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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第二章

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第七十話「せめて楽しく去れたなら……」

《――失われて居た記憶がよみがえ

その記憶に苦しめられ……その果てに重要な事実を思い出したエリシア。


一方……主人公一行は敵意の無い魔族達の暮らす集落で

エリシアの師匠であるヴィンセントと

エリシアの親友であるヴィオレッタの眠る墓へと案内され

彼女の(エリシア)の代わりに墓参りをおこなおうとしていた――》


………


……



「これがヴィンセントの墓……隣がヴィオレッタの墓ダ……」


《――直後

墓前に案内された一行は手入れの行き届いたこの墓前で

誰に言われるでも無く、皆自然と目をつぶり手を合わせて居た――》


………


……



「……始めまして、主人公と言います。


俺達の大切な恩師であり、仲間でもあるエリシアさんからたくされた

このネックレス……やっとお渡しする事が出来ます」


《――ヴィンセントの墓に向かいそう言うと

エリシアからたくされたネックレスをそなえた主人公。


瞬間、ネックレスはわずかに光をはなち――》


「ヴィンセントさん……どうか

エリシアさんの事を見守って居てください」


………


……



“……ああ、何時も見守っている。


だが……あの子は優し過ぎるが故に苦しむ事も多い

本来なら、僕がまもらなければいけないのに

僕の所為でいらぬ苦労ばかり背負わせてしまったと後悔している。


ともあれ……あの子に新しく出来た友達が君の様に心優しい青年で良かった。


これから先もあの子の弱さを見守り、出来れば助けてあげて欲しい。


……僕だけではいたらぬ所を君に任せても良いだろうか? ”


………


……



「“はい、必ず……”って、今誰か喋ったッ?! ……」


「……何言ってるんですか主人公さん?

主人公さんず~っと祈り続けてたじゃないですか。


まるで“自分の師匠のお墓”みたいなレベルでしたよ? 」


「えっ? そんなバカな……今俺も喋ってたよね? マリア」


「いえ全然? ……あ~っ!! もしかして!

エリシアさんの大切なお師匠さんの墓前だって言うのに……寝てました?

ちょ~っとそれは、いく常日頃つねひごろ非常識な主人公さんとは言え

流石に引きますよ~? 」


「何だよ常日頃つねひごろ非常識って!! ……てか、寝てないわ! 」


《――彼らの他に大勢の魔族達が居る中で

唯一ゆいいつ聞こえる筈の無い声を“聞いた”と訴えた主人公。


ともあれ……気を取り直し

ヴィオレッタの墓にも祈りを捧げた彼は、暫くの後――》


………


……



「……どうか安らかに。


その……有難うございました

お陰様でエリシアさんとの約束を果たす事が出来ました」


「ああ……二人も喜んでいる事だろウ

では、一度集落に帰ルとしようカ……」


「ええ、でも……このままじゃちょっと“寂しい”かなって思ってまして」


「……どう言う事ダ? 」


「その……ヴィオレッタさんはエリシアさんの親友と聞きましたし

ヴィンセントさんはエリシアさんのお師匠様だそうですから

正直、俺の技では足りないかもしれませんが

せめてもの手向たむけにと思いまして……構いませんか? 」


「……一体何をすルつもりダ? 」


「そ、その……お花をそなえたくて……」


「まぁ、それなら良いだろウ……」


「……で、では。


土の魔導……


……花よ


美しくほこれ――」


《――瞬間


ヴィンセントとヴィオレッタの眠る二つの墓の間に芽吹めぶいた小さな新芽は

一行の眼前で見る見る内に成長し、やがて大きな“桜の木”と成り


そして……此処に眠る二人を抱きしめるかの様に咲き誇った。


その姿はさなが

二人の肩に手を回し満面の笑みを浮かべるエリシアの様にも見えたと言う。


……魔族達は、初めて見るこの美しい花を大層喜び

“集落の宝”と、後世まで大切にし続けたのは、また別のお話――》


………


……



「……何時いつかこの桜をエリシアさんに

魔導通信越しとかじゃ無く……じかに見て貰いたいな。


その時――


“俺、はからずも出発前の約束を果たしたんですよ! ”


――そう、伝えたいです」


<――この発言が

この場に居る誰一人として理解出来ない物だとは知りつつも

思わずそう口にしたこの時の俺は少し感傷的に成っていたのだろうか?


ともあれ……この後、日も落ち始め集落へと戻った俺達は

魔族側からの質問を受ける事と成った――>


………


……



「……君の言う事が本当ならバ

彼女エリシアが現在暮らしている政令国家ハ……


……我々の様な魔族でも移り住んで良いと言うのカ? 」


「ええ、皆さんならきっと大丈夫な筈です!

とは言え、一度ラウド大統領に話を通し“許可が下りれば”……


……と言う事には成りますが」


「主人公……ハッキリとしておくべき事も有る

吾輩が変わりに説明しよう……」


《――そう言うと魔族達に対し

政治的なね合いもあり、最近は

例外れいがい”もあり得る事を説明したグランガルド――》


「……そちらにも色々と事情が有るのだろウ。


余り期待はせず今まで通りこの集落で暮らして行くとしよウ

要らぬ気を使わせてしまったナ」


「いえ此方こそ……ただ、結果がどうあれ

せめて皆さんが“恩人”とおっしゃるマリーナさんには

お会い出来る様にちゃんと話は通しておきますから!


それと……エリシアさんにも此処の事、ちゃんと話しておきます。


エリシアさんは出発前、この場所の事

“思い出そうとしても思い出せない”っておっしゃってたので……」


「……なら、話さない方が良いかもしれないナ

彼女エリシアを苦しめる事は避けたイ」


「そう、ですか……では約束を果たせた事だけ伝える事にしておきます。


えっと、他に質問が有る方は……」


<――などと話していたその時

血相を変え集落へと走って来た“人間の”女性――>


………


……



「皆っ! ……大変よ!

この辺に生息してる筈の無いゴブリンの子供が沢山!!

しかも何故か人間の子供達と楽しく遊んでるし

人間の言葉まで話して……って、貴方達は誰ッ?! 」


「へっ? お、俺達は……」


「……リン、その子供達も子ゴブリン達もこの方々の仲間ダ。


前に話したエリシアの友で彼女の友ダ……何も警戒する事はなイ」


「へっ? そうなの? ……良かった~っ!

私はてっきり魔王軍の斥候せっこうか何かかと思ったよ……」


斥候せっこうにしては無邪気で可愛い過ぎだがナ……」


<――そう言って笑みを浮かべたヴィオレッタさんのお父さん。


ともあれ、このちょっとした騒動の後――>


………


……



「その~……早とちりしちゃってすみませんでしたっ!


それからえっと……申し遅れました! 私の名前はリン!

この集落の魔族達が生きて行く為に協力している者ですっ!


……以後お見知りおきをっ!!! 」


<――言うや否や

リンさんは俺に対し凄まじい勢いで握手を求め――>


「は……はいッ!!? こ……此方こそッ!! 」

(す、凄い元気な人だ……)


<――俺との握手が終わると

子供達に至るまで全員に握手で挨拶をし始めた彼女。


……暫くの後、挨拶も終わり一息ついた所で

彼女に対し何故この集落に“協力者”としてかよって居るのかをたずねた俺。


すると――>


………


……



「昔……私がまだ凄く小さかった頃、病気がちなお母さんの為に

村から一番近い“チナル共和国”って国までお薬を買いに行ってたんです。


それで、何時もは大人達と一緒に森を抜けてたんですけど

その日に限って村の人達は誰もあの国に行く用事が無くて……


……でも、お薬を切らしててお母さんが苦しそうだったんです。


だから私――


“何時も通ってる道だし、お母さんの為に! ”


――って、その日は一人でチナルまで行く事にしたんです。


けど……」


<――其処まで口にした後

彼女はうつむき何を思い出したのか少し怯えた様な表情を浮かべた。


そして、しばしの沈黙の後――>


「……その日は夜も遅くて

何時もなら怖くなかった道が、何だか凄く嫌な場所に思えたんです。


けど、怖さを押し殺してお母さんの為に必死で走りました

そしたら、突然目の前に……あの魔物が現れて

私、突然の事で怖くて動けなくて……もう少しで私

あの魔物に襲われる所だったんです。


……でもそんな時、何処からか現れた女の子が

魔物を追い払ってくれたんです!


当時の私とあまり変わらない小さな女の子で

でも、私なんか比べ物に成らない位とっても強くて……


……それが、ヴィオレッタちゃんとの初めての出会いだったんです」


「成程……エリシアさんと親友に成ったのもうなずけます

ずっと昔から優しい人だったんですね! 」


「はいっ! ……とっても!


でも、そんな彼女が……ごめんなさい

此処から先はあまり話したく無くて……」


「無理はしないでください……兎に角、そんな御縁ごえんがあったから

この集落に暮らす魔族の皆さんに協力をしている……と言う事ですか? 」


「気を使わせてしまってごめんなさい……そんな感じです!

なので、皆家族みたいな物なんですよっ! 」


「成程……とっても素敵な関係を築けている訳ですね。


……良かった、エリシアさんにこの話をしたら

きっと喜んで貰えると思います! 」


「あっ……そういえばエリシアさんって方は

今日お越しでは無いのですか? 」


「あ~……何と言うかその

本人はちょっと“来られない事情”があって……なので

代わりにこの場所でお墓参りとお供えをしてくれって頼まれてたんです。


と言うか……元々俺達はある国を探して旅をしてて

その旅の途中だったんですけど……そ、その……


……き、奇跡と呼ぶしか無い位の確率でこの場所に来られたんです! 」

(さっきの一触即発は出来れば……いや、絶対に話したくないな……)


「そうだったんですね……あっ!

きっと、ヴィオレッタちゃんが呼んだんですね! 」


「い゛っ?! ……ええ、確かにそうだと思います! 」

(正直、個人的には何と無く

ヴィンセントさんが呼んだ疑惑が有るけど……言わないでおこう)


………


……



「って……主人公さん、此処でも一応聞いておかなくて良いんですか? 」


「何をだ? マリア」


「いえその……結果的に良かったとは言え

かなり大きく道をれちゃいましたし

日之本皇国に行く為の“船が出る”って言う場所までの道をですね……」


「えっ? ……あの、日之本皇国ってもしかして

“あの”日之本皇国を目指しているんですか? 」


「多分“その”日之本皇国だと思いますけど……


……リンさんはご存知なんですか? 」


「……知ってると言うか、その国自体には行った事も無いですし

どんな国かまでは知らないですけど……


……そこに行く為に出てる“船の噂”を聞いた事が有るんですが

その船で旅するのって……かなり危険らしいですよ? 」


「危険……とは? 」


「えっと……船自体は比較的普通らしいんですけどね?

ただ、必ずって言って良い位の確率で“海賊”が出るんらしいんです」


「えっ!? ……それって相当危険では? 」


「はい……しかも船賃ふなちん自体が高額な上に

海賊達にも金目の物をほとんど奪われるらしいですし

抵抗すれば危ない目にったりだそうで……


……特に、主人公さんがお召に成っているその“珍しい服”とか

まず間違い無く“かれる”んじゃないかと!

ちなみに……知り合いのお父さんが

旅行気分でとても高級な服を着て居たらしいのですが……


……案の定、“かれた”らしいですっ! 」


「む、かれるってそんな……ゴホンッ!!!

でも、貴重な情報……助かりますッ! 」

(てか、そんな恐ろしい奴らが居るのか……)


「いえいえっ! それから……」


《――と、リンが続きを話し掛けたその時

一行の元へと慌てた様子で現れた一人の魔族は

現れるなり一行に対し――》


「遠方に化け……いや、貴方達が乗って来た物に良く似た

巨大な戦艦が現れたガ……あれは貴方達の味方カ? 」


《――とたずねた。


だが、全くもって心当たりの無い一行は

首を横に振り……この瞬間

集落は慌ただしく成り始めた――》


………


……



「アリーヤ様、子供達も! 全員オベリスクへ乗船をッ!! 」


《――草むらで遊んで居た子供達を慌てて誘導したギュンター

一方、この緊急事態に――》


「……魔王軍の手勢かもしれなイ!!

頼るのは間違っているかもしれないガッ! ……」


「気にしないで下さいッ!

協力しますから皆さんも念の為オベリスクへ!


さぁ、皆も早くッ!! ……」


《――直後

集落の魔族達を含め皆をオベリスクに乗せた主人公は

木々の間へとその船体を隠す様に停船させたオベリスクの船内で

“謎の戦艦”が通り過ぎる事を祈りつつ、息を潜め様子をうかがっていた――》


………


……



「頼むから気付かないでくれよ……」


《――暫くの後

一行の眼の前を通り過ぎた巨大戦艦……だがその直後

謎の戦艦は少し先で停船した。


オベリスク船内に緊張が走った次の瞬間――》


「――緊急回避っ!!


くっ! ……間に合いません!!

全員、対衝撃ショック姿勢をッ!!! ――」


《――直後

謎の巨大戦艦はオベリスク目掛け砲弾を発射した――》


………


……



《――オベリスクに響き渡った凄まじい轟音と衝撃。


だが……咄嗟とっさに主人公が展開して居た防衛魔導に

一行はすんでの所で直接的な被害をまぬかれて居た。


だが――》


………


……



「あの威力を受けて無傷とは……いささか不愉快ですわね?

……ともあれ、やっと見つけましてよ?

D.E.E.Nシリーズ……いえ“不良品ゴミクズさん達? ”


って……あら?

魔族が多数、ゴブリンも相当……人間の子供まで?

意味が分かりませんわね? ……どう言う事なのかしら? 」


《――尋常成らざる威力の砲弾を差し向けた謎の巨大戦艦

その甲板に現れるなりディーン隊を口汚くののしったこの女は

E.D.E.Nシリーズのリーダー“エデン”と呼ばれる実験体であった。


彼女は……片目に掛かった真紅の髪をかき分け

隠れていた眼で“透視能力”を発動させながら

オベリスク船内の様子をのぞき見て居た。


……だが、この特殊な力すら問題に成らない程

彼女を見るなり取り乱した者が居た――》


………


……



「エデンッ?!! 何故生きて……私だ! ディーンだッ! 」


《――オベリスクの甲板に立ち

敵艦の甲板に向けそう懸命けんめいに呼び掛けたディーン。


……だが、懸命に呼び掛ける彼とは対照的に

エデンの応対は冷淡れいたんな物で――》


「……はい?


私、貴方の様な不良品ゴミクズなど記憶にありませんわ?

それに……不良品ゴミクズに呼び捨てにされる筋合いもありませんわよ?

全く不愉快です……私は必要だと思えないのですが、所長様からの命令ですので。


……仕方が有りませんから命だけは助けてあげます。


貴方達、大人しく研究所に……ってあら?


……聞いていた人数より二人程少ないですわよ?


ダン……確か後二人程居る筈では?

“ドラゴン女”と“防御男”が見当たりませんわよ? 」


「……エデン様、恐らくですが

個体名:オウル

個体名:ライラの二名かと思われます。


それと……この上申し上げにくいのですが

何故か追跡が不可能の様で……」


《――エデンに対し魔導通信越しにそう伝えたのは

E.D.E.Nシリーズ……個体名“ダン”

腰までれた総髪そうはつに丸眼鏡

痩身そうしんで病弱そうな見た目とは裏腹に、巨大戦艦バジリスクを操る彼の背中には

桁外れに大きな二本の大剣が装備されていた。


そして――》


………


……



「全員連れ帰る様指令を受けておりますのに……面倒ですわね」


「いやいや! ……そんな事より姉御姉御っ!!

甲板に居るあの“変な服着たガキ”すげぇ魔導量だぜ!!!

あれは連れ帰る奴じゃねえ筈だし……食っちまわえねぇか? 」


《――エデンの横に立ち強力な防衛魔導を発動し

巨大戦艦バジリスク全体を“片手間で”おおいつつ

オベリスクの甲板へと現れた主人公を指差しながらそう言った男


E.D.E.Nシリーズ、個体名“グリフ”――》


「……ディーン。


あの人達は……君の知り合いか? 」


《――には目もくれず、ディーンにそうたずねた主人公。


だが、ディーンは首を横に振り

E.D.E.Nシリーズのリーダー格と思われるエデンだけを指差すと――》


「他の二人は知らないが……彼女は私の“妹”だ。


だが、彼女は死んだ筈なのだ……一体何故……」


《――そう言って拳を握り締めた彼に対し

主人公は静かに――》


「そっか……研究所では

実験の被害にった人達が沢山居るって言ってたもんな。


ディーンは彼女エデンの事……助けたいんだね? 」


「ああ、もし可能ならば……だが、彼女は私の事を……」


「ディーン……俺達も最初は敵対してた

だからきっと妹さんとも“仲直り”出来る筈だ。


悩むのは色々と頑張った後で良い……今は彼女達を止めなきゃだろ? 」


「主人公……ああ、そうだな」


《――直後

戦闘態勢を整えた二人……だが


この会話が余程気に入らなかったのか

エデンは先程よりも更に不機嫌そうに――》


………


……



「……その“”とっても不愉快な態度を取りますわね?

私達を相手に“手加減して勝てる”とでも?

そんな世間知らずな子供には……少しお仕置きが必要です。


ダン……やりなさい」


「承知……」


《――直後

敵戦艦バジリスクから扇状おうぎじょうに放たれたおびただしい数の砲弾は

たくみな操舵そうだ技術を持つギュンターをもっってしても

けきれぬ程の密度をたもったままオベリスクへとり注いだ。


だが――》


………


……



《――咄嗟とっさに展開した魔導障壁しょうへきり敵砲撃のほとんどを無力化した主人公。


そして――》


「くっ……ただの子供では無い様ですわねッ!!

ダン! ……ずは魔導障壁あれを徹底的に破壊しなさいッ!! 」


「承知ッ! ……」


《――直後、繰り広げられる事と成った砲撃戦は

双方の“防衛戦力”を少しずつ消耗させて居た……だが


この状況はオベリスクに明らかな“不利ふり”を突きつけた――》


………


……



「くっ……かじが……重いッ!! ……」


《――緊急事態とは言え、集落の魔族全員を乗せた重量増は

オベリスクの回避能力に無視出来ない遅れを発生させて居た。


その遅れは……主人公の展開する強固な魔導障壁しょうへきすらも

消耗させ――》


「ぐっ……流石にキツイな……」


《――この瞬間、思わず弱音をいた主人公。


だが、この直後――》


………


……



「三体の魔族“くずれ”カ……その上全員“空腹”の色が見えル。


主人公……君は“船”を守る事だけに専念するのダ!

奴らへの攻撃は我々に任せロ! ――」


《――言うや否や

オベリスクを脱出し周囲しゅうい散開さんかいした集落の魔族達は

敵戦艦バジリスクへ向け、多方向からの波状はじょう攻撃を開始した――》


………


……



「……チッ!!


おい姉御っ! ……こいつら馬鹿みてぇに強えッ!!


てか……さっきの“飯”じゃ足りてねぇよ! ……くそッ!!

正直此方の防御だってギリギリなんだぜッ?! 」


「……文句を言う暇があるならもっと防御を固めなさいグリフ!!!

クッ!! ……ダン! 手加減の余裕は有りませんわ!


今直いますぐ“あれ”を使いなさいッ!!! 」


「……承知!


全弾発射フルバーストッッ! ”――」


《――直後

敵戦艦バジリスクから放たれた空を黒く埋め尽くす程の大量の砲弾は

此処まで耐えて居た主人公の魔導障壁しょうへきを半壊させ――》


「なっ!? 再展開が間に合わないッ!! ――」


………


……



「問題無イ!! ……我らに任せろと言った筈ダッ! 」


《――瞬間


散開さんかいして居た魔族達は一斉に砲弾を攻撃し

オベリスクへの直接的な被害を最小限にとどめ――》


………


……



「た……助かりましたッ! 」


「……礼は良イ! それより早く再展開しロ! 」


「は、はいッ!! ……」


《――間一髪、九死に一生を得た主人公。


だが、その一方……戦闘が長引くにつれ

E.D.E.Nシリーズ全員に疲れの色が見え始めていた頃……


……そのリーダーである彼女エデン

苦虫を噛み潰した様な表情を浮かべ――》


………


……



「全くッ!! ……私達が万全であれば

不良品ゴミクズ相手にこんな“卑怯な手”を使う予定では無かったのにッ!!

後悔しなさい……貴方達が悪いのよ!!!


固有魔導――


――“引寄ヒキヨセ指先ユビサキ”ッッ!! 」


《――エデンが人差し指を差し向けた


瞬間――》


………


……



「きゃぁっ!? ……何っ?! 離し……てよッ!! ……」


《――彼女エデンの元へ“引き寄せられた”マリーン。


直後、マリーンは意識を失い――》


………


……



「クソッ! ……マリーンを返せッ!!! 」


「……いいえ? 返しませんわ?

この子は預かります……返して欲しいなら“研究所”にいらっしゃい?

それではさようなら、不良品ゴミクズさん達?


グリフ、ダン……行きますわよ」


《――特殊な固有魔導にりマリーンを連れ去ったエデン

直後、戦艦バジリスクは一行の眼前から消え去った――》


===第七十話・終===

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