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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第二章

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第四十八話「極楽極楽~ぅうええええええええっ?! 」

《――バルン村との別れを済ませ

新たな国を目指していた一行……だが、旅の途中

女性陣からの“ある要望”が出た事で――》


………


……



<――オベリスクに揺られつつ

貰ったばかりの“バルン名産美味しい水”を飲んで居た俺達――>


「しかしバルン村の水は美味しいな……きっと

こんな美味しい水でお茶とか淹れたら美味いんだろうなぁ。


紅茶や緑茶に抹茶に麦茶、ほうじ茶に烏龍茶に玄米茶

ちょっと変わり種でルイボスティーなんてのも良いかもしれないな! 」


<――と様々なお茶を思い浮かべ夢を膨らませて居た俺に対し

マリーンはいぶかしげに――>


「な、何それ? 緑色したお茶なんてあるの? ……ちょっと怖いわね」


<――とたずねて来た。


正直、その表情に悪戯心が芽生えてしまった俺は

ワザと“気持ち悪げ”に紹介する事にした――>


「うん! ……それどころか

抹茶にいたってはドロッドロで濃~い緑色してて……


……もの凄ぉ~く苦いから

人にってはそのままで飲むのは無理かもしれないし

むせる事も無くは無いと思うなぁ……


……ま、俺は好きなんだけどね! 」


「そ、そう……私は遠慮しておくわね……」


<――と、完全に引いたマリーン。


その一方で――>


「そ、そのっ……私は

主人公さんが好みのお茶なら飲んでみたいですっ!

でも、苦いのは苦手ですけど……頑張りますっ! 」


<――と、まるで“清水の舞台から飛び降りる”かの様に

思い切った様子でそう言い放ったメル


だが、流石に罪悪感を感じた俺は――>


「あっ、いやでもその甘くして飲む方法もあるし!

抹茶味のお菓子とか凄く美味しいから……心配要らないと思う! 」


「ほ、本当ですかっ?!

俄然がぜん飲んでみたくなりましたっ! 」


「そ、それなら私も挑戦してみるわ! それでもちょっと怖いけど……」


<――などと話していると

ガルドは――>


「……しかし、御主の元居た世界は様々な物があるのだな。


それならば主人公、例え話ではあるが

この水よりも美味な水も存在するのか? 」


「う~ん……ある所にはある様な気がしないでもないけど。


でも、元の世界でこんなにも水を美味しいと思って飲める様な

そんな気持ちの余裕なんて……俺には無かったかも」


<――説明しながら暗い過去を思い出してしまった俺。


だがそんな俺に対し、ガルドは――>


「安心するのだ主人公……この世界には吾輩達が居る。


主人公がいつまでもこの水を美味と感じられる様

心から願っている吾輩達が……側にいるのだ」


「有難うガルド……皆と一緒なら水だって何だって

たとえ苦手な食材でも、全てが美味く感じると思うッ! 」


「……あら、それは嬉しい発言ね?


所で……主人公がさっきから水水言ってるから思い出しちゃったんだけど

此処の所、帝国跡地だったり危ない国だったりバルン村だったり

お風呂の無い所ばかりだから、私……お、お風呂に入りたいんだけど」


<――そう、少し恥ずかしげに言ったマリーン

どうやらマリアも同意見な様で――>


「そうですよね……今の所大きな戦いが無いからまだ良いですけど

汗かく様な行動したくないですよ~……臭くなりそうだし」


「……確かにしばらく風呂に入ってないな。


って言うか……なぁ、マリア? 」


「何ですか? ひょっとして“お風呂のアイデア”でも浮かびました? 」


「いや……俺さ?

バルン村で、熟練の木こりも真っ青なマリアの勇姿に驚いてたんだけど

あの時、お前“滝の様な汗”……かいて無かったっけ? 」


「あっ?! ……そう言えば!!

あの……く、臭くないですよね私!? ……ねぇ、ねぇってば!! 」


「う~ん……それなりに? 」


「い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! 」


「……マ、マリアさんっ?! 臭くないですから落ち着いてくださいっ!

し、主人公さんも意地悪言うのやめてくださいっ! 」


<――と、メルに怒られた。


確かに少し意地悪だったかも知れない……ともあれ。


確かに数日間風呂に入って居ないのは確かだし

特に女性陣は本気で嫌だろう。


勿論、どうにかしなければとは思ったが――>


「う~ん……次にたどり着く国辺りで風呂に入れたら良いんだけど

地図を見る限り……かなり遠いみたいだしなぁ」


<――地図には広大な森が暫く続いており

暫くは次の目的地にたどり着きそうも無い様子だった。


だが、そんな中――>


「でもぉっ!! ……主人公さんが臭いって言ったからぁぁぁぁぁっ!! 」


<――半泣きに成りながらそう叫んだマリア。


流石に申し訳無く成り始め

必死にフォローしようとしたのだが――>


「……く、臭いとは言って無いって!


悪かった、反応が面白くてつい意地悪しし過ぎただけだから!

ごめんって! ……全然臭くないから!

マリアはいつ何時なんどきも“かぐわしい”から! 」


「あっ……“こうばしい”って言ったぁぁぁぁぁっ!

遠回しに“臭い”って言ったのと一緒だぁぁぁぁっ!!! 」


「ちょ!? ……誰がこうばしいって言った?!

俺が言ったのは“か・ぐ・わ・し・い! ” 」


「ちょっと落ち着きなさいよ二人共ッ!


でも……本当、お風呂に入りたいのは事実よ

簡易的なのでも良いからオベリスクにお風呂がついてたら良いのに」


<――俺達を止めつつそう言ったマリーン。


だが、ギュンターさんは――>


「浴室でしたら……御座いますよ? 」


「え゛っ?! ……何で早く教えてくれないのよ?!

マリアさんが壊れちゃったじゃないのよ! 」


「申し訳ございませんマリーン様“有るには有る”のですが

現在、水の貯蔵量が心許こころもと無く……節水の為

私共も使用を中止している状況でして……ですが

何処かの村や国で給水をおこなえれば即座に入浴が可能でございます」


「そ、そうだったのね……でも水の都とかバルン村とか

水が豊富な場所は幾らでも有ったのに……何で給水しなかったの? 」


「それが……いずれの場所も

とてもではありませんがその様な空気では無いと判断を致しました。


要らぬ苦労をお掛けしてしまう事、深くお詫び致します」


「いえ……確かにそうだったわね。


……私が悪かったわ、気を使わせてごめんなさい」


「いえ、私めの方こそ……」


<――と、お互いに謝り続けていた二人。


だが、そんな二人の“謝罪合戦”に終止符を打つ為

話をそらす目的だったのか――>


「……兎に角、皆が言う様に愉快で無い事は事実だ。


それでなのだが……主人公

水魔導の中に水を大量発生させる様な物は無いだろうか? 」


<――と、ディーンに問われた俺。


無論、水を発生させる技なら大量にあるし

そもそもを言えば、ディーンも一応攻撃術師マジシャンの流れを組む魔導師ではあるから

知って居る筈なのだが、一応――>


「ある……けど、正直危ない気がする」


「“威力”の話ならば減衰装備それで調節は効くだろう? 」


「いや~……でも、どれも本来攻撃魔導だぞ?


いや……でも待てよ?


……ギュンターさん

オベリスクが給水するのはどう言った方法なんですか? 」


「給水方法ですか? ……それでしたらオベリスク側面からくだを出し

それで吸い上げる様な形でございますが……」


「成程……なら行けるかも!


ギュンターさん、何処かにオベリスクを止めて下さい!

俺が外からオベリスクに向かって水珠ウォーターボールを打ちます。


出来る限りゆっくりと飛ぶ様に調節しますから

ギュンターさんは全力で吸い込む様にオベリスクの操作を!

もし危ない様ならオウルさんに防御して頂くと言うのでどうでしょう? 」


「……成程、承知致しました。


では、彼処あそこの開けた場所で行いましょうか……」


<――直後

森の一角にある開けた場所を目指し

攻撃魔導をもちいた給水に挑戦する事を決めた俺達。


実行役の俺は減衰装備を一つだけ外し、出来る限り威力が大きく成らない様

細心さいしんの注意を払いつつ意識を集中していた。


暫くの後……ギュンターさんの合図に合わせ

水珠ウォーターボールを慎重に放った俺――>


………


……



「主人公様! ……順調に給水出来ております! 」


<――そう叫んだギュンターさんの言葉に安堵した俺。


……と同時に、水珠ウォーターボールはどんどんと小さく成り

完全にオベリスクへと“給水”された。


無論、一撃で満水とは行かなかったので

この後、二度三度と水珠ウォーターボールを放ち続け

ついに貯水量を満水にする事が出来できた俺は

意気揚々とオベリスクに戻った――>


………


……



「ご苦労だった主人公……だが疲れただろう、一番風呂に入ると良い」


「ありがとなディーン……でも

元々女性陣を優先しようと思ってたから俺は後で良いよ!

何だったら最後でも構わないからさ! ……皆先に入って! 」


「本当ですか?! ……じゃあお言葉に甘えて! 」


「有難うございます主人公さんっ♪ 」


<――そう言って喜んでくれたマリアとメル。


だが、そんな二人とは対照的にマリーンは――>


「……でもこの船はギュンターさんの物なのに

私達だけが先に入るのも申し訳無いわね……」


<――と、気を使って居た。


だがそんなマリーンに対し――>


「でしたら……私達もご一緒すれば宜しいのでは? 」


<――そう言って対案を出してくれたタニアさん。


この後――>


「……それならお先にお風呂頂いてもバチは当たらないかも?

そうと決まれば、タニアさんライラさんも一緒に行きましょう」


「うん……楽し……そう……」


「ええ、久しぶりのお風呂ですわね~……私が案内致しますわ! 」


<――この後、タニアさんに連れられ

オベリスク大浴場へと消えていった女性陣。


その一方で――>


………


……



「しかし……皆生き生きとした表情であったが

やはり女子おなごと言うのはどの種族も身綺麗を好む物なのだな」


「……と言う事はオークの女性もお風呂好きなのか? ガルド」


「うむ……だが風呂上がりの女子おなごを見る

“男共を”見ているのも面白い物だぞ? 」


「成程ね……でも、のぞきに行かないだけオーク族は紳士が多いんだな」


「なに、命知らずの男ならばのぞくのだろうが……

……オーク族の女子おなごは恐ろしいぞ? 」


「どの種族も似た様なものなんだな……」


<――と“猥談わいだん”に花を咲かせて居た俺達の中で

ディーンだけは独自の考えを口にし始めて――>


「……見目麗みめうるわしい女性が一糸纏いっしまとわぬ姿で居れば

それはさながら芸術の様な物だとは思う。


無論、それを見たい気持ちも理解は出来る……だが

無許可でのぞくなど非礼の極みだろう?

せめて見せて貰える様、相手に許可を取るべきだと私は思うのだが……」


「……はぁ~っ。


そりゃディーン程男前だったらそれで見せて貰えるんだろうけどさ?

やっぱりイケメンはズルいよな~……」


「……何を言う! 主人公こそ男前ではないかッ!

そうは思わないか? ギュンターよ! 」


「ええ……お二方共とても整ったお顔立ちと存じております」


「待て二人共……御主らが男前かどうかよりも、吾輩は御主らの

“根本的な考え方”が間違っている様に思うぞ? ……」


《――と“根本的な考え”を指摘したガルドに同意しつつ

オウルは静かに――


“イケメンは、爆ぜろ……”


――と漏らしたのだった。


ともあれ……この後もなごやかな時間を過ごしていた一行。


だが、突如として原因不明の地響きが発生し――》


………


……



「なっ!? ……ギュンターさん、一体何が起きたんです?! 」


「分かりません! ……いずれにせよ警戒を! 」


《――騒然とする船内


直後、オベリスク遥か前方に見えた巨大な影――》


………


……



「あ……あれは、樹木巨獣ギガトレント?!

何故この様な森にあの様な魔物が?! ……くっ!

オベリスクの防御力だけでは防ぎきれません!


……オウル様、急ぎ防御を!

ディーン様と主人公様は……迎撃を! 」


《――直後“樹木巨獣ギガトレント”迎撃の為

急ぎ甲板へと向かった二人。


一方――》


………


……



「……もうッ! 何ですの!?

久し振りの入浴で疲れを……なっ?! ……なん……ですの? 」


《――直後

しずくしたたる程の濡髪ぬれがみで司令室に現れたタニアは

衣服のボタンめながら、そう驚嘆の声を上げた――》


「……ご説明している暇すら惜しい状況でございますッ!

タニア様はず他のお嬢様方にもこの状況をお伝え下さいッ! 」


「え、ええッ! 直ぐに伝えてきますわッ! ……」


………


……



<――激しくうなりをあげるオベリスク。


……激しい揺れの中、必死に甲板へとたどり着いた瞬間

俺達の目に飛び込んで来た魔物の姿は……


……その“樹木巨獣なまえ”通りの“巨大な木の魔物”だった。


此奴はオベリスクよりも遥かに大きく

何やら怒り狂い興奮している様子で――>


「……何をぼーっとしている主人公ッ!!


早急にカタを付けるぞッ! 魔弾・強化徹甲弾!! ――


……なっ?!


弾かれた……だと?! 」


「ディーンの攻撃を弾くってどんな化け……って。


うわぁぁぁっ!? ……」


<――直後

その身をムチの様にしならせオベリスクへと“激突”した樹木巨獣


……オウルさんのお陰で直撃こそ防がれたが

その“衝撃”は凄まじく……地面をえぐりながら

数百メートルを弾き飛ばされたオベリスク……


……その衝撃にり、俺達は

“落下寸前”で何とか持ちこたえていた――>


………


……



「痛ててっ……危なかった。


後少し掴むのが遅かったら……って、やばい!!


氷刃・終之陣太刀ツイノジンタチッッッ!! ――」


<――気配を感じ、咄嗟とっさに振り返り放った攻撃は

樹木巨獣に直撃し……その体を一刀両断した。


だが――>


………


……



「な、何だっ?! ……嘘……だろ?

おい!! ……あれどうやって倒すんだよッ!? 」


<――直後

完全に自己修復した樹木巨獣の姿に愕然がくぜんとした俺は

取り乱し、誰に言うでも無くそう叫んだ。


だが、そんな俺に聞こえたギュンターさんの“返事”――>


………


……



「……主人公様ッ!

お伝えするのが遅れまして申し訳有りません!

其奴そやつに斬撃と水、氷系の魔導は意味をしません!


……ですが、最も効果のある“炎系”の攻撃は

しげった木々の立ち並ぶこの場所では危険でございます。


此処から先は賭けでございますが……船を下げ

先程の開けた場所へと誘い込みます……たどり着き次第

主人公様は出来るだけ早く炎系の魔導を! 」


「り、了解ですッ! ……」


<――直後

全速力で後退を始めたオベリスク……だが


オウルさんの防衛魔導越しとは言え

容赦無く降り注ぎ続けた激烈な打撃と船を揺らす凄まじい衝撃に

オベリスク其処彼処そこかしこから“警告音”を鳴らし始めた。


だが……それでも何とか

“目的の場所”へと誘い込む事に成功した


瞬間――>


………


……



「主人公様ッ! ――」


………


……



「――獄炎の魔導ッッッ!!!


獄炎極剣エクスプローシブソードッッ!!! ――」


<――直後


振り上げた両手の先に宿った炎……


……その小さな炎は、やがて巨大な剣へと姿を変えた。


だが……詠唱はまだ“完全”じゃ無い。


……これを樹木巨獣やつ目掛け振り下ろす為には

最後にもう一つ詠唱が必要だ……だが、俺の視線の先には

そんな事情などお構いなしに迫りくる樹木巨獣の姿があった。


……恐怖をおさえ、はやる気持ちをもおさえ込み

一度しか無い勝機に狙いをさだめる俺を更に襲って居た


“苦痛”――>


「ッ……ぐッ!! ……」


<――額の汗すら瞬時に蒸発する程の凄まじい熱量を発し続ける両掌りょうてのひら


襲い掛かる苦痛に耐え……俺は


ただひたすらに


“その時”を待って居た――>


………


……



「――降り掛かる火の粉までッ!

全てを燃やし尽くせぇぇぇぇッッ!!! ――」


<――瞬間


振り下ろされた“獄炎極剣エクスプローシブソード”は

その桁外れな威力で樹木巨獣を跡形も無く焼失させた……のは良いのだが。


その尋常ならざる過剰な炎に

周囲の木々にまで延焼してしまい――>


………


……



「ふぅ、何とか倒せた……ってヤバッ?! 」


「何時もの事故……いや“規格外”を責めはしないが

早急に消火を行う事を提案する」


「だ、だよね!? ……ガルドに賛成っ!


って事でッ! ……水の魔導、水珠ウォーターボールッ!! ――」


<――直後

少々慌て気味に放った水珠ウォーターボール

広大な森に燃え広がりつつ有った炎を瞬時に消し去った……だが

その余りある威力はそれだけに留まらず

今度は森を“洪水”が襲い始めてしまって――>


「……なっ?! 」


………


……



「全く……少々規格外が過ぎるぞ主人公?

魔導を消し去る技が有った筈だろう……急ぐのだ」


「う、うるさいなぁディーン! ……言われなくてもやるつもりだったし! 」

(有るの忘れてた……)


………


……



「魔導よ消え去れッ! ――」


<――と、間一髪

事無きを得た俺だったのだが――


“何時までっても

力の制御が出来ない主人公さんに私、物凄~く引いてますよ? ”


――と、マリアに言われ


“洪水起こしかけたのが初歩の技とか、改めてどうかと思うわね”


――と、マリーンに言われ


“ドSが過ぎますわね~主人公様? ”


――と、タニアさんに言われ


“ドラゴンが……驚いてる”


――と、ライラさんに言われた上

更にはオウルさんからも――>


「先程、主人公様の精悍せいかんな顔立ちに憧れ……


“イケメンはぜろ”……とは言いましたが

まさか森を“ぜさせてしまう”とは思いませんでした……」


<――そう言われた。


まさに“総スカン”である――>


「いや……皆して酷くないっ?!! 」


………


……



<――ともあれ。


気を取り直し、操縦室へと帰還するや否や

ギュンターさんまでもが――>


「……皆様、お疲れ様でございます。


主人公様は……やはり凄まじいですな」


「そ、その色々とお見苦しい限りで……すみません」


「いえ……一度怒り狂い暴れ始めれば

それすなわち“厄災”と同等にかたられる魔物を

あの様に一撃で打ち倒すなど、恐らくは

魔王程の存在でしか行えぬ程の偉業でございましょう。


どうか、誇りをお持ち下さい主人公様……」


「う゛っ……それ、褒められた気がしないんですが。


ま、魔王と同一視とか……」


《――この後

自身の尋常ならざる魔導攻撃力に苦悩し――


“なるべくならば減衰装備を二個以上外さないでおこう”


――と、密かに誓った主人公。


ともあれ……危機的状況と成った

“樹木巨獣討伐戦”からしばらくの後……夕食を取り

日課と成った政令国家への連絡を済ませ

それぞれが船内で自由に過ごして居た頃――》


………


……



「そろそろ辺りも暗くなり始めましたな……ディーン様

本日は此方こちらで停泊させて頂きたいのですが宜しいでしょうか? 」


「ああ、良いだろう……では自由時間だな

ギュンターよ、私達も風呂に入るとするか」


「いえ、私めは見張りがございますので最後に……」


《――そう遠慮するギュンターに対し

主人公は――》


「……折角ですし皆さんでご入浴されては?

俺が見張りしてますから、皆さんでくつろいできて下さい! 」


「本当に……宜しいのですか? 」


「勿論ですよ! ……ギュンターさんもたまには骨休めして下さい! 」


「……温かいお気遣い痛み入ります、ではお言葉に甘えさせて頂きます」


「気を使わせてすまんな主人公……では行くか」


《――直後

ディーン、オウル、ギュンターの三人を見送った主人公。


一方、一連の流れを側で見て居たグランガルドは――》


「ふむ……御主はやはり気が利く

上に立つ者の素養そようが有ると見えるぞ……」


「……いやいや! そんな褒めないでよ照れるから!

でもさ……ディーン達はずっと一緒だし、軍隊で言う所の“小隊”

一般で言う所の“家族”みたいな関係だと思うんだよね。


だから……たまには“家族団らん”みたいなのもさせてあげたいじゃん?

あ、後その……俺は俺でのんびり入りたいって言うかさ!

……い、一石二鳥だったりするんだよね! 」


《――と、誰の目にも明らかな照れ隠しをした主人公。


だが――》


「ふむ……ならば吾輩も主人公に譲ろう、一人でくつろぐが良い。


今日はご苦労であったな……」


「えっ良いの? ……ありがとう!

でも、ガルドも疲れてそうだし……やっぱり俺は最後に入るよ!


……ってか、さっきから不思議だったんだけど

“女性陣が一人も居ない”のは……何故? 」


「ん? ……女子おなごだけで“ゲーム”をすると言っていたぞ? 」


「ああ成程ね~……ま、今日は皆大変だったろうし……」

(お風呂であの地響きは怖かっただろうな……)


「うむ……そうであるな……」


《――暫くの後

グランガルドも入浴を済ませ、いよいよ主人公の入浴時間と成った頃には

日も落ちきった深夜と成って居た。


……だが、そんな深夜にも関わらず“オベリスク大浴場”では

さながら“貸切風呂”の様に

贅沢な時間を過ごしている主人公かれの姿があった――》


………


……



「ふぃ~っ! ……やっと入れたぁぁぁっ!


けど……あんな恐ろしい魔物、良く倒せたなぁ~俺。


流石俺! 最強俺! ……偉い偉い! 」

(まぁ、倒した後が不味マズかったけど……)


………


……



「……ってかこの風呂、尋常じゃなく広いな。


オベリスクって“キャンピングカー”みたいだ……」


《――そう独り言を言いつつも

疲れを癒やす為引き続きのんびりと入浴して居た主人公かれは……


……首まで浸かり

大の字に成ってもなお余りある程の巨大な大浴場を一人で満喫していた。


だがそんな中……脱衣所の方から、何やら声が聞こえ――》


………


……



「ん? ……マリア達の声がする。


まぁでも流石に俺の服が有る事に位気がつくよな……」


《――盛大な“死亡フラグ発言”の所為もあってか

女性陣は誰一人として主人公かれの服に気が付かず

皆一様に服を脱ぎ、浴場へと向かって来て居た――》


………


……



「……マ、不味マズい!!


いや……でも流石に俺は悪くないぞ?!


……と言うか先に入っているのは俺だし、いざと成れば

逆に俺が悲鳴を上げればマリア達が謝る筈ッ!! 」


《――この、二度に渡る“死亡フラグ発言”がさらなる不運を呼んだのか

直後……主人公かれが悲鳴を上げるよりも更に早く

更に大きく……女性陣全員の悲鳴が船内に響き渡り

主人公かれは女性陣から袋叩きのき目にったのだった――》


………


……



「うぅっ……俺は……悪く……な……い……っ……」


《――薄れゆく意識の中で

グランガルドの発言を走馬灯の様に思い出して居た主人公――


“オーク族の女子おなごは恐ろしいぞ?”


――蘇る記憶に“ツッコミ”を入れながら

主人公かれは静かに意識を失った――》


「……恐ろしいのは……“オーク族に限った”話じゃ無い……


しかも……俺がのぞいた訳じゃ……ぐはっ! ……」


………


……



《――深夜


魔王のひきいる軍勢は

魔物すら寄り付かぬ程の殺気を放ち、行軍を続けて居た――》


「……魔王様、行軍に時間を要し申し訳有りません。


ですが……明日には到着が可能かと」


「構わん……この行軍は小僧を血の一滴すら残らぬ程に滅する為の物……


……我が軍勢が一歩、また一歩と小僧へ近づく度

我の血はき……肉はおどるのだ……」


《――異様な笑みを浮かべそう言った魔王。


そんな中……魔王軍第一大隊

大隊長マインは――》


「魔王様……我が身は元より

その全身全霊を魔王様の為に捧げる覚悟でございます。


魔王様の怨敵おんてき……必ずや発見し

魔王様の前にひざまずかせる事を誓います……」


「フッ……期待しているぞ」


「ハッ! ……御望みのままに」


===第四十八話・終===

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