しょうすい)した主人公の姿……仲間達は皆

どうする事も出来ず、(ただ)立ち尽くして居た。


だが、そんな中――》


「テメエら何処から現れやがった?! ……ん?

それなりに美味(うま)そうな魔導力の奴が居やがるじゃねえか!


お前達、掛かれぇぇっ!!! ……」


《――騒ぎを聞きつけ現れた数十体の魔族は

彼らに向け一斉に襲い掛かった。


だが――》


「ミリアさん……母さん……父さん……俺が……

俺が居ない間に……皆……大切な人達がッ!


皆……皆……ッ!!


……あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ッ゛ッッ!!! 」


《――亡骸(なきがら)(すが)り付き

(なお)()き続けて居た彼を埋め尽くした苦しみ――


“転生前の記憶”


――強盗に()り奪われた両親との幸せな生活

両親の亡骸(なきがら)(すが)り付き

()き続けた(おさな)き頃の記憶……その

(おぞ)ましい記憶と眼の前の現実は

彼の心を崩壊(ほうかい)させ始めていた――》


「父さん……母さん……嫌だ……何で……誰か助けて……」


《――譫言(うわごと)の様にそう言った彼の眼差しは

虚空(こくう)を見つめたままで……


……呼び掛け続ける仲間の声すら

届く事は無く――》


「ぐっ!! ……主人公っ!!! ……辛い気持ちは理解する!!

だがッ!! 今は……ッ!! ……戦うのだっ!!! 」


《――ガルドの願いも(むな)しく

主人公(かれ)は、(なお)もミリアの亡骸(なきがら)(すが)り付き――》


「俺が居なかったから……俺が……俺が……」


《――そう発し項垂(うなだ)

天を(あお)ぎ力無く()いて居た


……直視すれば彼の尊厳(そんげん)すら失われかねない惨状(さんじょう)

仲間達はやがて呼び掛ける事を止め……()えて彼に背を向けると

彼を(まも)(ため)、魔族との戦いを続けた……だが

無情にも敵の増援は増え続け……抵抗も(むな)しく

一行は、(つい)に取り囲まれ――》


………


……



「……中々やりやがったが所詮(しょせん)は少人数だ!!

大人しく俺達に食われてりゃ良いんだよ

この肉袋(にくぶくろ)共がッ!! ――」


《――言うや否や

鋭く尖った爪を差し向けた一人の魔族


だが――》


「なん……だ? ……こ……れ……は……」


《――突如(とつじょ)

(はじ)()んだ主人公の減衰装備


この瞬間……(おさ)えられて居た主人公(かれ)の魔導力は一気に解放され

野生の(かん)とも言える程の速度で“何か”を回避した魔族


だが、回避した筈の魔族は即座に“消滅”し――》


「な……何が起きた!? 」


《――仲間を襲った突然の“異常事態”に(おのの)きつつも

突如として発生した異様な“それ”を凝視(ぎょうし)して居た魔族の一団


その視線の先には、(うごめ)く謎の“黒い粒子”が

(ただよ)って居て――》


「な、何だッ?! ウグッ?! ガャァァァァァッ!!! ……」


《――直後


“粒子”は魔族達を一瞬の間に全て消滅させ

(なお)()き続けて居た主人公(かれ)を中心に

仲間達の周りを取り囲む様に(ただよ)い始めた――》


「こっ、これはっ?! ……主人公さんっ!? 」


《――そう言って振り向いたメル

彼女は直ぐに主人公の首元を確認した。


だが、其処(そこ)に掛かって居る筈の“ネックレス”は無く

皆を(まも)る様に(ただよ)うこの“粒子”が

無意識下で彼の発動させた物であるとこの瞬間確信したメル


……反面、その動きは時折(ときおり)(みだ)

攻撃的な形状を“(うち)に向ける”瞬間が幾度(いくど)と無く見られ――》


「主人公……さんっ? ……」


《――仲間の危機を救った一方

その“仲間”すら襲いかねない不安定さをも(かも)し出した“粒子”


一方――》


「ミリアさん……起きて下さい……俺……帰って来ましたよ!

お、可怪(おか)しいな……今日はミリアさん……疲れてるのかな?

眠るにしてもベッドに移動しないと……ねぇッ!!!


……母さんッ!! 」


《――目の前の惨状(さんじょう)を受け入れられず

(なお)も、()き……(わら)

そして……耐え(がた)き苦しみに(もだ)えて居た主人公(かれ)の心。


だが……そんな中

意を決した様に彼へと近付いたメルは――》


「主人公さん、ミリアさんは……私にも大切です

私だって悲しいです、それは皆さんだってきっと……けどっ!


ラウドさんやエリシアさん……各種族長さん達もそうですし

私のお母さんも、マリーンさんのお母さんもですっ!

通信が繋がらないだけ……皆さん生きてる可能性は

まだ充分にあるじゃないですかっ!!

だから……お願いですっ! 主人公さんっ!! ……」


《――そう必死で訴えた

だが――》


「ミリアさん……俺、ミリアさんに

“最初にただいまを言う”って約束したじゃないですか。


何で……何でッ!!! こんな……って……まさか。


夢で……あの悪夢で……

……何度(なんど)何度(なんど)もミネルバさんが

必死に訴え続けてたのは……だと……しても……

何でもっと馬鹿な俺にでも分かる様に

噛み砕いて教えてくれなかったんだよッ?!


……何でッ!!!

何で旅立ちの日に掛けた筈の“認識阻害(にんしきそがい)”が

全く意味を()してないんだよ?!


何で! ……何でッ!!

何でどの世界でも大切な人を失い続けなきゃ駄目なんだよッ!!!

こんなの嘘だって言ってくれよ……ッ……


……皆、帰って来てくれよッ!!!!! 」


《――叫ぶ様にそう言った直後

彼は再び大声で()いた……そして

そんな彼の心に呼応(こおう)するかの様に

再び激しく(うごめ)き始めた粒子は

周囲に散乱(さんらん)する瓦礫(がれき)をも一瞬で消滅させた。


この瞬間……壊れた彼の精神とその“結果”を

唯唯(ただただ)見守る事しか出来なかった仲間達。


……彼が第二の母と(した)

(よすが)”として居たミリアと言う一人の女性。


彼女が、如何(いか)にしてこの様な最期(さいご)を迎えたのか……


……彼女の胸に刻まれた傷口は


彼女の揺るぎない“正義”を(しめ)して居た――》


―――


――



《――彼女(ミリア)の死亡時刻より約一六時間前


深夜三時頃、政令国家第二城では

長らく続く平和の所為か、警備と言えば

申し訳程度に配置されて居る門番が二人のみ……その上

(いず)れも退屈そうな表情で、(しき)りに欠伸(あくび)を繰り返し

交代時間を待ちわびて居る様子で――》


「“一時間交代”では有るけど……それにしても眠過ぎるよな?

ふわぁ~っ……眠い」


「……ああ、こう暇だと欠伸(あくび)ばかり出ちまって

悲しい事でも有ったのかって位に涙が出るよな……」


「ああ(ちげ)えねぇや……もっとこう

ド派手な“軍人ッ! ”……って仕事したくねぇか?

魔物討伐だとか……魔族討伐だとかよ!

ったく、メリカーノアに居た頃が懐かしいぜ……」


《――平和過ぎる日々に嫌気が差して居たのか

メリカーノア出身と見られる門番達は

(いささ)不謹慎(ふきんしん)な発言を続けて居た。


だが……この“発言”の直後

彼らの“不謹慎(ふきんしん)な想像”を遥かに超えた

凄惨(せいさん)な現実”が、彼らを襲う事と成る――》


「本当に暇だよな……って、そろそろ交代時間じゃなかったか?

ったく! またアイツら寝坊してやがるんじゃ……」


《――門番の一人はそう言いつつ振り返り

兵舎の方を見つめ悪態(あくたい)をつき

それに釣られる様に、もう一人の門番も振り返り

兵舎の方角へと悪態(あくたい)をつき始めた頃――》


「……結界だと? この国は崩壊させた筈だが

人間とは斯様(かよう)に増え続けるか……不愉快な。


……“悪鬼共(やつら)”と大差は無いな」


「なっ?! ……魔族?!

ひ、ひぃっ?! ……ひぎゃぁぁぁぁぁっ!! 」


《――直後


門番らの前に現れ瞬時にその首を()ねたのは……魔王であった。


……その背後には、共に転移したと見られる魔族が総勢約三万

更には“悪鬼”の姿も多数あり――》


「フッ……“政令国家第二城”とはな。


成程……我が配下よ、此処(ここ)は既に

我が叩き潰すべき“政令国家(ものども)”の領土である様だ……だが

彼奴(きゃつ)ら”程度を見て気を抜かず

全力を(もっ)て借りを返し……我が種族の誇りに()

必ずや政令国家(きゃつら)を一人残らず滅するのだ……


……()ず手始めに第ニ(ここ)を落とす

()らえる者あれば()らえ

さもなくば(ひね)り潰せ……良いな? 」


「ハッ!! ……魔王様のご命令だ!

全員、戦闘配置ッ!! ――」


《――直後


政令国家第二城に雪崩(なだ)()んだ大量の魔族と悪鬼


遅れる事(しばら)く……


……騒ぎを聞きつけ飛び起きた兵士達

だが、応戦しようにも長らく続いた平和に

(いささ)安逸(あんいつ)(むさぼ)って居た様な者も多く

兵達は皆、(あわ)れな程に次々と打ち倒され

深夜の第二城は一瞬にして戦火に包まれ

陥落(かんらく)も時間の問題かと思われた。


だが――》


………


……



「この程度か?! ……魔王様! コイツラ半端無(はんぱね)ぇ雑魚ですぜ?! 」


「フッ……油断は禁物だ」


「そりゃそうですが、あまりにも雑魚過ぎて話に……」


《――瞬間

軽口を叩く魔族の首は宙を舞った――》


「警告はした筈だ……愚か者め」


《――言うや否や

配下の首を()ね飛ばした攻撃の出所(でどころ)(にら)んだ魔王


其処(そこ)に居たのは――》


「伝達の魔導:魔導拡声(メガホン)――


“魔族大量襲来! ……魔族大量襲来!

これは演習では無い! ……繰り返す! これは演習では無いッ!! ”


――さて、時間稼ぎ位はさせて貰おう。


掛かってこいッ!!! 」


《――政令国家全域に警告を出し

その直後、決死の覚悟で魔導武器を構えた男。


彼の名はカイエル……一行の旅立ち後、彼は更に装備を一新し

現在では政令国家でも指折りの魔導攻撃力を有して居た。


だが――》


「フッ……悪鬼共、任せたぞ」


《――魔王がそう命じた瞬間


(カイエル)(おお)い隠せる程の巨大な図体をした悪鬼が五体

ゆっくりとした足取りで彼の前へと現れ――》


「オマエ……オレタチに()われる運命

諦めて武器捨てる……楽……」


《――中でも一際(ひときわ)巨大な体躯(たいく)を有する悪鬼は

カイエルに対しそう告げた。


だが、(カイエル)は――》


「ふっ、化け物が人の言葉を話すとは驚いた

だが……貴様の申し出は断らせて頂く。


……寝込みを襲わなければ

勝負すら出来ぬ姑息(こそく)な者共相手に敗北する程

甘い相手では無い事をその身を(もっ)て教えてやろう。


掛かってくるが良い“化け物”……」


「オマエ、生意気!! ……()ってやる!!! 」


《――直後

カイエルの発言に激昂(げきこう)した悪鬼達は一斉に飛び掛かった。


だが――》


「……“化け物共”よ。


お前達が“主人公(かれ)”の様に真面目ならば

そうはならなかっただろう……と、言った所で

(すで)に聞こえては居ないだろうが」


《――余裕の表情を浮かべそう言ったカイエル。


彼の眼前には焼失した悪鬼の死骸(しがい)が転がって居た……


……突然の事に驚く魔族達

直後、慌てて周囲を見回した後

(カイエル)の周囲に()き詰められて居た

ある“物”に気付き――》


「こ、此奴(こいつ)ぁ……魔王様! 結界だらけです!!! 」


《――(おのの)きそう叫んだ一人の魔族

その周囲には“反応型爆雷結界”が山の様に敷き詰められて居た――》


「大したものだな人間よ……だが

貴様が仕掛けた(じゅつ)、果たして何時(いつ)まで持つか……


……我が試してやろう」


《――カイエルに対しそう称賛(しょうさん)を送った魔王


過去、主人公の牢で(もち)いられて居た結界を

防衛用として活用すべく、政令国家領土内のほぼ全域に

(あらかじ)め張り巡らせておく事をラウド大統領に進言

承認後、魔導力を込めれば直ぐに起動する様仕込んで居た。


(カイエル)は、その(ため)だけに

結界術(けっかいじゅつ)”と呼ばれる学問を深く学び

限り無く訪れる可能性の低いとされる危機に

(そな)えて居たのだ――》


「魔王と呼ばれて居たな? ……だが、貴様程の上位種で()ろうとも

この結界は……」


「フッ……誰が踏むと言った? 」


《――言うや否や


大量の悪鬼をカイエルへと差し向けた魔王、だが

“結界”に()り悪鬼は次々と焼失して行った。


当然と言うべきか、この状況に配下の魔族達は

魔王の采配(さいはい)を疑問を感じ始めて居た。


だが――》


「フッ……(つら)かろう、人間よ」


《――カイエルに対し静かにそう(たず)ねた魔王

その眼前で、カイエルは冷や汗を流し始めて居た――》


「ぐっ……成程……私の魔導を……無駄に消費させる……(ため)

盲点(もうてん)だったッ……だが魔王よ……ッ!!

貴様がこれ程に……配下の命を

(かろ)んじて居るとはな……ぐぅッ!! 」


《――結界はその性質上

破壊されぬ限り半永久的にその機能を発揮し続けてしまう。


……この時、(カイエル)を襲った“魔導流失”とでも呼ぶべき状況は

彼を加速度的に苦しめ始めて居た――》


「フッ……我が真なる配下は魔族の流れを組む者のみ

悪鬼は我らの新たな食料であり

決して()きる事の無い“捨て駒”よ。


……こうして貴様と話す間にも

あの森では新たな悪鬼が生まれ続けて居る

貴様ら脆弱(ぜいじゃく)な者共にどれ程焼かれようとも

尽きる事など……無い」


「何……だと……くっ……不味(マズ)い……!

魔導通信――


――兵達よ……援護を……ッ……」


《――直後


カイエルの命令に()り現れた数十名の魔導兵、だが――》


「な……何をしている?!

早く援護をッ!! ……ぐっ!! 」


《――そんなカイエルの呼び掛けに対し

魔導兵達は一歩も動かず……いや。


“動けず”――》


「無駄です……私が“(じゅつ)”を解かない限り

その者達が動く事などあり()ません」


「貴様は……人間?!

貴様っ!! 人間の身で有りながら何故(なぜ)魔族に(くみ)するッ?! 」


「“私の望む世界をお作り頂けそうなので”

としか、お答え出来ません……()しからず」


《――そう受け答え

薄気味(うすきみ)悪く笑って見せた男――


“ライドウ”


――彼は、固有魔導:時之狭間(トキノハザマ)(もち)

魔導兵達を完全に停止させて居た――》


「さて、皆様……“前菜”でございます」


《――そう言って一礼して見せたライドウ


直後、数多の魔族らに()()い荒らされた魔導兵達

次々と失われて行く部下の命を前に

反撃を(こころ)みたカイエル……だが

そんな彼を嘲笑(あざわら)うかの様に

(なお)も大量の悪鬼を彼の結界へと差し向けた魔王は

やがて、立つ事すら(まま)ならなくなり始めた(カイエル)に対し――》


「諦めよ……人間」


《――そう()げた、だが

(つい)ぞこれを受け入れなかったカイエル


……幾許(いくばく)かの時が過ぎ

生命の維持に必要な魔導力を失った彼は、直後

悪鬼の波に飲まれその生涯を閉じた……この後、(しばら)


魔王軍は第二城を完全に掌握(しょうあく)

其処(そこ)()む者達を“食料”とし始めて居た頃――》


………


……



「大変だ! ……エリシア! 」


《――同時刻

ヴェルツの女将、ミリアは二階へと新たに増築(ぞうちく)された

エリシアの部屋の戸を叩き、慌てた様子でそう言った――》


「分かってる! ……ミリアは出来る限り隠れてて!

くっ! こんな時、主人公っちが居たら……


魔導通信――


――主人公っち!


くそッ……駄目だ、やっぱり繋がらない。


……取り敢えず行ってくる!

ミリアは念の(ため)“例の場所”の用意を!! ……頼むよ!!!


転移の魔導、大統領城へ! ――」


「ああ! 死ぬんじゃないよっ!!! 」


《――エリシアの去った後

急ぎ一階へと走り降りたミリア、彼女は――》


………


……



「“此処(ここ)”を使わないで済むなら一番だが……」


《――カウンターの足元へと置かれた酒箱


それを押し退()けた先、(わず)かに

切込(きれこ)みの入った床を見つめながらそう言った。


……一方、エリシアが転移する少し前

カイエルの魔導拡声(メガホン)到達直後の大統領城では

ラウド大統領を始めとした各種族の長達が続々と集まり

緊急対策会議を開いて居た――》


「友好国に緊急で援軍の要請をすべきだ! 」


《――そう言ったオルガ

だが、この案に対しガーベラは――》


「いいえ、この深夜に

距離の離れた国からの援軍は間に合わない。


……唯一(ゆいいつ)考えられる手があるとするなら

メリカーノアの抱える魔導師……特に

“トライスター”を要請するのが一番よ」


《――と言った。


直後、この案に賛同したラウド大統領は

()ぐ様(さまアルバート大公に魔導通信を送った。


だが――》


「……と言う事なんじゃ!

頼み事ばかりで申し訳無いのじゃが、至急トライスターを……」


《――と、要請するラウド大統領の話を(さえぎ)ると

アルバート大公は――》


「申し訳無い、我が国にも魔族の進軍が見られ

此方(こちら)も必死に応戦しているのです。


今、この様な状況で戦力をそちらに()く余裕は……」


「何じゃと!? ……くっ!!! そちらも耐えるのじゃぞ?!

また追って連絡するからのぅ!! 」


《――通信終了後

静かに頭を(かか)えたラウド、だが――》


………


……



「……フッ、咄嗟(とっさ)(うそ)すら見抜けんとは。


しかし、魔族の大群に(くわ)え魔王らしき者が居るだと?

手に入れるべき国ではあったが

(ほろ)()く国ならば価値は無い……だが

(いず)れ“主人公(かれ)”が帰還した後

上手(うま)此方(こちら)に引き入れる算段だけは

しておく必要があるか……」


《――通信終了後

不敵(ふてき)な笑みを浮かべそう言ったアルバート大公。


一方――》


………


……



《――政令国家:第ニ城


ラウド大統領に向け送られた

“最後の魔導通信”――》


「ラウド大統領……カイエル様が、()くなられました。


……敵の攻撃は(なお)も続き

私達の防衛網が破られるのも時間の問題です。


我が隊も(いず)れは……せめて今、判明している情報だけでもお伝えし

政令国家本国(そちら)”だけでも……ぐっ!!


……敵は魔族の大群です、更に“謎の化け物”も多数おり

この者達は“共食い”を()て、強大な力を……なっ?!


ぐあぁぁぁっ!! ……」


《――通信途絶(つうしんとぜつ)


大統領執務室に訪れた重苦しい静寂(せいじゃく)……


……この如何(いかん)ともし(がた)い状況に

オーク族、新族長グランゴードンは――》


「援軍が来ないと成れば、主人公様に連絡を取るべきですッ!!

彼は、我が国の誇る最高峰の魔導師であり

最高峰の戦力ですッ! 」


《――そう発案した。


だが、この時(すで)に到着して居たエリシアは

大きく首を横に振り――》


「無理、ヴェルツを出る前にやってみたけど

通信が繋がる場所に主人公っちは居ない……」


《――そう、答えたエリシアの表情は暗く(しず)んで居た

そんな彼女の絶望的とも言える報告に()

執務室には重苦しい空気が流れた。


そんな中、ラウド大統領は――》


「“繋がる繋がらん”以前の問題じゃよ

わしらは余りに勝手が過ぎる……」


《――(なか)ば諦めた様な表情を浮かべそう言った。


(ラウド)のこの意見には皆思う所が有った様だが

エリシアは――》


「ねぇ……“それ”を言うなら

何でジョルジュを釈放(しゃくほう)したの?

(いく)ら結構な数の“嘆願書(たんがんしょ)”が提出(ていしゅつ)されたとは言え

出した奴らの(ほとん)どがつい最近

政令国家(ウチ)に引き入れた奴らばかりだし

ほぼ全員この間の“謀反(むほん)”の関係者ばかりだよね?

つまりは“無効票(むこうひょう)”……にも関わらず

あんな奴ら(かば)って……ラウドさん

貴方は本当に主人公っちの事、大切に思ってるの? 」


《――この瞬間

まるで敵に対し話す様にそう言ったエリシア。


だが……ラウド大統領は、そんな彼女の心情を理解した上で

更に続けた――》


「わしの行動を見れば確かにそうは思えんのじゃろう

じゃが、エリシア殿……わしは、(みずか)らの命などよりも

余程(よほど)に主人公殿の事を大切に思っておる……」


何処(どこ)がッ!! そんな口先の言葉なんて信用出来ないッ!! 」


「……信じては貰えんじゃろう。


それでも、本心から大切に思っておる……仕方無い

言うべき時が来た様じゃな……エリシア殿。


わしがあの(ジョルジュ)釈放(しゃくほう)した、本当の理由は……」


《――そう言い掛けた瞬間

ラウド大統領を(さえぎ)るかの様に政令国家に(とどろ)いた


爆発音――》


===第九七話・終===

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