第七四話「楽勝を失い、そして……」
ロミエル法王国“研究所”での死闘を終えた一行
マリーンを救い
管理者の妻を救い
E.D.E.Nシリーズをも救い……それらを
僅か一日足らずで成し遂げた
“奇跡”と言う言葉ですら足りぬ程の幸運を得た主人公。
だが、その代償として失われる事と成った強大な力……
“固有魔導:限定管理者権限”
……剰え
転生者として決して知るべきでは無い世界の仕組み
その情報の一端を知る事と成ってしまった主人公は
反面、そんな問題を全て些末だと思ってしまう程
ある問題に憂慮して居た……
“ロミエル法王国の行く末”
“ウバン王国の二の舞に成りかねない”
……誰に責められるでも無く
オベリスクの甲板で一人思い悩んで居た主人公は
何時もの様に魔導通信を用いて
ラウド大統領に対しこの国の統治を願い出て居た。
しかし……
◆◆◆
「ううむ……引き受けたいのは山々じゃが、今は無理なのじゃよ」
「“友好国との兼ね合い”ですか? 」
「そうでは無くてのぅ……政令国家は此処の所
急激に大きく成り過ぎて居るんじゃよ……それ故
その様に遠い国の統治が出来る人材が足りんのじゃよ
とは言え……代案が無い訳では無いから安心せぃ! 」
「ほ、本当ですか?! そ、その“代案”とは? 」
「と言うのも、メリカーノア大公国ならば友好国じゃし
引き受けて貰える可能性は高い、故に
アルバート大公に頼んでみると良いかも知れんと思ったのじゃよ! 」
「成程! ……って言うか、連絡の度に
面倒事を押し付けてしまって本当に申し訳ありません
今後は楽しい話題で連絡出来る様にしますので! ……では! 」
「うむ! ……あまり気負わず、無理せず旅をするのじゃよ! 」
◆◆◆
この後
アルバート大公に対し
ロミエル法王国の統治を願い出た主人公
直後、これを二つ返事で引き受けたアルバートに対し謝辞を伝えた後
彼は休む事無く、次なる“問題”の解決へと移った。
……それは、E.D.E.Nシリーズ
通称“エデン隊”に関する問題であった。
彼は、エデン隊の命を助ける為
敵意の無い魔族達の集落へと転移し、彼女達を助けて貰える様
集落の魔族達に頭を下げるつもりで居た。
だが……
◆◆◆
「私達がこの集落に対し甚大な被害を齎した事
何を言えば許されるなどとは思っておりませんわ、ですが……」
転移後
集落の魔族達に対し頭を下げて居たエデン。
部下であるグリフ、ダンもこれに続き
彼らなりに精一杯、誠心誠意謝罪の言葉を述べ
集落の魔族達は唯、静かに
彼らの謝罪に耳を傾けて居た。
そして……暫しの沈黙の後
集落の長はエデンに対し……
「……気持ちは良く分かッタ、その件に関しては許そウ
だガ、一つ……いや二つ程、訂正して貰いたい事が有ル」
「訂正? ……何を訂正すれば宜しいのですか? 」
「まず一つ目……貴女は今“甚大な被害”と言っタ
だガ……我々は誰一人として負傷すらしていなイ。
“甚大な”とは……些か失礼な話ダ。
だガ、何よりも重要なのは二つ目の方ダ……」
そう言った瞬間
集落の長はとても険しい表情を浮かべて居た。
一行に緊張の走る中、長は……
「……我々は平和に暮らす事を是とする魔族ダ。
魔王の配下に甘んじて居る者共とは根本が違ウ
貴女達が間違いを犯した程度で許さぬ程に狭量で
改心した魔族を追い返す程、愚かな存在だと思われて居る事が
我々は心の底から気に入らないのダ。
……我々は、貴女達ガこの集落で“暮らす”事を選ぼうとも
それを受け入れるつもりダ……私の言葉を理解したのなら
二つの発言を“訂正”して貰いたイ」
集落の長はそう言うと
エデン達に対し優しく微笑んだのだった……
「ええ、仰られる通り……いいえ。
それ以上に寛大で素晴らしい方々であると理解致しましたわ
失礼な発言……お許し頂けますでしょうか? 」
「ウム! ……では、早速治療をしようでは無いカ!
皆の者……準備ダ!! 」
「い、いきなりですわねっ?! ……で、でも! 少しお待ちを!
……ディーンさん、一つお願いがあるのですけれど宜しいかしら? 」
「何だね? 」
「……もし許されるのならば
私達はこの集落に恩返しがしたいのです。
ですから……無事に治療が終わり次第、出来れば
我が隊はこの集落に留まり、今度は
この集落を護る為に戦いたいのですけれど……
……お許し頂けるかしら? 」
「ああ……それを君が望み、それを幸せと思うのであれば
私はそれを止めはしない……好きにすると良い」
「感謝致します……では、治療をお願い致しますわ」
「フム……嬉しい申し出ダ
では早速治療を開始する……少し苦しいゾ」
◆◆◆
この後、三名は無事治療を終え
晴れて、この集落の魔族達と共に平和な生活を送る事と成った。
……だが、その一方
エデン隊の無事を確認すると
早々に集落から立ち去る事を決めた主人公。
そんな彼に対し、集落の長は気遣うように
「主人公……急がずとモ
せめて数日、此処で休んで行っても良いのだゾ? ……」
そう言った。
隠せないほど満身創痍な彼を心配していた集落の長に対し
感謝を示しつつもこれを断った主人公。
この時、彼が妙に“急いで居た”理由は……
“ディーンの為”
……例え、後数日程度でも此処に居れば
間違い無くエデンとの別れが辛くなるだろう事
そもそも、この所の別れの連続に少なからず
ディーンが落ち込んで居ると知っていたからであった。
(……けど。
本当の所、俺自身も少なからず
寂しさを感じて居たのかも知れない……その言い訳に
ディーンを使っただけかも知れない……けど。
……この時の判断が何れであるにせよ
旅の一つの目標である“日之本皇国”へと向かい
たとえ其処に目指して居た物が無くても、俺は
この旅に一つの区切りを付けなければ成らない……)
「ええ……まぁ確かに体調が万全って訳では無いですが
何だか早く目的地に辿り着きたくて!
たッ……唯の我儘なんですけどね!! 」
“痩せ我慢”と“照れ隠し”が混ざった様な俺の態度に
何かを察してくれた集落の長は
これ以上、俺を引き留めはしなかった。
「フム……では、せめて皆の旅が平穏無事な物で有る事を祈り
我が集落に伝わる“門出の歌”を贈ろウ……」
長がそう言うと、集落の魔族達は次々と歌い始めた。
直後……魔族も魔物も各種族も人間も、全ての垣根を超え
聴く者全てを癒し……そして、勇気付ける様な
そんな歌声に送り出された俺達……この後
子供達を引き連れ、オベリスクへと乗船した俺達は
甲板に上がり、魔族達の姿が見えなくなるまで
精一杯手を振り続けた……
「さよ~なら~ッ! また会える日を楽しみにしていま~すッ!! 」
「うム! ……お前タチの旅が
順風満帆である事を祈っているゾ~!! 」
◆◆◆
互いに手を振り
互いの無事を祈り、別れを惜しみ続けた彼らは……この後
幾度と無く再会する事と成るのだが……それはまた、別のお話。
◆◆◆
一方……彼らが日之本皇国を目指し
集落を後にする少し前の事……彼らと別れ
“竜族の集落”に残って居たライラは……
「……ライラちゃん、覚悟は良いかい?
巨龍の変化……そろそろ始まるよ」
「うん……私……ドラゴンの事……信じてる……」
“驚天動地期”を迎えて居た“ドラゴン”
その様子を、少し離れた場所から心配そうに見つめて居たライラ
一方、そんな彼女の横に立って居たドラガは
彼女に対し……
「大丈夫……食事は潤沢過ぎる程に用意したから
これでも足りなければ仲間達が狩って来る。
……だから大丈夫さ! 」
そう、彼女を安心させようとして居た。
だが、その一方で……竜族達に依って用意された
大量の肉をライラの眼前で貪り食って居た
“ドラゴン”……その姿は、彼女が今まで目にしたどの時よりも
遥かに悍ましく……彼女すら
僅かに“恐怖”する程の物であった……
「頑張って……ドラゴン……」
僅かに感じた恐怖を押し殺し、静かにそう言ったライラ
……一方、そんな“ドラゴン”を囲って居た
集落の善なる巨龍達は“ドラゴン”の暴食を
まるで“応援”するかの様に、様々な鳴き声を上げながら
魔物の肉を鼻先で押し出し“ドラゴン”に与え続けて居た。
そんな、ある意味で平和な様子を眺めつつ……
「順調だね……この様子なら恐らくは
善なる巨龍として、今まで通り二人で過ごせる筈……」
そうドラガが言い掛けた
瞬間……
「キ゛ャ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛オ゛ンッッ!!! 」
「ドラ……ゴン? ……」
何がその逆鱗に触れたのか
直後、周囲を囲む善なる巨龍に向け
“ドラゴン”は火炎を吹き掛け……
「……ま、不味いッ!
ライラちゃん離れてッ!! ……」
呆然と立ち尽くすライラの腕を引きながら
そう叫んだドラガ……一方。
“攻撃”を受けた善なる巨龍達は怒り狂い
“異物”と見なしたライラの“ドラゴン”を攻撃し始め……
「止めてっ!!! ……ドラゴンに酷い事しないで!! ……」
周囲を取り囲み“ドラゴン”に対し火炎を差し向けた
善なる巨龍達……その様子に慌てたライラは
この状況を止める為“ドラゴン”の元へ駆け寄ろうとした。
言うまでも無く、そんな彼女を制止したドラガは……
「……落ち着くんだ!!!
今近付けば君の“ドラゴン”だけじゃ無く
周りを囲んだ巨龍達からも攻撃を受けてしまう!
此処からどうなるにしろ……近付く事は許可出来ないッ!! 」
そう言った、だが
ライラは制止を受け入れず……この後も
彼女はドラガの制止を振り解き
集落の竜族達からも引き止められながら
必死に“ドラゴン”へと呼び掛け続けて居た。
……一方“異物”と見なされ
尚も攻撃を受け続けて居た“ドラゴン”は
明らかに衰弱し始めて居た。
だが……にも関わらず
尚も自らを囲む善なる巨龍達に対し
敵意を剥き出しに暴れ続けた“ドラゴン”
だが、その攻撃は全て躱され
その“殺意”を感じ取った善なる巨龍達は
更に激しく“ドラゴン”を攻撃し始めた。
「ドラガさん!! ……ドラゴン達を……止めてっ!!! 」
「……無理だ、彼らは僕すら瞬殺する程に強いんだ
それに、君の“ドラゴン”はもう……悪に染まって……」
「嫌っ!! ……こんなお別れする位なら……
ディーン様と一緒に旅をして……ディーン様の前で暴れて……
ディーン様に倒された方が……何倍も……マシだったっ!!
……お願い“ドラゴン”っ!!!
元の優しい貴女に戻ってッ!!! ……」
泣き叫び、必死に訴え続けたライラ
だが、彼女の声が“ドラゴン”に届いて居る様子は無く……直後
“ドラゴン”は更に悪へと染まり……その体色さえも
禍禍しく変化させ始めて居た、そして……
「あれは!? ……皆ッ!!!
避けろッッ!!! ――」
ドラガの叫ぶ様な声
瞬間……“ドラゴン”の鱗は急激に黒く変色し
激しい衝撃波を発生させた……そして、直後
空高く飛翔し、周囲に漆黒の炎を放つと
善なる巨龍達に対し
悍ましい咆哮を上げたのだった……
「もう……駄目だ
あの子は悪に染まりきってしまった……ライラちゃん。
残念だけど、もう……あの子は
“危険な存在”に成ってしまった……」
「……離してドラガさん。
悪に染まったと言うあの子を……もし、貴方達が殺すと言うのなら
それなら……私も一緒に死にたい……私達はッ!!!
ずっと一緒じゃなきゃ……駄目……」
「な、何を言って……」
「離してッッ!!! 」
ライラの意思は固く、ドラガに対しそう言い放った。
……彼女のあまりの気迫に、竜族達は
思わずライラの拘束を緩めてしまい……直後
荒れ狂い、漆黒に染まった“ドラゴン”の傍へと近付いたライラ
彼女は……
「ドラゴン……ごめんね……私は何にも……
貴女の事……分かって無かったんだね。
私……何も知らなかった
“驚天動地期”……そんな時期がある事すら。
……何時も背中に乗せてくれて
ずっと一緒に居てくれて……楽しい時間だった。
ねぇドラゴン……貴女がまだ“卵”だった頃
私と“繋がってた”事……覚えてる? ――」
◆◆◆
遠い昔
ロミエル法王国:研究所
時代は……“ディーン隊”は疎か
“D.E.E.Nシリーズ”とさえ呼ばれる事無く
皆、唯の“番号”で呼ばれて居た頃まで遡る……
―――
――
―
「チッ……まだ手術は終わらないのか? 」
「そ、それが……所長様
その……“四番”の巨龍なのですが、そもそも卵ですから
これを仮に体へと埋め込んだ所で、どれ程上手く行ったとしても
四番の腹を掻っ捌いて巨龍が生まれるだけですし
貴重な実験体を無駄に減らしてしまうだけかと……」
「そんな事はわかっているッ!!
……これまで、数百もの実験体を無駄にして
選りすぐりの実験体を五体も集めたのだ……四番のみ失敗では
駒としての程度が下がるだろうがッ!!!
巨龍を孵化させる方法は未だ分かっていないのか?! 」
「い、いえ……巨龍の卵でございますから
巨龍に育てさせれば孵化は致しますが……」
「貴様……私を舐めているのかッ?!
……僅か卵一つ手に入れる為だけに
一体どれだけの実験体と改造兵が無駄になったと思っているッ?!
“出来ません”では済まされんのだぞ?!
貴様の命でも何でも……道具は何を使っても構わん
成功させられないのなら貴様も実験材料にしてやるから覚悟しておけッ!!!
……良いなッ?!! 」
「ひぃっ?! ……で、ですが……」
どれ程部下を恫喝した所で
巨龍の卵を孵化させる方法が降って湧きなどしない事は
“所長”自身も分かっていた……だが。
この恫喝に恐怖し、身の危険を感じた部下は
突如として、あまりにも突拍子の無い提案をした……
「で、あれば……四番にその……
“母龍の代わりをさせる”と言うのは如何でしょうか……」
「ほう? ……どうするつもりだ? 」
「そ、その……現在分かっている事ですが
巨龍の卵が孵化する為に必要なのは
“温度”では無く……特殊な魔導力でして……」
「それならば私も知って居る……で、どうする? 」
「無論、人間には存在し得ない魔導力ですから
人間の身には用意出来ませんが……その代わりに
四番へ予め改造手術を施し
その肉体と卵の持つ魔導を結びつける様に
“血液と魔導を混ぜ合わせる”のです!
……確か、あの“魔族の女”もその様な事を言って居た筈ですし
この方法が成功すれば、使役させる程では無くとも
意識の共有や命令程度ならば可能になるかと考えております! 」
「出来ると言うのだな? 失敗は許さんぞ……」
「え、ええ! 勿論でございます! ……直ちに手術を!! 」
この後……幼い彼女の身体は
研究者の“我が身可愛さ”故に傷つけられ
幾度と無く改造を施され続けた。
……ディーン隊の中で最も手術回数と改造箇所の多かったライラ
彼女は、生きて居る事さえ奇跡と言うべき状況を生き延び続けた。
だが、地獄など生ぬるい程の苦しみを味わい続けた彼女は
幾度と無く生死の境を彷徨い続け
少しずつ、感情と呼べる物を失って行った。
……そして。
“幸”か“不幸”か……
◆◆◆
「つ……ついにやったぞ!!!
所長様っ!!! ……安定期に入りました!!
巨龍の卵に四番の血液が順応し
四番にも巨龍の血液が順応し始めております!
こ、これならば……普通に使役して居る物と
然程変わらぬ能力が発揮出来る物と思われますッ!! 」
「ほう、良くやった……これで貴様の無事も保証されたと言う事だ」
「あ、有難うございますッ!! ……」
◆◆◆
手術の成功から数週間後
彼女は他の実験体達と同様牢獄へ閉じ込められて居た。
だが……牢に閉じ込められた彼女は、感情を完全に失い
腹部に括り付けられた巨龍の卵と
痛々しい手術|痕や、歪に接続された管に依り
其処彼処から血を滲ませたまま
一日中、その場に座り続けて居た。
……そんな彼女に対し
他の“実験体”達がどう呼び掛けようとも
彼女は常に無反応だった。
だが……そんな状況が数ヶ月程続いたある日の事
彼女は、数ヶ月振りに声を発した……
◆◆◆
「……ドラ……ゴン……私も……空腹……」
「よ、四番!? ……やっと話したか!!!
しかし……“ドラゴン”だと?
誰と喋って……いや、まさかその卵と!? 」
ライラに対し驚きを持ってそう声を掛けた男
彼の囚人服の胸元には“一番”と刻まれて居た。
彼の現在の名前は……“ディーン”
直後
“彼の問いかけに対し四番
もとい“ライラ”は……
「……ドラゴン……空腹……でも
“私を食べたく無い”……って……言う……」
「何? ……どう言う意味だ?
君を食べる? ……君の身体に浮かび上がって居る
その“模様”が何か関係しているのか? 」
そう言って彼が指差した場所
ライラの身体に彫られた刺青は
赤く、そして黒く蠢いて居るかの様で……
「ドラゴン……私の体……共有してる……」
「……すまない、私には君の言う事が理解出来ない。
だが……腹が減って居るのだけは理解出来た
済まないが少しだけ待って居てくれ……」
直後
大声で叫び研究員を呼び寄せたディーン……だが。
その事に腹を立てた研究員から鞭で叩かれる事と成った彼は
ライラの状況を説明し、食事を提供する様
必死に頼み続けた……
「チッ! ……腹ばかり減らしやがって!
良いな? 大人しくしてろよ?! ……ったく! 」
悪態をつきながら何処かへと立ち去った研究員
一方、ディーンの体には鞭の痕が痛々しく残った。
そんな彼に対し……
「痛い……大丈夫……生きて居る? 」
そう、いまいち要領を得ない発言を繰り出したライラ
だが、そんなライラに対し……彼は
傷だらけの顔で微笑み……
「……ああ、心配してくれて有難う。
だが……この程度何とも無いさ
君は私などでは計り知れない程の苦しみを経験し続けた。
もし少しでも君の苦しみを取り除けると言うのならば
この程度の“鞭”など毛程でも無いさ。
四番……君が今後、その年齢に相応しい
屈託の無い笑顔を浮かべる事が出来る様
私に、出来る限り協力させて貰いたい……迷惑だろうか? 」
そう言って彼女に対し再び微笑んで見せたディーン。
……暫くの後
彼女がディーンに対し忠誠を誓う事と成るのは
また別のお話……
―
――
―――
◆◆◆
「……あの後、沢山怖い魔物と戦って
魔族とかも沢山倒して来た……それでも……あの“任務”だけは……
心優しい貴女が“許せない”って思って……私も
……貴女と同じ事を思ったあの時。
ディーン様も、ギュンター様も……タニアも
オウルも……皆が……皆で考えて……動いた。
そうやって……命からがら逃げた時……
ドラゴンも私も、一緒に喜んだ事……覚えてる? 」
“ドラゴン”に対しそう訊ねたライラ
だが……
「危ないっ!! ……避けるんだッ!! 」
ドラガの叫ぶ様な声が響いた直後
“ドラゴン”はライラに向け黒炎を吐き出した。
「……痛い……よ……ドラ……ゴン……ねぇ……ッ……
本当に……もう……元には戻れないの? 貴女の優しさは
心の強さは……そんなにも……簡単に壊れる物だったの?
そんなに私は……貴女を……何も分かってなかったの? ……」
「……もう良い、やめるんだッ!!
その子にはもう、君の声は届いて居ないッ!!! 」
そう必死に訴え掛けたドラガ
だが……退く所か、更に一歩……また一歩と
“ドラゴン”に近付き続けたライラ。
彼女は……黒炎の燃え残る地へと
靴を焦がし、酷い火傷を負いながらも
“ドラゴン”の為、必死にその距離を縮めて居た……だが。
大きく唸り声を上げ彼女の眼前へと降り立つと
“ドラゴン”は彼女をその尻尾で弾き飛ばした。
「か……はッ……
……ド……ラゴン……ッ!!
思い……出……して……一緒に……旅をした……時間を……」
激しく叩きつけられたライラ
それでも尚、彼女は必死に訴え続けて居た。
だが……そんなライラを踏み潰さんと彼女に近付いた
“ドラゴン”の姿に……
「分かってる……辛いんだよね……
貴女がそんなにも辛いのなら……良いよ……
でも……最後まで一緒……私達……一緒に
この世界から……旅立とう? ……」
最後の力を振り絞るかの様にそう言ったライラ
一方、そんなライラの言葉を気にも留めず
今まさにライラを踏み抜かんとして居た“ドラゴン”
……だが。
この瞬間、突如として“ドラゴン”の動きは止まった……
「もし……生まれ……変わ……ら……この……みたいに……
高く……一緒に……っ……」
度重なる“ドラゴン”の攻撃に
血反吐を吐き、意識さえ朦朧とし始めて居たライラ。
この瞬間……死の淵に立って居た彼女が懐から取り出し
大切そうに抱き締めながらそう言った一枚の“絵画”
それは“絵師クロエ”から貰ったあの“肖像画”であった。
絵の中で仲睦まじく過ごす二人
ライラには、それだけが全てだった。
彼女の頬を伝った涙……瞬間
“ドラゴン”は激しい咆哮を挙げ。
そして……再び激しく変化し始めた体色を変化させ始めた。
……周囲の木々を薙ぎ倒す程の凄まじい咆哮
竜族であるドラガすら怯む程
激しく挙げられた咆哮の直後
“ドラゴン”の体色は、漆黒から純白へと変化し始め――
「そ、そんな……奇跡だ!
こんな事は初めてだよライラちゃんッ!! 」
――この異例と言える状況に興奮し
“ドラゴン”の変化に目を輝かせながらそう言ったドラガ。
だが、その直後……“善なる姿”へと変貌を遂げた
“ドラゴン”の姿を確認すると
ライラは安心した様に意識を失い。
その場に倒れた……
「ドラ……ゴン……おかえ……り……ッ……」
「なっ!? ……す、直ぐに治療だ!
皆急げッ!!! ライラちゃんを助けるんだッ!!! 」
直後、瀕死と成った彼女を担ぎ
建物の中へと運んだドラガ率いる竜族達。
一方……無事、驚天動地期を乗り越え
善なる龍として、文字通り
一回り大きく成長した“ドラゴン”は
純白と成った体色、透き通る様なその鱗のせいか
光の加減に依り、白から赤
赤から白と、その色を美しく変化させて居た。
……だが。
“ドラゴン”の為、瀕死に陥って居たライラは
ドラガ達に依る懸命な治療を以て尚
意識を取り戻さず……深刻な状況に陥って居た彼女の身体。
……この後、数週間に渡り
諦めず治療を続けた竜族達と、幾度と無く
生死の境を彷徨い続けた末
彼女は――
◆◆◆
「……ドラゴン?
“オイタ”は二度と……“メッ! ” だよ? 」
――彼女は、奇跡的な回復を遂げて居た。
一方……数週間ぶりに再会するライラに対し
何とも居心地の悪そうな様子で
“ドラゴン”は困った様な啼き声を上げ……
「グルルッ……」
「うん……反省したなら……良い
また一緒に……お空……飛ぼう? ……」
「グルルルッ! ……グルッ……」
そっと彼女に寄り添い
甘えて見せた彼女の“ドラゴン”……
……直後、そんな“ドラゴン”を優しく撫でたライラは
“屈託の無い笑顔”を浮かべたのだった。
===第七四話・終===




