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第八話「楽な装備で、楽ではないハンター生活を」

<――減衰装備の費用をラウドさんが持ってくれたのは凄く助かった。


だが、俺の“専用装備”の所為で

俺達のパーティは稼ぐ前から大赤字におちいって居た――>


………


……



「……八〇〇万金貨の借金とか洒落にならん。


ラウドさんもこんなに高いなら教えておいてくれたら良いのに……」


「で、でもっ……それだけ強い装備って事ですから

地道に依頼をこなしていけばいつか完済できますよ! 」


<――愚痴をこぼす俺をそうフォローしてくれたメルちゃん。


そんなメルちゃんとは対照的に――>


「……メルちゃんの意見に賛成したいのは山々ですけど

さっきギルドの掲示板で見てみたら

スライムの関連依頼が暫く受けられなくなってましたよ?

もしかしてですけど、他の依頼も“魔王軍”の餌食に成ったりして? 」


「お前……何時までそれを言うつもりだマリア……」


「でっ、でもでもっ!


……減衰装備も手に入りましたし!

力の制御も出来る様になった訳ですから、少しづつ依頼をクリアしていきましょ?


……ねっ? 」


「ありがとね……今はメルちゃんの優しさだけが唯一の安らぎだよ」


「いえ! きっと大丈夫です……主人公さんなら! 」


「ありがとう、少し元気が出たよ……っと。


そう言う事なら取り敢えずギルドにでも行って依頼を見てみようか! 」


<――直後、ギルドへと向かった俺達は

ギルドの掲示板を眺めていた。


掲示板には難易度別に様々な討伐依頼が掲載されているが……


……マリアの言った通り

スライム関連の依頼が全て受けられなく成っていた――>


「うーん……どれが良いんだろう? 」


<――当然だが、報酬が大きい程危険で

安全性を優先すればすずめの涙程の報酬しか稼げない。


悩みに悩み、うなっていた俺……だがそんな時

俺達の元にオルガさんが現れた。


どうやらオルガさんも依頼を受けに来た様だが……


……俺達に比べれば慣れているだろうと考え、俺は思い切って

オルガさんに対し俺達に向いている依頼が無いかをたずねる事にした。


すると――>


………


……



「……御主の実力だけならば討伐出来る魔物も多いだろう。


だが、パーティで動くと言う事は全体を見る必要が有ると言う事だ。


金額だけを見ている様では失敗し

味方を失う程の憂き目にあう可能性も充分にある……用心する様にな」


「それは分かってるんですけど……でも俺の装備の所為で

今借金が八〇〇万金貨あるので、その中でも出来る限り早く稼……」


「……待て主人公。


八〇〇万金貨……だと?


……何がどうなったらそうなるんだぁぁぁぁっ!? 」


<――瞬間

ギルド中に響き渡る程の大声をあげたオルガさん。


直後、ギルドに居る人達の視線が全て俺達に注がれた――>


「オルガさん声が大きいっ! ……とにかく落ち着いてください! 」


「落ち着けと言うが……大丈夫なのか?

専用装備が高いのは知って居たが……まさかそこまでとは」


「……俺もです。


ただ、俺よりも二人に迷惑かけ通しなのが申し訳なくて……」


<――と、申し訳無さを感じつつ

マリアやメルちゃんの方に目を向けた瞬間――>


「はい! ……主人公さんの武器の所為で

私達は貧乏生活まっしぐらって感じですよね~っ! メルちゃん? 」


「へっ?! あ、いやそのっ……で、でも楽しいですからっ!! 」


<――と、例によってマリアにイジられ

メルちゃんにフォローされた俺……だが。


そんな二人の態度を見ていたオルガさんは

何故か妙に“感動した”様子で――>


「お前達……分かった。


私が限定的にパーティに加わろうではないか!

そうすれば、高額依頼も達成出来る筈だ! 」


「えっ……良いんですか?! 」


「他ならぬ御主達の窮地きゅうち……是非とも救わせてくれ。


それに、御主達の宴で見せた楽しそうな姿を思い出した

私も久しぶりにパーティを組んでみたくなったのだよ。


……だが、私が参加するからには最低でもA級の依頼を受け

御主達の生活を少しでも楽にしてやるから

御主達も気を引き締めるのだぞ? 」


「A級? ……あぁ! これそう言う意味だったのか! 」


<――そう声を上げた瞬間

マリアから――>


「えっ? ……主人公さんもしかして

依頼書の読み方が分かって無かったんですか? 」


<――と言われ


“正直金額しか見てませんでした……はい”


と答えた所――>


「引きます、物理適性だけじゃ無くて知能も……」


「ぐっ……悪かったな!! 」


「まぁまぁ……半分は冗談ですから!

……とは言え、A級の依頼って全部大変そうですよね? 」


「いや……これなら行けるだろう。


回避に専念すればこの魔物はぎょやすい」


<――と、オルガさんは慣れた様子でそう言った。


だが、メルちゃんはとても慌てた様子で依頼の詳細欄を指差し――>


「で、でも! ……メガタウロス三頭ですよ?! 」


「……安心しろメル、こう見えても腕には覚えがある。


まして危ない状況になる様な事があれば

主人公が減衰装備を外し……って主人公?!


……御主、何故減衰装備を四つも着けている?! 」


「その、何か作る時に四つ出来ちゃって……」


「全く……御主は只者ではないな

だが、それならば戦略に幅が出ると言う物よ。


……敵への苦戦具合に合わせ

外す個数を考えれば魔導力の調節も出来る筈であろう? 」


「成程……そう言う使い方も出来ますね!

じゃあ取り敢えずその依頼を受け……」


「……あっ!

この依頼、材料で報酬がプラスされるみたいですよ? 」


<――俺を遮る様にそう言ってマリアが指差した依頼書の備考欄。


其処には――


メガタウロスの角:一つにつき金貨一〇枚

メガタウロスの心臓:一つにつき金貨二〇枚


――と記載されていた。


そして、マリアがそれを指摘した瞬間

オルガさんは急いで依頼を受けに行った。


恐らくは余程“美味しい条件”だったのだろう。


……ともあれ、節約のため馬車は雇わず

依頼場所まで徒歩で向かう事に成った俺達。


しかし、俺の“物理適性の無さ”がわざわいした――>


………


……



「結構遠いな……そこそこ歩いたから足がもう痛い」


「治癒魔導で直しますね……治癒ヒールっ! ……どうですか? 」


「凄い、楽になったよ。


てか、治癒魔導にこんな使い方があるとは……ありがとうメルちゃん! 」


<――とお礼を言った瞬間

少しだけ誇らしげな顔を見せたメルちゃん。


だがその一方で、マリアは俺に対し――>


「……主人公さんって結構軟弱ですよね~

私なんて斧と甲冑ですよ? ……ま、全然軽いですけどね」


<――汗だくで今にも倒れそうな俺とは対照的に

マリアは斧を振り回しながらそう言った。


そして、そんな姿を見るなり

オルガさんはマリアを称えるかの様に――>


「確かにな……主人公よ!

マリアのバーバリアンの様な姿を少しは見習うべきだ! 」


<――そう褒め称えた。


だが――>


「それ、褒められてる気がしないです……」


<――マリアは少し落ち込んだ様な表情を浮かべ

斧を大人しく構え直したのだった。


ともあれ、この暫く後

俺達は、タウロス系の魔物が生息する地域へと足を踏み入れたのだが――>


………


……



「もしかしてあれがメガタウロスですかね? にしても大きいな……」


<――そう圧倒されていた俺に対し

オルガさんは冷静な口調で――>


「いや、あれは普通のタウロスだな……討伐対象はあれの五倍程ある」


「えっ……それってもう化け物の類では? 」


「シッ!! ……その“化け物”が向こうに居るぞ」


<――そう言ってオルガさんが指し示した方角には

ゆっくりとした足取りの、全高一〇メートルを超える巨体が見えた。


成程、A級ってこう言う事か――>


………


……



「あ、あの……討伐方法は? 」


「……意外かもしれないが正面が奴らの死角だ。


それ故、出来る限り正面から近づけば安全だが

その為には周りのタウロスも鬱陶うっとうしい。


故にタウロス共をマリアに押さえて貰いたいのだが……出来るか? 」


「はい、頑張ります! 」


「よし……ならばメルは念の為マリアの補佐、主人公は私と共に行動だ。


減衰装備は一応そのままでいい、威力の確認をしたいからな。


私が合図したら一つずつ外す事……いいな? 」


「はい……ですが素材を出来るだけ手に入れておきたいので

水魔導の“氷刃”で切り落とすのが良いかと思っているのですが……


……どうですかね? 」


「ほう……良い判断だ主人公。


そうなれば、角と心臓を傷つけず絶命させる必要がある。


少々残虐な攻撃方法に見えるかもしれないが

奴も苦しまない事を考えれば……頭部を切り落とすべきだろう。


その為にも先ずは私がメガタウロスを引きつける。


私が合図をしたら攻撃開始だ……良いな? 」


「はいッ! ……」


………


……



《――タウロスの注意を引き付ける為

主人公の元を離れて居たマリアとメル。


……囮作戦成功の為、少しでも注目を集めんと

凄まじい勢いで斧を振り回しながら走り回って居たマリア。


だが、その様を見たメルは――


“凄い、やっぱり……マリアーバリアンだ”


――そう、小さくつぶやいて居た。


だが、遥か遠くに居た筈のマリアは

そんな小さなつぶやきに反応し――》


「もう! メルちゃん! ……語呂悪い呼び方やめてくださいっ! 」


《――と、文句を言いながらも数体のタウロスを討伐して居た。


そして――》


………


……



「マリア……彼奴あいつ凄いな……」


「うむ……まるでバーバリアンの生まれ変わりの様だ。


さて……此方も準備が整った。


くぞ主人公ッ!! ……憤怒の視線ッ!! 」


<――瞬間


オルガさんの発動した“憤怒の視線”

どうやら、対象の注意をみずからに向ける事が出来るらしい。


直後……それを証明するかの様に

メガタウロスはオルガさんの方に向き直り

凄まじい勢いで突進を繰り出した……だがオルガさんは動かない。


急激に距離を近づく距離……だが、それでもまだ動かない

そうして、限界までき付けんとするオルガさんの額には

冷や汗の様な物が見えた。


俺の腕にも緊張感がはしった――>


………


……



「主人公……今だっ!!! 」


「はいッ!


氷刃ッ!! ――」


………


……



<――直後、俺の放った氷刃は

凄まじい勢いでメガタウロスの首に直撃した。


だが、かすり傷しか与えられず……この直後

オルガさんは叫んだ――>


「一つ外せぇぇぇぇッッ! 」


「は、はいッ!!


氷刃ッ――」


………


……



<――減衰装備を外しての二撃目


俺の放った氷刃は、メガタウロスの首を一刀両断した――>


「ふむ……一つ外してこの威力とは恐ろしい。


この調子であれば日暮れまでには達成出来るだろう……」


「そうですね……ってオルガさん!


……あれっ!! 」


<――俺の指差した場所に居たのは

メガタウロスすらかすむ程の巨大なタウロスだった。


……奴は、うなり声をあげながら、地面をえぐり取るかの様に

猛烈な勢いで此方に向かって来て居て――>


………


……



「不味い! 奴はギガタウロス!! ……この場所の“ヌシ”だっ! 」


「だとしても、減衰装備もう一つ外して氷刃を放てば……」


「馬鹿な! ……全て外して良い位の敵だ!

……死にたくなければ全力を出せッ!! 」


<――冷静なオルガさんの慌てっぷりに

只事では無いと判断し、全ての減衰装備を外そうとした俺


だが、焦りからか思う様に外れず……この上不味い事に

時間稼ぎの為、繰り出したオルガさんの分どの視線が

何故だが“ヌシ”には全くの意味を為さなかった。


……唐突に訪れた危機的状況


だが、そんな俺達を守るかのごと

何処からとも無く飛来した黒く禍々しい槍の姿をした


“何か”


直後……“それ”は“ヌシ”の胴体に突き刺さり

“ヌシ”の動きを完全に止めた――>


………


……



「と、止まってる?! ……一体誰が? 」


「ん? ……彼処あそこだっ!! 」


<――オルガさんの指差した方角

その遥か遠くにたたず頭巾フードを被った謎の存在――>


「ふむ……まだ甘い」


<――直後、何処かへと消え去った謎の存在。


俺達の心には釈然としない何かが残った。


だが――>


………


……



「主人公……他を捨ててでも“ヌシ”の材料だけは必ず持ち帰るぞ」


「それは構いませんけど……角と心臓ですよね? 」


「……それと目、尾の芯、ひずめの付け根の五箇所だ。


どれも高級な装備や薬を作る際の材料だからな

高く買い取ってくれる店が多い。


……ある意味、運が良かった様だ。


まぁ“黒槍”の存在は少し気掛きがかりだがな……」


「ですね……でも助けてくれたから悪い奴では無いのかも? 」


「……どうだろうな。


だが、一先はあと二頭のメガタウロスを討伐せねば成らん

何処かにメガタウロスは……?!


いかんっ!! ……マリアに突進しているぞ!! 」


「!? ……マリア、危ないっ!!! 」


………


……



「え? ……おわっ!?


何ですかもぉぉっ!!! ……うおりゃあぁぁぁっ!!!


“十連乱撃ッ!! ”――」


《――瞬間


慌てたマリアの繰り出した咄嗟とっさの乱撃にって

メガタウロスはいとも簡単に討伐されてしまったのだった――》


………


……



「ま、マジかマリア……信じられない馬鹿力だ」


「うむ……やはりマリアはバーバリアンの生まれ変わりの様だ」


<――マリアに集まって居た俺達の視線。


勿論、全員引いて居た――>


………


……



「えっ? ……私何かおかしい事しました? 」


「いや、自覚が無いのが怖いよ」


<――と

マリアの異次元な強さを目の当たりにしてかなり引いていた俺達だが

その一方で、オルガさんは――>


「ふむ……それ程の腕が有るのならば

最後の一体はマリアに任せるのが良いだろう。


マリア……あれを倒せるか? 」


<――と、マリア単独でのメガタウロス討伐を指示した。


直後、二つ返事でメガタウロスの元へと走り去っていったマリアは

先程よりも更に余裕で討伐し……俺達はより一層


“ドン引き”した――>


………


……



「みなさ~んっ! ……やりましたよぉぉぉ! 」


「お……おう、ナイスだマリア」

(うん……マリアを怒らせるのだけはやめておこう)


「なんで皆さん引いてるんですか?

ひょっとして……私、やっぱり何か変な事を!? 」


「い、いや……マリアは素敵だよ」


<――そう

俺が言うと――


“……そ、そうだな、マリアは素敵だな”


――と、妙に緊張したオルガさんが

そう言い――


“さ、さぁ~皆さん! 素材採集しないとですよーっ! ”


――と、メルちゃんまでもが

余所余所よそよそしい態度を取った事で――>


………


……



「やっぱり皆さん何かおかしいですよ~! ……もぉぉっ! 」


<――いまいち釈然としないマリアは少しねたのだった。


ともあれ……全ての採集が終わり

材料と共に転移魔導でギルドへと戻った俺達は

討伐報酬分を“金貨四三〇枚”……そして。


受付嬢さんいわく……俺、マリア、メルの三人に付いた

“初達成報酬”が一人あたり“五〇枚”加算されるとの事だったので

晴れて俺達は合わせて“金貨五八〇枚”を受け取る事が出来た。


だが、そんな中オルガさんは――>


「私は端数で構わん……残りは皆で分けると良い」


「えっ? ……そんなにこっちで貰っても良いんですか? 」


「構わん……まだ“ヌシ”の素材があるのだから気にするな」


「あれ? そう言えば“あれ”はギルドには納品しませんでしたね? 」


「うむ……ギルドでは買取が低いのだ。


心臓だけは薬屋に持っていく必要があるが

後の素材は全て武具店が一番高値で取ってくれる筈だ……」


「ほぇ~……詳しいんですねオルガさん」


「族長としてエルフ達を守るには、少しでも稼がねばならんのでな」


「成程……けどそれなら尚更八〇枚程度では申し訳ないですよ! 」


「……ならばギガタウロスの素材の儲けは半分ずつにするか?


言って置くが……金額は相当大きいぞ? 」


「はい! ……その方が落ち着きます! 」


「ふむ……真っ直ぐな男よ!


……よし! では少しでも高く買い取って貰う為

新鮮な内に急いで売りに行くとしよう! 」


「はいっ! 」


<――直後、オルガさんに連れられ薬屋に到着した俺達。


店の扉を開ける否や薬師の店主は大興奮していた。


……一方、オルガさんは

その姿を見るなりニヤリと笑って、慣れた様子で金額の交渉を始めた。


だが……二人は何故か

金額では無く“何個分”と話して居て――>


………


……



らば……二〇個分が妥当か」


「毎度上手い所を突いてきますね~……分かりました。


今回のお品は二〇個分で……」


「あの~……一〇個とか二〇個とか何の話ですか? 」


「ん? ……メガタウロスの心臓の二〇個分という事だが? 」


「えっ? じゃあ二〇掛ける二〇で……よ、四〇〇枚ですか?! 」


「そうなるな……ちなみにこれを材料とした薬は

その値段の更に一〇倍の価格で取引されている様だがな? 」


「ヒエーッ……恐ろしい」


<――と、今の俺に取っては天文学的な金額を

余裕の表情で口にするオルガさんに驚いていると

薬師の店主は――>


「ええ……昔から薬九層倍くすりくそうばいと言いますからねぇ旦那」


<――そう俺に言うとニヤリと笑った。


嗚呼、なんか怖いこの人――>


………


……



「た、確か……儲けが九倍って意味ですよね?

……それにしてもその素材はどんなお薬に成るんです? 」


<――そう質問した俺に対し、オルガさんは困った様な表情で

“女性陣に聞かせるべきでは無い”と言い切った。


だが、これが不味かった……逆効果だ。


そんな事を言われれば聞きたく成るのが人の常で……


……マリアとメルちゃんは薬師の店主に効能をたずねた。


そして……次の瞬間、店主の口から飛び出した

二人が決して聞くべきではなかった“効能”は――>


………


……



「絶倫薬……つまり男性の股間を元気にする薬ですな」


「えっ? あのっ……そのっ……はうぅぅぅぅ……」


<――と、見る見る内に顔を真赤にしたメルちゃんとは対照的に

マリアは至って冷静な表情で――>


「……ああ、それ系ですか」


「マリア引くわ……メルちゃんの反応が最も正しいと思うよ?

“恥じらい”的な意味で考えたらさ……」


<――などと話していると

オルガさんは興味津々な様子で薬師の店主に対し――>


「……人間はその様な物が必要なのか? 」


「旦那の種族には必要ありませんが、人間は歳を取ると……」


<――不味いよ、掘り下げちゃったッ!


見ればメルちゃんは顔だけでなく耳まで真っ赤に成っていた。


一刻も早くこの“猥談”を止めなければ

メルちゃんが“沸騰した薬缶やかん”みたいに成りかねない! ――>


「て……店主さんもオルガさんももう止めましょうよこの話!

メルちゃんが真っ赤っかだから!


てか、外出てようかメルちゃん……ねっ! 」


「はうぅ……」


………


……



<――暫くの後

オルガさんと店主の“猥談”も終わったのか

店の外で待つ俺達の元へと戻って来たオルガさんは

二〇〇金貨を俺に手渡すと残りの材料の話を始めた。


何でも“特級武具店”と呼ばれる店へ持って行く事に決めたらしいのだが――>


「……あの店は交渉が肝だ。


気に入らない話だが、彼処あそこの店主は余 (あま)り大人数……

それも、女連れで行くと足元を見る。


……故に、主人公と私の二人だけで行くのが得策だ。


つまりだが……二人は宿に帰って居ると良い」


<――直後、オルガさんの指示通り二人をヴェルツに送り届け

特級武具店へと向かう事にした俺。


だが、店の近くまでたどり着いた時

オルガさんは何故か俺に対し――>


………


……



「主人公……ひづめは御主が隠し持っていてくれ。


私が合図をしたら台の上に置くんだ……それと

金貨をそのまま持っていては危ない。


インベントリに保管しておくと良い、使い方は……唱えれば判る」


「あ、はいっ! ……インベントリ! 」


<――呪文を唱えた瞬間

魔導力で形成された宝箱が俺の前に出現した。


そういえばラウドさんも使ってたが……残念な事に

オルガさんいわく入れられる物は金、銀、銅

および、それらで作られた現金だけとの事だった。


正直……荷物とか素材とかも入れられたらどれだけ楽なのだろう?


少しだけゲームの世界を羨ましく思いつつ

オルガさんの案内で特級武具店へ入店した俺達――>


「らっしゃい……ほう?

この香りは、ギガタウロスの材料ですかな? 」


<――確かに曲者っぽい店主だった。


オルガさんも顔では笑っているが、余り好みのタイプではないのだろう――>


「流石だな店主……匂いで判るとは」


「長いですからな……部位は何処です? 」


「……角と目だけだ」


「ほう? ……手負いを逃しでもしたんですかい? 」


「いや、運良く手に入れただけだ……」


「そうですか……ひづめでも有れば

一〇〇〇枚って所だったんですがねえ……」


「それは……惜しかったな」


「……も有れば更に一〇〇〇枚って所でしたが

角と目だけなら……五〇〇枚がやっとですな」


「……そうか、残念ながら私は持っていない」


「では、今回は五〇〇枚って事で……」


「いや……主人公が持って居るのを忘れていたよ」


<――オルガさんの合図に合わせ、机に残りの素材を置いた瞬間。


店主の表情が曇った――>


………


……



ひづめだ……これで二〇〇〇枚だったな? 」


「なっ?! ……食えないお方だ」


「お互い様だよ、他で売っても良いが……どうする? 」


「その必要はありません……お約束通り二〇〇〇枚でうけたまわりますよ」


「売ったっ! ……主人公、これで良いな? 」


「え……ええ、俺はそれで……」(完全に依頼報酬より多いのだが……)


「……さて、これで金貨二〇〇〇枚ですな。


所で……そちらの御仁、なかなか恐ろしい装備をしていらっしゃいますが……


……もしや、貴方が噂のトライスターさんで? 」


「ええ、一応トライスターですけど……」


「……やはりそうでしたか。


国宝級の装備を見せられますと

流石にウチの店の装備程度では全く太刀打ち出来そうにありませんのでね。


まぁ……もし何か材料を手に入れたら

どんな小さな材料でもウチに持って来て頂ければ

他所よりも高値で買い取りますので……ご贔屓ひいきにお願いしますよ」


「そ……それは助かります」


「ならば……その時は私もついてくるとするか」


「おや……それはまた痛い話ですねぇ」


「食えん男だな……店主よ」


「ええ“お互い様”でございます……」


………


……



「……あの調子だからな、安く買い叩かれない様にするのが大変だが

何処よりも物の価値を知っている店だ。


……さてヴェルツに行こうか」


「……ええ、オルガさんが居ないと俺は負けると思います。


でも、この結果は二人もきっと喜ぶ筈……本当にありがとうございます! 」


「構わん構わん……今日は良い日だ、盛大に飲むぞ! 」


「はい……付き合いますっ! 」


<――直後、ヴェルツに入店すると

二人共、笑顔で迎えてくれて――>


………


……



「主人公よ……早く金額を教えてやるがいい」


<――更に喜ばせる為か

肘で俺をつつきながらそう言ったオルガさん――>


「あ、はいッ! ……二人共、喜んでくれ!

何と何と! ……金貨一〇〇〇枚にも成ったんだ! 」


「えっ?! ……凄い金額ですけど

さっきの材料の二〇〇枚と合わせると七〇〇枚ですよね?

……依頼自体の報酬の方が少ないのは悲しい気がしないでもないですね」


<――と、冷静な表情でそう言ったマリアに対し

“既に分けた後だ”と説明した俺。


絵に書いた様に固まったマリアが面白かったし

メルちゃんもとても喜んでくれた……けど

今回の儲けを全額返済に当てても、残りの返済金額は

七九九万八三〇〇金貨だ。


どう考えても道は遠いし、頭が痛く成る様な数字だ。


正直、国に仕えた方が良かったのか? などと考えながらも

一応の大成功を俺自身も喜んでいたその時


俺達の所にラウドさんがあらわれた――>


………


……



「……ほっほっほ、早速大金を稼いだ様じゃの? 」


「ええ、焼け石に水っぽいですけど……」


「とは言え、今回の依頼はA級の魔物じゃろう? 」


「はい……それでも結構苦戦しました」


「ううむ……どうやら主人公殿は自らを過小評価しておる様じゃな。


慣れぬ最初の依頼、つオルガ殿が居ったとは言え

A級をクリアし、ギガタウロスまで討伐したのじゃろう?


S級やその上のSS級……やがてはL級まで達成出来るじゃろう」


「えっと……S、SSはまだ分かりますけどLってなんですか? 」


「“伝説レジェンド級”と言う事じゃよ。


魔王軍の幹部や都市級魔物等の討伐依頼になって来るじゃろうが……」


「た……大変そうですけど、そんなの俺に解決出来るんですかね? 」


「……いきなり挑めばそれは無謀じゃが

SやSS級の魔物との戦いに体を慣らし、此処ぞと思う時に挑戦してみると良い。


そもそも御主はS級相当のギガタウロスを倒したのじゃから……」


「えっ……あれってS級なんですか? 」


「ん? ……余裕じゃったかね? 」


「いえ、そうでは無く……少し気になる事がありまして」


<――直後、ラウドさんに対し頭巾フード姿の謎の人物について伝えた俺。

ラウドさんの方でも調べるとの事だったが

彼奴アイツは一体何だったんだろう――>


「まぁ……ご苦労じゃったのう!

今日はゆっくり休むと良いぞぃ! ……それではのぉ~! 」


「あ、はいっ! ラウドさんもお疲れ様です! ……」


………


……



「やっぱり主人公さんって凄いんですね!


……私もなんだか嬉しいですっ! 」


「ありがとう……けど

メルちゃんが凄く良い動きしてたお陰でも有ると思うなぁ~俺は。


兎に角……お互いこの調子で頑張ろうね!


でも、無理だけはしないでね? 」


「はいっ! 」


<――などと話していると

マリアは――>


「う~ん、私的にはS級の依頼受けるのも有りかもって思いますけどね。


だって、メガタウロスって凄く弱かったですし……」


「確かにマリアは明らかに余裕があったもんな……


……流石は“マリアーバリアン”だわ」


「だから……語呂が悪いっ! 」


「いや、毎回思うけど突っ込む所其処そこじゃ無いと思う」


<――ともあれ。


暫くの後、オルガさんとの祝杯も終わり自室へと戻った俺達。


初仕事の疲れで早々に眠りについたマリアとは対象的に

俺は一人“頭巾フードの人物”について考えて居た――>


………


……



(……それにしても、彼奴アイツは一体何が目的だったんだ?

味方の様な行動ではあったけど……どうにも怪しさが勝つんだよな)


「フフフッ……」


「?!……」


「ギガタウロスも弱いですよぉ~…ムニャムニャ」


「何だマリアか……にしても酷い寝言だ。


それにしても……ふわぁ~っ……俺も寝るか」


………


……



「……ええ、減衰装備を二つ程装着した状態で“氷刃”を放ち

あのギガタウロスの首をいとも簡単に切り落としました」


「ほう? それはなかなか……引き続き監視を続けよ」


「ハッ……」


===第八話・終===

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