第七六話「辿り着けたら楽勝ですか? ……前編」
《――元海賊の少年テルとその妹、サナを乗せ
日之本皇国を目指し進んで居た一行。
一方、オベリスクを凄まじい勢いで追い越した“移動船”は
一足先に日之本皇国の港へと辿り着いて居た――》
………
……
…
《――日之本皇国:東地域の港にて。
到着後“移動船”の船長は下船せず、船長室へ籠もったまま
表情険しく何やら考えを巡らせて居た――》
(……“海賊船”があれ程無残に轟沈される程
一方的な攻撃を行える戦闘能力を有した船だと?
軍艦? ……いや、有り得んか。
……大体、あの場所は見通しも悪い
その様な船が通るルートでは無いし
少なくとも、先程追い越した木造船程度のボロ船が
海賊船を沈められる訳など無い事だけは確かだが
やはり分からん……そういえば
出港前この国の事を聞いて回って居た者が居た筈だが
奴らを私の船では見かけなかった……と言う事は
ボロ船の持ち主はあの者達か? ……待てよ?
まさかとは思うが、あの者達が海賊船を?
だが、船は今にも沈みそうなオンボロ……
……ええい、考えが纏まらん!
何れにしろ“副業”は暫く行えんな……)
《――この後も
考えを巡らせて居た“移動船”の船長……だが
数時間後、船長室の扉を叩く音と共に――》
「船長! ……マズいですよ! 」
《――そう扉越しに慌てて発せられた船員の声
直後、船長が慌てて扉の鍵を開くと――》
「船長! 大変です!
例の“海賊船の件”が町の酒場で噂に成り始めてます! 」
「な、何ぃっ?! ……どんな噂だ!? 」
「それが――
“船長が海賊船と裏取引をして居るらしい”
――と、何者かが大声で話して居たそうで
その場に居合わせ、聞き耳を立てて居た客達も
其処彼処でこの噂話を広めて居るらしく……」
「な、何だとっ?! ……チッ! 面倒な事を!
この国は賄賂が効き辛いのだぞ?!
私達から目を逸らす方法を考えねばならんでは無いか! 」
「ええ……ですが、先ずは
噂を流した野郎を捕まえる事が先決かと。
……少なくとも、船長はこのまま
下船されないのが懸命ですぜ……」
「チッ……言われずとも分かって居る!
早急に噂を流した犯人を捕らえ、私の元へと連れてこい! 」
「は、はい! ……失礼致します! 」
《――直後
慌てた様子で立ち去った船員、そして――》
「汚名を着せる相手を探すべきか、或いは……」
………
……
…
《――“移動船”に遅れる事、数十分後
一行の乗るオベリスクは遂に
“日之本皇国”へと到着し入国審査を受けて居た。
だが――》
「ん? ……初めて見る船だな? と言うか、何処の船だ?
付近の海流は激しい筈だが、その様な木造船で
良くこの国へと辿り着く事が出来たな? 」
《――偽装されたオベリスクの姿を見回し
怪訝な表情を浮かべつつそう言った入国審査官。
一方、この質問に対し――》
「ええ……とても苦労致しました」
《――そう応えたギュンター
そんな彼に対し、返す刀で――》
「ふっ、だろうな」
《――と、僅かに皮肉った様な態度で返した入国審査官
だが、ギュンターはこれを意に介さず
終始笑顔で応対を続けた。
……この後も問題無く審査を受け続けて居たギュンター
だが、暫くの後……彼は
ある重大な問題に直面する事と成った――》
「……さて、此処までの受け答えに問題は無い様だ。
次の質問だが……入国の目的、及び
貴方達の何れかが下記に該当する場合
入国の拒否、若しくは罰金刑
或いは極刑が言い渡される事もある。
恐らく問題は無いだろうが、一応規則なのでね
質問させて貰う……」
「ええ、何なりとお聞き下さい」
「よし……では第一に
我が国では人身売買を禁じる法律が施行されて居る。
故に、この船が人身売買を目的とした船で無い事が
入国を許可する絶対条件である。
第二に、我が国では
海賊の入国を禁じる法律が施行されて居る
それ故、海賊船の乗組員等を同乗させて居る、または
自身が海賊である等の場合は入国を認めぬ他
即時、攻撃の対象と成る事も合わせて説明して置く。
そして……第三に、入国時に職業や人数
所持品の偽装などを行った場合、更にそれが発覚した際
悪質と見なされた場合は、最悪の場合
即時処刑となる事もあり得る。
……過去“トライスター”の職を持つ者が
自らの職業を偽り入国し
我が国で問題を起こした事があり、その際酷く抵抗した為
悪質と見なされ、ミカド様が自ら手を下されたそうだ。
まさかとは思うが……偽装など
考えもしない方が良い事を忠告しておこう。
……さて、以上三項目に当てはまらない場合のみ入国を許可する
尚、初回の入国費用は免除だ……問題は無いな? 」
《――三項目全てを聞き終わった後も
ギュンターは眉一つ動かさず終始笑顔で応対をして居た。
だが……その背後で
今にも悲鳴を上げそうな程に動揺して居た
主人公の様子を見逃さなかった審査官は
主人公に近付き――》
「……其処の少年、妙に緊張して居るがどうした?
何処か調子でも悪いのか? 」
「い、いえその……な、長旅で船酔いを……そ、そう!
海流が激しかったもので……」
「……妙だな?
先程まではその様な素振りを見せていなかった様に思うが。
……何か“隠し事”でもあるのかね? 」
「い、いえッ!? その……」
(まずい……トライスターってのは隠すべきだし
子供達の“人数”を見たら間違い無く人身売買だと思われるだろうし
そうじゃなくてもゴブリンの子供達を見たら
明らかに不味い反応されるだろうし……って!!
よく考えたらテル君とサナちゃんは“海賊”じゃ!?
不味い……絶対に不味い! )
《――この瞬間
誰の眼にも明らかな程の動揺をして居た主人公
その様子を見た入国審査官は更に彼を問い詰めた。
だが――》
「ま、待ってくれ! 入国審査官のおっさん!
おいらと妹は確かに“海賊”だった!
けど……この人達に助けられて改心して
今はこの人達の船の手伝いをしてたんだ!
だからその人達は悪くねぇ! そもそも元はおいら達……」
《――此処まで
操縦室から彼らの様子を窺い続けていたテルは
慌ててオベリスクから下船し、そう必死に訴えた――》
「ん? ……もう一度始めから聞こう」
「だ、だから! ……俺達は海賊だったけど
改心してこの船の手伝いを!! ……」
「成程……それで主人公は冷や汗を流し
動揺し、緊張して居た訳か……安心したまえ
船員の過去まで問題視はしない、それに
見た所君達はこの国の出身者だろう? 」
「流石! ……よく分かったな入国審査官のおっちゃん!
おいら達、海辺で遊んでた時に攫われて
無理やり海賊船の乗組員にされたんだよ……ずっと逃げたかった。
けど、怖い船長が居てどうする事も出来なくて
それで……」
「ああ、誘拐事件の多発した時期が有った事は私も覚えて居る
それ故に海賊の入港を禁止する法律が出来たのだから。
それは兎も角として……君達は一体
どう救われたのかね? ……失礼だとは思うが
この様な船では到底、海賊に対抗出来るとは思えないのだが」
《――当然の疑問を持ちそう訊ねた審査官
流石のギュンターもこれには口籠り
さらなる疑いの原因となりそうな程の沈黙が流れたその時
主人公は意を決した様に――》
「そ、それはですね……俺、実は結構やり手な魔導師って言うか!
そッ……その、あの……ト、トラ……」
《――そう言い掛けた瞬間
入国審査官との間に割って入ったギュンター
彼は――
オベリスクが自らの“固有魔導”である事
“無害通航”の為、偽装されて居るが
本来の姿は軍艦と呼んで差し支えの無い物である事
船内には危険な地域から保護した子供達が居る事
――それら、全ての真実を隠す事無く誠意を持って説明した。
直後、入国審査官の男は暫く考え込み
そして――》
「成程……他に話しておく事は無いのかね? 」
《――そう、静かに問うた
そんな彼に対し、ギュンターは少し考えた後――》
「……強いて申し上げますと
子供達の中にはゴブリン族の血が流れる者達もおります。
ですが……決して人間に対し害を為す事の無い様
母親からの厳しい教育を受けておりますから
見た目や種族での排除をお考えなのでしたら
彼らをこの国に入国させる事は控え、私めの船に留め置きますが
それでも我々の入国をお許しに成られないのであれば
主人公様には申し開きのしようがありませんが
入国はせず、直ちにこの場を立ち去る事をお約束致します」
《――入国審査官の眼を真っ直ぐに見つめそう伝えたギュンター
すると――》
「成程、だが私は“ゴブリン族”と言う者達を知らないのだが
本来は危険な種族とされているのかね? 」
「ええ……本来であれば
“知らぬが仏”とでも言うべき程の危険な種族でございます」
「そうか……正直に全てを話した者の眼をして居る
そもそも、私も貴方達に悪意を感じては居ない……だが
もし、そのゴブリン族がこの国に仇為(な)す者で有った場合
君達が全責任を取ると約束出来るかね?
もしも出来るのであれば私は入国を許可したいと思って居る。
だが、その前に……」
《――そう言うと再び主人公に近付いた入国審査官
そして、彼を問い詰める様に――》
「主人公君……君は先程何かを言い掛けた
だが、彼に遮られ有耶無耶に成った。
君は一体、私に何を言うつもりだったのか
それを正直に教えて貰いたい……良いね? 」
「は、はい……えっと……その、俺は……ト……」
(いや……待てよ?
このまま俺が“トライスター”だと言ってしまったら
この国から出国出来なく成る可能性が高い……けど
今此処で嘘をつくべきとは思えない。
……ギュンターさんが正直に話した時
この人は全てを許してくれた……なら、思い切って話すべきか?
くそッ! どうすれば良いんだ、俺は……)
《――思い悩み、口籠って居た主人公
直後、そんな彼に対するフォローのつもりだったのか
入国審査官に対し――》
「えっと! 主人公さんが言い掛けた事についてですけど
主人公さんは“トラ”族の血が流れてるって言いたかったんですよ!
ね~ッ! 主人公さん! 」
《――と言ったマリア
だが、入国審査官は彼女に対し
恐ろしいまでの目線を差し向け――》
「黙りたまえ……私は“分かった上で”彼の口から聞きたいのだよ。
……庇う気持ちは理解しないでも無いが
君がもう一言でも嘘をついた瞬間
私は……君を罰さなければ成らなくなる
是非とも賢明な判断をお願いしたい。
さて……続きを聞かせて貰おう
主人公君……君は一体、何を伝えようとしたのかね? 」
「わ、分かりました……そ、その
俺が先程言い掛けて遮ら……いえ
“庇われた”事についてですが。
お察しの通り、俺の職業は……トライスターです
けど……言いたくなかった理由も理解して頂けて居ると思います。
俺は、党利党略とか“戦争の道具に成る”だとか
“国取り合戦”とかに全く興味がありませんし
俺の大切な人達や平和に暮らす人達を護る事以外に
俺の力を使うつもりは毛頭ありません。
だからもし、俺の力を目当てに
俺や仲間達を引き留めようと……」
《――主人公が其処まで言い掛けたその時
入国審査官は高笑いし始め――》
「な……何故笑うんですッ!? 」
「……いや、すまなかった
だがあまりにも可笑しくてつい笑ってしまったのだよ。
良いかね? ……たった今君は、自らを“無害”だと表現し
力を誇示しないつもりでそう発したのかもしれないが
今の発言から私が感じ取れた事を端的に表現すれば――
“俺が本気を出せばこの国の軍など造作も無い
だから俺と俺の仲間に手を出すならば容赦はしない”
――そう言ったのと同じ意味の言葉を吐いた。
それは、余程の実力者か
余程の愚か者でなければまず発せはしない類の発言だ。
だが、君を見る限り間違い無く前者である事は明らかだろう
故に……まぁ、その他にもだが
様々な状況に照らし合わせれば、私は此処で
君達の入国を“拒否”するべきなのだろうと思う……」
「そうですか、なら……」
「……待ちたまえ、まだ話は終わっていない。
色々と話すべき事は有るのだろうが
伝えるべき事を先に伝えておく。
……君達の入国を“全面的に許可”しよう」
「で、ですよね……って……え゛ッ?!
い、今なんて仰られましたッ!? 」
「ふっ……面白い反応をする物だ。
いや、失礼……試す事が入国審査官の仕事なのでね
失礼な態度だったとは思うが
実は始めから君や君の仲間達の誰からも
“邪悪な物”を感じては居なかったのだよ。
……念の為探りを入れて居ただけだ
時間を取らせて済まなかったね。
さて、後は……一つだけ忠告しておこう主人公君」
「な、何でしょう? 」
「君を貶すつもりでは無いが
我が国の防衛力を――
“舐めないで頂きたい”
――“トライスター”やその他の魔導師程度で、我が国の剣神
“豪剣のミカド様”に太刀打ち出来ると思う事も
我が国の抱える剣豪達を打ち倒せると思う事も
それ自体が相当な思い上がりであると肝に銘じておく事だ。
兎に角……無いとは思うが
入国後は余り派手な動きはしない方が身の為だ」
「べ、別に思い上がっていた訳では! ……いえ
そ、その……ご忠告通り肝に銘じておきます」
「良い返事だ――
“郷に入っては郷に従う”
――それは長生きの秘訣でもある
君のその頭の良さなら問題は無いだろう
さて、長々と済まなかったね……審査は全て正常に終わったが
入国審査とは別に、最後に一つだけ確認をしておく事がある」
「何です? 」
「君にでは無く……元海賊、もとい
この国の出身者である君達兄妹の出身地域は何方かね? 」
「おいら達の出身地域は東地域だよ? 東地域の……」
「ああ、全てを言わなくても良い。
自宅の場所が分かって居るのなら問題は無いだろう
一刻も早く帰り、親兄弟に元気な顔を見せてやると良い」
「あ、ありがとう! ……入国審査官のおっちゃん! 」
「ああ……気をつけて帰ると良い
では、門を開けッ!! ――」
《――入国審査官の一声に依り
ゆっくりと開かれた正門は……直後
メリカーノア大公国ですら霞む程の
広大な国土を有する大国の姿を顕にした。
……驚嘆の声と共に
日之本皇国へと入国する事と成った一行
完璧に整備された石畳の道
その上を大量の馬車や人力車が行き交って居た……だが。
一方で主人公はこの町並みを
少し“残念そうな眼差し”で見つめて居た。
そして、直ぐにその事に気が付いたテルは
主人公に対し――》
「ねぇ……どうしたの? 」
《――そう、訊ねた。
すると、奥歯に物の挟まった様な物言いで――》
「あ、いやその……名前から勝手に想像して
和風な感じの国だと思ってたんだけど
何と言うかその……“欧米人”みたいな見た目の人ばかりだし
町並みも全然和風じゃないし……けど
絵本では確かに和風の感じだったから……」
《――そう“独り言”とも
“愚痴”とも取れる様な声量で答えた主人公
マリアもそれに同意するかの様に小さく頷いて居て――》
「オ……“オーベージン”ってどんな種族だろ?
とっ兎に角! ……な、何だか良く分からないけど!
兄ちゃん達はおいらとサナを助けてくれた恩人だから
お礼って言ったら変かも知れないけど
おいら達でこの国の案内をするよ!
……見た感じ、町並みも変わって無さそうだし
おいら達の父ちゃんと母ちゃんにも会って貰いたいから! 」
「おぉ助かるよ! ……じゃあ、案内は任せたッ! 」
「ああ、任せてよ主人公兄ちゃん! 」
《――この後
テルの案内に依り日之本皇国の探索を開始した一行。
だが……一〇分と少し程歩いた頃、例に依って
“物理適性”が仇となりその場にへたり込んだ主人公
直後、これまた例に依って
そんな彼を軽々と担いだマリアに依り
“顔を真っ赤にして照れながら運ばれる主人公”と言う
最早お馴染みの様子を披露する事と成った一行は
この後、道行く者達に笑われ続け
主人公は更に顔を赤くする事と成って居たのだった――》
「お願いだから今日だけは降ろしてぇぇぇッ!! 」
《――その後
この一件は瞬く間に日之本皇国全土を駆け巡り――
“緑の皮膚をした子供の種族と人間の子供達を多数引き連れた一団が
東地域正門付近から現れ、その一団の頭目らしき甲冑姿の女が
肩にひ弱な男を乗せ、我が物顔で闊歩して居た”
――と言う、一聴しただけでは想像し難い噂が流れ
更にその後――
“頭目らしき甲冑姿の女の名前は
マリアーバリアンと言うらしく、絵本に出て来る
伝説のドワーフの血縁か何からしい”
――そう、本人が聞けば
“語呂が悪い”と怒るだけでは到底収まらないであろう
“尾ひれの付いた噂”が不本意にも轟く事と成ってしまったのは
また、別のお話。
ともあれ――》
………
……
…
《――暫くの後
テルの案内に依って
彼らの生家に向かう道すがら
たまたま通り掛かった飲み屋の前
何かを思い付いた様に立ち止まったギュンターは――》
「……皆様、先程の“移動船”の船長を放置しておけば
何れまた海賊と手を組み、良からぬ事を行うでしょう
とは言え、あまり騒がしく動く事は得策ではありません。
ですので……ある“噂話”を流し、揺さ振りを掛けてみる
と言うのは如何でしょう?
……この国が正常な対応を出来る国かどうかを見定める
“試金石”にも成るかと思うのですが……」
《――そう言ったギュンター
だが、主人公はこの意見に否定的で――》
「……でも、今日現れたばかりの俺達が
どんな噂を流した所で誰も信用しないのでは? 」
《――そう言った
だがギュンターは、そんな主人公に対し
耳打ちをした――》
「……まず、主人公様には変装をして頂きます。
そして、あの“移動船”の乗客だったと偽り
海賊船と船長の繋がりを話すのです。
……詳しい真実はテル様から教わり、その内容を元に
少し“ショッキング”に“オーバー”に
噂に成りやすい様伝える事さえ出来れば
後はその場に居る者達が勝手に広める筈で御座います。
後は……この国が正常な国であれば
自然に沙汰が下る筈……如何でしょうか? 」
「な、成程……でも、俺に出来るかな……」
《――と少し弱気に成って居た主人公
だが、そんな彼に対しギュンターは何故か
少し威圧的で――》
「主人公様……恐れながら
先程、入国時の対応で狼狽えに成られたお陰で
私めはとても肝を冷やしまして御座います。
……今後、あの様な姿を度々披露されてしまえば
私めだけで無く、皆様にも危険が及ぶ事に成りかねません。
主人公様……貴方様には“優しさ”だけで無く
僅かばかりの“剛勇さ”をも身に着けて頂きたく思います。
……不躾なお願いかとは思いますが
是非とも引き受けて頂きたく……」
《――と、主人公の目を見据えそう言ったギュンター
そんな彼の様子に返せる言葉も無くこの大役を引き受けた主人公。
だが――》
「け、けど“変装”って言っても、どうやって……」
《――そう主人公が訊ねると
裏道へと向かい、其処に落ちて居た大きなボロ布を拾い
付近に転がって居た動物の死骸から少々毛を毟り取ったかと思うと
その毛で何かを作り始めたギュンター
……暫くの後
そうして作り出した“モノ”を主人公に手渡すと
それを“装備”する様伝えた。
だが――》
「ボロ布の服と、付け髭……ですよね?!
でもこれ、明らかに動物の死骸から取った毛だし……
……うげッ!? 臭えぇぇぇッ!!? 」
《――当然の如く
付け髭からは“嫌悪感を感じる異臭”が漂っており――》
「嫌過ぎますって! ……他に方法は無いんですか?! 」
「噂を流す間だけで構いません
使用後直ぐに破棄しやすい事も重要なのです……我慢を」
「ちょ?! 本気ですか?! いや……わ、分かりました!
じゃあこれを付けて……ってうぐッ!
く、臭過ぎるッ!! で……でも、頑張り゛ばずッ!! 」
《――直後
涙目に成りつつも何とか変装に身を包み
意を決した様子で一人、飲み屋へと入店した主人公。
彼は――》
===第七六話・終===




