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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝15万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第二章

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第四九話「楽には解決出来ない事柄」

深夜

樹木巨獣(ギガトレント)討伐の疲れを癒やす(ため)眠りに()いて居た一行


一方、政令国家より北へと離れた謎の国では


「……グロリアーナ様、遠いですが

“妙な気”を感じ取りました……お気付きに成りましたか? 」


「ええ……これは間違い無く魔族の物。


恐らく、この場所が魔族に知られてしまったのでしょう

やはり“複製体番号九(レプリカナイン)”……あの子のせいよ!!!

……せめて“魔剣”が完全体に仕上がる程魔族を吸収させて居たならば

(むし)ろこの状況は好機であったと言うのにッ!!!


全く……明らかに時期尚早(じきしょうそう)ですわね」


「ええ、左様(さよう)で……ですが他の複製体(レプリカ)共も総動員させれば

(ある)いは……ん?

……失礼“ネイト様”が来られます。


この話は後程……」


「ええ……」


魔王軍の気配を間近に(とら)

警戒心を(あらわ)にして居たグロリアーナ

戦いの時は刻一刻と迫って居た。


◆◆◆


所は代わり、浴場騒ぎの翌日

引き続き森の奥深くを進み続け

地図上ならば丁度(ちょうど)森の約半分を進んだ“筈”の一行。


……だが、オベリスクには“妙な障害”が発生して居た。


「どうした? 間違い無く私は直線に進んで居る筈

何故(なぜ)だオベリスクよ……何故(なぜ)……」


「どうした? ギュンター」


「ディーン様……原因は私めにも判りかねますが

方位計(ほういけい)(はり)(さだ)まらずひたすらに“回転”を続けて居るのです

無論(むろん)、周囲には妙な気配なども感じられません……」


「何? ……オベリスクの方位計(ほういけい)が狂った事など

今まで(ただ)の一度も無かった筈……


……念の(ため)、全員警戒体制を取れ」


「ええ、既に全砲門の準備も整っております

ですが、こう成ってしまいますと

目視と感覚だけが頼りで御座いますので

少々、この森を抜けるまでに時間を要するかと……」


直後


騒がしくなり始めた船内……だが

周囲に目立った異常もなければ、他は全て正常に稼働する中

方位計(それ)”だけが異常を示して居るこの状況に

主人公(かれ)は脳裏に浮かんだ“原因”を口にした。


「あの……それってこの森の“磁場(じば)”が可怪(おか)しいからでは? 」


「差し支えなければご教示(きょうじ)

磁場(じば)”……とは何でございますか? 」


「えッ? ……い、いやあの

方位計(ほういけい)何故(なぜ)必ず“北を向く”のかはご存知ですか? 」


「いえ……ご教示(きょうじ)願えますでしょうか? 」


勿論(もちろん)です! ……けど

ギュンターさんがこれを知らないとは意外でした

ともあれ……俺自身もそんなに詳しい訳では無いので

ちょっと間違ってる所があるかも知れませんが

分かりやすく言えば、この世界は“球体”で

中心には(かく)と呼ばれる場所があり

その働きのせいで“磁力(じりょく)”と呼ばれる力が発生して居るんです。


そして、方位計(ほういけい)が感じ取る事の出来る“磁力(それ)”が

本来ならば“北を向く様に”発生しているんですが

恐らくこの森はその磁場が“滅茶苦茶(めちゃくちゃ)”なんだと思います」


「成程……では、(さなが)

“迷いの森”とでも名付けるべき場所ですな」


「ある意味そうですね……ですが

ギュンターさんの操舵(そうだ)技術を持ってすれば

絶対にこの森を脱出出来ると俺は信じています」


「ええ、ご期待にお答えするべく全力を(もっ)て……」


「……っと言って置きながらちょっと待ったぁぁッ!!

ギュンターさん! ……突然ですが、良い案を思いつきましたッ! 」


「え、ええ……どの様な案でございましょうか? 」


「その……ライラさんの協力が必要ですが

バードア……いや。


龍之眼(ドラゴンアイ)作戦”とでも名付けましょう! 」


「何……それ……ちょっとカッコいい……かも……」


作戦名を聞いたライラは少し喜び

興味津々な様子で主人公の方を見つめて居た。


「そ、その……喜んで貰えて良かったです!


……とは言え、ライラさんが巨龍(ドラゴン)

()の位の時間出現させられるか”を知らないので

正直、それ次第にはなりますが……兎も角(ともかく)


()ず、ライラさんに上空から全体を確認して頂き

オベリスクが正しい方向へ進める様に指示出しをする。


次に、その情報を頼りに

ギュンターさんは逐次(ちくじ)オベリスクの進路を修正する。


それを続けて森を抜ける……と言うのはどうでしょうか? 」


「名案だ、その作戦で行こう……ライラ、頼めるか? 」


「はいディーン様……ドラゴンと一緒に……頑張ります

でも、今の調子なら……一〇分が限界……です……」


申し訳()さげにそう言ったライラさん。


この後“一〇分”と言う制限時間に何とか間に合わせる(ため)

更に案を考えた俺は


「……大丈夫、間に合わせます!


もう一つ案を追加します……俺達は

地図に記載された“橋”に向かいたいのですが

距離は相当なものだと思われます。


なので、時間内に間に合わせる(ため)にも

ライラさんが通った道順(ルート)上、つまり“橋までの道筋”に

何か目印に成る物を、地面に向かって一定間隔で投げ

ギュンターさんはそれを目印に進めば良いかと! 」


と、提案した

この方法なら巨龍(ドラゴン)の限界速度で橋まで飛翔し

余裕を持ってオベリスクに帰還する事が出来ると思えたから。


だが、この案に対しギュンターさんは


「成程……しかし、ある程度私の目印に成る様な物を

その様に大量に……となりますと

ライラ様お一人では少々大変かと思います。


ですので……出来ましたら主人公様も

ライラ様と共に巨龍(ドラゴン)の背に乗って頂き

上空より魔導で目印に成る様な何かを作り出し

一定間隔で森へと打ち込んで頂ければ

それを目印に出来るのでは……と考えますが、如何(いかが)でしょうか? 」


「成程! 名案ですギュンターさん! ……って、ちょっと待った

俺、地味に“高所恐怖症”なんですけど……」


良案だと感じたと同時に

絶望をも感じる事と成った俺に対し

直後、マリアは


「……ほうほう? これはこれは

主人公さんの“絹を裂く様な悲鳴”が聞けそうな作戦ですね! 」


「な゛ッ?! ……マリアお前

言っとくけどマジで怖いんだからな?! 」


と、半ギレして居た俺に対し

直後、マリーンまでもが


「そもそも、この作戦の発案者は主人公なんだし

昨日、私達の裸見たんだから……そ、その位頑張ってよね!! 」


「う゛ッ……マリーンまで痛い所を

ってか!! 俺が入ってる事に気が付かなかったのはそっちだろッ?!

しかも裸なんて全然見えなかったしッ!

単純に俺は“殴られ損”だッ!! 」


「あら……どうかと思う発言ね? 私達三人はまだしも

ライラさんとタニアさんは仮にもディーン隊の人達よ?

貴方が隊長であるディーンさんと仲が良いから言えないだけで

本当は二人共……」


「なッ?! ……分かった、やるよ……やれば良いんだろッ?!

くそぉッ!! ……そ、その……ライラさん。


巨龍(ドラゴン)って“大人しく”飛んでくれたりします……かね? 」


この瞬間、(なか)ば諦めた様にそう(たず)ねた俺

だが、直後返って来た答えは


「うん……大人しく飛んで……間に合うなら……

そうする様に……努力すると……思う……多分……」


「ちょぉッ!? ライラさん今、特大の“死亡フラグ”立てましたね?

でも仕方無いか……俺が言い出しっぺですし……はぁ~ッ。


やりますよ、やればいいんでしょ……ううぅッ……」


「気張るのだぞ……主人公」


「あ、ああ……頑張ってくるよガルド

けど……皆、俺に幻滅(げんめつ)しないでね? 」


「それは“悲鳴の程度”にもよりますよね? 」


「マリア、お前……無事に帰って来たら絶対に揉んでやる」


「キャー見るだけでは飽き足らず

実際に触ろうとするなんてヘンタイだー」


「う、(うるさ)いッ!! ……とッ、兎に角!!

ライラさん、さっさと行きましょうッ! ……」


言うや否や

強引にライラの手を引き早足にオベリスクを下船した主人公。


ともあれ……緋色(ひいろ)巨龍(ドラゴン)を前に及び腰と成って居た主人公は

顔面蒼白(がんめんそうはく)に成りながらも巨龍(ドラゴン)の背に乗った。


……直後、空高く飛翔した巨龍(ドラゴン)

例に()って“絹を裂く様な主人公の悲鳴”が

(あた)り一面に響き渡る事と成った。


◆◆◆


「いッ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁッ?!

たかぁぁぁぁぁぁぁぁッ?!! ……怖い怖い怖い怖いッ!! 」


「主人公さん……落ち着いて……大丈夫……だから

ドラゴンも(うるさ)いって……言ってる……から……」


「でも高いの怖いのぉッ……

ごめんなさいッごめんなさいッごめんなさいッ……」


「駄目……主人公さんが……変になった

頑張って……そろそろ何か……目印……打ち出して……」


「うぅッ……わ、分かりました……土の魔導:石柱ッ!


石柱! ……石柱ッ! ……って危なぁッ!?


い、今落ち掛けた……怖いぃッ!!


……石柱!


ひぃッ?! ……突風がぁッ!?


イヤァァァァァァァァッ!? 石柱ぅぅぅぅぅッッッ!! 」


……この後

(あぶ)()“しか無く”

龍之眼(ドラゴンアイ)作戦”を遂行し続けた主人公。


一方のライラは主人公(かれ)滑稽(こっけい)な姿を間近で感じ

ほんの少しだけ微笑(ほほえ)んで居た。


「石柱ぅぅぅ~~~っ……も、もうらめぇ……ッ……」


◆◆◆


「こ、怖かった……ハァハァ……

本当に怖かったよぉッ……二度と嫌だ

空怖い空怖い空怖い空怖い空怖い……」


どれ(ほど)の時が流れたのだろうか?

気が付くと俺は、地上に立って居た。


「主人公さんっ! 大丈夫ですからっ!

今はもう地上ですからっ! ほらっ!

お空はあ~んなに上にありますからっ!! 」


「ありがとうメル……でも、これで一安心かな?

ってか、情けない姿過ぎて恥ずかしいし……俺

もっと強い男に成れる様に努力するよ」


「ほう……(きも)()わった主人公か

それはそれで見てみたいものだが

個人的に私は今の主人公が好みだ……見て居て“安らぐ”物がある」


「な゛ッ?! ……ディーンって変な所“ドS”だよね!? 」


「主人公よ……恐怖に打ち勝つと言うのは並大抵では無い

良くぞ達成した物だ……流石(さすが)吾輩(わがはい)の認めた(おとこ)よ」


「……ガルドは本当に優しいな

こんな俺の事をいつもフォローしてくれてありがとな! 」


と感謝を伝えた俺

だが、この直後ガルドは妙に“モジモジ”とし始め


「い、いや……吾輩(わがはい)も……実は、高い場所が苦手でな……」


「なッ……ガ、ガルドに怖い物があったとは

でも……仲間だな! ガルドッ! 」


「う、うむッ!! 」


直後


固い握手を交わした俺達……そしてこの瞬間

俺達の固い絆を更に強固にする

“高所恐怖症同盟”が誕生したのだった!


っとまぁ……ともあれ。


暫くの後、決死の思いで打ち込んだ“石柱”を頼りに

(ようや)く橋の近くへと辿(たど)り着いた俺達。


◆◆◆


「橋が見えて参りました……しかし、立派で御座いますな」


オベリスク前方には

“大橋”と呼ぶのに相応(ふさわ)しい程の

立派な石造りの橋が掛かって居た


そして、この直後――


“オベリスクの渡れる強度がある”


――と判断したギュンターさんは

慎重にオベリスクの(かじ)を取り始め


「……この橋を渡りきった後もまだ少し森が続く様だが

地図を見る限りでは然程(さほど)広くも無い。


その上、森を抜ければ国がある……巨龍(ドラゴン)の餌や

その他の補給を考えれば“助かった”と言う他無いだろう」


「そうだなディーン……俺も“怖い思い”をした甲斐があったよ

しかし……橋って石造りでも揺れる物なんだな

実は俺、これも“苦手”なんだよなぁ……」


などと話して居る間に

橋の中心までたどり着いたオベリスク


頑丈な橋はオベリスクの重量を物ともせず

一切危なげ無い様子だった……だが。


この直後、背後から

急速で接近する巨大な魔物が現れた瞬間。


事態は“一変”した。


「ば、馬鹿な?! ……“二体目”だと?! 」


オベリスクの後方、橋の(たもと)には

先程の樹木巨獣(ギガトレント)などとは比べ物に成らない程の

“超巨大個体”が立って居た……そしてこの直後


此奴(こいつ)は俺達に向け


“人の言葉を話し始めた”


◆◆◆


「オマエタチ……ヨクモ……ワガ……シュゾクヲ……

ユルサナイ……ユルサナイッッッ!!! ――」


◆◆◆


言うや否や、怒り狂い

(さき)樹木巨獣(ギガトレント)など

まるで比較に成らない程の一撃を放った“超巨大個体”


「ぐっ! 間に合わないっ!!! 」


瞬間、オウルさんの声が聞こえた

そして……“硬い物を粉砕する様な”音も。


……何だ?


空が遠ざかって行く……マリア?


……メル? ……マリーン?


あれは……オベリスクの……主砲ッ!?


これ……は……一体……


俺達は


一体……


◆◆◆


「……おかしいねぇ?

いつもなら主人公ちゃんが連絡くれる頃なんだが……」


「主人公っちの事だから

また忘れてるとかじゃないのぉ~っ? ミリア」


「それなら良いんだがねぇ……」


◆◆◆


所は変わり、深夜


月明かりに照らされた幾万(いくまん)の軍勢


「魔王様、到着でございます」


魔王軍第一大隊

大隊長マインは膝をつき、静かにそう伝えた。


直後


「全軍を持って“小僧”を捕らえよ……良いな? 」


地を()う様な魔王の号令に

陸海空、全てを覆い尽くすかの(ごと)

一斉に進軍を開始した魔王の軍勢……草木を()ぎ倒し

周囲を焼き払いながら……たった一人の“子供”を探す(ため)

全てを(めっ)しながら進軍を続けて居た。


だが


「――食らうが良いッ!

龍之火炎息(ドラゴンブレス)ッ! ――」


瞬間

何処(どこ)からとも無く放たれた炎の渦は魔王へと一直線に飛来

その玉座ごと魔王を焼き払わんとした、だが


「なッ?! ……ま、魔王様っ?! 」


「フッ……この程度の児戯(じぎ)など他愛(たあい)も無いわ。


だが……我に対する無礼な行い

(つぐな)わせねば成らぬであろう――」


火炎に包まれたまま

眉一つ動かさずそう言った魔王は


「――掌握(しょうあく)せよ。


暴食者之掌握(グラトニーグラブ)” 」


この瞬間、そう静かに発し――


「ウグッ!? ……さ、流石(さすが)は魔王……ッ……

良くぞ私を見つけ出した……ぐぅっ!

だが、貴様など()ぐに……様が……滅ぼし……」


――遠くに見える山の(いただ)きに現れた

禍々しく(うごめ)く巨大な“(てのひら)”は

魔王の“(それ)”と寸分|(たが)わぬ動きで

一人の魔導師を(はりつけ)にして居た。


今にも握り潰されんとする最中(さなか)

藻掻(もが)き苦しみながらも

魔導師は魔王にそう(うそぶ)いて居た。


彼の名は“ゲール”


「フッ……貴様が何者であれ

我に対する非礼は万死に(あたい)する……だが

その前に……話して貰おう……」


「グッ!! ……たとえ拷問されたとて……吐かんぞ?


魔王よ……グロリアーナ様とネイト様ならば

お前達魔族など()ぐにでも滅ぼし……


……その悲願(ひがん)成就(じょうじゅ)される事だろうッ!! 」


「フッ……愚鈍(ぐどん)な考えを持つ者よ。


……貴様がどう足(あが)いた所で

我が“暴食者之掌握(グラトニーグラブ)”からは逃れられぬ……


……其奴(そやつ)らの居場所を“()え”」


「馬鹿め! ()かぬと言って居……


……あ゛あ゛あ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ァ゛ッッッ!!!!! 」


瞬間

ゲールを(つらぬ)いた無数の小さな(トゲ)……


……その(トゲ)は彼の精神を(むしば)

彼を絶望が(ごと)き痛みで苦しめ続けた


「……二度は()わぬ」


「あ゛ぁぁぁぁぁぁ!!! ……い……言わ……ん……お前……達……

魔族を滅ぼす……た……め……うぐッ?!


あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁぁぁぁッッ!! ……」


「フッ……忠誠心の高さは褒めてやろう。


だが、不愉快だ……もう良い。


()らい()くせ。

暴食者之掌握(グラトニーグラブ)”よ」


直後

生々しい音を立て、ゲールを()らい始めた

暴食者之掌握(グラトニーグラブ)”……(しば)らくの後

“ゲール”は血の一滴すら残されぬ程に()らい尽くされた。


◆◆◆


「マインよ……“小僧”を見つけ出せ

そして……“奴”にも(さぐ)らせよ」


「ハッ! ご命令のままにッ!


おい! 魔導師ライドウ! ……魔王様がお呼びだッ! 」


大隊長マインがそう呼び掛けた直後

何処(どこ)からとも無く現れた一人の魔導師


“ライドウ”


……銀の髪を()らし、片目に眼帯をしたこの男は

現れるや否や


「おや、これはいけない……マイン様、少し此方(こちら)

完全回復(パーフェクトヒール)……治りましてございます」


即座に回復魔導を放ち

魔王に対し(こうべ)()れながら


流石(さすが)は魔王様で御座います……

……先程の攻撃で無傷とは、感服(かんぷく)致します」


そう、賛辞(さんじ)を送った。

だが


世辞(せじ)(ため)、貴様を呼び付けた訳では無い……急ぐが良い」


「これは……大変失礼を致しました

では、お望みの(まま)に……探索魔導:活動的走査(アクティブソナー)


……ふむ、小僧らは間違い無くこの国に

更に追跡を続けさせて頂きます。


成程、あの辺りに……ん?

防衛の魔導:鉄壁(アイアンウォール)!! ――」


瞬間、何かを察知(さっち)

魔王軍全てを包む巨大な魔導障壁を即座に展開したライドウ


……これに遅れる事、一瞬

彼らの元へと振り注いだ大量の“剣気”は

(ライドウ)の展開した魔導障壁に()りその全てが防がれ――


「――鬱陶(うっとう)しい(ハエ)め。


此方(こちら)は貴方達が何処(どこ)に居るのか

(しっか)りと見えて居るのですよ? ……まぁ良い

“隠れ場所”を失えばどうなるか……焼き払ってあげましょう。


……暴虐(ぼうぎゃく)の炎よ

全てを焼き払い、全てを滅するのだッ!


大虐殺之獄炎ヘルファイア・オブ・カーネイジ”――」


直後

ライドウに依って上空へと発せられた赤黒い炎

それは(うず)となり

剣気の放たれたその場所を焼き払わんと飛翔し……


……遠方に(つら)なる山々を平地(へいち)へと変えた。


だが……黒煙の上がるその場所からは、悲鳴では無く

冷めた女の声と、興奮した“子供の声”が(とどろ)いて居た。


「……魔族以外に魔導師まで居るとは想定外よ

その上“トライスター”だなんて……本当に最悪だわ」


「凄い凄い凄いッ! ……ママ凄いや! 凄い火だったのに全部消したね?!

ゲールはかなり役たたずだったけど……やっぱりママは強いんだ!

けど……まだ魔族が沢山居るよ?

僕が! 僕が! 僕がッ! ……倒して良いんだよね?! 」


「ええ……全てを(ほうむ)り去るのよ。


いい子ねネイト……沢山魔族を倒す事の出来るネイトなら

ママは大好きよ? ……だから、ちゃんと全部。


……倒すのよ? 」


「やったぁぁぁっ! ……頑張る!!!

僕頑張るから!!! ママの一番は……僕の物だよっ!! 」


直後嬉嬉(きき)として“魔剣”を構えたネイトは


「僕はママの一番……だから僕は

この武器にお前達を食べさせるんだ。


……どんどん食べさせたいからじっとしててね?

ねぇ? ねぇ? ねぇッ?!! 」


魔王に対しそう強く(うそぶ)いたネイト、だが。


「フッ……斯様(かよう)な小僧一人が(ため)

我が配下の多くが(ぼっ)したと()うか……全く

(はらわた)の煮えくり返る……小僧よ

貴様に()びが(ため)(とき)(あた)えよう……」


「へっ? ……何言ってるの?

お前も僕の武器に食べられるんだよ?


……準備は良い?


行くよ?! 行くよ!? 行くよぉッ??! ――」


瞬間

魔王の眼前から消えたネイト


彼は、周囲の魔族を魔剣へと()わせながら

着実に魔王との距離を詰めて居た。


「フッ……小僧らしい単調な動きよ。

呪殺之柩(カースド・コフィン)”――」


直後、ネイトに向け

凄まじい速度で迫った禍禍(まがまが)しき“(ひつぎ)


だが、これを軽々と避け


「遅い! 遅い! 遅ぉ~いッ!! 」


言うや否や、彼は魔王の喉元目掛け

一直線に突進をした、だが。


「フッ……愚かな……」


そう(はっ)し手を振り下ろした魔王

瞬間、(ネイト)は魔剣|(ごと)遥か遠くの大木へと叩き付けられ

そのまま意識を失った……一方、これに慌て

(ふところ)から何かを取り出した“グロリアーナ”は――


「牢獄開放ッ! 」


――そう叫んだ。


直後、彼女を(かこ)う様に現れた八つの(おり)

其処には(ネイト)と瓜二つの“複製体(レプリカ)”の姿が()った。


だが、どの複製体(レプリカ)生気(せいき)と呼ぶべき物は無く

その目は一様(いちよう)虚空(こくう)を見つめて居た。


「制限解除……全ての魔族を討伐しなさい、私の息子達ッ!!! 」


直後、そう命じたグロリアーナ……この命令に

複製体(レプリカ)”達は静かに(うなず)き、行動を開始した……だが。


魔王は(ただ)、一言


「くだらぬ……ライドウ、貴様に任せよう」


そう言うと、玉座へと深く腰掛け、目を(つぶ)った。


「ええ……お任せを、魔王様……」


直後、魔王に対し一礼したライドウ

この瞬間、(ライドウ)の目に映る魔王の姿は

(さなが)ら“何かを待って居る”様な姿であった。


◆◆◆


「う……ううっ……ぐっ?! ……お前っ!!!

お前お前お前ェッ!!! ……」


一方、(しばら)くの後目を覚まし

そう声を上げた複製体番号九(レプリカナイン):“ネイト”

その瞬間、目を開き(ネイト)に対し(にら)みを効かせた“魔王”


「フッ……寝覚めはどうだ? “小僧” 」


常人には直視する事すら恐ろしい魔王の視線


だが、この直後……(ネイト)に取って遥かに恐ろしい事実は

魔王から(もたら)された恐怖(もの)では無かった。


彼に突きつけられた“八体の存在”……そう、(ネイト)は知らなかった。


……一心不乱に戦う八体の(みずか)

指が千切れ……腕が千切れようと毛程(けほど)も気に掛けず

(ただ)、魔族を滅する事だけを命じられ戦い続ける

純粋な“武器”としての“(みずか)ら”と同様の存在を。


「ね……ねぇママ……どう言う事?

ね、ねぇ……ねぇ、ねぇッ!!


ママッ!!! ……」


「ネイト……貴方は何も考えなくて良いの

武器に魔族を食べさせる事……今は、それだけを考えなさい。


……良いわね? 」


「でも……おかしいよママッ!!

僕が一番だって……僕だけを愛してるって!


……ねぇママ! ……あれは一体何なの?!


何で“僕”が沢山居るの!?


ママ……


ママ……


ママッ!!! ……」


(ネイト)の涙ながらの訴えに対し

暫くの間、無言を(つらぬ)いた後

観念した様に“真実”を語り始めたグロリアーナ


「ネイト……貴方は……貴方は、私の最愛の息子。


その……“複製体(レプリカ)” なのよ

其処(そこ)で戦って居る複製体()(たち)もそう。


私は、本当の意味での貴方のママでは無いわ? ……でも

貴方が、この中で一番強い事だけは揺るがない真実……


……今もまだ、貴方が私を愛してると言うのなら

夫を食い殺し……息子をあんな姿にした魔族達を

その根源(こんげん)である魔王を……何をしてでも倒しなさいっ!!!


……良いわね!!? 」


“愛など初めから無い”

そう言ったに(ひと)しい態度を(つらぬ)いた彼女(グロリアーナ)


その様を……(ただ)

愕然(がくぜん)とした様子で見つめるしか出来なかったネイト


……幾許(いくばく)かの時が流れ


(ネイト)は、一筋の涙を流し


◆◆◆


「……分かったよママ、僕に任せて。


駄目だったらごめんね……怒らないでね。


でも……多分、今の僕じゃ勝てないと思うから……そしたら


どうか、逃げてねママ……僕はどんなママでも……


……僕は……僕は……僕はッ!!!


ママが……大好きだから……」


言うや否や

(ネイト)(みずか)らの身体に向け“魔剣”を突き刺した。


「ぐぅっ……か……はぁっ……はぁはぁはぁっ……グゥゥゥゥゥッ!!! 」


直後、激しく(うごめ)き、(ネイト)の身体に深く潜り込み

完全に(ネイト)の身体へ飲み込まれて行った魔剣


……直後、(ネイト)の皮膚は赤黒く変色し

(おぞ)ましい“異形の姿”へと変化した。


「ママ……逃ゲテ……マゾク……ゼンブ……ゼンブゼンブゥ!!!

……食ベルカ゛ラ゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛アァァァァッ!!! 」


瞬間“()れ”は魔王の視界から消え

魔族数百体を一瞬にして“消滅”させた


「何もかも……全てが不愉快な小僧よ……」


魔族の肉片を両手に(つか)

(むさぼ)()らう“()れ”に対し

嫌悪の視線を差し向けつつそう言った魔王……一方。


「では、魔王様……私にお任せ頂くと言うのはどうでしょう? 」


「好きにするが良い……我は(きょう)()がれた」


◆◆◆


そう言うと

再び玉座に深く座り目を(つぶ)った魔王……一方

不敵な笑みを浮かべ、深く息を吸ったライドウは


(おお)せのままに……さて、()ぐに終わらせてあげましょう

固有魔導:“時之狭間(トキノハザマ)”――」


そう唱えた瞬間

ネイトだった“()れ”とグロリアーナは完全に“停止”した。


「いやはや……“時之狭間(これ)”を使うのは久し振りですが

やはり愉快な時間ですねぇ? ……さて、どう苦しめるか?

あぁ、思い付きました……()ずは“母親”から……ふふふっ」


言うや否や

母親(グロリアーナ)”を捕縛したライドウ……そして

周囲に居た数体の魔族に対し

彼女(グロリアーナ)()らう様”指示を出し

そして……彼女(グロリアーナ)の時間を正常に


“戻した”


◆◆◆


「なっ?! 何が起き……は、離しなさいっ! 下等な魔族共!

やめっ……やっ……」


乾いた空気に(ひび)く切断音と悲鳴


魔族に()って切り裂かれたグロリアーナは

この直後、多数の魔族達に――


“分け与えられた”


――まるでお菓子を頬張(ほおば)る子供達の様に

彼女の肉片を頬張(ほおば)ると嬉しそうに雄叫びを上げた魔族達


そして……その様子を確認するや否や

ネイトだった“()れ”に見せつけるが(ため)だけに

ライドウは“()れ”の時間をも、正常に戻した。


「グゥアァァァ……ウグッ?


……マ……マ?


ア゛……ア゛ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ァァァァァァァァッ!!! 」


激しく咆吼(ほうこう)を挙げた“()れ”は


グロリアーナの肉を()らう魔族達を瞬殺し

そして、ライドウに()る捕縛の魔導でその動きを封じられた。


だが


「ガアァァァァ……ハナゼ……コ゛ノ゛ヤ゛ロ゛ウ゛!!!

オマエ……コ゛ロ゛ス゛ウ゛ゥゥゥ……ガァァァァァァァァッ!!!! 」


瞬間、捕縛を打ち破り

一層凶悪な姿へと変化した“()れ”は

(うな)り声を()げるや否や


再び、周囲の魔族を“消滅”させた。


「……何と、面白いですねぇ?

ですが……流石(さすが)にやりすぎですッ!! 」


直後、再び“時之狭間(トキノハザマ)”を起動し

()れ”の時間を止めたライドウ……だが、(わず)かに

()れは“動いて”居た。


()ウ……()ワセロ……ガァァァァァァァァ!!! 」


直後、再び“()れ”は(うな)り声を上げた。


……その声は木々を激しく揺らし

地を割り……そして、ほんの一瞬ライドウの集中を途切れさせた。


瞬間


「ウガアァッ!!! ……ギャァァァァァウッ!!!!! 」


「フッ……ライドウの術から逃れるだけに飽き足らず

我の(じゅつ)()りて斯様(かよう)藻掻(もが)くとは……


……我が呼ぶのも可笑(おか)しな話では()ろうが。


この……“化け物”が」


(みずか)らへと斬り掛かった“()れ”に対し

そう、侮蔑とも称賛とも取れぬ様子で言った魔王に対し

()れ”は(こた)えるでも無く、藻掻(もが)き続け


「ママヲ……返セ……ママヲ……ウガァァァァッ!! 」


「“化け物”よ……答えよ

何故(なぜ)、我が眷族(けんぞく)を狙った? 」


……この瞬間

更に強く“()れ”を捕縛し静かにそう()うた魔王


「ママガ望ンダ! ……ボクヲ……大好キダッテ!

ボクノコト……ママハ期待シテタ! ……ナノニッ!!! 」


「フッ……あの様な母が恋しいとは。


我には到底理解出来ぬ……あの女に取って貴様など

手駒と呼ぶ事さえ烏滸(おこ)がましい……」


「ソレデモッ!!! ……ボクハ、ママガ大好キ……ダッタ

生キテ居テ……欲シカッタ……ナノニッ!!! 」


「フッ……“子”の心“親”知らずと言った所か

全く、(きょう)()がれる事だ……


……全てが(しゃく)(さわ)る不愉快な小僧よ


安らかに眠り、我の(かて)と成るが良い――」


「オマエ……絶対ニ……許サナイ……


……ガアアアアアァァァッ!!! 」


(ママ……大好き……だ……よ……)


()れ”……“(ネイト)”は、消えゆく最後の瞬間まで

(みずか)らの母に対し、真っ直ぐで(ゆが)んだ愛を貫き


その、短過ぎる生涯を閉じた。


◆◆◆


「……全く

(はらわた)の煮えくり返る……不愉快なッ!! 」


瞬間珍しく感情を(あらわ)にした魔王の姿に

配下の魔族達は皆|(おび)え切って居た。


だが、そんな中


「……魔王様、至らぬ限りで申し訳有りません

しかし、まさかあの化け物が

あの様な“抵抗力”を持って居ようとは……」


「謝罪など不要……ライドウよ、我は城へと帰還する

我が配下の帰還は貴様に任せよう……良いな? 」


「ハッ……御任せを」


◆◆◆


同時刻 “迷いの森”


“超巨大個体”は崩落した橋の前で立ち止まったまま

(うら)み深い視線を崖の下へと(そそ)いで居た。


視線の先……崩落した橋の下には

叩き()せられ、原型を(とど)めぬ程に大破した

オベリスクの“残骸(ざんがい)”が散らばって居た。


===第四九話・終===

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