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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝15万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第三章

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第七五話「目的地が見つけられたら楽勝ですか? 」

《――“敵意の無い魔族達の集落”を後にした一行は

日之本皇国(ヒノモトコウコク)行きの船が出ると言う(みなと)を目指して居た。


道なりに進む(うち)、周囲に(しお)の香りが(ただよ)い始め……


……木々の隙間(すきま)から(かす)かに見え始めた巨大な船の()

興奮を(おさ)えられず居た一行……だが、更に近付くにつれ

遠くからでも一目瞭然(いちもくりょうぜん)な程の巨大な()を有するその船が

まるで“小舟”に思える程の“大海”が見え始め――》


………


……



「……この大海を渡れば

主人公様が“目的地”とお(さだ)めに成られた

日之本皇国(ヒノモトコウコク)”に辿り着く物かと思われます」


《――(みなと)に到着後

皆に対しそう説明したギュンターだったが……


……眼下に広がる大海(たいかい)に圧倒され

皆“それどころ”では無かった。


だが、この直後“大きめの咳払い”で注目を集めた(ギュンター)

更に――》


「……さて、警戒すべきは“海賊”で御座いますが

現状“どの海域でどの時間帯が危険なのか”など

詳細な情報は一切持ち合わせておりません……ですので

安定した船旅の(ため)にも

情報収集を(おこな)う事を強くお勧め致します」


《――ギュンターのこの提案に賛同し

直後、情報収集を(おこな)う事と成った一行。


……この後、要らぬ騒ぎを起こさぬ(ため)

少数での情報収集を提案した主人公は

ギュンターとディーンの二人を連れ

港周辺での情報収集を開始した……だが

十数分程の後――》


………


……



「お帰りなさ~い! 役に立ちそうな情報とか有りました~? 」


《――そう、明るく(たず)ねたマリアに対し

(ひど)く落ち込んだ表情を見せた主人公――》


「な……何でそんな暗い雰囲気出してるんですか?!

まさか、日之本皇国(ヒノモトコウコク)が“無い”……とか?! 」


「いやそれは大丈夫だマリア……間違いなくあるし

直行便のチケットも売ってたから……(ただ)、その……」


《――そう言って(うつむ)いた彼は

直後“ある情報”を口にした――》


此処(ここ)を出発したら、その……


……政令国家への“定期連絡”が、出来なくなるみたいなんだ。


出港後(しばら)くなら大丈夫みたいだけど

ある程度海を進むと、何処(どこ)かのタイミングで

魔導通信が出来なくなるらしい。


けど……一度向こうに上陸した後

此方(こっち)に“転移で帰ってくる”とかは出来るみたい。


(ただ)、これにも制限はあるみたいでさ

川岸とか海岸に飛ぶ事は出来ても、直接

何処(どこ)かの国に飛ぶのは難しいみたいで……」


《――そう(ひど)く落ち込んで居た主人公に対し

ガルドは――》


「ふむ……で、有るならば主人公よ

皆、出港前に連絡を入れたい相手も多い事だろう。


そうで無くとも……今の内に

(しばら)く連絡が取れぬ”と伝えておくべきであろう? 」


「確かに……じゃあ取り敢えず……」


《――この後

最後の定期連絡を繋げた主人公。


……涙する者や、笑顔で別れを告げた者

そして、主人公(かれ)は――》


………


……



「ええ、なので……日之本皇国(ヒノモトコウコク)って所に行って

それでも目当ての情報が無かったらこの旅を終えて

一旦(いったん)、政令国家に帰ろうかなって思ってます」


「そうかい……(しばら)く顔を見られないのは残念だが

(いず)れにしても、もう少ししたら

主人公ちゃん達は帰ってくるんだね? 」


「はい! ……とは言え“精霊族の件”もありますし

帰還後もまた改めて旅をする可能性は(おお)いにありますけど

(いず)れにしろ直ぐに帰ります! 」


「そうかい! ……なら寂しくは無いさ。


主人公ちゃん達の探している物が見つかる様

陰ながら祈っておくとしようかねぇ……だが、その代わり

帰って来たら約束通り、あたしに一番に

“ただいま”って言っておくれよ? 」


「ええ! ……勿論(もちろん)ですッ!! 」


「良い返事だ! ……さて

あたしはそろそろ(ばん)の仕込みをするから

主人公ちゃん達も怪我の無い様に無理せず過ごすんだよ! 」


「はいッ! ……ミリアさんもお元気で! 」


《――この後


旅の集大成(しゅうたいせい)とも言える目的地への不安と期待を胸に

ついに出港する事と成った一行。


とは言え……高額な乗船料と子供達の事を考えれば

“移動船”を利用する事は得策(とくさく)とは言えず

熟考の後、オベリスクを(もち)

目立たぬ場所から出港する事を選んだ一行……だが。


この選択は後に、ある“騒動”を引き起こす

原因と成ってしまうのだった――》


………


……



「いや~流石(さすが)はオベリスク、海の上でも安定してますね~」


「お褒めに預かり光栄で御座います主人公様……ですが

本来オベリスクは船で御座いますので、少々複雑でも御座いますね」


「それもそうですね! アッハッハッ! 」


《――出港後

順調に航海を続けて居たオベリスク

当然の様に周囲から見えるオベリスクの姿は偽装(ぎそう)され、

その姿は何処(どこ)にでもありそうな

小さな“木造船”の様相(ようそう)をして居た。


そして、その姿から想像出来る速度を決して超えぬ様

ギュンターは慎重な舵取(かじと)りを続けて居た。


一方で――》


………


……



《――(みなと)では“移動船”が出港の準備を進める中

船長に対し、ハンチング帽を目深(まぶか)に被った一人の男が

静かに耳打ちをして居た――》


「成程……それは頂けない。


この海域を移動する時は

必ず、私の“移動船”を利用するのが暗黙の了解である筈

何処(どこ)の田舎者かは知らないが“ボロ船”で密航とは。


だが……その様な(やから)が増えでもすれば

此方(こちら)(しめ)しがつかん……報告ご苦労。


駄賃(だちん)だ……さて、そろそろ出港時刻だ

後は私が……“処理”しよう」


「へい! 毎度っ! ……」


《――船長から駄賃を受け取ると、船から降り

何処(どこ)かへと立ち去って行ったハンチング帽の男。


一方……出港後(しばら)()ち船内で昼食を取って居た一行は

メルの“ある”大きな変化に興味を(しめ)して居た――》


………


……



「……いや~それにしても航海中に食事って

何だか豪華客船にでも乗ってる様な気分になるね~!


……ってかメル、何だか今日は“良く食べる”ね? 」


《――隣に座るメルに対し

そう(たず)ねた主人公――》


「えっと……そのっ、何だか

不思議な位にお腹が()いててっ……」


「メルよ……御主は既に

吾輩(わがはい)でも感心する(ほど)に食べて居るぞ?

もしや……“妊娠”でもしたのでは無かろうな?

もし、そうであるならば……主人公、責任は取るのだぞ? 」


《――このガルドの“ド直球な発言”に対し

耳まで真っ赤になりつつ全力で否定したメルと主人公。


しかし……(ガルド)がそう考えてしまう程

メルの食事量は常軌(じょうき)(いっ)して居た。


……この、あまりにも凄まじい食欲に

皆が呆気(あっけ)に取られて居た一方で

突如として思い出した様に(かた)り始めたのは

精霊族のベンだった――》


「あっ! ……そう言えば!

ねぇねぇメルちゃん! つい先日固有魔導を手に入れたよね? 」


「は、はいっ! お陰様で習得出来ましたけど

何故(なぜ)、今その話題をっ?? 」


「いや、メルちゃんの固有魔導って

端的(たんてき)に言うと“オーク族の権化(ごんげ)”みたいな感じだったでしょ?

だから……恐らくなんだけど、固有魔導発動後は


“オーク並みに食べる様に成る”


……みたいな副作用が出るんじゃないかな~って思ってね! 」


「そう言えば……確かに

固有魔導後からお腹が()いてた様な気がしますっ……」


《――そう言うと

少しばかり恥ずかしそうにしたメル

一方、そんな彼女に対し――》


「別に恥ずかしがらなくて大丈夫だよ!

気を使わずどんどん食べて! ……沢山食べるメルも素敵だから! 」


《――そう言った主人公。


この後、彼の言葉に(ほほ)を赤らめつつ

引き続き食事を楽しんだメル……一方、主人公を含め

(すで)に食事を終えていた者達は、食後の休憩がてら

甲板で周辺の様子を確認し始めて居た――》


………


……



「それにしても、まさかメルが固有魔導を……それも

明らかに“物理特化”なのを習得しちゃうとはびっくりだったなぁ」


《――周辺を見渡しながらそう言った主人公に対し

マリアは――》


「ええ、私もビックリしました! ……と言うか

固有魔導発動中のメルちゃんって

ガルドさんより大きな身体に成ってましたよね?

正直、物理職の“先輩”な私としては若干ジェラシーだったりも? 」


「えッ? ……い、いやまぁ分からなくも無いけど

てか、固有“魔導”なのに物理特化な物があるのには驚いたよ」


《――そう言った主人公に対し

マグノリアは――》


「いえ、何も不思議では有りませんワ?

ギュンターさんやディーンさんの固有魔導も

ある意味では物理型と呼ぶべき物ですもの。


それに、本来固有魔導とはその人の持つルーツや好み

それらを反映して生まれる物ですワ?

第一、魔導に限界は有りませんワ? ……その上

特異(とくい)な生まれの者”ならば尚更(なおさら)……」


《――と話すマグノリアを(さえぎ)る様に

突如として遠くを指差し――》


「待て……あの船、明らかに此方(こちら)に近づいて居る

何やら妙な雰囲気だ……“海賊”やも知れん」


《――そう言うと

ギュンターに警戒を強める様指示を出したディーン


直後、慌ただしくなり始めた船内の様子に

食事を中断し甲板へと現れたメルは――》


「おっ、おまたせしてすみませんっ! ……私も手伝いますっ! 」


《――少し慌てた様子でそう言った

だが、彼女を見るなりマリーンは――》


「えっと……メルちゃん?

もしかして固有魔導発動して……る? 」


「へっ? ……してませんよっ?? 」


「じ、じゃあ……少し“食べ過ぎ”かも知れないわね」


「えっ? 食べ過ぎって……ど、何処(どこ)かに(かがみ)っ!

ハッ?! ……いやぁぁぁぁぁっ!!! 」


《――突如として悲鳴を上げたメルに慌て

勢い良く振り返った主人公。


直後、彼の目に写ったメルは――》


「あ、あのっ……主人公さんっ……

こっ……こんな姿っ……み、見ないで下さいっ!! 」


《――常軌(じょうき)(いっ)した食欲の所為か

普段のメルよりも少々“大きく”なって居た彼女

端的(たんてき)に言えば……彼女は“ぽっちゃり”して居たのだ。


……言うまでも無く

彼女の固有魔導が持つデメリットが(ゆえ)なのだが

その一方で……顔を隠し、恥ずかしそうにして居たメルの事を

少しでも元気付ける(ため)だったのか――》


「……メル、気にしないでも大丈夫だ

きっとすぐに元通りに成るだろうし

仮にすぐには戻らないとしても全然問題無いよ!

だって……ムチムチっとしたメルも可愛いから! 」


《――そう言った主人公。


先程の“食事”と同じく、彼に取っては

“フォロー”のつもりだったのだろうが――》


「ム……ムチムチって……ふっ……ふっ……


……“太ってる”って事ですねぇぇぇぇぇっ!!! 」


《――そう大声で泣き叫ぶと

逃げる様に操縦室へと姿を消したメル

当然、慌てて追いかけようとした主人公であったが――》


「お待ち下さい主人公様!

貴方のデリカシーの無さが(まね)いた結果

(すなわ)ち“デリカ死”を()めても何にも成りませんわ!

メルさんとの問題はこの(さい)

“時間が解決する物”として諦めるべきです!

それよりも……今はあの“敵船”への対応を優先して下さいませ! 」


《――と、(いた)って真面目な顔で主人公に対しそう言い放ったタニア

当然、色々と“何か言いたげ”な様子の主人公だったが

差し迫る脅威を優先せざるを得ず――》


………


……



「……其処(そこ)のボロ船!!!

死にたくねえなら大人しく停船してオレ達に(したが)えッ!!! 」


《――直後

オベリスクに向けそう勧告(かんこく)した“敵船”の船長らしき男。


“敵船”は()髑髏(ドクロ)(はい)した

見た目通りの、所謂(いわゆる)“海賊船”であった。


……だが、この勧告(かんこく)に一切(おう)じず

ギュンターは航行(こうこう)を続けた。


すると――》


「チッ……いい度胸じゃねえか!

野郎どもっ!!! あのボロ船に鉛玉をお見舞いしてやれっ!!! 」


《――船長がそう命じるや否や

海賊船からは銃弾の雨が降り注いだ……だが

主人公の展開した防衛魔導はそれらを容易(ようい)に防ぎ切り――》


「チッ……魔導師が乗ってやがるのか!


野郎どもっ! あんなオンボロ船に乗ってる魔導師なんざ

大したタマじゃねえ筈だ!大砲でもなんでも

撃てるもん全て使って構わねえ!


……沈めちまうまで撃ち続けろっ!!! 」


《――直後

再びオベリスクに向けあらん限りの銃弾や砲弾……更には

弓矢まで(もち)い、徹底的に攻撃を続けた海賊船の乗組員達。


だが、やはりその全てを防ぎ切った主人公

無論(むろん)オベリスクには(かす)り傷一つ付く事は無く

(なお)も何事も無く航行(こうこう)を続けて居た。


一方……船長以下、海賊船の乗組員達は

呆気(あっけ)にとられ立ち尽くして居た。


……そんな中

これまで()えて沈黙を守って居たギュンターは――》


「……主人公様、ご苦労様で御座いました。


さて……そろそろ私めも反撃を致しませんと

このまま無視を続けて居ては(いささ)か失礼かと存じますが

ディーン様……宜しいでしょうか? 」


「任せる……だが、最小限度

()つ、一撃のみに(とど)める様にな」


「承知致しました、ではご挨拶代わりに

副砲(ふくほう)を一発だけ使用致しましょう」


《――そう言うと

オベリスクの副砲を海賊船に向け発射したギュンター


だが――》


………


……



「ふ、船が沈むぞ~っ!! ……」


《――(ギュンター)の狙い通りに命中した砲弾


……だが、(わず)か一撃にも関わらず

海賊船の船体は見事に“真っ二つ”と成ってしまって――》


「おや……想定よりも遥かに(もろ)い船だった様で御座います

少々予定とは違いますが、仕方ありませんね……」


《――海賊船の想定外の(もろ)さに

愚痴にも思える様な発言をしたギュンターは

この直後、運良く生き残り海賊船の“残骸”にしがみついて居た

数十名の海賊達に向け――》


「さて、この中に生き残るに(あたい)する

“情報”を持つ者はおりますでしょうかな? 」


《――“拡声器”を(もち)い、冷たくそう言い放った

すると――》


「お……おい!!

……助けてくれるってんなら何でもする!

アンタが情報を欲してるってんなら知る限りの事を全て()く!

だからオレを! ……」

「いいや! おれの方がコイツより有用な情報を持ってるぜ!? 」

「んだとてめぇっ?!! ……」


《――生き残る(ため)

我先(われさき)に、と言い(あらそ)い始めた海賊達

しかし、(みにく)く言い(あらそ)海賊達(かれら)に対し――》


「助かりたいが(ため)の嘘を聞く程、私めも暇では有りません」


《――切り捨てる様に言ったギュンター

だが、この直後……一人の“(おさな)き海賊”は

一際(ひときわ)大きな声を上げ――》


「ア……アンタ達を狙えって言った奴の事を知ってる!!!

妹の事を助けてくれるなら全部話す!!!

おいらの事は良いから……だから、頼むっ!!! 」


《――そう、必死に叫んだ


(おさな)き海賊”


この声を聞くや(いな)やディーンは――》


「ギュンター……あの子供とあの子供の妹を乗船させろ」


「ご命令とあらば……ですが、ディーン様

幼子(おさなご)とは言え海賊で御座います……ご用心を」


《――この後


主人公の浮遊魔導に()り“(おさな)き海賊”と

その妹をオベリスクの甲板へと乗船させた一行。


そして――》


………


……



「がはっ!! ……げほげほッ!

た、助かったぁぁっ……って、何だこの船ッ?!

オンボロ船どころか“超弩級(ちょうどきゅう)戦艦(せんかん)”じゃ……って!?

サナは?! ……サナ、無事か!? 」


「う、うん……テルお兄ちゃんも……無事? ……」


「ああ! おいらは大丈夫だ!

それよりも、サナ……何処(どこ)も痛くねぇか?! 」


《――そうお互いを気遣って居た(おさな)き兄妹

そんな中、ディーンはゆっくりと(テル)に近付き――》


「さて……君の言う“情報”についてだが

我々に取って有益では無いと判断すれば

直ちに下船して貰う事になる……だが

この船の“秘密”を知った以上、生きたまま下船させる事は無い」


《――そう、少々過剰に威圧した

すると――》


「う、嘘はつかねぇし絶対に有益だから聞いてくれッ!!

そ、その……おいらが

彼処(あそこ)で浮いてる“船長”の部屋の前を通り掛かった時

何時(いつ)もみたいに魔導通信? ……って奴で

“移動船の船長”と話してるのが聞こえたんだ――


“見せしめにする、派手に分かりやすく

出来る限り、恐ろしく見える様

血祭りに上げてくれると助かる……報酬は何時もの倍出そう”


――って“移動船の船長”が言ってたんだよ!

だから、アンタ達を襲う様に指示したのは!! ……」


《――其処(そこ)までを聞くと大きな溜息(ためいき)()いたディーン

そして、腰に(たずさ)えた愛銃:オルトロスを構え――》


「なっ?! ……待ってくれ!!

これ以上おいらが知ってる事は……やっ……止めッ……」


《――怯える(テル)に向けられた銃口

直後、オベリスクの甲板に響いた一発の銃声――》


………


……



《――弾丸は(テル)


……の真横を通り過ぎ、彼の背後

オベリスクへとよじ登った海賊を(つらぬ)いて居た――》


「さて……確かに有益な情報だ、約束通り君達の事は救おう

だが、一つ約束して貰う必要がある。


(かん)の良い君なら(すで)に理解して居るかも知れないが……」


「あ、ああッ! ……この船の“秘密”は誰にも話さないよ!

そ、その代わり……頼む! 妹の病気を(なお)して欲しいんだ。


……装備を見りゃあ分かる!

そっちのすっげえ高級そうな装備の

“小太りの姉ちゃん”は回復術師(ヒーラー)だろ? 」


《――海賊の少年テルは、あろう事か

銃声に慌て甲板へと現れたメルをそう形容した……いや。


して“しまった”――》


「小太りって……い、いやぁぁぁぁぁっ!! 」


《――直後

再び泣き叫びオベリスクの船内へと消えていったメル。


そして――》


「あちゃ~……これは尾を引くだろうな

っと……か、代わりに俺が診るよ! 」

(何であんなに気にしてるんだろう?

ムチッとしたメルだって凄く可愛いのに……)


《――この後


主人公(かれ)の治癒魔導に()り、テルの妹サナの容態は回復

その後、二人を船内へ(まね)いた一行は

この海域を後にした――》


「お、おい! おれ達も助けろよ!! ……おいっ!!!

ふざけんなてめぇっ!!! おいッ!!! ……」


《――主人公(かれ)らが()って(しばら)くの事


“普段の航路(こうろ)”であるこの場所を通った移動船……だが

海賊船の残骸とそれにしがみつく海賊達を目の当たりにした瞬間

移動船の船長はこれに気付かないフリをしつつ

全速力でこの海域を去ったのだった。


……移動船の背後に投げつける様に発せられた

“裏切り者”と叫ぶ海賊共を置き去りにしながら――》


………


……



《――所は変わり

元海賊船の乗組員である“テル”とその妹“サナ”を乗せたオベリスクは

再び日之本皇国(ヒノモトコウコク)を目指し船を進めて居た。


だが、そんな一行の真横を猛スピードで抜き去った

巨大な船――


“移動船”


――直後

テルはこの移動船を指差し――》


「あ、あれだ! ……あれの船長だよ!!! 」


《――そう、一行に伝えたが

ギュンターを含め、誰一人として報復的行動を取ろうとはせず

オベリスクを追い越し、(なお)猛進(もうしん)する移動船を

()えて見逃した……だが

この判断を見るや否や――》


「や……やり返さなくて良いのか?!」


《――そう問うたテルに対し

ギュンターは――》


「ええ……船長以下、今回の件に関わった者達には

必ず何かしらの手段を持って対応致します

ですが、あの船の“乗客”には罪は有りません。


(ゆえ)に――


“彼らが下船するまでは穏便(おんびん)に”


――そう、考えただけの話で御座います」


《――笑みを浮かべ

そう(こた)え――》


「そ、そうなのか……(じい)ちゃん、アンタ中々怖い人だな」


《――そうテルに言われると

再び笑みを浮かべ――》


「ええ、海賊船を“真っ二つ”にする程度には

恐ろしい性格をしておりますので……」


《――と、少々皮肉めいた発言を繰り出したギュンター

この後、テルの心に(ひそ)かに(きざ)まれた彼への評価が


“この(じい)ちゃん敵に回したら一番ヤバイな”


であった事は、言うまでも無いだろう――》


………


……



《――所は変わり

同時刻、主人公の申し出に()

正式にメリカーノア大公国の統治(とうち)領と成ったロミエル法王国

改め――


“メリカーノア領:ロミエル地区”


――この地区が有する“研究所”

その、半壊(はんかい)した建物へと訪れていたのは

アルバート大公(ひき)いるメリカーノア軍の精鋭兵士数人と

ニ名のトライスター“ペニー“と“ローズマリー”であった。


彼らは――》


「さて、皆……主人公(かれ)はこの研究所が

“危険な研究をして居た”……と言った。


と言う事は、我が国の軍事力を更に強大な物とする(ため)

何か役立つ物があるかも知れないと言う事だ。


何でも良い、手当たり次第に探す様に……頼むよ? 」


《――直後


アルバートの命令を受け、書籍や薬草

その他様々な物を手当り次第に探し始めた兵士達。


そして――》


「アルバート大公殿下! ……此方(こちら)の本なのですが

何故(なぜ)かは分かりませんが

妙に厳重(げんじゅう)に保管されておりまして……」


「ん? どれどれ……ほう、これは良さそうな物だ

他にも無いか確認しておこう……引き続き探して貰えるかな? 」


「ハッ! ……」


《――アルバート大公に手渡された一冊の本

その表紙には“双児宮(ジェミニ)()(しょ)”と記されて居た。


……直後、(しばら)くの間この本に目を通した後

アルバート大公は突如としてニヤリと笑い――》


「この本は面白い……我が国の兵力が更に増強されるよ」


《――そう言うと

この書物を(みずか)らの(ふところ)にしまい込んだ。


研究所跡地から掘り出されたたった一冊の本

だが……この一冊こそ、この“研究所”が有する技術の

(いしずえ)”と言うべき物で――》


「さて、そろそろ帰ろうか」


「ハッ! 全隊、アルバート大公殿下に続けッ!! 」


《――この日より(しばら)くの後

メリカーノア大公国へ新たな“研究所”が建造(けんぞう)される事と成るのは

また、別のお話――》


===第七五話・終===

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