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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝16万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第三章

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第七五話「目的地が見つけられたら楽勝ですか? 」

“敵意の無い魔族達の集落”を後にした一行は

日之本皇国(ヒノモトコウコク)行きの船が出ると言う(みなと)を目指して居た。


道なりに進む(うち)、周囲に(しお)の香りが(ただよ)い始め……


……木々の隙間(すきま)から(かす)かに見え始めた巨大な船の()

興奮を(おさ)えられず居た一行。


……だが、更に近付くにつれ

遠くからでも一目瞭然(いちもくりょうぜん)な程の

巨大な()を有するその船が

まるで“小舟”に思える程の“大海”が見え始め……


「……この大海を渡れば

主人公様が“目的地”とお(さだ)めに成られた

日之本皇国(ヒノモトコウコク)”に辿り着く物かと思われます」


(みなと)に到着後

皆に対しそう説明したギュンターだったが……


……眼下に広がる大海(たいかい)に圧倒され

皆“それどころ”では無かった。


だが、この直後“大きめの咳払い”で注目を集めた(ギュンター)

更に……


「……さて、警戒すべきは“海賊”で御座いますが

現状“どの海域でどの時間帯が危険なのか”など

詳細な情報は一切持ち合わせておりません……ですので

安定した船旅の(ため)にも

情報収集を(おこな)う事を強くお勧め致します」


ギュンターのこの提案に賛同し

直後、情報収集を(おこな)う事と成った一行。


……この後、要らぬ騒ぎを起こさぬ(ため)

少数での情報収集を提案した主人公は

ギュンターとディーンの二人を連れ

港周辺での情報収集を開始した……だが

十数分程の後……


◆◆◆


「お帰りなさ~い! 役に立ちそうな情報とか有りました~? 」


そう、明るく(たず)ねたマリアに対し

(ひど)く落ち込んだ表情を見せた主人公。


「な……何でそんな暗い雰囲気出してるんですか?!

まさか、日之本皇国(ヒノモトコウコク)が“無い”……とか?! 」


「いやそれは大丈夫だマリア……間違いなくあるし

直行便のチケットも売ってたから……(ただ)、その……」


そう言って(うつむ)いた彼は

直後“ある情報”を口にした。


此処(ここ)を出発したら、その……


……政令国家への“定期連絡”が、出来なくなるみたいなんだ。


出港後(しばら)くなら大丈夫みたいだけど

ある程度海を進むと、何処(どこ)かのタイミングで

魔導通信が出来なくなるらしい。


けど……一度向こうに上陸した後

此方(こっち)に“転移で帰ってくる”とかは出来るみたい。


(ただ)、これにも制限はあるみたいでさ

川岸とか海岸に飛ぶ事は出来ても、直接

何処(どこ)かの国に飛ぶのは難しいみたいで……」


そう(ひど)く落ち込んで居た主人公に対し

ガルドは


「ふむ……で、有るならば主人公よ

皆、出港前に連絡を入れたい相手も多い事だろう。


そうで無くとも……今の内に

(しばら)く連絡が取れぬ”と伝えておくべきであろう? 」


「確かに……じゃあ取り敢えず……」


この後

最後の定期連絡を繋げた主人公。


……涙する者や、笑顔で別れを告げた者

そして、主人公(かれ)は。


◆◆◆


「ええ、なので……日之本皇国(ヒノモトコウコク)って所に行って

それでも目当ての情報が無かったらこの旅を終えて

一旦(いったん)、政令国家に帰ろうかなって思ってます」


「そうかい……(しばら)く顔を見られないのは残念だが

(いず)れにしても、もう少ししたら

主人公ちゃん達は帰ってくるんだね? 」


「はい! ……とは言え“精霊族の件”もありますし

帰還後もまた改めて旅をする可能性は(おお)いにありますけど

(いず)れにしろ直ぐに帰ります! 」


「そうかい! ……なら寂しくは無いさ。


主人公ちゃん達の探している物が見つかる様

陰ながら祈っておくとしようかねぇ……だが、その代わり

帰って来たら約束通り、あたしに一番に

“ただいま”って言っておくれよ? 」


「ええ! ……勿論(もちろん)ですッ!! 」


「良い返事だ! ……さて

あたしはそろそろ(ばん)の仕込みをするから

主人公ちゃん達も怪我の無い様に無理せず過ごすんだよ! 」


「はいッ! ……ミリアさんもお元気で! 」


◆◆◆


この後


旅の集大成(しゅうたいせい)とも言える目的地への不安と期待を胸に

ついに出港する事と成った一行。


とは言え……高額な乗船料と子供達の事を考えれば

“移動船”を利用する事は得策(とくさく)とは言えず

熟考の後、オベリスクを(もち)

目立たぬ場所から出港する事を選んだ一行……だが。


この選択は後に、ある“騒動”を引き起こす

原因と成ってしまうのだった……


◆◆◆


「いや~流石(さすが)はオベリスク、海の上でも安定してますね~」


「お褒めに預かり光栄で御座います主人公様……ですが

本来オベリスクは船で御座いますので、少々複雑でも御座いますね」


「それもそうですね! アッハッハッ! 」


出港後

順調に航海を続けて居たオベリスク

当然の様に周囲から見えるオベリスクの姿は偽装(ぎそう)され、

その姿は何処(どこ)にでもありそうな

小さな“木造船”の様相(ようそう)をして居た。


そして、その姿から想像出来る速度を決して超えぬ様

ギュンターは慎重な舵取(かじと)りを続けて居た。


◆◆◆


一方、(みなと)では“移動船”が出港の準備を進める中

船長に対し、ハンチング帽を目深(まぶか)に被った一人の男が

静かに耳打ちをして居た……


「成程……それは頂けない。


この海域を移動する時は

必ず、私の“移動船”を利用するのが暗黙の了解である筈

何処(どこ)の田舎者かは知らないが“ボロ船”で密航とは。


だが……その様な(やから)が増えでもすれば

此方(こちら)(しめ)しがつかん……報告ご苦労。


駄賃(だちん)だ……さて、そろそろ出港時刻だ

後は私が……“処理”しよう」


「へい! 毎度っ! ……」


船長から駄賃を受け取ると、船から降り

何処(どこ)かへと立ち去って行ったハンチング帽の男。


◆◆◆


一方……出港後(しばら)()ち船内で昼食を取って居た一行は

メルの“ある”大きな変化に興味を(しめ)して居た。


「……いや~それにしても航海中に食事って

何だか豪華客船にでも乗ってる様な気分になるね~!


……ってかメル、何だか今日は“良く食べる”ね? 」


隣に座るメルに対し

そう(たず)ねた主人公……


「えっと……そのっ、何だか

不思議な位にお腹が()いててっ……」


「メルよ……御主は既に

吾輩(わがはい)でも感心する(ほど)に食べて居るぞ?

もしや……“妊娠”でもしたのでは無かろうな?

もし、そうであるならば……主人公、責任は取るのだぞ? 」


このガルドの“ド直球な発言”に対し

耳まで真っ赤になりつつ全力で否定したメルと主人公。


しかし……(ガルド)がそう考えてしまう程

メルの食事量は常軌(じょうき)(いっ)して居た。


……この、あまりにも凄まじい食欲に

皆が呆気(あっけ)に取られて居た一方で

突如として思い出した様に(かた)り始めたのは

精霊族のベンだった……


「あっ! ……そう言えば!

ねぇねぇメルちゃん! つい先日固有魔導を手に入れたよね? 」


「は、はいっ! お陰様で習得出来ましたけど

何故(なぜ)、今その話題をっ?? 」


「いや、メルちゃんの固有魔導って

端的(たんてき)に言うと

“オーク族の権化(ごんげ)”みたいな感じだったでしょ?

だから……恐らくなんだけど、固有魔導発動後は


“オーク並みに食べる様に成る”


……みたいな副作用が出るんじゃないかな~って思ってね! 」


「そう言えば……確かに

固有魔導後からお腹が()いてた様な気がしますっ……」


そう言うと、少しばかり恥ずかしそうにしたメル

一方、そんな彼女に対し……


「別に恥ずかしがらなくて大丈夫だよ!

気を使わずどんどん食べて! ……沢山食べるメルも素敵だから! 」


そう言った主人公。


この後、彼の言葉に(ほほ)を赤らめつつ

引き続き食事を楽しんだメル……一方、主人公を含め

(すで)に食事を終えていた者達は、食後の休憩がてら

甲板で周辺の様子を確認し始めて居た……


◆◆◆


「それにしても、まさかメルが固有魔導を……それも

明らかに“物理特化”なのを習得しちゃうとはびっくりだったなぁ」


周辺を見渡しながらそう言った主人公に対し

マリアは……


「ええ、私もビックリしました! ……と言うか

固有魔導発動中のメルちゃんって

ガルドさんより大きな身体に成ってましたよね?

正直、物理職の“先輩”な私としては若干ジェラシーだったりも? 」


「えッ? ……い、いやまぁ分からなくも無いけど

てか、固有“魔導”なのに物理特化な物があるのには驚いたよ」


そう言った主人公に対し

マグノリアは……


「いえ、何も不思議では有りませんワ?

ギュンターさんやディーンさんの固有魔導も

ある意味では物理型と呼ぶべき物ですもの。


それに、本来固有魔導とはその人の持つルーツや好み

それらを反映して生まれる物ですワ?

第一、魔導に限界は有りませんワ? ……その上

特異(とくい)な生まれの者”ならば尚更(なおさら)……」


と話すマグノリアを(さえぎ)る様に

突如として遠くを指差し……


「待て……あの船、明らかに此方(こちら)に近づいて居る

何やら妙な雰囲気だ……“海賊”やも知れん」


そう言うと

ギュンターに警戒を強める様指示を出したディーン


直後、慌ただしくなり始めた船内の様子に

食事を中断し甲板へと現れたメルは……


「おっ、おまたせしてすみませんっ! ……私も手伝いますっ! 」


少し慌てた様子でそう言った

だが、彼女を見るなりマリーンは……


「えっと……メルちゃん?

もしかして固有魔導発動して……る? 」


「へっ? ……してませんよっ?? 」


「じ、じゃあ……少し“食べ過ぎ”かも知れないわね」


「えっ? 食べ過ぎって……ど、何処(どこ)かに(かがみ)っ!

ハッ?! ……いやぁぁぁぁぁっ!!! 」


突如として悲鳴を上げたメルに慌て

勢い良く振り返った主人公。


直後、彼の目に写ったメルは……


「あ、あのっ……主人公さんっ……

こっ……こんな姿っ……み、見ないで下さいっ!! 」


常軌(じょうき)(いっ)した食欲のせいか

普段のメルよりも少々“大きく”なって居た彼女

端的(たんてき)に言えば……彼女は“ぽっちゃり”して居たのだ。


……言うまでも無く

彼女の固有魔導が持つデメリットが(ゆえ)なのだが

その一方で……顔を隠し、恥ずかしそうにして居たメルの事を

少しでも元気付ける(ため)だったのか……


「……メル、気にしないでも大丈夫だ

きっとすぐに元通りに成るだろうし

仮にすぐには戻らないとしても全然問題無いよ!

だって……ムチムチっとしたメルも可愛いから! 」


そう言った主人公。


先程の“食事”と同じく、彼に取っては

“フォロー”のつもりだったのだろうが……


「ム……ムチムチって……ふっ……ふっ……


……“太ってる”って事ですねぇぇぇぇぇっ!!! 」


そう大声で泣き叫ぶと

逃げる様に操縦室へと姿を消したメル

当然、慌てて追いかけようとした主人公であったが……


「お待ち下さい主人公様!

貴方のデリカシーの無さが(まね)いた結果

(すなわ)ち“デリカ死”を()めても何にも成りませんわ!

メルさんとの問題はこの(さい)

“時間が解決する物”として諦めるべきです!

それよりも……今はあの“敵船”への対応を優先して下さいませ! 」


と、(いた)って真面目な顔で主人公に対しそう言い放ったタニア

当然、色々と“何か言いたげ”な様子の主人公だったが

差し迫る脅威を優先せざるを得ず……


◆◆◆


「……其処(そこ)のボロ船!!!

死にたくねえなら大人しく停船してオレ達に(したが)えッ!!! 」


直後

オベリスクに向けそう勧告(かんこく)した“敵船”の船長らしき男。


“敵船”は()髑髏(ドクロ)(はい)した

見た目通りの、所謂(いわゆる)“海賊船”であった。


……だが、この勧告(かんこく)に一切(おう)じず

ギュンターは航行(こうこう)を続けた。


すると……


「チッ……いい度胸じゃねえか!

野郎どもっ!!! あのボロ船に鉛玉をお見舞いしてやれっ!!! 」


船長がそう命じるや否や

海賊船からは銃弾の雨が降り注いだ……だが

主人公の展開した防衛魔導はそれらを容易(ようい)に防ぎ切り……


「チッ……魔導師が乗ってやがるのか!


野郎どもっ! あんなオンボロ船に乗ってる魔導師なんざ

大したタマじゃねえ筈だ!大砲でもなんでも

撃てるもん全て使って構わねえ!


……沈めちまうまで撃ち続けろっ!!! 」


直後

再びオベリスクに向けあらん限りの銃弾や砲弾……更には

弓矢まで(もち)い、徹底的に攻撃を続けた海賊船の乗組員達。


だが、やはりその全てを防ぎ切った主人公

無論(むろん)オベリスクには(かす)り傷一つ付く事は無く

(なお)も何事も無く航行(こうこう)を続けて居た。


一方……船長以下、海賊船の乗組員達は

呆気(あっけ)にとられ立ち尽くして居た。


……そんな中

これまで()えて沈黙を守って居たギュンターは……


「……主人公様、ご苦労様で御座いました。


さて……そろそろ私めも反撃を致しませんと

このまま無視を続けて居ては(いささ)か失礼かと存じますが

ディーン様……宜しいでしょうか? 」


「任せる……だが、最小限度

()つ、一撃のみに(とど)める様にな」


「承知致しました、ではご挨拶代わりに

副砲(ふくほう)を一発だけ使用致しましょう」


そう言うと

オベリスクの副砲を海賊船に向け発射したギュンター

だが。


◆◆◆


「ふ、船が沈むぞ~っ!! ……」


(ギュンター)の狙い通りに命中した砲弾は

(わず)か一撃にも関わらず

海賊船の船体を見事に“真っ二つ”に叩き割ってしまった。


「おや……想定よりも遥かに(もろ)い船だった様で御座います

少々予定とは違いますが、仕方ありませんね……」


海賊船の想定外の(もろ)さに

愚痴にも思える様な発言をしたギュンターは

この直後、運良く生き残り海賊船の“残骸”にしがみついて居た

数十名の海賊達に向け……


「さて、この中に生き残るに(あたい)する

“情報”を持つ者はおりますでしょうかな? 」


“拡声器”を(もち)い、冷たくそう言い放った。


すると……


「た、助けてくれるってんなら何でもする!

アンタが情報を欲してるってんなら

知る限りの事を全て()く!だからオレを! ……」

「いいや! おれの方がコイツより有用な情報を持ってるぜ!? 」

「んだとてめぇっ?!! ……」


生き残る(ため)

我先(われさき)に、と言い(あらそ)い始めた海賊達

しかし、(みにく)く言い(あらそ)海賊達(かれら)に対し


「助かりたいが(ため)の嘘を聞く程、私めも暇では有りません」


そう、切り捨てる様に言ったギュンター

だが。この直後……一人の“(おさな)き海賊”は

そんな彼に対し、一際(ひときわ)大きな声を上げた。


「ア……アンタ達を狙えって言った奴の事を知ってる!!!

妹の事を助けてくれるなら全部話す!!!

おいらの事は良いから……だから、頼むっ!!! 」


そう、必死に叫んだ“(おさな)き海賊”

直後、この声を聞くや(いな)


「ギュンター……あの子供とあの子供の妹を乗船させろ」


「ご命令とあらば……ですが、ディーン様

幼子(おさなご)とは言え海賊で御座います……ご用心を」


この後、主人公の浮遊魔導に()

(おさな)き海賊”と

その妹をオベリスクの甲板へと乗船させた一行。


◆◆◆


「がはっ!! ……げほげほッ!

た、助かったぁっ……って、何だこの船ッ?!

オンボロ船どころか“超弩級(ちょうどきゅう)戦艦(せんかん)”じゃ……って!?

サナは?! ……サナ、無事か!? 」


「う、うん……テルお兄ちゃんも……無事? ……」


「ああ! おいらは大丈夫だ!

それよりも、サナ……何処(どこ)も痛くねぇか?! 」


そうお互いを気遣って居た(おさな)き兄妹

そんな中、ディーンはゆっくりと(テル)に近付き……


「さて……君の言う“情報”についてだが

我々に取って有益では無いと判断すれば

直ちに下船して貰う事になる……だが

この船の“秘密”を知った以上、生きたまま下船させる事は無い」


……そう、少々過剰に威圧した。


「う、嘘はつかねぇし絶対に有益だから聞いてくれッ!!

そ、その……おいらが

彼処(あそこ)で浮いてる“船長”の部屋の前を通り掛かった時

何時(いつ)もみたいに魔導通信? ……って奴で

“移動船の船長”と話してるのが聞こえたんだ……


“見せしめにする、派手に分かりやすく

出来る限り、恐ろしく見える様

血祭りに上げてくれると助かる……報酬は何時もの倍出そう”


……って“移動船の船長”が言ってたんだよ!

だから、アンタ達を襲う様に指示したのは!! ……」


其処(そこ)までを聞くと大きな溜息(ためいき)()いたディーン

そして、腰に(たずさ)えた愛銃:オルトロスを構え……


「なっ?! ……待ってくれ!!

これ以上おいらが知ってる事は……やっ……止めッ……」


怯える(テル)へと向けられた銃口

直後、オベリスクの甲板に響いた一発の銃声……弾丸は


(テル)……の真横を通り過ぎ、彼の背後

オベリスクへとよじ登った海賊を(つらぬ)いて居た。


◆◆◆


「……さて。


確かに有益な情報だ……約束通り君達の事は救おう。

だが、一つ約束して貰う必要がある。


(かん)の良い君なら(すで)に理解して居るかも知れないが……」


「あ、ああッ! ……この船の“秘密”は誰にも話さないよ!

そ、その代わり……頼む! 妹の病気を(なお)して欲しいんだ。


……装備を見りゃあ分かる

そっちのすっげえ高級そうな装備の

“小太りの姉ちゃん”は回復術師(ヒーラー)だろ? 」


海賊の少年テルは、あろう事か

銃声に慌て甲板へと現れたメルをそう形容した……いや。


して“しまった”……


「小太りって……い、いやぁぁぁぁぁっ!! 」


直後

再び泣き叫びオベリスクの船内へと消えていったメル。


そして……


「あちゃ~……これは尾を引くだろうな

っと……か、代わりに俺が診るよ! 」

(何であんなに気にしてるんだろう?

ムチッとしたメルだって凄く可愛いのに……)


……この後、主人公(かれ)の治癒魔導に()

テルの妹、サナの容態は回復……その後

二人を船内へ(まね)いた一行は

この海域を後にした。


◆◆◆


「お、おい! おれ達も助けろよ!! ……おいっ!!!

ふざけんなてめぇっ!!! おいッ!!! ……」


◆◆◆


一方、主人公(かれ)らが()って(しばら)くの事


“普段の航路(こうろ)”であるこの場所を通った移動船……だが

海賊船の残骸とそれにしがみつく海賊達を目の当たりにした瞬間

移動船の船長はこれに気付かないフリをしつつ

全速力でこの海域を去った。


……移動船の背後に投げつける様に発せられた

“裏切り者”と叫ぶ海賊共を置き去りにしながら。


◆◆◆


所は変わり、元海賊船の乗組員である

“テル”とその妹“サナ”を乗せたオベリスクは

再び日之本皇国(ヒノモトコウコク)を目指し船を進めて居た。


だが、そんな一行の真横を猛スピードで抜き去った巨大な船。


直後、テルはこの船を指差し――


「あ、あれだ! ……あれの船長だよ!!! 」


――そう、一行に伝えたが

ギュンターを含め、誰一人として報復的行動を取ろうとはせず

オベリスクを追い越し、(なお)猛進(もうしん)する移動船を

()えて見逃した。


直後、当然と言うべきか

この判断に疑問を呈すように


「や……やり返さなくて良いのか?!」


そう問うたテルに対し

ギュンターは……


「ええ……船長以下、今回の件に関わった者達には

必ず何かしらの手段を持って対応致します

ですが、あの船の“乗客”には罪は有りません。


(ゆえ)

“彼らが下船するまでは穏便(おんびん)に”

そう、考えただけの話で御座います」


笑みを浮かべ、そう(こた)え……


「そ、そうなのか……(じい)ちゃん、アンタ中々怖い人だな」


そうテルに言われると、再び笑みを浮かべ……


「ええ、海賊船を“真っ二つ”にする程度には

恐ろしい性格をしておりますので……」


と、少々皮肉めいた発言を繰り出したギュンター

この後、テルの心に(ひそ)かに(きざ)まれた彼への評価が


“この(じい)ちゃん敵に回したら一番ヤバイな”


であった事は、言うまでも無いだろう。


◆◆◆


所は変わり、同時刻。


主人公の申し出に()り、正式に

メリカーノア大公国の統治(とうち)領と成ったロミエル法王国

改め“メリカーノア領:ロミエル地区”


……この地区が有する“研究所”

その、半壊(はんかい)した建物へと訪れていたのは

アルバート大公|(ひき)いるメリカーノア軍の精鋭兵士数人と

ニ名のトライスター“ペニー“と“ローズマリー”であった。


彼らは――


「さて、皆……主人公(かれ)はこの研究所が

“危険な研究をして居た”……と言った。


と言う事は、我が国の軍事力を更に強大な物とする(ため)

何か役立つ物があるかも知れないと言う事だ。


何でも良い、手当たり次第に探す様に……頼むよ? 」


――アルバートの命令を受け、書籍や薬草

その他様々な物を手当り次第に探し始めていた。


そして……


「アルバート大公殿下! ……此方(こちら)の本なのですが

何故(なぜ)かは分かりませんが

妙に厳重(げんじゅう)に保管されておりまして……」


「ん? どれどれ……ほう、これは良さそうな物だ

他にも無いか確認しておこう……引き続き探して貰えるかな? 」


「ハッ! ……」


アルバート大公に手渡された一冊の本

その表紙には“双児宮(ジェミニ)之書(のしょ)”と記されて居た。


直後、(しばら)くの間この本に目を通した後

アルバート大公は突如としてニヤリと笑い……


「この本は面白い……我が国の兵力が更に増強されるよ」


そう言うと

この書物を(みずか)らの(ふところ)にしまい込んだ。


研究所跡地から掘り出されたたった一冊の本

だが……この一冊こそ、この“研究所”が有する技術の

(いしずえ)”と言うべき物で――


「さて、そろそろ帰ろうか」


「ハッ! 全隊、アルバート大公殿下に続けッ!! 」


――この日より(しばら)くの後

メリカーノア大公国へ新たな“研究所”が建造(けんぞう)される事と成るのは

また、別のお話……


===第七五話・終===

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