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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第二章

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52/325

第五二話「楽には進めない道を進む為……」

《――誰一人として欠ける事無く

鬼人(オーガ)族との間に生まれた誤解も解消され、無事に困難な状況を脱した一行


一方、鬼人(オーガ)族族長ヴォルテクスは――》


………


……



「所デ“主人公”……と呼んで良いカ? 」


「ええ……勿論(もちろん)構いませんが

それよりも()ず誤解についてお詫びを……申し訳有りませんでした」


「構わなイ……そんな事よりモ、お前達ハこの地の(きり)に不慣れな様子

上に戻りたいのならば我らが協力するガ、その前に確認があル。


先程から気には成っていたのだガ……其処(そこ)の女から“魔族の匂い”がすル。


“最重要人物”であるお前に……


……是非とも納得の行く説明をして貰いたイ」


《――マリーンに目をやりそう言ったヴォルテクス

だが、この直後この問いに(こた)えたのはマリーン本人だった――》


「……納得の行く説明って言われても

私が“半魔族”だと言う事しか説明できないわよ

それに……わざわざ主人公に聞かなくても

言葉なら通じるんだから私に直接聞いたら良いでしょ? 」


「それハ失礼したナ……だガ、半魔族だト?

魔王に(くみ)しているのか居ないのカ……どちらダ? 」


《――マリーンを見据(みす)えながら

更にそう()うたヴォルテクス

同時に鬼人(オーガ)族の戦士達は警戒を強めた。


だが……直後

マリーンの“堂々とした”態度に――》


「……魔族の血問題は私自身も辛いの、まして

“魔王に(くみ)してるか”なんて聞かれたら

悲しみを通り越して苛立(いらだ)ちすら感じるわよ!


もし(くみ)する相手が居るのなら……それは主人公だけ

あ、愛してるのも主人公だけだって……だッ、断言出来るわよ! 」


「な゛ッ?! ……マ、マリーン?! いきなり何を?! 」


「うわ~……どさくさに紛れて“告白”までする辺り

流石(さすが)はマリーンさんですね~抜け目無いですね~」


《――慌てる主人公


それを茶化(ちゃか)すマリア……そんな光景の中

ヴォルテクスはマリーンを“敵では無い”と判断した様で――》


「信じよう……ガダンボルガンダダ」(お前達、警戒しなくて良い様だ)


「ヴォルテ殿……その様子、鬼人(オーガ)族は

魔族と敵対して居る……そう考えて良いのだな? 」


《――そうガルドが(たず)ねた

瞬間――》


「敵対だト? ……生ぬるイ!

奴らを滅ぼせるならば命失おうとモ構わぬのダッ! 」


「ふむ……であるならば、吾輩(わがはい)達とも利害は一致している様だ

それよりも先程吾輩(わがはい)達の“脱出を手伝う”と言って居たが……」


「うム……協力しよウ、上へ戻ると言うのならバ……」


《――ヴォルテクスがそう言い掛けた瞬間

これに待ったを掛けたディーン……彼は

オベリスクの残骸を回収を優先したいとヴォルテクスに告げた――》


「……成程、あの残骸を回収する必要があるのカ

ならバ、それの回収に協力シ……改めて上へと戻る道を案内しよウ」


《――直後


協力を受け入れたヴォルテクスに対し

ギュンターは深々と頭を下げ、協力への謝意を伝えた。


だがそんな中、マリアは不思議そうに――》


「あれ? ……そう言えばオベリスクは故障してる訳ですよね?

あれだけの大きな戦艦の残骸をどうやって持ち運ぶんですか?

修理も必要では? と言うかそもそも

あれを直せる技術って一体何処(どこ)で……」


「……ご心配ありがとうございますマリア様、ですが

その点に関しては心配ご無用でございます。


戦艦(あれ)が回収時、この“小瓶”へと収納される事は

もうご存知かと思いますが……故障時は残骸を直接回収後

この小瓶で(しばら)く保存し、一日に一度振ってやれば

長くとも一週間程で完全に修理されるのでございます」


《――言うまでも無く、この説明に驚愕した一行

中でも主人公は――》


「嘘ぉッ?! ……と言う事は

オベリスクを完全に破壊するのは不可能って事では?

いよいよ万能過ぎませんか!? 」


「……いえいえ、万能などでは

ですが、お褒めに預かり光栄でございます。


“完全破壊”の方法こそ詳しくお話は出来ませんが

意外な方法で容易(たやす)く完全破壊が可能と言う説明で

どうかお許しを……」


《――ともあれ。


この後、鬼人(オーガ)族に()る道案内のお陰もあり

無事オベリスクの残骸を全て回収し終えた一行は

ヴォルテクスの案内で上道へと戻る道を歩んで居た――》


………


……



「しかし……恐ろしい魔導を扱う物ダ

あの様に巨大な残骸を全て吸い込む瓶とハ……恐ろしイ。


さテ……後は上道へ案内すれば良いのだナ? 主人公」


「ええ、お願いします!

でも……会ってからずっとお世話になりっぱなしですし

このまま何もお礼をせず立ち去るのは

流石(さすが)に申し訳無い気がするんですが……」


律儀(りちぎ)な男だナ、主人公……ならバ一つ()

お前達の故郷は何処(どこ)ダ? 」


「……政令国家と言う国です、元々は王国の有った場所ですが

地図では……この辺りです」


「ふム……では、万が一我らがこの森を追われる事あれバ

我らをその国で受け入れて貰える様、取り計らって貰いたイ」


「……勿論(もちろん)です!

っと言うか、思い立ったが吉日って事で直ぐに魔導通信で連絡を!

魔導通信、ラウドさんへ――


――ってあれ? 可怪(おか)しいな、繋がらない


し、少々お待ちを!!


魔導通信、エリシアさんへ――


――やっぱり繋がらない

何でだろう?……ってまさか、何かあった訳じゃ?! 」


《――慌てる主人公

だが、ヴォルテクスは――》


此処(ここ)は魔導を乱す地盤ダ……(ゆえ)に通じぬのだろウ」


「成程、なら急いで上に戻らないとですね……」


「ふム……上へと上がれる場所へ案内しよウ」


《――直後


ヴォルテクスの案内に()り崩落した橋の先

霧の晴れた森へと辿り着く事が出来た一行……だが。


ヴォルテクスは崩落した橋を見るなり

困った様に――》


「この有様では……貴殿の国を目指すのも一苦労だナ」


「あ~……確かにそうですね、って……そうだ!

少々お待ちを! ……石柱ッ! ……石柱ッ! ……石柱ッ! ……」


《――直後

橋の崩落現場に巨大な石柱を打ち込み続けた主人公は

少々(いびつ)ではあるものの……渡るには充分な

急拵(きゅうごしら)えの橋を作り上げたのだった――》


「何と恐ろしい魔導力か……やはり貴殿、タダモノでは無いナ」


「いえいえ……そもそも俺達の所為ですし!

たッ、たまたまこの状況に適切な技を知って居ただけですので! 」


「ふム……(のう)ある(タカ)(つめ)を“(かく)したい”と言う訳カ

安心するが良い……深くは追求しなイ。


ともあレ……貴殿らの旅が、無事に進む様祈って居ル」


「有難うございます……ですが

色々お世話になりっぱなしで何とお礼をすれば良いのか……

……再会出来た時、また改めて色々とお礼をさせて下さい。


政令国家にも後で連絡をしておきますから

緊急時と言わず、何時(いつ)でも遊びに来て下さいね! 」


「うム……その言葉に甘えよウ……では、よい旅をナ! 」


《――この後

鬼人(オーガ)族達との別れを惜しみつつ再び旅路へと戻った一行


……オベリスクの修理が完了するまで

(しばら)くは歩きでの旅路と成った訳だが

どうやら、問題は其処(そこ)では無かった様で――》


「……とりあえず政令国家に連絡入れておこう

何日も連絡出来なかったし、心配掛けてるかも……兎に角!


魔導通信、ラウドさん! ――」


………


……



「――連絡が出来なくて申し訳有りませんでしたッ! 」


「な、何じゃ?! ……主人公殿かっ?!

無事じゃったか……皆で心配をしておったんじゃよ!?

ミリア殿もエリシア殿も魂が抜けた様な様子でのぅ……


……それにしても、一体何が()ったんじゃね?

(ただ)忘れておっただけならば繋がらん訳もあるまいて」


「それが、その……オベリスクが谷底へと落ちまして……」


「何ぃ?! ……皆無事じゃろうな?! 」


「え、ええ……全員無事です!

そ、それでその……落ちた先で俺を救ってくれたのが

鬼人(オーガ)族”と言う種族なのですが

救って頂いたお礼を満足に出来なかったので

その代わりと言っては何ですが、鬼人(オーガ)族に何か()った際には

政令国家で受け入れて頂けたら……と言うか、もう約束してしまいまして。


事後報告で申し訳無いんですけど……良いですかね? 」


「ううむ……散々な目にあったんじゃのぅ。


しかし……鬼人(オーガ)族のぅ?

聞いた事の無い種族じゃが……見た目の特徴は? 」


「えっと……赤い皮膚で、(ひたい)からは角が生えていて

族長以外は我々の言葉を話せない様ですので

会話が少し難しいかなとは思いますけど

族長が居れば意思の疎通(そつう)は出来ると思います。


(ちな)みに、族長の名前はヴォルテクスさんで

俺達には“ヴォルテで良い”と……」


「ふむ……では、その方々が我が国に訪れた際には

主人公殿への恩に(むく)いる様な盛大な歓迎をせねばならんな。


……っと、報告はその位かのぅ? 」


「ええ、大体は……ですが

俺達が通った森には“樹木巨獣(ギガトレント)”と言う

巨大な木の魔物が生息している様ですので

もしもこの道を通る事がある場合は充分に注意した方が良いかと。


……オベリスクすら簡単に粉砕する程ですので」


「文献で目にした事は有るが、まさか実在……って何じゃと?!

オ、オベリスクが“粉砕”じゃと?!

どっ……どうやって旅を続けるつもりなんじゃね?! 」


「そ、それも安心して下さい!

……(しばら)くすれば完全修復が可能なそうなので!

(ただ)、完全に修復されるまでは歩きですが……」


「何と……しかし、オベリスクは恐ろしい固有魔導じゃのぅ?


っと、いかんいかん! ……長話をしておる場合ではないわい!

わしよりもミリア殿やエリシア殿に連絡してやるのじゃよ! 」


「ええ、了解です! ……ではまた! 」


………


……



「――いや~、久しぶりだとつい長話になっちゃったな

さてと、引き続きミリアさんとエリシアさんにも連絡を……」


《――そう言いつつ

続いてミリア達に連絡を入れ掛けた主人公


……だが、この瞬間

“謎の声”は再びメルへと


“……皆無事で良かった! ……僕も嬉しいよ! ”


そう、話し掛けた――》


「えっ?! ……ま、またさっきの声っ?!

あなたは誰? 私の声は届いてるの? 届いてるならっ! ……」


「メルちゃん……ま、また何か聞こえたんですか?

と言うかもしかして、昼なのに“おばけ”とかじゃないですよね?! 」


「いや、マリア……今のは(かす)かだが俺にも聞こえたぞ?

てか……今の声は何だ? 」


《――と周囲を見回しつつ話して居た一行

だが、今度は主人公にのみ(ささや)いた別の声――


“ねぇ、アナタが主人公サン? ……お話出来るなんて嬉しいワ♪ ”


――この瞬間、(つや)っぽい声色で主人公に(ささや)いた謎の女性

すかさず主人公(かれ)は――》


「……あなたは誰です?

俺達の無事を祝ってくれた所を見ると敵とは思えないけど

この状況です、完全には信頼出来ません……


……近くにいるのなら姿を現して下さい」


《――そう問うた

だが、声の主は――


“会いたいのは山々だけド、それなら一度

ワタシ達のいる場所まで来てくれないと無理ネ?


……勿論(もちろん)、私達は敵なんかじゃないワ?

あなたの(たくま)しい魔導力をぜひ間近で感じたいだけよ?

もし来てくれるのなら……幸せにしてあげるワ♪ ”


――そう言って

一行を(みずか)らの居住場所へと招き――》


「い゛ぃッ!? ……あ、会いに来いと言われても

あなた達が何処(どこ)に居るのかを知らないですし

第一、あまり遠い場所だと困るんです……俺達は……」


《――そう言い掛けた主人公(かれ)(さえぎ)る様に

謎の声の主は――


“……旅の途中ですものネ♪

確かにアナタ達が目指す次の国にたどり着くまでの日程が

数日ズレるかもしれないけド……それでも、会いに来て欲しいワ? ”


――と言った

直後、この余りにも怪しい(ささや)きに――》


「待った……何故(なぜ)、俺達が旅の途中である事や

次の目的地の場所まで知って居るんだ?


……姿を表さないのは百歩譲って良しとする

だけど、この状況はとてもじゃ無いが信用に足りない。


せめて君が何者なのか、それを教えてくれ」


《――強い警戒心と共にそう問うた主人公

直後、謎の女性は――


“そんなに警戒しないで? ……私達は森の精霊よ?

……とっても(たくま)しいアナタと

皆さんに折り入って真剣に相談したい事が有るだけ。


それは、ワタシ達精霊族の命に関わる事……

……勿論(もちろん)タダでとは言わないワ?

オネガイ聞いてくれるならワタシの事……好きにして良いワ♪ ”


そう言って、(なま)めかしくねだり――》


「命に関わる……って、な゛ッ?!

そッ、そんな“エロエロ攻撃”で

俺が動くと……お、思って居るのかッ?!


……けッ、けしからんッ!!

俺をそんなに安く見て貰っちゃ困るなぁ全くッ! 」


《――直後

見るからに動揺した主人公に対し、マリアは――》


「あの~主人公さん? 何を一人で悶々としてるんです?

私達には聞こえない声を相手に――


“何らかの交渉をしてるんだろうな~”


――って事だけは理解出来てますけど

それにしても明らかに“不健全(ふけんぜん)な話を”してませんか? 」


「い゛ッ?! ……いや、そのッ!!

って…マリア達には聞こえて無いの? 」


「ええ……聞こえる人は挙手(きょしゅ)を」


《――そう提案した直後

仲間達は……メルすらも手を挙げず――》


「……と、言う事です」


「そうなのか……その、何と言うか

俺とメルに話しかけてる人達は

どうやら人間じゃ無いみたいでさ……」


「え!? やっぱり“おばけ”……」


「だからそうじゃなくて! ……“精霊族”らしい。


……詳しくは知らないけど

彼女が言うには精霊族達の命に関わる事件が起きて居るらしい

俺も良くは分からないけど……助けに行きたいんだ」


《――決意を胸にそう告げた主人公

だが、マリーンは――》


「ねぇ……騙されてる可能性は無いの?

この一帯(いったい)はあんな“樹木巨獣(ヤバいの)”が出る森よ?

主人公の規格外な魔導力を目当てにして

罠に誘い込もうとしてる変な魔物って可能性もあるんじゃないの? 」


「ああ……正直そうかも知れないし全くの嘘って可能性もある

だけど、俺の力を信じて頼って来た人達を

無下(むげ)にしたくない気持ちがあってさ……けど

無理にとは言わないし、無視するのも間違いじゃないとは思う

けど、その……」


《――と、少々優柔不断な様子の主人公を

見かねたマリーンは――》


「そんな奥歯に物の(はさ)まった様な言い方しないで良いから!

それで? ……何処(どこ)に行けば良いの? 」


「えッ? それは……えっと、何処(どこ)へ行けば……」


“嬉しいッ♪ ……道案内はワタシがするワ♪

ワタシの声を頼りにワタシ達の元へ来てネ♪ ”


「ど、どうやら……精霊が案内してくれるらしい」


<――ともあれ


この後“精霊族の女性”の発言を信用し

“精霊達の住処(すみか)”とされる場所へ向かう事となった俺達は

半日と少し歩き、道中で遭遇(そうぐう)した魔物などを狩りつつ

やっとの思いで指定の場所へと辿り着いた。


だが……到着した俺達の目の前には

巨大な樹木だけが立って居て――>


………


……



「……何だ? 木しか無いぞ?

くそッ! ……(だま)されたか……皆、周囲の警戒を(おこた)らず

この場所から……」


<――そう言い掛けた俺を(さえぎ)った


“声”


彼女は――


“騙して無いワ? でも嬉しいっ♪ ……来てくれたのネ♪

今、アナタ達が入れる様にするから待ってネ♪ ”


――そう言って俺達の眼前に立っている木を

“変化”させた――>


「は、入れる様にって

何処(どこ)からどう見ても木にしか見え……って、ぬわぁッ!? 」


<――瞬間

俺達の眼前に立つ大木には突如として大きな“門”が現れた

直後、門の先には“手招きをする女性”の姿が見え――>


「えっと……流石(さすが)にこれは、皆にも見えて居るよな? 」


「ええ、ちゃんとは見えませんけど

女性が居るのだけは分かります……けど。


……何か妙に“ボン・キュッ・ボン”ですね?

やっぱり“変な約束”……したんですか? 」


<――そう言いつつ

拳を固めていたマリア――>


「いッ?! ……いや、そんな事は無いッ!!

と、取り敢えず……いッ、行くぞッ!! ……えいッ! 」


<――そう(なか)ば誤魔化す(ため)かの様に

勢い良く門を潜り抜けた瞬間――>


「アナタが主人公さんネ♪ ……会いたかったワ♪ 」


<――言うや否や、勢い良く俺に抱きついた女性。


彼女は……俺と同程度の背丈を持ち

褐色の肌、背中には精霊族特有と思われるオーラを(まと)

白銀の髪に王冠を()せた……見るからに

“精霊族の女王的”な女性だった。


だが……この直後、非常に不味(マズ)い事に

この“女王”は抱きついたまま、あろう事か

興奮気味に俺の頬へと口づけをした。


当然と言うべきか、このとんでもない“行動”の所為で――>


「へぇ~っ? やっぱり“そう言う事”だったんですね? 」


<――と

マリアに(にら)まれ――>


「主人公……最低ね」


<――と

マリーンからは外方(そっぽ)を向かれ――>


「ひ……(ひど)いですっ! 」


<――と、メルにも軽蔑(けいべつ)されてしまった俺は

何時(いつ)も大抵の状況ならば俺の味方をしてくれる

ガルドからも見放(みはな)されてしまって――>


「い、いやちょっと皆待ってくれって!!

てか……頼むから離れてくれッ!!! 」


「アラ(ひど)い……やっと会えたのに冷たいわネ?

アナタ、ワタシの“飛ぶ音”……忘れたノ? 」


「は? 君の飛ぶ音? ……すまないが、分かる様に説明してくれ」


「……イイワ♪

ちょっとだけ飛ぶから良く聞いて居て頂戴ネ♪ 」


<――そう言った次の瞬間

“女王”は勢い良く飛び上がり、俺達の目の前を横切った。


……大きな風切り音、一聞するとただの風切り音だったが

この音を聞いた瞬間……俺とマリアだけが

ある“状況”を思い出した――>


「主人公さん……この音! 」


「この音、何処(どこ)かで……あッ!!!

魔導適正を測ってた時“癒やし”で出たあの音って……まさか?! 」


「そうよ♪ ……思い出して貰えてワタシ、嬉しいワ♪

主人公(アナタ)(たくま)し過ぎる力を感じた

ワタシが興奮しちゃった時の音よ♪ ……でも

近くで感じると予想以上ネ♪ ……アナタ、とっても素敵よ♪ 」


<――そう言いつつ俺の正面へと舞い降りると

再び俺の(ほほ)へと口づけをした“女王”――>


「ぬわぁッ!? ……ふ、不意撃ち止めろぉッ?! 」


「アラ? ……“不意”じゃ無かったら良いのネ? 」


「そ、そう言う事じゃなくて!! ……ああもうッ!

そもそも俺達を呼んだ理由は何だ?!

俺に“こんな事”をする(ため)じゃないだろッ!? 」


「ごめんなさいネ……つい興奮しちゃったワ♪

確かにアナタ達を呼んだのは別の理由よ?


本当の理由は……」


<――この瞬間

今の今まで明るく振る舞って居た“女王”は

とても真剣な表情に変わった、そして――>


「魔族達を止めて……もしも無理なら、全て倒して」


<――直後

強い怒りを感じさせる様子でそう言った――>


「い、いきなり穏やかじゃない相談ですね……ですが

(いず)れにしても順番が色々とめちゃくちゃです。


……()ずは自己紹介から始めませんか?

それから改めて聞きますから……」


「そうね……ワタシの名前はマグノリア

でも、アナタだけはリーアって呼んでも良いワ? ……特別ネ♪ 」


「ええ……ではリーアさん

“魔族達を止める”って話について……詳しく話して頂いても? 」


「嫌だワ? ……寂しくなるから“敬語”と“さん付け”はやめてネ?

それで……魔族の話に戻るけれど

奴らは何故(なぜ)か森を手当り次第に焼き払ってるの……


……ワタシ達“精霊族”は森が住処(すみか)であり

森はワタシ達の身体……此処(ここ)はまだ無事だけど

恐らく時間の問題だと思うワ……だからお願い。


私達を……いいえ、森を助けて欲しいの。


勿論(もちろん)タダでとは言わないワ?

さっきも言ったけど、ワタシの全てをアナタにアゲルから……」


「い゛ぃッ?!! ……い、いやそのッ!!

そんなあのほら、その……ねッ?!

そ、そうッ!……第一種族が違い過ぎるから!

そッ、それに……そんな事を期待して来た訳じゃないしッ?!


と……兎に角、俺に其処(そこ)まで言ってくれるのは光栄だけど

そんな事を目当てに来た訳じゃ無い。


……君達の安全の(ため)、精一杯協力はする

けど、俺に“身体をどうたら”って言うのは

聞かなかった事にさせてくれ……そもそも

リーア達はメルを遠くから助けてくれたんだろ?

と言う事は、回り回って

俺達全員を助けてくれた恩があるって事だ。


……恩返しはすべきだし、出来る限りの事はするよ

だから安心してくれたら……ってリーア? 」


<――この瞬間

俺の申し出に対し涙を流し始めたリーア

直後、彼女は――>


「アナタはとても純粋ネ

なのにワタシは(ひど)い事を……ごめんなさいネ」


「い、いや……何だか良く分からないけど

もう泣かなくて良いからさ……兎に角

何をしたら助けられるのかを教えてくれないか? 」


「ええ……ワタシ達は本来

魔導師達が回復術師(ヒーラー)の技を使う時

森の持つ癒やしの力を分け与えるのが仕事なの。


……だけれど、魔族達が森を手当り次第に焼き払ってるこの状況は

魔導の均衡(きんこう)(いちじる)しく破壊しているワ。


主人公、アナタは――


“特別にして特異(とくい)な生まれの者

生死の(さかい)彷徨(さまよ)いし時、精霊(せいれい)加護(かご)宿(やど)る”


――って話、聞いた事無いかしラ? 」


「全く知らないが……当て()まる存在が居るのか? 」


「アナタと……其処(そこ)にいるメルちゃんもそうヨ? 」


「へっ?! 私が特異(とくい)な生まれっ?

ハ、ハーフ族だからとかでしょうかっ?? 」


「いいえ、メルちゃん……アナタには特別な

まだ、アナタもまだ知らない“例外(れいがい)的な力”が有るみたいなの♪

本当はちょっと“ルール違反”だけど……


……あの子がアナタを守ったのよ♪ 」


<――メルの質問に応える様にリーアが指し示した場所には

メルの手のひら程の小さな精霊が居た。


直後……その精霊はメルの元へとゆっくりと近づき

彼女の周りをくるくると回りながら――>


「……やっと会えたね! 僕はベン!

まだまだ見習いの精霊さ! ……けど、皆無事で良かった!

でも何より……メルちゃんに会えたのが一番嬉しいよ! 」


<――と言った。


一方、この声に“聞き覚え”を感じたのか

直後メルは(みずか)らを助けた事への感謝と

結果として(ベン)のお陰で皆を助けられた事に対する御礼を伝え――>


「俺からもお礼を言うよ……ありがとうベン」


<――と、メルに続けて感謝を伝えた俺に対し

(ベン)は――>


「うん! これからもよろしくね! 」


<――そう言った

だが――>


「ああ……って、これからも?

それは“頻繁(ひんぱん)に会いに来ても良い”って事かい? 」


「違うよ? ……僕はこれから先も

ず~っとメルちゃんと一緒にいるの!

そう言う事だから……メルちゃん、よろしくね! 」


「へっ?! それは嬉しいですけどっ……そのっ……


……も、森に居なくても平気なんですか?

精霊は森に居ないと、そのっ……生命力が!! 」


<――メルがそう(たず)ねた直後

リーアまでもが――>


「ええ、メルちゃんの言う通りよ? ……でも。


特異(とくい)な生まれを持つ者”の元に居るのなら

森に居るよりも元気で居られるのですワ?

兎に角……そう言う事だから、主人公(アナタ)にもお願いするワ?

ワタシの事も……(よろ)しくネ♪ 」


「は? ……き、君もついて来るって事か?!

って言うかリーアは女王じゃないのか?!

女王が森を離れるのは流石(さすが)不味(マズ)いんじゃ……」


「……ここから離れるのはちょっとだけ寂しいワ?

でも、女王の仕事は離れていても出来るワ?

分かったら早く契約の儀式をシて? ……


……女を待たせるなんて罪な男ネ♪ 」


「い゛ッ?! ……って、契約って何をすれば良いんだ? 」


「そうね……まずは目を(つぶ)って頂戴♪ 」


「こ……これで良いかい? 」


「ええ、じっとしていてネ♪


……チュッ♪


ふふっ♪ ……これで契約は完了よ♪ 」


<――瞬間

唇に感じた柔らかな感触……直後

慌てて目を開けた俺の視線の先には

リーアの顔が超至近距離に()った。


……狼狽(うろた)える俺の直ぐ近くでは

ベンがメルの(ひたい)に手を当てて何かを(とな)えて居た。


どうやら……“(いず)れの方法”でも契約は出来るらしいのだが

何にせよ、この暴挙とも言える行動の直後

女性陣は(しばら)くの間固まってしまって――>


「成程……もう許せませんね」


<――と、マリア

続くマリーンからも――>


「やっぱり、そう言う事の(ため)に……最低ね」


<――そう

軽蔑され――>


「“私の身体では飽き足らず”……ですわね? 」


<――と、タニアさん

更にメルからは――>


(ひたい)に手を当てるだけで契約出来るみたいですけど?

主人公さん? ……ねぇ、主人公さんっ? 」


<――“液体窒素”も真っ青になる程の冷気を(まと)いながら

そう問われ――>


「この流れ……当然だけど……主人公さん……ご愁傷様……」


<――とライラさんにも

見放されてしまって――>


「な゛ッ?! ……お、俺は悪くないだろ?!

それに、勝手に“奪った”のはリーアだし?!!


……ってか俺の初キスがぁぁぁッ!!


って、いや……待てよ? 初キスは確か

昔メルが俺の事を助ける(ため)に……」


<――そう言い掛けた俺の直ぐ近くで

顔を真赤にして――>


「わ゛ーっ!! 」


<――と叫んだメル


(いず)れにせよ、阿鼻叫喚(あびきょうかん)な状況の中

リーアは――>


「主人公ったら……女たらしな唇をしてるのネ♪

ワタシ……癖になっちゃいそうヨ♪ 」


<――と、俺の唇を褒めてくれた。


だが――>


「そ、そう? ……ま、まぁ褒められると悪い気はしないけど~!

……って、皆して何で拳を固めてるんだ?!


やッ、やめッ?! ……」


………


……



「ふ……ふんぎゃぁぁぁぁぁぁッ!!! 」


<――嗚呼(あぁ)

オベリスクよりも俺の方が“バラバラ”になりそうだ――>


===第五二話・終===

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