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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝15万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第二章

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第六七話「楽な国家とキツい国家と」

去る数日前の事


八分の一もの兵を一夜にして失った

“対・政令国家連合国”に加盟する五カ国の代表達は

この日、(ひそ)かに集まり……今回の“作戦”に()

それぞれの国家の有する兵力に

重大な損耗(そんもう)(まね)いた件に関し

その失敗の責任を、互いの国へと擦り付け合って居た。


「……我々は再三(さいさん)言って居た筈だ!

時間を掛け、内部から崩壊させた後での作戦展開でも遅くは無いと!!

貴国が押し通したのが原因では無いのか?!

ホロンデル首長国代表殿!? 」


「貴様……そもそも貴国の用意した兵の数は

他の参加国と比べ(いちじる)しく少なかった様に思えるが?!

それが本作戦の失敗の一因だとは思わないのかね?

ボッスール王国代表殿?! 」


「な、何だとッ?! 」


「いやはや……御二方共、此処(ここ)でそう言い争っていても

失敗が成功に変わる訳ではありません。

此処(ここ)は……次の策を練るべきかと思いますがね? 」


「ほう? ……貴国は随分(ずいぶん)と余裕がある様ですなぁ?

まるでつい先頃、仇敵(きゅうてき)たるアラブリア王国に対し

あの様に(みじ)めな敗北を(きっ)したとは思えない程です

一体何故(なぜ)、その様に“余裕”がお有りなので?

メッサーレル君主国代表殿? 」


「ほう……我が国にその様な口を利くとは良い度胸ですね

クッ・タバール帝国代表?


……貴国の様に何世紀も前の装備と

何世紀も前の戦法を使い続けるしか能の無い脆弱な国家が

我らと一戦交(いっせんまじ)える覚悟があると? 」


「……皆いい加減にしたまえ!!

原因の擦り付け合いで解決するなら軍など要らぬ筈!!


互いの国家が有する軍事力を誇示(こじ)する程の暇があるならば

今、(しん)に話し合うべき一件に関して(ろん)じてはどうなのだ?! 」


「ほう……では一体何を話し合えと?

ぜひ貴方のお考えをお聞きしたい物ですな?


……チナル共和国代表殿? 」


「言うまでも無く、今作戦で我々は“大敗を(きっ)した”


……それは揺るがぬ事実です、ですが

それよりも大きな問題は“捕縛された”と言う

内部協力者と此方(こちら)側の交渉人では?


良いですか? ……我が国は憂慮(ゆうりょ)して居るのです

仮にその者達が我ら連合加盟国についての情報を漏らした場合

政令国家側はそれを理由に、我らの国々に攻め入る

()しくは、不平等条約の締結(ていけつ)(せま)(ため)

格好の口実として利用して来るのではないか……とね。


確か、交渉人の出身は“ホロンデル”でしたね?

代表殿? ……解決策は有るのですか? 」


「ええ、交渉人は我が国の出身で間違いありません

ですが……その“憂慮(ゆうりょ)”は徒労(とろう)に終わる事をお伝えしよう」


この瞬間

指を鳴らしたホロンデル首長国代表……直後

何処(どこ)からとも無く現れた覆面姿の男


「代表……お呼びでしょうか? 」


「……ああ、例の“解決策”を皆様に」


「承知致しました……私はホロンデル首長国

隠密部隊隊長、名前は……いえ、取り敢えず

私の事は“隠密”……とでもお呼び下さい」


「無礼ですな……(いく)ら“隠密部隊”とは言え

我らの前で顔も名前も隠すとは……」


「私の顔や名前をお知りに成りたいのであれば

皆様の命と引き換えにして頂く必要がございますが……


……どうされますか? チナル代表殿」


「なっ!? ……良いでしょう。


それで……“隠密”殿? その“解決策”とやらを

簡潔(かんけつ)にお聞かせ願いたいのですが? 」


「ええ……では“簡潔(かんけつ)に”申し上げます。


……口封じの(ため)、刺客は既に送り込んでおりますし

少なくとも此処(ここ)にお集まりに成られた連合国の皆様に

ご迷惑が及ぶ事はございません……ご安心を」


「そうですか……それならば一先ずは安心と言えるでしょう

ですが、我々はもう一つ気になる情報を得ています

それは――


“メリカーノア大公国が政令国家側に付いて居る”


――と言う物です。


そして……今回の作戦が失敗に終わった原因も

メリカーノア側の用意した“トライスター”が原因とね……」


チナル共和国代表がそう言うや否や

この場に集まった者達は皆、頭を(かか)え始め――


“……あの国だけは敵に回したくないのだが”


“ええ、我が国もです……”


――などと口々に苦悩を吐露(とろ)し始めた。


だが、そんな中……突如として

代表達の集まる部屋の扉は開かれ


「おやおや……雁首揃(がんくびそろ)えて

とても悩んで居る様子だが……君達、大丈夫かい? 」


直後、部屋に現れたのは

メリカーノア大公国の長“アルバート”であった。


……当然の(ごと)く警戒する一同

しかし、アルバートは更に続けた


「いやいや……そんなに警戒する必要は無いよ

それに……“()る”気なら

君達程度に気付かれる様なヘマはしない

今日は君達に取引を持って来たのさ……どうだい?

話を聞くか……今直ぐ僕を追い返すか


君達はどっちを選ぶ? ……」


そう言って(わず)かに微笑(ほほえ)んだアルバート


……直後、用意された椅子に座ると

彼は、連合側に取って

願っても無い程の“取引”を持ち掛けたのだった。


◆◆◆


一方……所は変わり、数日を掛け

チナル共和国を目指し進み続けて居た一行は

チナル共和国の正門前へと辿(たど)り着いて居た。


……大きく開かれた正門は

オベリスクが余裕で通り抜けられるだけの広さを(ゆう)

通り抜けるだけならば通行料も大した金額では無かった。


だが、その反面……この国では(たと)え“通り抜けるだけ”であっても

必ず“臨検(りんけん)”を受ける必要があった。


とは言え、オベリスクの“特殊な内部”を見せる訳には行かず

更に、船内にはゴブリン族の子供達を大勢引き連れたアリーヤが居る。


……“拒否”など言うまでも無く

今更(いまさら)引き返す事が出来る(はず)も無く

他に迂回(うかい)出来る様な道さえも無かった。


そして


「……どうした?

見られては不味(マズ)い物でも()せて居るのか? 」


「い、いえ! その……荷積みが“ギリギリ”でして!

臨検(りんけん)の際に荷崩(にくず)れの恐れがあり

とても繊細(せんさい)で貴重で高価な物ですので……」


代表者として応対をして居た主人公

だが、彼の“言い訳”を信じてくれる程

チナル兵は甘くは無く


「怪しいな……まさか

敵国の兵でも隠し立てしているのでは無いだろうなッ?! 」


「い、いえッ! そんな事は!! ……」

(やばい……この流れは色々とやばいッ!! )


「退けっ! 強制執行(きょうせいしっこう)だッ!!! 」


「そ、そんなッ!? お待ち下さいッ!! ……」


直後、引き止める主人公(かれ)の声には一切耳を貸さず

一直線にオベリスクへと向かった門兵……だが

この兵を止めようと動けば周囲を取り囲む兵も動くだろう。


どうする事も出来ず居た一行……だが、そんな兵に対し

オベリスクの影で立ち塞(ふさ)がる者が居た


「アラ? ……どうされたのかしラ? 」


「……ん? 貴様はあの男の横に居た筈

何時(いつ)の間に此処(ここ)に……いや、まあ良い。


……取り敢えず其処(そこ)を退け、強制執行だ

この荷馬車の内部を臨検(りんけん)する

邪魔立てするならば……」


「“邪魔立て”……なんてそんな事しませんワ?

ワタシ達は普通の商人ですもの。


何かを隠してるのでは無く

商品が壊れる事を心配しているだけですし

もしも壊れてしまったら

ワタシ達にはとっても大損害なのですワ?

そのせいで行商の旅が続けられなくなってしまったら

ワタシ達……路頭に迷ってしまいますもの。


アナタ達が興味のある物なんて

この荷馬車には乗ってませんし

それを理解して貰えるのなら……ワタシ


……“何でも”致しますワ? 」


そう、皆に見えぬ所で兵士を誘惑して居たのは

“マグノリア”であった。


直後、兵士はマグノリアの美貌(びぼう)

その妖艶(ようえん)さに生唾(なまつば)を飲み

少々鼻息を荒くしながら(しばら)く考えを(めぐ)らせて居た……


……そして、考え込んだ後

この“取引”に(おう)じる(ため)

マグノリアと共に“死角(しかく)”へと隠れた兵は


「それで貴様……“何でもする”と言ったな? 」


「ええ……“何でも”致しますワ? 」


「ふむ、よく見なくても良い女だ……なら折角(せっかく)

貴様の“奉仕(ほうし)”次第で

臨検(りんけん)を無しにしてやらん事も無い。


どうする? ……」


鼻息荒くそう言い放つと

(みずか)らの期待する“奉仕”を受け入れる(ため)

マグノリアの肩に手を掛け引き寄せた兵士。


だが、次の瞬間


「では……これを差し上げますワ♪ 」


「ん? なっ……か……はッ……貴……様……っ

な……にを……し……た……っ……」


(ふところ)から取り出した木の実を

兵士の目の前で破裂させたマグノリア。


直後……強い“催眠状態”に(おちい)った兵の耳元で

マグノリアは静かに(ささやい)た――


“荷馬車の中に問題は無い、入国を許可する

疑って済まなかった……よい旅を”


――(しばら)くの後、マグノリアに連れられた兵士は

一行の元へと戻るや否や


「荷馬車の中に問題は無い、入国を許可する」


そう言った

そして


「へッ?! あ、いや……だ、だと思いましたよ!

じゃあ皆行こうか! それで俺達このままオベ……いや

“荷馬車”に乗ってそのまま通り抜けても良いですかね? 」


「疑って済まなかった、よい旅を……」


「ご、ご丁寧にどうも……じ、じゃあ行こうか皆……」


この後、疑問を感じながらも船内に乗り込んだ一行


だが……この兵士が

マグノリアに連れられ現れた事に疑問を感じた主人公は

マグノリアに対しそれとなく質問をした。


だが、直後彼へと返された返事は


「秘密ですワ♪ 」


のみであったと言う。


ともあれ……こうして無事

チナル共和国へと入国出来た一行は

オベリスクから降りずに済む様、出来るだけ広い道を通りつつ

物資の購入なども(おこな)わず、この国を通り抜けるつもりで居た。


だが……チナル共和国を八割程通り抜けた所で問題が発生した。


その問題とは、何処(どこ)からどう見ても

狭過(せます)ぎる”と言う事だった。


……一行の眼前に見えて来た“裏門”は

到底オベリスクで通り抜けられる広さでは無く

皆を降ろし走り抜けるには余りにも警備が厳重で……


◆◆◆


「どうしよう……裏門にも兵は山程居るし

かと言って転移魔導も使えそうに無いし……困った」


そう頭を抱える主人公に対し、一人の子供は


「ねぇ、主人公お兄ちゃん

僕達が居なかったらお兄ちゃん達は通れるの? 」


そう、(たず)ねた。だが

そんな子供に対し首を横に振った主人公は


「そうかも知れない……だけど

俺は君達を(まも)るって約束した

絶対に誰一人として欠けさせないから安心して!

解決策は必ず出すから……だから、それまで待っててくれるかい? 」


と彼の目をまっすぐに見つめて答えた主人公

彼は、この後も必死に解決策を思案(しあん)して居た。


だが……そんな中、ゴブリン族の子供は

ある“画期的な案”を出した。


「あの! ……主人公お兄ちゃん!!

私達が“荷物”なら……大丈夫なんじゃないかな!? 」


「えッ? ……ど、どう言う事だい? 」


「えっとね、あのね……」


直後、この案を実行する(ため)

慌ただしく成り始めた船内では

子供達の人数のニ倍程の大きな袋を用意し

オベリスクに備蓄(びちく)された大量の食料を袋に詰め込むと

その後、下船し……荷馬車では無く、敢えて

“人力の荷車”を数台(まと)めて購入した一行。


……その後、オベリスクから降りた彼らは

大通りから少し()れた所へとオベリスクを停船させると

オベリスク……もとい

“荷馬車”が故障したかの様な演技をしつつ

入手した“荷車(にぐるま)”へと“袋”を載せ替え始めた。


そして、敢えて周囲に助けを求める様な素振りを見せ

“面倒事に関わりたく無い”大多数の人間を遠ざけると

その(すき)を狙い、オベリスクを収納したのだった。


そして――


◆◆◆


「……よし、後は裏門を通り抜けるだけだ

皆、慎重にだぞ? ……」


「は~い……って。

あの、主人公さんの荷車だけ全然引けてませんけど? 」


「……わ、分かってるよ!

だからマリアに助けて貰ってるんじゃないか! 」


例に()って

物理適性の“終わっている”主人公の荷車のみ

マリアが後ろから押す形と成って居た事は兎も角として……


……この後、順調にチナル共和国を通り抜け

ついに裏門へと到着した一行……だが

出国時にも臨検(りんけん)を受ける必要がある様で


「……お前達、其処(そこ)で止まれ

念の(ため)積荷(つみに)を確認させて貰うぞ?

って……芋か? ……何だお前達、この荷車全部が芋なのか? 」


「い、いえいえ! ……“根菜類”もありますし

“穀物類”もありますよ?!

ま、まぁ(ほとん)どが食料なのですが……その

荷馬車が故障してしまって苦労しておりまして……

この荷車(にぐるま)も相当に重いので、これ以上の説明は……」


「ほう、それは災難だったな……おい、そっちの荷車(にぐるま)はどうだ? 」


「ああ……こっちも似た様な物だ

その男が言う様に食い物ばかりだよ……だが、妙だ。


(いく)ら“オーク”が居るとは言え

人数に対して余りにも食い物が多過ぎだとは思わないか? 」


そう言うと一行を疑いの眼差しで見つめた兵士

だがそんな中、ギュンターは咄嗟に


「ええ……(おっしゃ)られる通りでございます

ですが“全て私共が消費する物”と言う訳ではございません。


……そもそも私共は商人でございます

様々な商品を扱う人種でございますので……」


「ん? ……それもそうか

だがアンタ、商人の割には着てる物が“上等”だな? 」


と、ギュンターを問い詰めた兵士

だが、眉一つ動かさず


「ええ……私は彼らを(たば)ねる立場で御座いますので

それなりの格好をしております。


商人は“信用”と“ハッタリ”が命でございますので……」


と返してみせたギュンター

この後……(しばら)くは一行の事を怪しんで居た兵であったが

ギュンターの堂々たる態度に“問題は無い”と判断したのか

それ以上の質問はせず臨検(りんけん)を終わらせると

一行が通り抜ける事を許可したのだった。


◆◆◆


「……いやぁ~ッ! 危ない所だったけど

君の作戦のお陰で皆安全に通り抜けられたよ!

本当にありがとう! 助かったよ! 」


(しばら)くの後


無事に裏門を通り抜ける事に成功した一行は

チナル共和国が見えなくなった頃

荷車(にぐるま)を道の脇に放棄すると

荷袋(にぶくろ)から顔を出した子供達”と共に

再びオベリスクへと乗り込んで居た


「ううん……主人公お兄ちゃん達こそありがとうっ!

私達の事、見捨てずに助けてくれてっ! 」


「当然だろ? さぁ! 君も早くオベリスクに乗って! 」


屈託(くったく)忖度(そんたく)(てら)いも無い子供の言葉は

たまに大人を“ドキッ”とさせる。


この子が提案した作戦だってそうだが

この子達は皆とても聡明(そうめい)に育って居る

アリーヤさんと言う“最高の母”の元で。


だからこそ――


“何としても(まも)らなきゃ”


――この瞬間

俺は、改めて気合を入れた。


「しかし……ギュンターさんの咄嗟の機転(きてん)が最高でしたね! 」


「主人公様、お褒めにあずかり光栄でございます」


「ああ……私達の“(まと)め役”

咄嗟の事とは言え、良く似合っていたぞギュンター

しかし……何時(いつ)も助けられてばかりだな

改めて、私も礼を言わせて頂こう」


「ディーン様、この程度の事で礼など

勿体無(もったいの)うございますッ! 」


「あ~ッ……ギュンターさん、俺の時には素直に受け入れたのに

ディーンだけ扱いが別格ですね~?


……なぁ~んかズルいなぁ~ッ? 」


「なっ?! ……け、決してその様な事は御座いません!! 」


「あははッ! 冗談ですって! ……」


◆◆◆


危機を(だっ)

(なご)やかな雰囲気に包まれていた船内


……(しば)しの後、再び日之本皇国を目指し

ゆっくりと速度を上げて居たオベリスク……だが。


この直後、後方から猛烈な勢いで迫る

軍服姿の“エルフ族”と(おぼ)しき女性が見えた事で

事態は急激に変化する事となる。


「……全てを麻痺させなッ!

雷撃の魔導:電磁波之衝撃――」


直後

この女性が放った魔導に()

オベリスクはその機能を停止し


「おらッ! ……大人しく降りて来なッ!!! 」


数十秒後、一行に追いついたエルフ族の女性は

周囲に響き渡る程の大声でオベリスクに向かいそう叫んだ。


彼女には一分(いちぶ)の隙も無く

オベリスクは行動不能に(おちい)って居た。


だが、このまま膠着(こうちゃく)状態を続ければ

(いず)れ援軍が到着し、離脱はより一層困難と成る。


この場に(しば)しの静寂(せいじゃく)が流れ……直後

意を決しオベリスクから下船すると

戦闘態勢を取った一行……だが、その中で唯一人(ただひとり)

主人公だけは何故(なぜ)か攻撃の構えを取らず


「……待ってくれ!

俺達はただの商人だッ! 貴方達の国に迷惑を掛けるつもりは無い!

何が気に(さわ)ったのかは知らないが

俺達の事は黙って見逃してくれッ! この通りだッ! ……」


女性に対し頭を下げ、そう言った

だが、これを聞いた女性はそんな主人公(かれ)の発言を大いに笑った。


そして


「……笑わせるんじゃ無いよ詐欺師がッ!

何処(どこ)の商人がそんな“デカブツ”を乗り回すってんだい? 」


そう言い放ったエルフ族の女性

直後、一行の表情が凍る中


「どッ……どう言う事だ? 俺には貴女の言って居る意味が……」


「アンタ……本気で言ってるのかい?

まあ良いさ……その“お(とぼ)け”に乗っかって説明してやるよ。


良いかい? 荷馬車ってのは大抵の場合

“四輪で走った”(あと)が付くモンだ……其処(そこ)で話は戻る訳だが

アンタが“荷馬車”と言い張るその“デカブツ”が走った(あと)……


……一度、自分の目で(しっか)りと見てみな? 」


そう指摘され、振り返った一行

其処(そこ)(きざ)まれて居た“(あと)”は

到底“荷馬車”の物とは呼べぬ姿で……


「……どうだい?

理解出来たなら大人しく偽装(ぎそう)()いて、お縄につ……」


……瞬間、彼女の発言を(さえぎ)る様に

この女性に土下座をした主人公は


「……確かに、後ろのは“荷馬車”ではありません

その上、ゴブリンの子供達まで積んでます……でもッ! 」


「何ッ!? ……ゴブリンだぁ?!

其処(そこ)を退きな! 泣き落としで許される罪じゃないよッ?! 」


「いいえ……退きませんッ!!!

理解して貰えるとは思いませんが、それでも

説明を聞いて理解して貰えるまで!!


……絶対に退きませんッ!!! 」


「ほう? ……珍しい事も有るもんだね?

魔族以外は全て(おそ)うと噂の“ゴブリン”を

まさか(かば)う“人間が”居るなんざ……(めずら)しいついでに話してみな?


……納得させられると思うならね」


皮肉(ひにく)った様な笑みを浮かべそう言ったエルフ族の女性

一方の主人公は、地面に手をついたまま必死に(うった)えた。


「本来、ゴブリンは貴女が言った通りの生き物ですし

それを否定もしません……俺だってそう思ってましたから。


けど、彼らは……彼らだけは特別なんです

人間と仲良くする(ため)の教育を受け

平和に暮らす事を学んで来た……そして

そんな彼らを育てて居る方もまたゴブリン族の女性です。


(かん)の良い貴女なら此処(ここ)まで聞けば

彼らが無害であると分かる筈……お願いです

何も言わずに此処(ここ)を通して下さい。


……この通りですッ! 」


再びエルフの女性に対し頭を下げ頼んだ主人公

だが


「いや……残念だが、アンタの言葉だけで

“はい、そうですか”……とは成らない。


……それはアンタも判ってる筈だろう?

大人しく“デカブツ”の偽装(ぎそう)()いてゴブリン共を降ろしな。


さもなきゃ、今直ぐ此処(ここ)でアタシと戦う事になる訳だが

アタシは迷わず後ろの“デカブツ”を一番に破壊するよ?

そうなった時……アンタが大切だと言う“ゴブリン達”が

全くの無傷で済むと思うのかい? 」


「くッ……本当に、これだけ頼んでも

分かってくれないって言うんですか? 」

(クソッ!!! やるしか……無いのか……)


「ああ……だが、その“体勢”から反撃出来る程

アタシは甘く無いよ? ……」


「くッ! ……何故(なぜ)……何故(なぜ)ッ!! ……」

(どうすれば……どうしても戦うしか無いって言うのか……ッ! )


“一触即発”の空気が漂う中

下船し、頭を下げ続ける主人公(かれ)の背中をそっと(さす)ると

主人公(かれ)の前に立った“アリーヤ”


彼女は


「……もう良い、頭を上げな主人公さん

それとエルフの兵隊さんや……アタシが犠牲になって

そんでアンタの気が晴れるならアタシの首を持っていけば良い。


だが、子供達と主人公(このコ)達に手出しをするなら話は別だ」


「……驚いた、流暢(りゅうちょう)に言葉を喋るだけでも不思議だが

そもそもゴブリンが人間を(かば)うなんて事自体……確かに

その主人公って子の言ってる事が嘘じゃないのは理解したさ。


だが、それでも……偽装(ぎそう)

チナル共和国を通り抜けたのは不味い行為だ

その主人公って子が言う事も理解しないでも無いが……って?!


……アンタの着てるその不思議な服

何だって“エルフの紋様(もんよう)”が入ってるんだい?!


しかもその紋様(もんよう)は……」


この瞬間

目の色を変え、主人公に対しそう(たず)ねたエルフの女性

そして……主人公(かれ)の和装に(ほどこ)された一つの紋様(もんよう)

(くど)い程に


「それだよ! その紋様(もんよう)ッ!! 」


そう、繰り返し()し続けていた。


「……こ、これは

俺達が旅立つ日、俺達全員に送られた大切な和装です。


オルガやガーベラさん、エルフ村の皆の思いが詰まった大切な……」


そう答え掛けた主人公(かれ)に対し


「……待て、今誰だって言いやがったッ?! 」


更に興奮し、目をひん剥きながらそう問うた彼女は


「へっ? 俺は今、オルガやガーベラさんと言ったのですが

って……あ、あの……お姉……さん? ……」


「ふっ……ハハハハハッ!!

まさかとは思うが、アンタの言うオルガってのは

あの“泣き虫オルガ”の事じゃないだろうね? 」


「……な、泣き虫オルガ?

あ、あの……話が見えないんですが……」


(しばら)く会って無いから

どんな顔になってるかは解らないが……アンタ

見た所によると相当“やり手”の魔導師だろう?

隠してるのは“腕前も”だとアタシは踏んでるんだ。


……魔導通信位出来る筈だろ?

本人に確認とってみなよ」


「え、ええ……魔導通信――」


◆◆◆


「――オルガ、俺だ

突然で申し訳ないんだけど、一つ聞きたい事があって……」


「ん? おぉ久しぶりだ……な゛ッ?!


……おい、主人公。


一つ(たず)ねるが……何故(なぜ)、御主の横に“ヘルガ”が居るッ!? 」


「えッ? 」


「……ほう? 相当な使い手だろうとは思ってたが

まさか、魔導通信で顔まで見えるとはね。

不思議な技を使うモンだよ……所で。


……立派になったじゃないかい

アタシの可愛い可愛い泣き虫な“弟”……オルガちゃん! 」


「……は?


いや、何か“既視感(きしかん)”があるなぁとは思ってましたけど

まさか……“オルガのお姉さん”なんですかッ!? 」


「ああ、そうだよ? ……しかしアンタがオルガと知り合いとは

それに、あれだけ泣き虫だったオルガちゃんが

人間の友達をねぇ? ……」


直後

阿鼻叫喚(あびきょうかん)の騒ぎと成ったオルガ。


その理由は明白だ……ヘルガはこの後、何故(なぜ)オルガが

“傷の話”を極端(きょくたん)に嫌がるのかを

余す所無く全て一行に説明したのだから。


……ともあれ、この出会いに機嫌を良くしたのか

ヘルガは一行を見逃す判断を(くだ)


◆◆◆


「……まぁ、ゴブリンとは言え害は無いんだろうし

特別に見逃してやるよ……だが。


本来なら、主人公(あんた)みたいなのは

“我が国の繁栄(はんえい)(ため)”って理由で

無理矢理にでも引き()めるべきなんだろうし

絶対に上もそう言う筈だろうが……


……それも、特別に見なかった事にしてやるさ。


さぁ、アタシの気が変わらない内に行きな……


……もう二度と、敵として会わない事を祈ってるからさ」


「あ……ありがとうございますッ!

ヘルガさんがオルガと同じで優しい方で良かったです!

では、またお会いする日が有ったら……その時は味方として! 」


「ああ! だが“味方”……ねぇ?

出来ればそう有りたいもんだが……


……まぁ、細かい事は置いといてだ!

良いからさっさと行きなッ! 怖~い援軍が来ちまうよ? 」


「は、はいッ! ……でッ、では失礼しますッ! ……」


こうして

無事チナル共和国を脱出する事に成功した一行……だが。


この日の夜……エリシアを経由し

オルガからの魔導通信が主人公の元へと届けられた。


そして……“例の話は他言無用である”と

嫌と言う程に念を押される事に成るのであった


◆◆◆


所は変わり“研究所”


目まぐるしく移り変わる演算器の表示を前に

一人の研究員は声を上げた


「E.D.E.Nシリーズ……起動を開始します!


個体名、左から:エデン・グリフ・ダン


全個体、正常に起動を確認……全行程完了です所長!

これより命令も可能です! ……さあ、ご命令を!! 」


「よくやった、では――


――“E.D.E.Nシリーズ”よ

お前達に課せられた最初の任務は“D.E.E.Nシリーズの捜索”だ。


迅速(じんそく)捕獲(ほばく)し、我が研究所へと連れ帰れ

出来れば殺すな、無理ならば……貴様らに任せる」


「……了解、活動に必要な推定魔導量を計算中ですので

少々お待ちを……平均的な魔導適性を持つ人間で計算した所

約八四名程の人間が必要ですわ? 」


「多いな……だが仕方あるまい

目立たぬ様に現地調達を行え……良いな?


……良いか? (くど)い様だがくれぐれも目立つな

貴様らは我が国の“最重要機密”なのだからな……」


「了解……作戦を開始します

グリフ、ダン……行きますわよ」


「あいよ……姉御ッ……」


「承知ッ!!

“バジリスク”……起動ッ! 」


===第六七話・終===

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