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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝16万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第二章

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第七一話「楽勝を奪われたとしたなら……前編」

マリーンを人質に取られ、騒然(そうぜん)とする船内

ディーンは(みずか)らに責任があると考えていた


「全て私のせいだ、済まない……」


「……頭を上げてくれディーン

責めるつもりは無いし、そもそもそんな暇も無い

それよりも、確認しておきたい事が(いく)つか有る

()ずは彼女(エデン)の事を詳しく教えて欲しい。


出来る限り、いや……“全て”」


真っ直ぐに(ディーン)を見つめ

そう言った主人公


「……彼女の名はエデン、先程も言ったが私の妹だ

だが、彼女は魔族に襲われ死んだ筈……


……何故(なぜ)生きているのかすら判らないが

少なくとも“他人の空似(そらに)”などでは断じて無い……」


「分かった……じゃあ次は

ディーン達の居た国について教えてくれ

ディーン達は其処(そこ)で身体や魔導の流れを

“改造された”と言ってたよな? ……覚えて居る範囲で構わない。


……ディーン達の他に

改造を(ほどこ)されたと(おぼ)しき人達を見た事は? 」


「“改造兵”と呼ばれる者達ならば数十体程

我々が戦闘訓練をして居た時に見かけたが

あれは大した戦力では無い筈だ……だが、それとは別に

私達には立ち入れない区画があり

其処(そこ)に私達とは別の“研究対象”が居る……


……と言う様な噂を聞いた事が有る。


だが、詳しい事までは判らない……役に立てず済まない」


「大丈夫だ……さて、今分かる事はこれ位か

後は……いや、深く考えなくても大丈夫だ。


俺達は(ただ)、マリーンを救って旅に戻るだけ――


“任務:(とら)われの姫を助けに行く! ”


――って感じのゲームでもしてる位の気持ちでさ

深く考え過ぎず動けば、案外(あんがい)簡単に助け出せる筈だ。


だから……」


冷静を(よそお)い、空元気をして見せた主人公

誰よりも(あせ)りと不安を感じて居るその事実を隠そうとしたのか

そうでもしなければ不安で押し潰されそうだったのか……


一方、そんな主人公(かれ)の姿を

静かに見つめて居たガルドは


「ディーンよ……一つ聞かせて貰おう

これは仮定の話では無い……御主の胸にある真実だけを答えよ。


……御主の妹君が生きて居た事は

吾輩(わがはい)も自分の事の様に嬉しく思って居る……だが

マリーンを助ける(ため)、妹君を“諦めなければ”成らない時

御主は一体何方(どちら)を取る腹積(はらず)もりか……答えよ」


そう、(たず)ねた。


無論(むろん)安易(あんい)に答えが出せる様な問題では無い事など

(たず)ねたガルド自身が一番理解して居た。


だが……それでも、ディーンの目を見据え

(ただ)(ディーン)が答えるのを待って居たガルド。


そして――


「わ、私は……」


「……待ったッ!!!

ディーン……その質問には答えないでくれ

それから、ガルド……申し訳無いけど

その質問は無かった事にしてくれ。


……俺のせいでこんな辛い役目を

ガルドに背負わせる羽目に成ったんだって事も痛い程分かってる

本当にすまない、だけど……理由はどうあれ

ガルドの様に優しい男の口から

命に貴賤(きせん)をつける様な言葉を()きたくは無いんだ。


……俺は何時(いつ)も自分勝手で、矛盾(むじゅん)した事ばかり言ってるし

此処(ここ)の所の俺がずっと甘い事ばかり言ってるのも理解してる。


けど、それでも駄目なんだよ……比べちゃ……駄目なんだ。


ごめん……上手くも言えないし、不甲斐無くて

我儘(わがまま)ばかりで……すまない」


「……いや。


吾輩(わがはい)も少し気が動転していた様だ……以後気をつける

(いず)れも助ける”……それで良いのだな? 」


「ああ……そう言う事で頼む。


それと、ガルドが謝る事は無いよ

俺の方こそ嫌な立場に立たせてすまなかった

もっと俺が……」


「ハイ! ハイ! ハイ! ……ストーップッ!!!!!

……って言うか皆さん重く考え過ぎでは?

要するに今やるべき事は

私の“斧りんマークⅡ”で無理も道理も(まと)めて

ぜ~んぶ! ……ぶった切っちゃえば良いって事ですよ!! 」


双之斧(フタツノオノ)”を構えそう言い放ったマリア

直後


「あぁ! ……そう言う事だ!

“マリアーバリアン”の異名を全世界に(とどろ)かせてやれ!! 」


「はい! ……って

思わず返事しちゃったじゃないですか主人公さんッ!!

もぉ~っ! ……語呂(ごろ)が悪いっ! 」


「うむ……吾輩(わがはい)もその考え、嫌いでは無いぞマリア殿

吾輩(わがはい)達は今まで幾多(いくた)の困難を乗り越えて来た

誰一人失わず連れ帰る事など、容易(たやす)(はず)


「ああ……ガルドの言う通りだ!

(たと)えどんな(わな)や困難があったとしても

俺達はマリーンとエデンさんを無事に連れ帰る。


それに……良く考えたら、政令国家に現れたあの“白衣姿”の敵

アイツに自白させた防衛設備の場所だって役立つじゃないか!


いや……もし仮に役に立たなくても良い

何としてでもマリーンとエデンさんの事を助ける

その(ため)なら“悪魔にでも何にでも成ってやる”


……そんな覚悟で(いど)めば

どんな事でも必ず成せる筈だッ!! 」


マリアの発言は凄まじい起爆剤(きばくざい)と成り

俺達の心に、希望と言う名の大火(たいか)(とも)した。


……その激しい炎は

この場にいる魔族達や子供達までをも熱くさせた

とは言え……この戦いに子供達を連れて行く訳には行かない。


この直後、俺は……二人を助け出し

俺達が再び集落に戻るまでの間

子供達の事を集落で預かって貰える様

集落の魔族達に頼んだ……直後、これを快諾(かいだく)した彼らは

救出作戦への協力も買って出てくれた。


だが


「そ、その……お気持ちだけって事で!

そもそもさっきの戦いで痛い程分かりましたが

奴らと戦うには、オベリスクの“限界性能”が鍵だと思うので

正直に言えば俺達の重量でもギリギリじゃ無いのかなと!


……それこそ、備蓄食料すら全部下ろしたい位なので!

兎に角……そう言う事なので!

皆さんはこの集落で子供達を(まも)って居て下さい。


心配無用です! ……必ず全員笑顔で帰って来ますからッ! 」


この時

俺は、集落の魔族達に対しとても大きな“嘘”をついた。


俺は……“万が一”を考えて居たのだ。


万が一、俺達が全滅の()き目に()ったとしても

彼らならば子供達を立派に(まも)ってくれるだろう。


とは言え……育ち盛りの子供達ばかりだ

少しでも食料に困らない様

出来る限りの食料は置いていこう……


……これだけの食料が有れば直ぐには困らないだろう。


そう、考えたのだ。


「ふム……それならば仕方あるまイ

安心しロ、子供達は必ず守ル……お前タチなら勝てル」


「はい! ……必ず」


(しばら)くの後

集落での別れを済ませた俺達は……救出作戦実行の(ため)

ディーン達の出身国“ロミエル法王国”へ向かう事と成った。


……直後

静かに発進したオベリスク……背後に見える魔族達は祈りを捧げ

子供達は此方に向かい――


“頑張れぇぇぇぇっ!! ”


“負けるなぁ~~っ!!! ”


“マリアーバリアンのお姉ちゃ~~んっ!!

悪い奴らをぶっ飛ばせぇぇ~っ!! ”


――そう

俺達が見えなくなるまで叫んで居た。


◆◆◆


「……あくまで“たまに”ですけど

たまになら……“語呂(ごろ)が悪くても”良いかもですね」


少しだけ前置きを強調しつつも

マリアはそう(つぶや)


「ああ……とは言え、無事に帰ったら

子供達からもっと沢山“そう”呼ばれると思うけどな」


そう俺が返すと


「うむ……覚悟しておいた方が良いだろうな」


そう言って笑ったガルド。


◆◆◆


それぞれの決意を胸に

ロミエル法王国を目指して居た一行

一方、研究所では


「エデンよ……私は“D.E.E.Nシリーズを連れ帰れ”と命じた筈。


……その娘は一体何だ? 」


「お言葉ですが……所長?

この娘は奴らを(おび)き出す(ため)の、言わば……“餌”

この場所に(さそ)い込みさえすれば

あの不良品(ゴミクズ)達に……いえ。


“D.E.E.Nシリーズ”に協力していた

不愉快な“子供”の異常な能力を

大幅に弱体化させる事が出来る筈と考えたのですわ?

と言う事で……作戦を円滑に進める(ため)です。


“例の装置”の使用許可……頂けますかしら? 」


所長に対し

そう注文をつけたエデン


「“子供”だと? ……何者だ? 」


「……“D.E.E.Nシリーズ”に協力し、規格外の魔導適性を持ち

妙な服を着た不愉快な子供……としかご説明出来ませんわ?

詳しくお知りになりたいのであれば

ご自分でお確かめに成られた方が宜しいのでは?


少なくとも……あの装置を出し惜しみすれば

勝てるものも勝てませんわよ? 」


「生意気な口を……だが、興味深い

有用であれば研究材料としてその子供が使えるやも知れん。


……装置の使用は許可しよう

だが、必ず全員捕らえる事が条件だ。


失敗は許さん……良いな? 」


「ええ……仰せのままに、ですが

その前に“もう一つだけ”お願いがございますの……」


「何だ? ……まだ他にも

“使いたい道具がある”とでも言うつもりか? 」


「いえ……その、私も部下も……少々“空腹”でして……」


「ふっ、成程な……おい、其処(そこ)のお前

E.D.E.Nシリーズに“食事”を用意してやれ」


「はっ! ……直ぐにお持ちします! 」


「……待てッ!! まさか此処(ここ)に持ってくるつもりか?

馬鹿がッ!!! ……第二研究室に運べッ! 」


「し、失礼を! ……」


「……チッ、無能が。


まぁ良い……すまんが

私はお前達の“食事方法”を見るのが少々苦手でな

とは言え、食事を取らせず敗北されては元も子も無い。


好きなだけ()らうが良い……だが、失敗だけは許さん

私の顔に泥を塗る様な事に成れば貴様らは“廃棄処分”だ。


良いな? ……(きも)(めい)じろ」


「ええ……私達の実力の全てを遺憾(いかん)無く発揮(はっき)

私達が最も有用であると所長様にお認め頂ける様

誠心誠意努めさせて頂きますわ! 」


「ふむ、良い心掛けだ……


……おっと、その“小娘”は此方(こちら)で預かろう。


ん? この娘……“半魔族”か?


これは、面白いッ!! ……」


◆◆◆


所は変わり


引き続きロミエル法王国を目指し

一直線に森を突き抜け驀進(ばくしん)していたオベリスク


そんな中、一人甲板に立ち周囲を見渡して居た主人公……


……砂塵(さじん)巻き上がる中、目を()らし

周囲を注意深く観察して居た彼の目に飛び込んで来た光景

それは……(ほとん)ど原型を(とど)めて居ない

大量の“人間の死体”であった。


……直後、強い吐き気を覚えた主人公。


だが、更に観察を続けこの惨状(さんじょう)

“魔族の食事に()る物である”と結論付けた。


その上で


「この状況……周囲に魔族が居るって事か?

今だけは絶対に遭遇したくないが、こう言う時に限って……


……そう考えたら、念の為に防衛魔導の展開はして置くべきか?

いや、此処(ここ)で無駄に魔導力を消費したら……くそッ!!


……落ち着け俺ッ! 焦ったら失敗するッ!!

失敗したらマリーンは……くそッ!


……何馬鹿な事を考えてんだよ俺はッ!!!


落ち着けったら落ち着け俺……


……()ずはあの国の防衛設備を思い出す事が先決だ。


あの国の防衛設備は……」


今にも押し潰されそうな不安と戦いながら

ありと(あら)ゆる可能性と、その対応策を考えて居た主人公。


だが……この直後、突如として何かを思い出した彼は

慌てて操縦室へと()け戻り


◆◆◆


「ギュンターさんッ! ……俺、思い出したんです!


……少し前、ギュンターさんが教えてくれた

オベリスクの“変形”……その変形の中で

唯一(ゆいいつ)俺達が見た事の無い型が一つ有った事を!


ギュンターさん……“暴れ馬型”は

一体どんな能力を持って居るんですか? 」


この質問に対し

(しばら)く考えた後、少し微笑(ほほえ)むと

“妙案見つけたり”

と言わんばかりの表情を見せたギュンター

直後、彼は


「“暴れ馬型”……でございますか。


“あれ”の特徴をお伝えするならば――


如何(いか)なる障害(しょうがい)をも()ね飛ばす”


――と言うのが適切かと。


無論(むろん)、この圧倒的不利な状況を

打破する突破口ともなり得るでしょう、ですが……」


「……欠点があると? 」


「ええ……強大な力を持つが(ゆえ)に、一度起動すれば

私めの操舵(そうだ)を一切受け付けぬ様に成ってしまいます。


その(ため)、仮の話ではありますが……敵方の反撃が想定を下回り

開放した能力を発揮しきらず、万が一持て余す様な事態と成った場合

制御不能状態のまま暴走を続け……オベリスクは

二度と起動しなく成ってしまうのです。


ですが、例えその様な結果に終わるとしても……ディーン様。


……暴れ馬型の使用許可を頂けますでしょうか? 」


主人公から暴れ馬型の事を(たず)ねられた時点

いや、恐らくはそれよりも前から既に

そうする事を決めて居たのだろう。


(ギュンター)は、何一つとして後悔の無い

清々しさすら感じる程の表情でディーンに対し使用許可を求めた。


そして……直後

その覚悟を受け取る様に


「……お前の船だ、私の許可など要らない

お前がそう判断をしたのならば……私からは何も言う事など無い」


「ディーン様……この船は、私めの“全て”で御座います

半端(はんぱ)幕引(まくひ)きを(むか)えるつもりなど……


……(だん)じて、御座いません」


「良く言ったギュンター……ならば

私達の大切な仲間であるマリーン、並びに妹を救う(ため)


そして、あの“研究所”を……完膚無(かんぷな)(まで)

再起不能(さいきふのう)(まで)に……


……私達の様な者達をこれ以上作り出させぬ(ため)

全力を(もっ)て叩き潰す事を命令する。


その力を有するこの“鍵”は……お前に返そう」


直後、(ふところ)からメダルの様な物を取り出し

それをギュンターさんに手渡したディーン。


そして……メダルを強く握り締めると

大きく深呼吸をしたギュンターさんは

(かじ)()でた後

まるで“永久の別れ”の様な表情を浮かべた。


……“人馬一体(じんばいったい)”と言う言葉があるが

ギュンターさんとオベリスクの関係性は、まさにそれだと思う。


この直後、ギュンターさんが(かじ)を強く握り締めると

オベリスクはそれに呼応する様に加速を強めた

だが、同時に……ギュンターさんに対し

“暴れ馬型”の事を(たず)ねてしまったせいで

ギュンターさんの全てを奪う事に成るかも知れない。

そうも考えて居た俺は

この事を(ひど)く後悔し始めて居た、だが。


「……オベリスクよ、楽しいですね。


さて……皆様、ご着席を。

()れる”……などと、その様に

生易(なまやさ)しい”物では済みませんので」


ギュンターさんはそう言うと

手にして居た小さなメダルを(かじ)の中心に()め込んだ。


そして


「地上戦艦オベリスク:暴れ馬型“完全開放”ッ!! ――


――敵はロミエル法王国とそれに(くみ)する全ての者達ッ!

我らの眼前に立ちはだかる全ての者を

完膚無(かんぷな)(まで)()(つぶ)すのですッ! ――」


瞬間


激しく(きし)み始めた船体……その音は、(さなが)

“馬の(いなな)き”の様だった


「……ぬわぁぁッ!?

何だこれッ?! ……揺れとかってレベルじゃ……無いッ!!

まるで攻撃でも受けてるみたいな……って?!


なッ?! ……はぁッ?!

く、雲ぉッ?! ……そ、空飛んでるぅッ?! 」


余りの揺れの(ひど)さに慌て

恐れ(おのの)き窓の外を見た瞬間、気が付いた。


俺達が……いや、オベリスクが“空を飛んで居る”事に。


転生前“飛行機は無し”と設定した筈のこの世界で

“地上戦艦が”空を飛んで居る事に――


◆◆◆


「主人公様……暴れる馬は

“空を飛ぶかの様に”走る物でございます」


「い、いや飛ぶ“かの様”って次元じゃ無くて

明らかに実際飛んでますよこれぇッ?!


って……こ、これなら“上”から狙えるんじゃ?! 」


「……ええ、充分に“可能”でしょうな

さて……そろそろロミエル法王国が見えて来る筈で御座います。


皆様、ご準備を……」


「はいッ! 皆ッ! 戦闘準備を! ……」


「……お待ちを、主人公様。


そうでは御座いません、私は……激しい揺れと衝撃への

“ご準備を”……と申したのです。


全て“この子”にお任せください……皆様は

改めて椅子に深く座り直して頂けますと幸いで御座います」


俺達に優しく微笑(ほほえ)みながらそう言ったギュンターさん。


直後……その指示通り、椅子により一層深く腰を掛け

ロミエル法王国への到着を待って居た俺達。


すると


「いよいよですか……オベリスク、任せましたよ」


直後


(かじ)から完全に手を離し

(みずか)らも深く座ったギュンターさん。


……この時の彼は

まるで“ティータイム”かの様に落ち着き払って居た。


(ほふ)りなさいオベリスク……貴方の思うがままに」


◆◆◆


所は変わり“研究所”


突如として響き渡った轟音(ごうおん)と激しい揺れ……


……警告音が鳴り響き、突然の事に慌てふためく研究員達

建物を襲う衝撃と激しい揺れは次第(しだい)に激しさを増して居た。


だが、そんな中

所内で(ただ)一人冷静な男が居た


「どうやらお前の仲間が来た様だ……えらく派手な登場でな」


意識の無いマリーンに対し

そう声を掛けた男。


“所長”


◆◆◆


同時刻、数多の兵や防衛設備を物ともせず

正門を粉砕し、ロミエル法王国内部に侵入したオベリスクは

周囲の建物や設備を次々と薙ぎ倒しながら

驀進(ばくしん)し続けて居た。


「な、何も街路樹(がいろじゅ)まで焼き払わなくても……」


文字通り

“暴れ馬”の(ごと)き暴走振りに思わずそう声を漏らした主人公。


だが


「ええ確かに……能率(のうりつ)を考えれば

少々無駄が多い動きで御座いましょう……ですが。


“彼女”のやりたい様に遣らせるのが一番です

第一、(すで)此方(こちら)の操作は受け付けませんので」


「あ、いえその……す、すみません」


この後も“一切の区別無く”

目に付く全てを手当たり次第(しだい)に破壊し尽くしたオベリスク……


……ロミエルの防衛設備は全く歯が立たず

次々と破壊され、再起不能(さいきふのう)(まで)の大損害を与えられて居た。


だが……研究所の入り口に差し掛かった瞬間


突如として、オベリスクは“強制解除”され


「え? ……へッ?

うわぁぁぁぁぁぁぁぁッ?! ……」


◆◆◆


「ふふっ……やはりこの“装置”はとても便利ですわね~♪

まあ、その代わり? ……此方(こちら)

バジリスクを使えなくなってしまいますけれど? 」


研究所前にて

“妙な装置”を右手に持ち

そう、満足気に言ったのは“エデン”であった。


一方……“強制解除”されたオベリスクから

“投げ出され”て居た一行は……受け身程度では逃しきれない

激しい衝撃をその身に受けて居た。


だが……そんな状況にありながら、逸早く立ち上がり

燕尾(えんび)服に付いた泥を払いながら

静かな怒りを(あらわ)にした“老兵”


「私めと……私めの“船”の覚悟に泥を塗る行い

これは……貴女方(あなたがた)の仕業ですな? 」


静かなる殺気を放ちそう発したのは

ギュンターであった。


「まぁ怖い……ですが

不良品(ゴミクズ)の覚悟など、知る訳がありませんわ? 」


不遜(ふそん)な態度でそう返したエデン

一方、ディーンは


「ぐっ……エデン……マリーン君を返すんだ……


……もしもあの所長(おとこ)の“呪い”に脅されて居るのなら

それを消し去る事も……充分に……可能だ……ッ……


……主人公(かれ)の力なら


全員を助ける事が出来……る……エデン

昔の……様に……兄妹(きょうだい)仲良く……暮らそう……」


痛みを(こら)

必死に説得を(ここ)みて居たディーン

だが、エデンは


「先程から馴れ馴れしい……それに、妹ですって?

私が貴方の様な不良品(ゴミクズ)の妹であった事など

(ただ)の一度も有りませんわよ?


全く(もっ)て不愉快ですわ? ……グリフ! ダン!


……殺してしまいたい気持ちは山々でしょうが

出来るだけ生かして捕縛しますわよ! 」


「承知」

「あいよ姉御っ! ……」


エデンの持つ特殊な道具の効果に()り互いに船は使えず

生身での対決となる事は明白だった……


……一方、ディーンの望みを叶える為

出来()る限り彼女(エデン)を傷付けず救い出したかったのだろう。


これまで気絶した“フリ”を続けていた主人公は

彼女(エデン)の一瞬の(すき)を突き

彼女に対し睡眠の魔導を放った……“(はず)”だった。


「何ッ!? わ、技が……出ないッ?! 」


「やはり! 良い“装置”ですわねッ!! ――」


◆◆◆


彼女(エデン)の使用した“装置”は

魔導を(もち)いる、全てを阻害(そがい)する特殊な道具であった。


あらゆる魔導の絶対的な――


“使用不能”


――直後、防衛魔導すら展開出来ず居た主人公は

彼女(エデン)の繰り出した超速度の突進攻撃を

まともに食らう……筈だった。


直後、彼を(かば)いその身を(てい)したのは

ガルドであった


「グッ! ……貴様ァァァッ!!! ……」


「あらあら……“豚”はやはり(うるさ)()くものですわね?

そんな遅い攻撃……当たりませんわよ?


と言うか……そちらの駒は(ほとん)どが魔導師なのですわね?

これは随分(ずいぶん)と私達に分がある様ですわよ?

……グリフ! ダン!

一撃離脱ヒット・アンド・アウェイ戦法”で行きますわよ! 」


直後


一斉に距離を取ったE.D.E.Nシリーズは

それぞれに武器を構え、一行の(すき)(うかが)い始めた。


「ぐぅっ……グハッ! ……」


「……ガルドッ! 確りしろッ!

完全回復(パーフェクトヒール)ッ!! ……くそッ!!

治癒魔導も発動しない……」


エデンの攻撃に()

防具を突き破る程の大怪我を負って居たガルド。


……そんな彼の(ため)、治療を施そうとした彼であったが

やはり、装置に(はば)まれ治療は叶わず……


「……あの者達が狙い目ですわね

グリフ! ダン! ……あの三人を集中して狙いますわよッ! 」


物理適性を(ほとん)ど有して居ない主人公とメル。


ガルドは負傷の(ため)、立つ事すらまま成らずに居た


そして……この圧倒的不利な状況下に置かれた三人に対し

これを好機と“三人(かれら)”だけを

執拗(しつよう)に狙い始めたE.D.E.Nシリーズ。


「ふふふっ♪ ……不良品(ゴミクズ)が寄り集まり

不良品(ゴミクズ)を守る姿は、何とも滑稽(こっけい)ですわね? 」


「……黙りなさい。


“ディーン様の妹君であるから”と黙っていましたが

どれ程口調で誤魔化しても、その品性(ひんせい)下劣(げれつ)さは

決して隠せぬ貴女の根源(こんげん)の様です。


……これ以上ディーン様の顔に泥を塗る様な発言は(つつし)みなさいッ!

“不出来な妹さんッ! ”……」


「ッ?! ……黙るべきは貴女ですわ“毒薬女(どくやくおんな)”ッ!!

身分不相応(みぶんふそうおう)なその装備……


……私が直々にお似合いの姿に“直して”差し上げますわッ!! 」


「……させません。


ディーン様が私に対し――


“まるで天女(てんにょ)の様だ、今直ぐ抱き締めたい程に似合って居る”


――と(おっしゃ)ったこの装備は

貴女の様な下劣(げれつ)な者に触れさせなど致しませんわッ! 」


「タニア、私は其処(そこ)まで褒めた覚えは……」


どさくさに(まぎ)

“話を盛った”タニアは兎も角として……


……この後も三人(かれら)(かば)いながら戦い続けた

タニア・ディーン・マリア・ギュンターの四人


「……オラッ! ギュンター!

爺の癖にそんなに動いて大丈夫か?

杖でも付いてな……老害がッ! 」


「タニア様……“品性下劣”はこの者も同じ様です」


「んだと爺ッ!? てめぇ泣いて謝っても許さねぇぞこらッ!!

おいダン! この爺を先に殺るぞッ!! 」


「承知……だが……」


「“だが”……もへったくれもあるか馬鹿がッ!!

ったく、仕方ねぇ奴だよおめぇは……


……あ~あっ!

背中の大剣は“クソ以下のお飾り”なのかよ? 」


この瞬間


敢えてかの様にそう口汚く(ののし)ったグリフ

直後……突如として凄まじい殺気を(はっ)した

“ダン”は


「何ッ?! ……ぐッ! 」


大剣(それ)を引き抜くや否や

ディーンを“弾き飛ばし”即座(そくざ)にギュンターへと迫り

恐ろしいまでの腕力で(ギュンター)をも圧倒した


「お~ぉ~……やっぱり怖ぇな? ダンの大剣を“(けな)すのは”よ?


さてと……どうだ? 爺さん

ダンの大剣……相当やべぇだろ? 」


直後

“ダン”の圧倒的な戦闘力を前に

得意げな様子でそう言ったグリフに対し

ギュンターは虚勢(きょせい)を張った……だが

この後、防戦一方と成った(ギュンター)の姿に

誰よりも歯痒さを感じて居たのは、主人公だった。


「なッ!? ……ディーンッ! ギュンターさんッ!

くッ……マリア頼む、俺達の事はもう良い……だから

彼奴らを止めてくれッ……お前の力で……頼むッ!! 」


……圧倒的不利な状況に“決死の判断”を下した主人公

だが、彼女(マリア)


「……大丈夫です、(ようや)く私が

皆さんには勿論(もちろん)、主人公さんにも秘密で特訓してた

あの“技”を使う時が来たってだけです……でも、初めて使うので

もし、失敗しても怒らないで下さいね? 主人公さん。


さてと、行きますッ――」


直後、静かに構えを()いたマリアは

双之斧(フタツノオノ)”を分解……一丁を背後に装着すると

盾を左手に持ち、右手にもう一丁を天に向け構え――


「――マリアーバリアン奥義ッ!!


語呂(ごろ)とバランスが悪いからこそ強い回転攻撃ッ!!! ”


……って、やっぱ今の無しッ!!

やっぱり深夜のテンションで付けた名前って(ろく)でも無いし

一回名前を考え直……って言ってる場合じゃないし

取り敢えず……うりゃぁぁぁぁぁッ!!! 」


――その“ネーミングセンス”はともあれ。


この時、異常(いじょう)な程に低く構えて居た彼女(マリア)

危険を感じたエデンは、彼女(マリア)に対し超速度で(せま)

これに慌てたマリアは即座に技を発動させた。


だが、エデンは(すんで)の所で立ち止まり


「……勿体振(もったいぶ)った割に

(ただ)の“回転攻撃”とはお粗末(そまつ)ですわね?

そのまま回っていなさい! 私が断ち切って上げますわ!


回転しながら死になさ……って?!


きゃあぁぁっ!!! ――」


瞬間

(なお)も回転を続けて居たマリアに対し強烈な斬撃を放った。


だが……マリアは彼女の一撃を物ともせず

それどころか、一切弱まる事の無かった“異常な回転力”は

エデンの放った斬撃ごと彼女の体を


“巻き込んだ”


「……掛かりましたねッ!

一見すれば(すき)だらけのこの回転に触れたら最後ッ!

斧の“形状”を考えれば、手出しは自殺行為に等し……って。


何だか“回転軸”がズレてる様な……って、あわわわわわ?!

止まらないぃぃぃぃぃぃぃぃっ?!! ――」


直後、完全に“重心のズレた”マリアは

エデンと共に“明後日(あさって)の方向”へと吹き飛び城壁へと激突……


……その規格外の衝撃に()って

エデンと共に“気絶”してしまったのだった。


「なッ……いやどう言う攻撃ぃッ?!

って……マリア起きろッ!! 」


直後、この“予想外の結果”に

今が危機的状況である事さえも忘れ

そうツッコミを入れて居た主人公。


一方


「姉御っ?! ……クソ甲冑女がッ! 殺してやるッ!! 」


瞬間、エデンの身を(あん)じ城壁へと走ったグリフ

だが、それに()って生じてしまった一瞬の“(すき)”に


「“捨身(すてみ)技”とは

流石(さすが)はマリア様で御座いますな……フンッ!! 」


言うや否や、グリフの背後に斬撃を叩き込み

これを無力化したギュンター

この直後――


「なっ?! ……グリフ!?


……チッ、気を抜き過ぎだッ!!

()き付けるだけ()き付けておいて

一気に数的不利(すうてきふり)を招くとは……だが、まあ良い。


大剣の持つ圧倒的な力で、貴様らなど全員……」


――グリフの油断に苛立(いらだ)ちつつ

そう言って再び大剣を構え直したダンであったが


「あらあら? ……大変ですわよ?

ダンと言う名の剣士さん? ……貴方のその大切な“大剣”

(ひど)い“汚れ”がついてますわよ?

そっちじゃなくて、其処(そこ)ですわ? 其処(そこ)……」


この瞬間、戦闘の構えを()

(ダン)に歩み寄りながら、そう言って

(ダン)の大剣を指差したタニア


「ど、何処(どこ)だ?! ……って。


……何もついていないでは無いかッ!!

毒薬女(どくやくおんな)ッ! ”貴様、何故(なぜ)その様な嘘を……


……うぐぅッ?! 」


何故(なぜ)と言われましても……


……“痺薬(これ)”を吹き掛ける(ため)としか言えませんわね? 」


直後、その“奇策”に()

ダンへと“痺薬(シビレグスリ)”を吹き掛けた彼女は

この後、ギュンターとの共闘に()

E.D.E.Nシリーズ全個体の捕縛を成功させた、だが。


◆◆◆


「エデン……頼む、私は(ただ)

あの頃の様に兄妹(きょうだい)仲良く……」


「黙りなさいっ! ……私に兄など居りませんわ?!

私が(つか)えるのは所長様だけ!

貴方の様な不良品(ゴミクズ)の事など知りませんわッ!! 」


戦闘終了後


必死に説得をするディーンに対し

汚物を見る様な目つきのままそう言い放ったエデン。


だが、根源(こんげん)と成る考え方に

ある種の“(ゆが)み”を感じたディーンは


「エデン……本当に私の事を覚えて居ないのか? 」


何かを確かめる様にそう問い、エデンは再び


「ですから、知らないと言っているでしょうッ! 」


そう(こた)えた。


……平行線を辿(たど)った二人の言い争い

だが、そんな二人の背後から

この状況を嘲笑(あざわら)うかの様に現れた

一人の“男”――


「ふっ……覚えて居る(はず)が無いだろう!

D.E.E.Nシリーズ……個体名:ディーンよ! 」


“所長”

そして……彼に遅れる事(わず)

その背後から現れたもう一人の存在……それは


“マリーン”だった。


「なッ?! くそッ!! ……マリーンを開放しろ! 」


「黙れクソガキ、私の話を(さえぎ)るな……お前の事は後回しだ。


さて……ディーンよ、お前に一つ聞く

私がお前達の身体に(ほどこ)した“呪い”についてだが

まさか、自力で解除した訳ではあるまい? 」


「貴様の疑問に答えるつもりは無い」


「生意気な口を……まぁ良い、些末(さまつ)な話だ

そんな事よりも、だ……其処(そこ)に居る貴様の“妹”だが

何故(なぜ)“貴様を覚えていない”のか……知りたくは無いか? 」


「……聞かせて貰おう」


「ほう? ……妹の事と成ればえらく“素直”な物だな?

良かろう、何故(なぜ)お前を覚えていないのかを教えてやろう。


私が“記憶を消した? ”……違う。


改造手術の副作用で記憶が“消えた? ”……それも違う。


貴様の妹は、貴様の記憶にある通り

数年前に間違いなく“死んだ”……では、何故(なぜ)

貴様の妹がこうして目の前に居るかを教えてやろう。


“エデン”……もとい“E.D.E.N”は

貴様の“妹”の死体から遺伝子を取り出し

複製体として生み出す過程(かてい)で魔族の遺伝子を混ぜた実験体だ。


(ゆえ)に……貴様との思い出など

そもそもある(はず)が“無い”のだよッ!!


……フッハッハハハハッ!! 」


「何……だと……所長、貴様ッ!!

貴様ァァァァァァァァッ!!!!! ……」


「おっと、其処(そこ)まで……それ以上近づけば

貴様の大切な“仲間”の命が失われる事に成るぞ? 」


「ぐッ、卑怯者がッ! 貴様の様な……くっ……!! 」


「フッ……苦痛に(ゆが)む顔も面白いが、私は

お前達が絶望(ぜつぼう)(しず)む顔を見てみたく成ってしまったよ。


さて……其処(そこ)のクソガキ、主人公と言ったか? 」


「……ああ、そうだ。


所で……アンタは凄い研究者だろうし

絶対的にこっちが不利なのも良く理解した。


“絶対的にアンタが強い”……認めるよ

だから……マリーンを返してくれ。


……頼む」


「ほう? 意外にも素直なガキでは無いか……構わんぞ?

その素直さに(めん)じて、この女を返してやろう。


ほら、連れて帰るが良い……」


「なッ?! ……ほ、本当に良いのか?! 」


「ああ、構わんぞ? ……無事に連れ帰れると思うのならなッ!!!

奴らを殺せッ! “実験体Mッ! ”――」


「了解……戦闘を、開始します」



直後

“マリーン”は主人公に対し“攻撃の意思”を見せた。


===第七一話・終===

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