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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第二章

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第六十六話「心を理解するのは楽勝? ……」

《――集落を去った後

竜族の男ドラガに教わったルートを進み続け

“チナル共和国”と呼ばれる国を目指していた一行。


一方……時を同じくして


一角獣ユニコーンき後

禍々しい姿へと変貌へんぼうげた“魔の森”に居座り続けていた魔王の軍勢。


……一角獣ユニコーンの魔導力を摂取せっしゅし更に力を増した魔王とその配下達

一角獣ユニコーンき後、この森にただよい始めた邪気……


……魔族かれらに取ってこの森はさながら楽園のごとき空間と成り

その恩恵を受けた魔族かれらが着実にその数を増やし続けていた中

謎の魔物“悪鬼”も続々と数を増やし続けて居た……そして


……増え続ける悪鬼の能力を見定みさだめる為か

もしくはただの余興のつもりであったのか……この日

一匹の悪鬼に対し、ある“命令”を下した魔王――》


………


……



「……我が配下の者と戦い、貴様の実力を我にしめせ」


「ギッ! ……ギギッ! ……」


「言葉も話せぬとは……


……さて魔王様、其奴そやつの相手は私が致しましょう」


「ほう……小隊長みずから“試金石しきんせき”を買って出るとは。


借りにも貴様と互角であれば大した物だが……」


「おたわむれを……さて悪鬼よ。


いつでも掛かって来なさいッ! 」


「ギッ! ……ギェェェェェッ!!! 」


《――直後


小隊長目掛け一直線に突進した悪鬼……だが

小隊長かれの放った単純な攻撃にって跳ね返されてしまった――》


「……私の攻撃を受けて生き残るとは大した物ですね

魔王様……この者達、扱い次第では使えるかと」


「ご苦労……下がって良い。


……ライドウよ。


悪鬼はどの様に治癒ちゆしどの様な物を食す?

そして……此奴こやつらは何時まで“増え続ける? ” 」


《――わずかに不機嫌な表情を浮かべそうたずねた魔王。


彼がそうたずねたこの瞬間にも

悪鬼は其処彼処そこかしこから生まれ続けていて――》


………


……



「……治癒はこの森にいる限り

それがどれ程酷い怪我であろうとも一晩もあれば完了致しますし

食事もこの森に居る分には不要の筈です……ただ。


……肝心の“増加量”ですが、そちらに関しましては

魔王様自身がお決め頂く形になるかと……」


「……どうう事だ? 」


「ええ……魔王様がこれ以上必要無いとお思いに成られるのであれば

悪鬼に命令をお下しに成られれば……これ以上の増加“は”致しません」


「……含みの有る物いは好かぬ

勿体振もったいぶらず話すが良い」


「増加を完全に止める方法は私も存じ上げません……ですので

悪鬼共に“共食い”を命じれば解決する物かと……」


「フッ……成程。


其処の貴様……同族共をらうが良い」


「ギッ! ……ギギギッ! 」


《――小隊長との戦いにやぶ

倒れていた悪鬼に対し魔王がそう命じた瞬間……


……魔王に対し不器用にこうべを垂れ

命令通りに数十体の同族をらい始めた悪鬼……そして。


……目につく範囲の同族をらい尽くした悪鬼は

その体躯たいくを二周り程大きく成長させ


更に――》


「マオウ……サマッ! ……カンシャ……シマ……ス!! 」


《――辿たどたどしさが残るとは言え

言語すら操れる様に成長したのだった。


一方……このいちじるしい成長度合いを目の当たりにした魔王は

この悪鬼に対し、先程と“同じ命令を”下した――》


………


……



「我が配下の者と戦い……貴様の実力を示せ」


「マオウサマ……メイレイ……タタカウ……ギギッ! 」


《――直後

先程と同じく小隊長に対し一直線の突進を繰り出した悪鬼……だが


先程とは比べ物に成らない程の俊敏しゅんびんさを見せ……


……小隊長の放つ攻撃をことごとく避けると

それが一瞬であったとは言え、小隊長の背後を取るまでに成長していた。


そして、このいちじるしい進化を目の当たりにした魔王は――》


「もう良い……めよ」


「なっ?! ……しかし魔王様っ!! 」


「小隊長……下がれとったのが聞こえなかったか? 」


「も、申し訳ありません……」


「さて……ライドウよ、悪鬼は増え続けると言ったな?

わずか十数体程度をらった程度でこの“結果”だ……


……いずれ我が種族の大半をおびやかす程の者が

この森を埋め尽くす事と成りかねん……貴様はそれが望みか? 」


「い、いえ……もし魔王様がお望みとあれば

“そう”出来る可能性もございますが……お望みに成られないのであれば


配下の方々や魔王様に最適な“魔導力供給元”として消費頂ければ

魔族のさらなる繁栄はんえいかてと成る物かと……」


「フッ……我らに悪鬼これらを“食え”とうか。


……気に食わん話だ。


ライドウよ――


一角獣ユニコーンを誘い出し……無力化し、討伐し

我らが為と成る様“儀式”をおこなうまではまだ良かろう……だが。


その後“副産物”のごとく現れた悪鬼とう異質な者共の生態と

その詳細にいたるまで……


――ただの人間族でしか無い貴様が

何故これ程の知識を有して居るとうのか……答えよ」


「それは……私がある者の弟子をしていた頃

秘密裏におこなっていたある研究の“副産物”の様な物でございまして。


……無論、偶然ぐうぜん得られた知識ですから

何故こうなるかまでは私にも理解は出来ませんが……申し訳ありません」


「……つまり、悪鬼共の生態には謎が多いとう訳か。


では……更に聞こう

貴様のほっした“一角獣ユニコーンの角”だが……


……“何に使う”つもりか」


「それは、先日もご説明させて頂いた通り……」

 

「フッ……我をあざむけると考えるか」


「い、いえ! その様な考えは……」


くどい……全て話せ」


「そ、その……新たな研究の材料としてもちいようかと考えておりました」


「ほう……どの様な研究か」


「ある種の“武器”では御座いますが

完成した所で私の“想定通り”に成るとは言えず……」


「ほう? ……ライドウよ。


我の眼を見るが良い――」


「ウグッ!! ……な……何を……」


《――瞬間

金縛りにったかの様に硬直したライドウの身体


直後、魔王はある質問をした――》


「ライドウよ……貴様が作り上げる“武器”とやらは我に歯向かう為の物か? 」


《――直後、ひどく苦しみ始めたライドウ


だが、暫くすると――》


………


……



「……私が作り……武器……失敗作ばかり……

……使用に耐えぬ……更成る……強力……

扱いも……容易たやすく……武器を作り出す事が……目的……


世界……敵……見返す為ッ!! 」


「ほう? ……武器を作り出す事、それ自体が目的とうか。


ライドウよ……仮にも人間族である貴様が

同族たる人間共ものどもを裏切る立場と成ってまで

何故我ら魔族の側に立つ事を選んだのか……我には不思議で成らなかった。


よもや貴様の“いびつさが”ゆえであったとはな……


……まあ良い。


ライドウよ……貴様がそのつので作り出す“武器”

有用であれば我の物とする……良いな? 」


「承知致しました……ッ!


……グハッ!?


ガハッ……ゲホッ! ゲホッ! ……」


《――この後

魔王り“お墨付き”を受けたライドウは

堂々と自身の望む“研究”に没頭ぼっとうし……そして


魔王はみずからの軍勢をより強大な物へと昇華しょうかさせる為

あらゆる方法で悪鬼をもちい配下の魔族らを徹底的に強化し続けて居た――》


………


……



《――その一方

チナル共和国を目指し

大きな問題も無く進み続けていたオベリスクの船内では

突如として精霊女王マグノリアが苦しみ始めて居て――》


「……ぐぅっ!!


何と……言う……事ッ……森が一つ……失われてしまったワ……

このままでは世界が滅びてしまう……一刻も……早く……」


「……リーア!? ……しっかりしろッ!

“森が失われた”ってどう言う事だ?! ……まさか


……リーアの統治とうちする森の事かッ?! 」


「いいえ……幸か不幸か、ワタシの森では無い様ですワ。


ですが、其の所為もあり方角すら分かりません……ただ

この苦しみ……大層立派な森であった筈……


不甲斐……ない……ですワ……」


「……自分を責めちゃ駄目だ。


リーアは不甲斐無くなんて無いし何も悪くない……兎に角

この件は政令国家に連絡しておく……そうすれば少なくとも

政令国家周辺の森だけでも捜索して貰える筈だ。


けど……これ位しか役に立てなくて、俺こそ不甲斐無くてごめん」


「いいえ……今はそれだけでも充分ですワ……」


《――暫くの後

この一件をラウド大統領に伝えた主人公。


……情報はまたたく間に政令国家全土とその友好国に伝えられ

数日の内に友好国を含めた各国周辺の森に多数の捜索隊が送られた。


だが……どの国もそれらしい異常を見つける事は出来なかった。


一方、不審な動きをしていたのは魔族だけでは無く――》


………


……



「……遅い。


遅過ぎるッ!! ……」


《――深夜

政令国家領から少し離れたとある草原


……周囲には腰の高さ程の草花がしげ

その中に一際目立つ大木たいぼく……直後

雲の切れ間から差し込む月明かりに照らされた二人の男――》


………


……



「……ユーグよ! 取引相手はまだ来ないのか?!

そもそも私は嫌だと言っただろうッ!

政令国家での我々貴族の扱いが不当だとは言え

こんな取引自体、おこなうべきでは無いとッ! ……」


「ジョルジュ様……その様にご心配されずとも良うございます。


先程も申し上げましたが……ジョルジュ様を含め

政令国家にわずかに残る元貴族階級の方々は

あの主人公と言うイカれた男とラウド大統領……その取り巻き共の所為で

余りにも不憫ふびんな状況を耐えしのんで居られます。


……私にはこの惨状さんじょうをこのまま見過ごす事は出来ない。


ジョルジュ様を含め、元貴族の皆様が復権ふっけん為される事が無い限り

父上様の無念も……晴れる事は無いと言えるでしょう」


「父の無念……私が父の無念を晴らさねば……

私が父を超える立派な貴族と成らねば……」


「その意気で御座います……さぁ、もう弱気はお捨てに成って下さい」


「あ、ああ……だが、取引相手はまだ来ないのか?!

何時まで待てば良いのだッ?! ……」


《――周囲を警戒しつつ言い争っていたのは

没落貴族ジョルジュとお付きの魔導師ユーグであった。


だが、この直後――》


………


……



「おやおや……お待たせしてしまった様で、失敬失敬しっけいしっけい


貴方様が“元貴族の”……ジョルジュ様でございますか? 」


「あ、ああ……い、如何いかにも私がジョルジュだッ! 」


《――“無礼な物言い”にすら気が付かぬ程緊張し

取引相手に対しそう名乗ったジョルジュ


一方――》


「私めは、ジョルジュ様の……お世話係とでも申しましょうか。


……ユーグと申します。


それで“例のお話”で御座いますが……」


「ええ……その“取引”の為に訪れたのですから勿論です

さて、改めてご確認をさせて頂きますが……」


「……いえ、その必要は御座いません。


此方こちらからご提案させて頂いた通り

私共は政令国家の“防衛陣地”と“兵の配置”や

全域をおおう防衛魔導にもちいられて居る“種類”など。


それらの情報の受け渡しを……更に、それらを内部から出来る限り無効化し

連合国(そちら)の方々が侵入しやすい様に致しましょう。


それで、連合国(そちら)側の“お約束”ですが……」


「ええ……此方こちらは“貴族階級の復活”と

それに反対する勢力の制圧……政令国家掌握しょうあく後は

ジョルジュ様に新たな国家の長と成って頂き、国を統治して頂く……


……と言う事でございましたね? 」


「ええ、相違そういありません……さて、ジョルジュ様。


貴方は父上様の無念を晴らす事が出来る上

更に一国一城のあるじと成られる訳でございます。


これでもまだ……取引をお止めに成りたいので? 」


「そっ、それは……だがユーグよ、私に国をおさめる様な知識は……」


《――となおも迷うジョルジュに対し

取引相手は――》


「……ジョルジュ様

国政で分からぬ事があれば、私共連合国が全てサポート致します。


それに……ジョルジュ様が統治者と成られれば

ジョルジュ様のお好きな様に国の仕組みを作り変える事すら可能なのですよ?


貴方様が憎む者達を“全て処刑する事”すら容易たやすい程に……」


「わ、私が恨む者達……」


「……ジョルジュ様ッ! ご決断をッ!

父上様の無念を晴らす為でございますッ! ……ジョルジュ様ッ! 」


………


……



「……わ、分かったッ!


取引を……受け入れよう……」


「流石はジョルジュ様……聡明そうめいなご判断です。


では……日時や詳しい手順等は後ほどユーグ様にお伝えを

私はこれにて失礼致します……」


《――そう言い残し

静かに立ち去っていった連合国側の公証人。


そして――》


………


……



「……ユーグよ。


私は本当に……本当に正しい道を選んだのだろうか? 」


「ええ、勿論でございます! ……」


《――暫くの後、政令国家へと帰還した二人。


そして……この“密約”から数日後の事


政令国家第二城周辺の防衛網に……小さな

それで居て大きな“穴”が開けられる事となる――》


………


……



「皆様の怒り、悲しみ……そして、失われたとうとい命の為

数日後、この国の防衛網に亀裂をしょうじさせ

この国のいびつな形を変化させる為……そして

外部協力者を招き入れる為にはッ!

皆様の……皆様の協力が必要なのでございますッ!!


この通り……切にお願い致しますッ!! 」


《――政令国家第二城


ユーグの考えに賛同する元貴族達や第二城に住む一部の者達など

主人公や政令国家に対し少なからず“恨みを持った”者達に対し

頭を下げながら、そう強く訴えた魔導師ユーグ


……このしんせまる態度を受け

この場につどった者達は皆賛同し

“作戦”は数日後に決行と成った。


だが――》


………


……



「大変だ……ラウドさんに伝えなきゃ……」


《――“壁に耳あり障子に目あり”

獣人族族長“リオス”は決起集会のおこなわれて居た部屋の外で

作戦の全てを聞いていた。


直後、急ぎラウド大統領の元へと走り去ったリオスは――》


………


……



「ラウドさん! ……大変だよ! 」


「……どうしたのじゃ?! 」


「それが……第二城のとある部屋の前で

“この国の防衛網に穴を開ける” って話を聞いちゃったんだ

しかも決行は数日後って言ってたんだけど……ど、どうしよう?! 」


「何と……部屋に誰が居たかは分かるかね? 」


「流石に声だけで全員は判らなくて……ごめん。


……けど、一人だけ確かなのはジョルジュと何時も一緒に居る

あの魔導師の声が聞こえた事だけは確かだよっ! 」


「ふむ……よくぞ伝えてくれたリオス殿!


……じゃが。


その作戦を未然に阻止そしするのは、止めておくとしようかのぉ……」


「な、何で?! まさかラウドさん、魔族に……」


「……違うわいッ! そうでは無く!


ううむ……取り敢えずは第二城地域以外の大臣を招集じゃ」


「う、うん……」


《――この後

政令国家第二城周辺の大臣をのぞいた極一部の大臣達……特に

主人公に対し絶大な信頼を持つ者だけを集めたラウド大統領は

彼らに対し、ある“作戦”を伝えたのだった――》


………


……



「ええ、では予定通りに……」


《――数日後

魔導師ユーグの元へ“交渉人”からの連絡が入った。


そして……同日の深夜

第二城周辺の防衛網の多くに細工を始めた“反乱者”達

中には政令国家を防衛する役割をになうべき兵の姿も見られ――》


………


……



「……だが我々が防衛魔導を展開していなければ

国家防衛に重大な亀裂が……」


「あ~……それなんだが

ラウド大統領いわく――


“毎日休み無く防衛魔導を展開し続けるのも疲れるじゃろう”


――って事らしくてさ?

今から一時間ずつ、一区画ごと防衛術師ガーディアン隊に休憩を取らせるらしい。


で“此処”から始めるって話らしいぜ?

兎に角……お前達は一時間程休憩して来てくれよ

じゃねえと俺達がラウド大統領に“どやされる”からさ。


勿論、防衛魔導の“穴”は俺達がしっかりと見ておくからよ……」


「そ、それならば仕方が無いか……だが、くれぐれも頼んだぞ? 」


「分かってるって! ……良いからのんびりして来なって! 」


《――直後


“偽旗作戦”にり国家防衛のかなめである魔導障壁に開けられた小さな亀裂。


そして……暫くの後

この“亀裂”を通り抜け現れた連合国軍の兵士達。


だが――》


………


……



「……一体どう言う事だ?!

我々ですら倒せそうな程“ヘロヘロ”な者ばかりじゃないか!! 」


《――本来

連合国側がもっとも本腰を入れている筈の本作戦。


だが……それにしては兵の数も少なく、皆息は上がり

武器も防具も激しく損耗していた。


そして――》

 

「……こ、此処に来るまでにあんな“化け物”が居るなんて聞いてねぇッ!


俺達は……人間やら異種族共と戦うつもりで此処まで来たんだッ!!

あんなッ……あんな化け物が居る事など聞いてないッ!! 」


《――声を震わせ

ひどく怯えながらそう言い放った一人の兵士


彼は続けて――》


「……姿こそ人間の形をしてるが……あれは……あんなのがッ!!


人間の筈は……がはッ?! ……死にたく……ねぇっ……」


《――そう言い掛け膝から崩れ落ちた兵士。


直後、慌てて駆け寄った反乱者は――》


「……お、おいっ!!!

大丈夫か?! ……ってヒィッ?! 死んでる?! 」


《――既に息絶えた兵におのの

腰を抜かしていた……一方

この様子を見ていた他の連合国軍兵士は――》


「……くっ! また一人失ったッ!!

あの化け物の魔の手から生き残ったのは俺達だけでな……


……とは言え、俺も……そう……長くは持たんだろう。


すまんが、作戦決行は……無理……だ……ッ! 」


「そ、そんな馬鹿な! ……一体何がったと言うんだッ?! 」


《――この、余りにも異質な状況に

反乱者達は阿鼻叫喚あびきょうかんの騒ぎと成って居た。


だが……そんなおり


彼らに対し――》


………


……



「うふふっ♪ ……つ・ま・りっ♪


作戦がぜぇ~んぶぅ~♪ ……漏れてたって事よ~んっ♪ 」


「?! ……誰だッ! 」


《――はるか遠方から発せられた声


直後、恐るべき速度で反乱者達の元へと現れた筋骨隆々なこの者は

この場にいる者達をめる様に見渡しながら――》


「だ・か・らっ♪ ……貴方達が企んでた“オイタ”は

全部バレてたって言ったのよ~んっ? 」


「な、何だ貴様はっ?! 気味の悪い喋りで我々を……」


「アラ……命知らずねぇ?

……ふんぬりゃぁぁぁっ!!!! 」


「ひぎぃっ?! ……」


「……うふっ♪

貴方達ぃ? ……“レディ”に失礼な態度を取っちゃダ・メ・よ?

分かったかしらぁ~んっ♪ 」


《――筋骨隆々なこの者がそうさとした相手は既に絶命し

人の姿をとどめては居なかった。


そして――》


「ひぃぃっ?! ……こ、こいつだっ!! ……ばっ……化け……」


「あらぁ……今言った事も理解出来なかったのねぇ~んっ♪ 」


「ひぎッ!? ……」


「あたぃの事をけなすなんて……命知らずばかり集まってるのねぇ♪


ト・ニ・カ・クッ♪ ……まずは自己紹介するわねぇ~ん♪


メリカーノア最上級魔導師が一人……あたぃの名前は

“ペニー”ちゃんよぉ~んっ♪

モ・チ・ロ・ンッ♪ ……“トライスター”よぉ~んっ♪ 」


「なっ?! ……メリカーノアのトライスターが何故こんな所に?! 」


「あらあらぁ~飲み込みの悪いおバカさんなのね~っ?


貴方達のくわだては……全てラウド大統領閣下にバレていたのっ♪


……ダ・カ・ラッ♪

“友好国の危機”って事で

あたぃが駆けつける事に成っちゃったって訳なのよぉ~んっ♪


でも正直……こんな真夜中に“乙女の睡眠”を邪魔するなんて……


貴方達……いい度胸だわぁ~んっ♪ 」


《――言うや否や

ペニーと名乗ったこの者は拳に魔導力を集中させ始めた。


だが――》


「ひぃっ?! ……ま、待て待て待ってくれ!!


……分かった降参だッ!

大人しく“お縄に付く”……だからもう、勘弁してくれっ! 」


「あらぁ~っ♪……素直で可愛いわねぇ~んっ♪

でもっ、最初からそうしてて欲しかったわねぇ~っ♪


所で……其処に隠れてる魔導師さん?

戦うつもりなら早く掛かって来て貰えるかしらぁ~んっ♪


“ぷちっ♪ ”……っとされたいなら別だけどっ♪ 」


「いえ……勝てる相手では無い様です、いさぎよく負けを認めましょう

ですが、貴方達のやった事は貴族の……」


「そっちの都合とか知らないわ?

言葉で抵抗するって言うなら……それも抵抗とみなすわよんっ? 」


「くっ……仕方ありません、控えましょう」


「うふっ♪ ……素直で宜しいっ♪


ではでは~♪


魔導通信、ラウド大統領さぁ~んっ♪ ――」


………


……



「ん? 御主は一体……」


「……あら?! ヤダぁ~っ!? ……声がス・テ・キッ♪


あたぃはメリカーノアからの“援軍え・ん・ぐ・ん♪ ”


……って言っても一人だけどねぇんっ♪


あたぃの名前はペニーちゃんよぉ~んっ♪

おバカさん達の危ないたくらみは全てサクサク~っと解決カ・イ・ケ・ツッ♪


……しちゃったからぁ~♪

そちらの軍を消耗する必要は無くなったわよぉ~んっ♪


ダ・カ・ラッ♪ ……事後処理はお任せするわねぇ~んっ♪ 」


「そ、それは……何と感謝をして良い物か……」


「うふっ♪ ……その件に関してはアルバート様とお話になってねぇ~んっ♪ 」


「う……うむ。


……取り敢えず、そちらの状況は我が方の兵で引き継ごう

それで……ペニー殿

御主を友好国からの客人として此方でもてなさせて頂きたいのじゃが……」


「あらぁ~んっ♪ ……とっても嬉しいお誘いぃ~んっ♪


だ・け・どっ♪ ……ごめんなさいねぇ~んっ♪

夜も遅いし、あたぃのスペシャルな美貌をたもつ為にもぉ~♪

早く帰って睡眠を取りたいのよねぇ~んっ♪

ダ・カ・ラッ♪ また今度……お邪魔するわねっ♪ 」


「う……うむ、では夜も遅い事ですし、お気をつけてのぉ……」


「あらあらっ!? ……あらぁぁぁんっ♪


……ラウド大統領閣下ってとっても紳士なのねぇ~んっ♪

でも、あたぃなら平気よぉ~んっ♪

心配して貰ったお礼にぃ♪ ……そっちの兵隊さんが到着するまでの間

悪い子達が逃げ出せない様にしておくわねっ♪ 」


《――この後


反乱を画策かくさくした者達は全員捕らえられ

“魔導師ユーグ”並びに“ジョルジュ”を含めた元貴族達と反乱者達は

政令国家の法の裁きの元、皆等みなひとしく牢獄へと送られる事と成った。


一方……ラウドが念の為と協力を要請していた

メリカーノアから訪れたたった一人の“援軍”


……“ペニー”と名乗ったトライスターの働きに

政令国家第二城の城壁外には

おびただしい数の亡骸の山が築かれて居た。


そして……連合国軍の約八分の一が失われたこの戦闘の後


ラウド大統領は……メリカーノア大公国の長“アルバート”と改めて話し合い


結果として、慢性的まんせいてきに不足している政令国家防衛の一翼を

メリカーノア軍がになう事で合意し

政令国家第二城をメリカーノア軍の管轄とした上で

その兵士達の衣食住に掛かる費用を全て政令国家が負担する事と成った――》


………


……



《――深夜


“研究所”――》


「……所長様、ついに九割五分の完成度と成りました」


「ほう……確かに完成に近づいている様だな

それで? ……あとどの程度掛かる? 」


「……数日後には“魔導力直接供給”に移行出来るかと」


「そうか……しかし、予定より早く完成が近づいたな?


……何故だ? 」


「ええ……廃棄予定であった例の子供ネイトの“遺体オリジナル”を

成長促進の為、E.D.E.Nシリーズの栄養源として使用致しまして……」


「成程? ……それはまた便利な使い方をしたものだ。


しかし……“魔導力直接供給”か。


人の身としては実に“気味の悪い供給方法”では有るが

完成間近と思えばそれも大した事では無い。


しかし、“毒には毒を”……とは思っていたが

“色々と”……皮肉な事だな」


「ええ、おっしゃられる通りでございます……」


《――嫌悪感を口にした直後

E.D.E.Nシリーズから目をそらした所長……


……この日、彼らが幾度いくどと無く口にした“魔導力直接供給”とは

魔導適正のある“人間”をらう事で得られる魔導力をかてとする

“魔族特有の遺伝子”を利用し作られた

禁忌きんきの実験体のみが行う事の出来る供給方法である――》


===第六十六話・終===

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