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第九話「理解するのは楽勝でした……この女(ひと)ヤバいんですッ!」

<――初仕事から一夜明け、思いのほか寝過ぎてしまった俺。


酒を飲んだ訳でもないのに頭が痛い……

そんな中、寝起きの俺の耳に聞こえて来た声。


……マリアとメルちゃんの元気な声だ。


楽しそうだが、頭に響いて余計に痛い――>


………


……



「……さぁ~メルちゃん!

今日もギルドの依頼バンバンクリアして稼ぎましょ~う! 」


「は、はいっ……頑張りますっ! 」


「お……おはよ……って、朝から元気だなぁ二人共。


昨日はオルガさんが手伝ってくれたから何とかなったけど

流石に毎日と言う訳にも行かないし……今日はB級位の依頼にしないか? 」


「え~っ? ……私はもっと骨のある敵が良いんですけど? 」


「……マリアはそうかも知れないけど

メルちゃんは攻撃手段が無いんだぞ? もっと仲間の事考えてだな……」


「い、いえ……私はお二人の決めた依頼で大丈夫ですから! 」


「……いや、駄目だよ

メルちゃんが悲しんだり苦しんだりするのだけはもう見たくないんだ

だから、返済に時間は掛かっちゃうかも知れないけど

此処ここは俺の我儘ワガママだと思って……ね? 」


「で、でもっ……」


「だーもう!! ……主人公さんって本当にメルちゃんにだけは甘いですよね?!

永久防護エターナルプロテクトが掛かってるんだからダメージなんて受けないのに! 」


「マリアお前……そんな言い方はないだろっ!

もし、俺達がやられたらメルちゃん一人に成るんだぞ?

危ない場所で防御も何も無い状態でメルちゃんがどう成ると思ってんだよ?! 」


「だって……私だって結構頑張ってるのに褒めてくれないし!

なのにメルちゃんばっかりズルいですよ! 」


「確かにマリアは強いし助かってるよ! ……けど!


……寝言で“ギガタウロス余裕”みたいな事を言う位には

何も考えてないじゃないか! ……この脳筋馬鹿っ!! 」


「なっ?! ……寝言の盗み聞きとか変態ですか! 」


「だ、誰が変態だ! ……寝れなくて考え事してたら聞こえただけだ! 」


「あのっ! ……お二人とも……止め……」


「もぉ~っ!!! ……主人公さんなんて……」


「マリアなんて……」


………


……



「……やめてっっ!!! 」


<――この日

俺達は、始めてメルちゃんの怒り声を聞いた――>


「メ……メルちゃん? 」


「主人公さんもマリアさんも……


……私が原因でお二人が仲悪くなっちゃうなら

私はもう……一緒に居られませんっ! 」


「……ま、待ってくれ! 悪かった!


居なく成るなんてそんな……」


「……駄目ですっ!


……主人公さんはマリアさんの苦労を理解してないですし

マリアさんだって主人公さんの優しさを知らないじゃないですか! 」


「主人公さんの優しさって……


……メルちゃんにどう見えてるのかは知らないですけど

主人公さんは私には優しくないじゃないですか! 」


「マリアさん……やっぱり解って無いですっ!


……マリアさんがタウロスと戦ってた時

私やマリアさんの事を気にけ過ぎて

一瞬、主人公さんの動きに遅れが出てた事……マリアさん知ってましたか? 」


「えっ……そうなんですか? 主人公さん」


「そ、そりゃ大切な仲間だから心配は……するけど……」


「そもそも……主人公さんだって分かってないですっ!

マリアさんから、昨日の戦いの後……実は怪我してたのを

“主人公さんにバレない様に”って、秘密で治す様頼まれました!


“余裕で討伐した様に見えてないと私達に気を使うから”って……


……マリアさんだって主人公さんの為に気を使ってる事

ちゃんと理解してますか? 」


「何だって?! ……マリア、それは本当か? 」


「そ、それは……装備の借金も大変だから

少しでも稼げた方が良いと思って……」


「ごめん、俺……何も分かって無かった。


俺さえ強けりゃ二人を守れるって……自惚うぬぼれてたかもしれない。


マリア……本当にごめん」


「い、いえそんな……私だってちゃんと

主人公さんの事見てませんでしたし、その私こそ……ごめんなさい」


「それで良いんですっ!

これからは辛い時は辛いってお互いに言い合う事にしますっ!


って、はぅぅ……」


「メ、メルちゃん!? ……」


<――俺達二人を仲直りさせたと同時に

メルちゃんはその場にへたり込んだ。


いつも優しいメルちゃんが珍しく上げた怒り声

俺の所為で、メルちゃんに慣れない事をさせてしまった――>


「大丈夫?! 何処か苦しいんじゃ……」


「だ、大丈夫です……ちょっと張り切り過ぎちゃっただけですから……」


<――直後、騒動を聞きつけたミリアさんは

慌てて部屋へと現れ――>


「……朝っぱらからどうしたんだい大声出して?!


って……大丈夫かい? 」


「全部俺の所為です……すみませんでした! 」


「いえ! 私の所為で……」


「……何だか分からないが

仲良くしなよ? ……朝ごはん用意してるから食べてシャキっとしな! 」


「は、はいっ! ……皆、行こうか……」


………


……



「……しかし。


メルちゃんがあんなに俺達の事を見てくれてたとは

メルちゃんってやっぱり凄いよ……仲間で居てくれてありがとね」


「そうですねぇ……メルちゃん、これからもよろしくお願いしますね! 」


「そっ、そんな……私はただ、お二人の事が大好きなだけで……」


「メルちゃん……」


<――と、俺達がメルちゃんの優しさと愛情に感動し

共に“言葉を失って居た”時――>


………


……



「お~っお前達っ! ……今日も討伐にいくぞ! 」


「ブーーーッ! ……ゲホッゲホッ! 」


「あわわっ?! ……主人公さん汚いですっ!!


……って、おはようございますオルガさんっ! 」


「ゲホゲホッ……ごめん……って言うかオルガさん。


……“昨日限定”じゃなかったんですか? 」


「……うむ、おはよう!


いや、限定とは言ったが……楽しかったからな!

しばらくの間は“限定パーティ”で動くのも良いだろう。


それと……今日は、安全の為に妻も連れてきたぞ! 」


「メルちゃん元気~? ……あら?

ちゃんとネックレスしてくれてるのね! 嬉しいわ♪ 」


「あっガーベラさん! ……はいっ!

このネックレスのお陰で沢山治癒出来てますっ! 」


「役に立ってるのね~嬉しいっ! ……あそうそう、主人公さん。


貴方、ギガタウロスを討伐したんですって? 」


「ええ、一応……でもオルガさんと皆のお陰って言うか……」


「でも一撃で倒したと聞いたわよ?

今、私達の村でもその話で持ち切りなのよ」


「そ、それは光栄なんですけど……実はマリアとメルちゃんも凄くて

タウロスだけじゃなくて、メガタウロスも二人で倒してましたし

二人だって強いんですよ? ……だから、俺は二人のお陰だと思ってます」


<――と、二人を褒めて居た俺の横で

マリアは――>


「でも、いっぱいいっぱいでしたけどね……


……正直な所、メルちゃんの回復があってこそですね! 」


<――と、メルちゃんの事を褒め始め

そして――>


「わ、私はお二人に必死でついて行くだけですし……


……私こそ、お二人のお陰があってこそですっ! 」


<――と俺達の事を褒めてくれたメルちゃん。


……だが正直な所

俺達が妙に余所余所よそよそしく互いを褒めている様子に

事情を知らないガーベラさんは――>


「まぁっ! ……仲がいいわね~♪

昨日の等級がAだったそうだし、今日はSにでも行こうかしら! 」


<――と言い出してしまった。


だが“皆の安全を考えB級を選びたい”と伝えこれを断った俺。


すると――>


「でも、ガーベラさんも来て下さる訳ですから

其処まで私達に気を使わなくても……」


<――と気を遣い始めたマリアの姿に

オルガさんは一言――>


「成程……お主達、喧嘩したな? 」


<――と言った>


………


……



「えっ?! ……何で分かったんですか!? 」


「……お主達の極端さは見ていて分かりやすい」


「そうね……大方おおかたマリアさんと主人公さんが喧嘩して

メルちゃんは二人に対して苦言をていした……って所かしら? 」


「ガーベラさんまで……盗み聞きしてたレベルで正解ですよ。


でも……お恥ずかしい限りです」


「まぁ私達はB級でも良いわよ? 」


「……お気を使わせてしまい申し訳有りません」


「良いの良いの! ……でも、その代わり

二、三個受けてみない? 」


「えっ……そんな事出来るんですか? 」


「あら? ……貴方アナタ、教えてなかったの? 」


「い、いやその……主人公の腕の良さならだな……」


「それでもエルフの長ですか! ……全く! 」


(やばい、夫婦喧嘩が始まり掛けてる……止めなきゃ! )


………


……



「い、いやその自分達の腕とか戦い方とか……色々勉強になったんで!

なっ? マリア! 」


「そ、そうですよ! ……そんなに悪い戦いじゃなかったですから! 」

(わ、私に振らないでくださいよ主人公さん! )


「そ……それよりも二、三個同時に受けるってどう言う事なんですか? 」

(此処は話題を戻しておこう……)


「い、命拾いした……」(主人公、マリア……ナイスフォローだ! )


「……貴方アナタ? 」


「い、いや! ……なんでもないっ! 」


………


……



「……例えばスライム討伐を請け負う場合には

そこまでの移動の間に薬草の採集場所があるなら

それも取って帰る方が効率的でしょう? 」


「ああ……成程! 」


「B級の依頼ならそんな事も可能なのが多いのよ

だから二、三個受けてみるか聞いたのだけれど……どうかしら? 」


「その案……賛成です! 」


<――そう言ったと同時に

オルガさんは“妙なテンション”で――>


「……さ、流石は俺の妻だ!

こんな妻を嫁に貰ったなんて、し……幸せだなぁ!

で……では、さっそくギルドに行こうか! 」


<――と、相変わらず尻に敷かれている姿を披露したのだった。


ともあれ……暫くの後、ガーベラさんの案を基本に

俺達は掲示板に並ぶ依頼を見比べていた。


今まで金額だけを見て居た俺からすれば盲点の様なやり方だったが

ガーベラさん曰く、組み合わせ次第では

A級を一つ達成するより稼げる事も多いそうだ。


有難い……これなら安全に依頼を受けられる。


そう考えながら説明を聞いていたら――>


………


……



「だとしたら……この依頼とこの依頼

……あとこの依頼を組み合わせてみたらどうですかね? 」


「……あら、メルちゃん見る目あるわね!

これならルートも適性だし……これで行きましょう!


流石はメルちゃん……偉いわね~♪ 」


「えへへ……じゃあ受付しましょ~っ! 」


<――と、ガーベラさんに褒められたのが嬉しかったのだろう。


メルちゃんが凄まじく上機嫌に成ったのが俺にでも分かった。


何だか俺まで嬉しい……だが。


受付に着いた俺達を確認するなり、受付嬢さんは

俺達に何だか良く分からない謎の依頼を受ける様頼んで来た。


そして……この直後、受付嬢さんが差し出した依頼書には

等級に全く見合わぬ高額報酬が記載されていた。


明らかに……怪しい

良くある“騙し討ち”かと思える程の高額報酬だ。


せっかく安全に稼ぐ方法を教わったと言うのに

俺がギガタウロスを倒した事で

尾ひれの付いた噂が独り歩きでもしたのだろうか?


……などと、マイナス思考をフルに発揮させた俺は

この依頼を断るつもりで居た。


だが――>


………


……



「あら? ……この依頼良いわね!

荷馬車代ギルド持ちの護衛任務……距離も然程では無いし

他の依頼をこなしながら行ける道順だけれど……


……それにしても、妙に報酬が高いわね? 」


「ええ、護衛対象はガーベラ様なら良くご存知な……」


「あぁ、あの“変わり者大臣”ね……納得したわ」


「何です?……その“変わり者大臣”って」


「ええ……この国に一人

政治家にしては珍しく薬草採集が趣味……と言うか……」


「マニアと言うか、なぁ……ガーベラよ」


「え、ええ……」


<――この時

オルガさんとガーベラさんは奥歯に物の挟まった様な微妙な反応を見せた。


しかし、聞く限りでは悪くない依頼の様だったし――>


「そもそも、お二人が居るとなれば本人も喜ぶかと思いますので! 」


<――受付嬢さんがオルガさん達にそう伝えた位だから

俺は完全に安心していた。


……だが、当の本人達が乗り気とは思えない様子だった。


何と言うか、二人から

“苦手意識”の様な物を感じはしたが――>


………


……



「そう言われても苦手なんだがな、なんというか……疲れる」


「悪い子じゃないんだけどマニア過ぎるのよね……まぁ、いいわ

これはボーナスみたいな依頼だから今回は特別に受けておきましょう。


護衛対象は少しだけ“大変な人”だけれど……構わないかしら? 」


<――そうにごしつつ俺達に許可を取ってくれたガーベラさん。


直後、その優しさを無下にしない為――>


「荷馬車があるなら助かりますし、その……


……重たい荷物も載せられますからきっと助かりますッ! 」


<――と、出来る限り元気にこたえたら

俺の気遣いに気付いたのか、ほんの少しだけ微笑んだガーベラさん。


そして――>


「そう、なら……この依頼もお願いね」


「かしこまりました……では、合計四つの依頼をお願い申し上げます。


それでは皆様……お気をつけて! 」


<――受付を済ませ、ギルドの建物を後にした俺達。


すると……既に、ギルドの入り口に

豪華絢爛な装飾の施された通常よりもかなり大きな荷馬車が到着していた。


何だか、信じられない程乗り心地が良さそうだ――>


………


……



「でかいし豪華な荷馬車ですね、これ。


……普通に借りたらいくら掛かるんだろ」


「恐らく……金貨五〇枚は取られるでしょうね」


「凄い金額だ……やっぱり大臣が乗るからですかね? 」


「そう言う事ね……さて、そろそろ“本人”が来る頃かしら? 」


<――ガーベラさんがそう言ったと同時に

ギルドの建物から俺達目掛けて物凄い勢いで走り寄ってくる

見た所、一五歳位の少女が一人……いや。


まさか“この子”じゃないよな? ――>


………


……



「あ~っ!……ガーベラさ~ん! オルガさ~ん!


あれぇ?……他にも沢山居るじゃんか~

こ~れは、沢山採集出来るかもぉ~っ? 」


「えっと……もしかして、大臣さんですか? 」


「ん? ……そだよ~?

君は確か~主人公くんだっけ? ラウドさんから聞いてるよ~!

すっごい強いんだってね~! でも~……


……“国に仕えるのが嫌”とか我儘ワガママだねぃ?

ま、私は別に構わないんだけどねぇ~っ! 」


「あ……あの、何とお呼びすれば? 」


「あ~そぅそぅ忘れてた! ~


……私の名前はエリシア!

この世界にある全ての薬草を集めるのが、私の目標なのぉ~だっ! 」


<――そう言うと

エリシアと名乗ったこの子は、俺に対し決めポーズを取った。


うん、確かに“大変な人”だな……などと思っていると

ガーベラさんは俺に対し――>


………


……



「信じられないかもしれないけれど

これでも一応、この子……魔導大臣なのよ? 」


「えっ?! と言う事は……」


「そう、ギルドのトップでも有ると言う事よ」


「えっ……この子がですか?

見た所一五歳位ですよね? ……」


<――そうガーベラさんと話し込んでいたその時

段々と不機嫌な表情に成り始めた魔導大臣エリシアさんは――>


「むぅ~……“この子”とは何だ失礼なぁ~っ!


まぁ? 若く見てくれるのは嬉しいけどぉ~?

これでも攻撃術師マジシャンとしてはハイクラスなんだよ?


まぁ? トライスターな主人公さんからしたらぁ~?

大した存在じゃないんでしょうけどぉ~? 」


「うっ……し、失礼しました。


で、本日のご希望は……どの様な? 」(確かにこれは調子が狂う……)


「それはもちろんっ!


“薬草”……なんだけど~ぉ!

今の時期はねぇ~……なんとぉっ!! 」


「あー……これが長いのよね……」


<――いつ何時なんどきりんとしているガーベラさんが

珍しく項垂れながらそう言った。


そして……この後

俺達も“そうなる理由”を嫌と言う程知る事に成るのだった――>


………


……



「なんとなんとぉ~っ! ……この時期だけ取れる七色草レインボーグラス


これがレアなのよ~っ! この草を煎じた煮汁を噴霧するとね! ……なんと!


……なんとっ!! 」


「何が起きるんです? 」


「……虹がどこでも出せるのだっ! 」


「はい? ……えっ? 」


「ねぇ、凄くない?! ……凄いよねぇ~!

だ・か・ら! ……早く取りに行くよぉっ!


さぁさぁ! ……早く乗って乗って! 」


<――この“ぶっ飛んだ”大臣にうながされ俺達は荷馬車へと乗り込んだ。


と、同時に……気の所為かもしれないが

オルガさんとガーベラさんの肩が、わずかに沈んだ様に見えた――>


………


……



「……しかし今日はいい天気だねぇ~!

絶好の採集日和だ~っ! いやっほぉぉぃ! 」


「そ、そうですね……ってあの……俺達、依頼を他にも受けてまして

それもやりながらの護衛任務なんですけど……


……本当に構わないんですか? 」


「ん? ……いいよ~?

本来なら護衛なんて必要ないんだけどね~?

秘書官がうるさいから仕方無く~っ?


……で! どうせなら仲良くしてくれるガーベラさんと

オルガさんが居てくれたら楽しいし~!

主人公くん御一行も何だか仲良く出来そうで私は楽しいよ~ぉ?


あっ! ……どうせなら愛称で呼んでも良いかな?!


“主人公っち”とかどうだろ?! 」


「え、ええ……お好きな様に呼んでくださって大丈夫ですので……」

(……マシンガントークってこう言う事を言うのだろうか)


《――主人公は“大人の対応”を会得した。


“疲労度”が少し上がった――》


………


……



「……あ、私の事ですけど

“マリアっち”って呼ぶのだけは止めてくださいね?

何か凄い“歌いそう”なネーミングなので」


「え~……じゃあマリアちゃんって呼ぶよぉ~?

……メルちゃんもメルちゃんって呼ぶ~っ! 」


「は、はぃっ! ……ってあのっ……

そういえば、エリシアさんって攻撃術師マジシャンさんなんですよね? 」


「そだよ~?? ……そうは見えないかな~メルちゃん? 」


「い、いえその……杖的な物が見当たらないので……」


「あぁ~あれね! ……私のは重いから持って来て無いよぉ~? 」


「えっ?! ……でもそれだと何かあった時に……」


大丈夫だいじょぶ大丈夫だいじょぶ~ぅ!

ガーベラさんとオルガさんが居てくれたらよゆーよゆー!

そ・れ・に……


“大地は裏切らない”んだよ~? メルちゃん! 」


「そ、そうなんですか……」


《――メルも“大人の対応”を会得した


“疲労度”少しが上がった――》


………


……



<――暫くの後

俺達は第一の依頼目標地点へとたどり着いた。


依頼内容は青柳キノコの採集、目標個数は五〇個

量に対して報酬の増減あり……と言った感じらしい。


だが、ガーベラさんが依頼内容の説明を終えるや否や

エリシアさんは荷馬車を飛び降り、青柳キノコの採集をし始めた。


の、だが――>


「じゃあさっそく……ってエリシアさん?! 」


「全部私に任せろぉぉぉ~! ……エイッ!


……そりゃそりゃそりゃぁぁぁぁぁぁっ! 」


<――とても人間技とは思えない速度で青柳キノコを採集し

荷馬車の横に恐ろしい勢いで青柳キノコを積み上げていったエリシアさん。


あまりの光景に完全に引いていた俺達……だが

オルガさんとガーベラさんは見慣れているのか

手伝おうとした俺達に対し――>


………


……



「座ってるだけで良いと思うわよ? 」


「そうだな……それに毎回こんな調子だ、気にしていたら疲れるぞ」


「そうなんですか……にしても凄い速さ……って。


あれ、もう一〇〇個位ありませんか? 」


「本当ね……もうその辺でいいわ!

……次の場所に行くわよエリシア! 」


「……え~っ? もっと採集したかったのに~ぃ。


ま、いっか! ……あとは任せたっ! 」


<――うず高く積まれた青柳キノコ。


どうやら荷馬車に乗せる役目は俺にたくされた様だ。


だが――>


「よい……しょっ!


……って、これ重ぉっ?! 」


「えっとねぇ~……気をつけないと腰が壊れるよぉ??

青柳キノコは一個大体約一キロはあるからね~っ! 」


「なっ!? ……鉄か何かで出来てるんですか?!

……けど、ただの採集依頼で何故B級なのか理解しましたよ。


って、それはそうと……


……流石に一人だときついんで手伝って貰えます?


採集の時“これ”を軽々と投げてたエリシアさんなら……」


「よぉ~しっ! この調子で早く次の採集場所に行くぞぉ~っ♪ 」


「ああ、無視ですかそうですか……」


<――ともあれ。


暫くの後、二箇所目の依頼場所へと到着した俺達。


次の依頼内容は


“モグラどんぐりを五個採取”


備考:毒系の魔物につき注意


……と言う物だったが


この採集対象にエリシアさんは――>


………


……



「あれかぁ~……あれはちょ~っとだけ手間なんだよねぇ~」


「……と言うと? 」


「えっとねぇ~……“モグラどんぐり”って言うだけあって

生きてて動くんだけど~……尖ったところで刺されると

治癒ヒール程度では治らない猛毒を食らうから

眠らせて、頭のヘタを取って……動かなくさせないと駄目なの~っ!

だから……此処はガーベラさんの出番だねぇ~っ! 」


「……睡眠魔導で良いのね? 」


「うんっ! ……けど、襲い掛かって来る可能性があるから

主人公っち~……雷魔導使えるかなぁ~? 」


「一応使えますが……俺は何をすれば? 」


<――エリシアさんいわ

指し示した場所に雷魔導を放って欲しいらしい。


これを了承すると、エリシアさんは直ぐに三箇所を指し示し

少し慌てつつもその通りに雷魔導を放った俺。


すると……電撃が直撃した場所から

感電状態のモグラどんぐりが顔を出した。


意外と可愛い見た目に罪悪感を覚えた俺だったが

すかさずガーベラさんが睡眠の魔導を放ち――>


「睡眠の魔導……眠れ永久に! 」


<――モグラどんぐりは完全睡眠状態となった。


一方、エリシアさんはその隙を見計らい

迅速に確実に、採集用のナイフでモグラどんぐりのヘタを取り外すと

毒のある尻尾の棘にそのヘタを被せた。


……後で聞いた話だが、ガーベラさんの使用した

強力な睡眠の魔導ですら数秒で目覚める程

状態異常耐性の強い魔物なのだそうだ。


それはつまり……もし仮にエリシアさんが居なければ

誰かが大怪我をしていた可能性もあるって事だ。


……話し方が“特徴的過ぎて”気が付かなかったが

彼女エリシアが凄い人なのをこの時知った。


ともあれ……残るモグラどんぐりも危なげなく採集したエリシアさんは

次の最終目標をガーベラさんにたずねた。


だが、ガーベラさんは――>


「次は面倒な魔物の討伐依頼だから……あなたは隠れてて」


<――護衛対象であるエリシアさんの危険を考えてか

少し冷たい雰囲気をまといつつそう言った。


だが――>


「別に……私が倒してもいいよ? 」


<――さっきまで天真爛漫だったエリシアさんは

一瞬だが怖い位に真剣な表情を浮かべ、静かにそう言った。


だが、当然杖すら持ってきて居ないエリシアさんに対し――>


「あれ? でも杖を置いて来たって……」


<――と、たずねたメルちゃんに対し

エリシアさんは再び――>


大丈夫だいじょぶ大丈夫だいじょぶぅ~! 」


<――と答えたエリシアさん。


“兎に角……移動するわよ! ”


と、少し語気を強めたガーベラさんの号令に急いで荷馬車へと戻った俺達は

この後、荷馬車に揺られ……辿り着いた最後の目的地で依頼内容を確認した。


その依頼内容は……“ウッドウルフ”を五体倒し

その牙を回収する事だそうなのだが……


……さっきまでのほんわかムードは何処へやら

オルガさんとガーベラさんの顔つきが明らかに変わって居た。


言わずとも、危険度が高い事は明らかで――>


………


……



「少し面倒な敵だけど……この人数なら何とかなるわね」


<――少しピリついた雰囲気でそう言ったガーベラさんに対し


“どう面倒なんですか? ”


たずねた俺……すると、ガーベラさんの代わりに

エリシアさんが答えてくれた――>


「えっと~……単純に言えば木で出来た狼だよぉ~?

ただ、土の上にいる限り何度でも回復するしぃ~

動きが早いから止めないと辛いかもねぇ~……油断してたら危ないよん♪ 」


「そうなんですね……って噂をすればあれ!

木で出来た狼……本当だ、あれがウッドウルフでは?! 」


「そうだけど~一〇匹以上居るよ~っ。


取り敢えず~……主人公っちは減衰装備を一個外して

動きを止める技を使ってみてね~♪ 」


<――直後、エリシアさんの指示通り

ウッドウルフの群れに足止めの魔導を放った俺。


だが、二匹取り逃がしてしまい……あろう事か

この二匹がエリシアさんを狙い突進した……にも関わらず

エリシアさんは避けようとせず、静かに目を閉じ――>


………


……



「大地よ、微睡まどろめ……狂泥之沼マッドスワンプ


<――何が起きたのだろう?


エリシアさんが呪文を唱えた瞬間、地面が沼の様に変わった

だが、杖も無しに此程これほど強力な魔導技を放てる理由が分からない――>


「そ、そんな……杖も無しで……」


「主人公っち? 驚かなくていいからぁ~早く討伐討伐~ぅ!

火環ファイアサークル辺りを使えば牙だけが残るよ~ん♪ 」


「は、はいっ!!!……」


<――直後、何とか無事に討伐は出来た……だが

エリシアさんが使用した技は一体何だったのだろう?


少なくとも、そうたずねたい気持ちが顔に出ていたのだろう。


この後……エリシアさんから


“主人公っちが不思議に思ってる事、当てても良~ぃ? ”


と言われ、素直にうなずいた瞬間――>


………


……



「杖も持たずにどうやって魔導を?! ……この美少女は天才なのか?!


って思ってるでしょ~っ♪ 」


<――と続けられたのだった。


美少女は否定しないが、若干イラッとした――>


「い、いえ……あの……」


「ノリが悪いなぁ~……一つ質問っ!

主人公っちは“固有魔導”って知ってる~? 」


「いえ、初耳ですが……」


「……なら教えてあげるっ!


今私が使ったのも固有魔導って言う物なんだけどぉ~

固有魔導は装備なんて無くてもフルパワーで発動出来る

唯一無二の魔導なのだよ~っ! ……えっへんっ♪ 」


「そ、そんな技が……」


「そうだよぉ? ……で!

私の固有魔導は、今見た通りの奴だよぉ~!

頑張れば主人公っちもメルちゃんも

いつか手に入れる事が出来ると思うよぉ~? 」


「……どんなのが手に入るかってわかるものなんですか? 」


「えっとねぇ~……心から好きな物や、自らの出自しゅつじる物

もしくは、心から望む事に関する事象が固有魔導になる事が多いかなぁ?


回数制限のある物とか、乱発出来る物とか~


……その人によって千差万別なの~っ! 」


「成程、精進します……」


「す、好きな物?! ……はうぅぅぅぅ……」


「ん? ……何でメルちゃんは顔が赤くなってるのかな~っ?

って! そんな事より“あれッ!! ”……」


<――瞬間

大慌てである場所を指差したエリシアさん。


彼女がかもし出した“ただ成らぬ雰囲気に”緊張が走った――>


………


……



七色草レインボーグラス……あったぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!! 」


「な、何だ……って。


敵かと思ったじゃないですか!!! テンション考えて下さいよもう!!

って、聞いてないし……」


「だから私達は言ったでしょ? ……“疲れる”って」


<――ともあれ。


こうして日が落ちるまでの間

エリシアさんは全力で採集を続けたのだった。


そして……帰り道

一人興奮状態のエリシアさんと、御者を含めた俺達全員の

ぐったりした姿の対比たいひ

余りにもこくだったのは言うまでもないだろう――>


………


……



「い~っぱい採集出来たぁぁぁっ! ……いやっほぉぉぉぉっ! 」


===第九話・終===

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