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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第二章

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第四十五話「……今度の国こそ楽勝生活!? 」

《――ウバン王国脱出後、次なる目的地へと向かって居た一行


だが、ギュンターは地図と地形を交互に見ながら頭を悩ませて居た――》


………


……



「妙ですな……やはり間違ってはおりませんが……」


「どうしたギュンター……何を悩んでいる? 」


「……申し訳ありませんディーン様、地図にると

此方の方角には国はおろか、村などは無い筈なのですが

何故か周囲に……と、丁度見えて参りました。


……“あれ”でございます」


《――と、ギュンターが指し示した先には

とても小さく、ボロボロの看板が辛うじて立て掛けられて居た。


“……よう……そ……ル……村へ”


……看板の文字はかすれて消えており

完全には認識出来ず――》


「少し気味が悪いですけど……立ち寄ってみます? 」


《――旧帝国城での

“おばけ騒ぎ”を思い浮かべつつも皆に対しそう提案した主人公。


だが、村の入口は狭く

オベリスクでの侵入は不可能な様で……下船後、周囲を警戒しつつ

この“ボロボロの村”へと足を踏み入れた一行……だが。


この名称不明の村を探索して居た一行の行く先に

家らしき建物や畜産を行っていたであろう形跡こそ見られたが

一帯の景色はさながら“廃村”と言うに相応ふさわしい程の状況で――》


………


……



「あの、主人公さん……この村に仮に人が住んでるとしても

稼げる様なお仕事も無ければ、そもそも

食料すら無さそうに思えるんですけど? 」


「……確かにマリアの言う通りだな。


って、今向こうの方に人が居た様な……」


《――主人公が指し示した場所には

穴の空いた藁葺わらぶき屋根の大きな建物が建っていた。


直後……警戒しつつ、建物へと近づいた一行


すると――》


………


……



「待て……あの建物から数十名程の人の気配がする。


だが、皆呼吸が浅いな……」


<――そう言って藁葺わらぶき屋根の建物を警戒し始めたガルド


俺にはさっぱり分からなかったがガルドが言うなら間違いないだろう。


などと思っていると――>


「全く……大した相手では無いが、囲まれた様だぞ」


<――ため息交じりにそう言ったディーン

直後、この村の戦士と思しき男達数名がしげみの中から現れた。


だが……彼らは皆やせ細っており、武器も防具も状態は最悪で

戦う前から既に結果が見えている様な状態だった。


正直、この状況からの脱出すら容易よういだと思えたが

この直後、村の男戦士が発した言葉を聞いた瞬間

俺は、抵抗する気が“せた”――>


………


……



「……き、貴様らは何者だ!?

この村にお前達が望む金品や食料は無い!

無用な戦闘は避けたいんだ! ……理解したなら立ち去ってくれ! 」


<――事もあろうに

俺達は“盗賊”に間違われて居たのだ……冗談じゃ無い。


この村の“ボロさ”を見て、誰が此処ここにマトモな食料や

まして“財宝”などあると思うだろうか?


とは言え……いずれにしても

彼らからの誤解を解くべきだと考えた俺は――>


………


……



「……待ってくれ!

済まない……嫌だろうけど、皆も抵抗しないでくれ。


……ず、俺達にこの村をどうこうする気は全く無い!

聞きたい事が有るだけなんだ!

情報を聞いたら直ぐに立ち去るから、此方を攻撃するのだけは止めてくれ!

俺達も戦いたくは無い! ……頼む! 」


「良いだろう……聞きたい事とは何だ? 」


「まず、この絵本を見て欲しい……この本の内容か

しくは作者に詳しい人間がこの村に居ないだろうか? 」


<――当然、この村で情報を得られるとは思ってなかったが

だが、少なくとも盗賊だと思われているのが落ち着かない。


だから“えて”聞いただけだった。


そして結果は案の定――>


「……村では本などもう何年も見ていない。


しかし、サーブロウ伯爵か……“爵位しゃくい”の有る人間がこの村にいれば

我々はもっと裕福な生活が出来ているだろうな」


<――こんな答えが帰って来た。


……皆相当に腹を空かせている様子

戦士だと言うのに真っ直ぐ立つことすら危うい人すら居る。


と言うか……こんな姿を見た後に情報だけ聞いて

“はいさようなら”と言う気には成れなくて――>


………


……



「……騒動を起こして済まなかった、約束通り立ち去るよ。


ただその前に……皆

少しだけで構わないんだけど、この人達に食料を分けても良いかな? 」


<――俺のこのお願いに仲間達は一瞬戸惑ったが

皆直ぐに賛成してくれた。


この後、オベリスクから備蓄食料を一割ほど降ろし

村の戦士達に渡した所、戦士達はとても喜んでくれて――>


………


……



「こんなに立派な食材をこんなにも沢山……構わないのか!? 」


「ああ、要らぬ騒動を起こしたお詫びとでも思って欲しい

俺達も貧乏旅だから困ってる時はお互い様って事でさ。


あと……もしこの村での生活から抜け出したいのなら

俺達の母国である政令国家と言う国は

いつでも貴方達を受け入れてくれると思う。


もしそうしたいなら今すぐにでも送り届ける

とは言えいきなりこんな申し出を受けるのは気味が悪いとは思うけど

それでも、本当に抜け出したいと思うなら一つの方法として

頭の片隅にでも置いといてくれると嬉しい」


<――差し詰め俺は“ウバン王国での一件”を思い出し


“罪滅ぼしのつもりで必要以上にこの村に優しくしたんだろ? ”


……とでも誰かに言われてしまえばその通りかも知れない。


けど、困ってる人に見て見ぬ振りをするのだけは嫌いだ

無いそでは振れないが

有るそでなら“千切れる位”振りたいと思っている。


まぁ、言葉の使い方があってるかは謎だが――>


………


……



「ふむ……会ったばかりの相手を信頼するなど

本来なら愚の骨頂だが、君は何故か信じられる者の目をしている。


その国は……我々を受け入れられる程に裕福なのか? 」


「……う~ん、裕福と言えば裕福なのかな?


少なくとも、多種族への偏見や差別はほぼ無いし

仕事も探せばいくらでもあると思う」


「ふむ……考えておこう、感謝する。


所で、名前を聞いていないが……私の名前はジン、君は? 」


「俺は主人公……後ろにいるのはメル、マリア、マリーン。


それから……」


「……私はディーン。


続けて部下のタニア、ライラ、ギュンター、オウルだ」


「吾輩はグランガルド……主人公の生涯の友として同行している」


「ふむ、宜しく頼む……しかし皆良い面構えをしているな。


……所で、我々も失礼な行動を取ってしまった

お詫びと言っては何だが、日もかげって来た事だし

君達に取って宿代わりになるかは分からないが

もし休みたいのなら我々の村で休んでいかないか? 」


「えっ? ……良いんですか? 」


「ああ、君達の様な素晴らしい方々が泊まってくれたなら

さびれたこのバルン村にもはくがつくと言う物だ」


<――“ジン”さんにそう言われた瞬間

マリーンは――>


「ああ……あれバルンって書いてあったのね! 」


<――と言ったのだった。


ともあれ……ひょんな事からこの村に一泊する事となった俺達

直後、案内されたのは村で一番大きな藁葺わらぶき屋根の建物だった。


どうやら此処ここに村人全員で暮らして居る様で

雨漏りのする場所を避け、所狭ところせましと寄り添って生活している様子が見て取れた。


だが……やはり皆やせ細っており、この村の経済状況は

どうにも逼迫ひっぱくしている様子で――>


………


……



「村長……敵襲では有りませんでした、この方達は危険では有りません

食料を譲り受けましたのでずはその報告を。


それと、お礼と言ってはなんですが

この方々の本日の宿として住居の提供をさせて頂きたく思っております」


「ほぉ……これはこれは……こんなに沢山の食料を下さったか。


それは大変感謝するべき事じゃ……御一行様

こんな汚い所で良ければ、宿として自由にお使いくだされ……」


<――好々こうこうやと言った様子の村長さんは

俺達の事をとても歓迎してくれた――>


「ありがとうございます……しかし

今ジンさんが“敵襲では無い”とおっしゃいましたが

この村には盗賊でも現れるのですか? 」


「ええ……この村でよく取れる物と言えば

わずかな芋と綺麗な水位の物なのですがね……最近

それすらも奪いに来る悪党が……馬鹿に成らない数おるのですよ。


ウグッ! ……ゴホッゴホッ!!! 」


「そ、村長ッ! ……水を持てッ! 」


「……す、すまんのぉジンよ。


正直、薬草すら買えぬ程に逼迫ひっぱくしておりますで

大したもてなしも出来ませんが、どうかご勘弁くだされ……」


「いえ、お気にさらないで下さい……っと。


メル……頼めるかな? 」


<――そう言いつつメルに対し目で合図を送った俺。


直ぐに理解してくれたメルは微笑み

そして、村長の元へと近づくと――>


「村長さん、じっとしてて下さいね……」


「娘さん……何を……」


「大丈夫です……治癒の魔導

息吹之治癒レスピラトリーヒールッ! ――」


………


……



「……何と?!

息が……呼吸が楽になりましたぞ!?

娘さんや、何とお礼を……」


「いえいえ、御礼なんて大丈夫ですっ! 」


「おぉ、何と慈悲深い娘さんじゃ……有難う、メルさんとやら……」


<――そう言ってメルに手を合わせ

心からの感謝を伝えた好々こうこうやな村長さんは

この後、俺達に対し旅の目的をたずねて来た――>


………


……



「……それで、旅の御方

貴方達はどの様な目的で旅をさって居るのですかな? 」


「それは、この絵本なんですが……」


<――先程、村の戦士達にした物と同じ説明を村長に行った俺

すると、村長は村に住む全ての民に

絵本に関する知識は無いかとたずねてくれた。


だが……やはりと言うべきか

有力な情報は得られず――>


………


……



「お役に立てず申し訳ない限りですじゃ……」


「いえいえ、それより先程の話なんですけど……」


<――と、話し掛けた瞬間

この建物を包囲する何者かの気配をガルドが感じ取った。


直後、ディーンは隊員達に命令を下した――>


「……全員、戦闘陣形だ。


オウル、この建物の防衛を頼んだぞ……」


<――警戒を強めた俺達


すると、この直後

建物の外から“怒鳴り声”が聞こえて来た――>


………


……



「おい!! ……お前達っ!! 今日も芋を貰いに来てやったぞ!!

火を放たれたくなかったら大人しく寄越よこせっ!!! 」


「そうだぞ?! ……素直に寄越せば命を奪おうとまでは言わねぇ!

分かったら抵抗せずに早く寄越せってんだ!! 」


<――下劣げれつな態度で恫喝どうかつする声が数名。


村の住人達は恐怖し、皆震えていた……その一方で

反撃の機会をうかがって居た村の戦士達。


だが……彼らの“状態”では勝ち目が無い事など火を見るよりも明らかだ。


……村人達に取っては圧倒的に不利な状況

どうする事も出来ない歯痒はがゆさにジンさんは歯を食いしばっていた。


だが、意を決し――>


「くっ……何時までこの様な状況が続くと言うのかッ!

くなる上は刺し違えてでもッ!! ……」


<――瞬間

飛び出さんとしたジンさんに“待った”を掛けた俺――>


「……大丈夫ですから一度落ち着いて俺達に任せて下さい。


マリア、メル、マリーン……皆は此処の防衛を

ディーンは俺と一緒に来てくれ……行くぞ。


転移の魔導、村の入口へ――」


………


……



「――よし、これなら敵がよく見える

けど、捕縛の魔導もこの距離からだと避けられる可能性があるか。


ディーン……お前の技であいつら全員、殺さずに行動不能に出来るか? 」


「……ああ、任せてくれ、


魔弾“弱装弾”――」


<――直後

ディーンの放った魔弾は、盗賊達の足に当たり全員を転倒させた。


見た所……骨折すらしていない様子だったが

痛みは相当な様で……倒れた盗賊達は皆、悶絶もんぜつしていた。


“うん、絶対食らいたくないタイプの技だ! ”


と、そんな無駄な事を考えている暇は無い――>


「……捕縛の魔導

多重捕縛網マルチプルネットッッ! ” ――」


………


……



「……ぐわぁっ?!

お、お前ら何者だっ!? この村は俺達の獲物……だぞッ?!


くっ! ……動けんッ!! 」


「はぁ~っ……今日は高確率で“盗賊に間違えられる”日か

てか一緒にするな……俺達はこの村の“臨時用心棒”だ

まぁ、取り敢えずお前らが逃げられないのは確認出来たし……


……ジンさん! 村長さん! 皆さん!


もう出て来ても大丈夫ですッ! ……」


………


……



「何と……たった二人でこの者達を生け捕りとは凄まじい。


……感謝致しますッ!! 」


<――とジンさんに感謝され、少々得意げに成っていた俺


だがその直後……盗賊達に目を向けたジンさんは――


“貴様ら……覚悟しろッ!!! ”


――と武器を振り上げ、彼らを殺そうとした。


だが、それと同時に妙な勘が働いた俺は――>


「ジンさん待ったッ! ……少しだけお待ちを! 」


「っ!? ……何故です?! 」


「その……気持ちは痛い程分かりますがお願いです

少しだけ此奴こいつらと話をさせて頂きたいんです。


少しで構いません……お時間を頂けませんか? 」


「分かりました……ではあちらにおります」


<――直後

ジンさんと戦士達が建物へと戻ったのを確認すると

盗賊達に対し“ある”質問をした俺――>


………


……



「なぁ……装備を見る限り

お前達自身も良い生活してる風には見えないんだが

こんなに貧乏な村を襲う程には逼迫ひっぱくしてるんだろ?


一応たずねるけど……何処からこの村に来た? 」


「お前に何の関係がある……殺すなら殺せ」


「そう早まらず落ち着いて聞けって……関係“大アリ”なんだ

俺達はちょっと前に“ウバン王国”って所で面倒に巻き込まれた。


あの国では他国からのハンターを不当に扱ってたんだが

其処で“こき使われてたハンター達”とお前達が

良く似た格好をしてる様に見えたんだ。


だから、もしやと思ったんだけど……俺の見当違いか? 」


「……如何いかにも、お前達同様

我々も運良くウバン王国から脱出出来た手合いだよ。


だが……必死で逃げてやっとの思いでたどり着いたのがこの村だ

他も探しはした……だが辺り一面木と竹ばかりだ。


ただでさえあの国で疲弊ひへいした体で

この村から奪ったわずかな芋と水だけを頼りに

その過酷な道のりを馬車も無い状態で移動するなんざ

自殺にも等しい行為だ……だから奪ってるんだよ。


無論……悪いとは思うがな」


「やっぱりそうか……でも、だからと言って

お前達のやってる行動は全く正しくない。


お前達のやった事はこの村の住人達にとっては殺人にも等しい行為だ。


今から質問するから正直に答えろ……お前達は今までに

この村の人達を一人でもあやめたか? 」


「いや……脅しで投石した事はあるが

明らかに“危ねえだろう”って場所は狙ってねぇさ

だが“当たりどころが悪く”……って事が無いとも言えねぇ。


……村人に聞いてみてくれ、信じては貰えんだろうが

俺達は命を取ろうとまでは思って居ない」


「分かった……ジンさん、此方へ! 」


「……話は終わりましたか? 」


「ええ、ある程度は……それと一つ質問を

こいつらの襲撃で村人に死人が出た事は? 」


「……怪我人は山の様に出ましたが

さいわいにも死人は出ていません。


……ですが、何故今そんな質問を? 」


「それが……俺達がこの村の前に訪れた国では

他国の人間から搾り取るだけ搾り取り、文無しにしてから

最悪殺害すると言ういびつな国家運営をおこなって居たんです。


俺達はその国からからくも脱出したのですが

どうやら此奴こいつらもあの国の被害者だった様でして……


……とは言え、此奴こいつらのやった事は

本来、許されるべき行いでは無い事も充分理解しています。


ですが、もしわずかでも許せる余地があると言うのなら……」


「……待って下さい主人公さん。


貴方は此奴こやつらを……許せと? 」


「い、いえ……命令では無く

あくまで考えの一つとしてお伝えしただけです。


それと、此奴こいつらは腐っても元ハンターですから

もしこの村に他の盗賊でも現れた際に……」


「……この者達以外の盗賊など見た事が有りません。


そもそも……長い間この盗賊達に食料を奪われ続けた所為で

直接的では無くとも赤子を何人も失っております。


……それでも貴方は許せとおっしゃるのですか? 」


<――“雷に打たれた様な衝撃”と言う言葉が有るが

この時がまさに“その状態”だった。


そう感じた理由……それは、盗賊達こいつらが取った行動の全てが

ウバン王国に対し俺が行った行動と“同じに感じた”からだ。


“知らなかったとは言え……本当に申し訳ありませんでした”


……そう言ってジンさんに頭を下げた俺も

きっと盗賊達こいつらと同じだ。


……ウバン王国での劣悪れつあくな扱いに苛立いらだ

堪忍袋の緒が切れた俺は、この国の全てが悪いと決めつけ

結果として弱い立場の人間までもを傷つけてしまった。


此奴こいつらがやっていた事と何も変わらない。


“危ない所には当てない様に石を投げた” ……と此奴こいつらは言った。


だが、たとえ石に当たらずとも

奪われた芋の数だけえに苦しんだ村人が居て

その所為で失われた命に……此奴こいつら自身も

“手遅れに成ってから”知ったのだから。


俺は……ジンさんに対する謝罪を終えると

その次に、盗賊達こいつらにも頭を下げた――>


………


……



「……変に希望を持たせて済まなかった」


「気にするな……我々のまねいた事だ

ジンとやら……色々とすまなかったな、いさぎよく受け入れるよ」


「何を今更……白々しいッ!!


……良いだろう。


せめて苦しまぬ様一撃で仕留めてやる……覚悟しろッ!! 」


………


……



「ジン! ……待つのじゃ! 」


「そ、村長ッ?! ……何故お止めに成られるのですかッ?! 」


「……落ち着くのじゃジン。


主人公さんを始め、皆さんには世話になった……


……聞けばこの者達も食うに困って居ったのじゃろう?

もっとも、御主達の行いで結果的に失われた命の件は恨んでおる。


じゃが……全てはえが悪いのじゃよ、えが。


とは言え……主人公さんや

私共には芋しか作れる作物は無く……当然

名産品も無ければ、他国から得られる利益も無い。


……お分かりでしょう、この村はちて行く一方なのですじゃ。


故に……労働力がいくら増えようとも

それらをやしなうだけの食料すら維持出来ぬのですじゃ……」


「……そ、その……せめて、お渡しした食料の中に

“植えれば育つ何か”があれば良かったのですが……


……お役に立てず、本当に申し訳有りません」


「何をおっしゃいますじゃ、充分助かっておりますとも。


じゃが……そんな事よりも

主人公さん達は明日辺り旅立たれるのでしょう?


であればその際、一緒にその者達を

他の街へと連れて行ってやっては貰えんじゃろうか?


そうすれば、せめてその者達の生活だけでも

立ち行く様になるやもしれんと思っておりますでな……」


<――この発言を聞いた盗賊のボスは複雑な表情を浮かべた。


そして、その直後……


……深々と


静かに村長へ頭を下げた――>


………


……



「ええ、分かりました……村長さんがそう望むのであれば

責任を持って他国へと移送する事を約束します」


「ええ、感謝致しますぞ……さて、騒動は収まった事じゃ。


我が村では水程度しか誇れる物がございませんが

主人公さん達もさぞお疲れでしょう。


一先ひとまずは中に入り、水でも飲んでゆっくりして下され……」


「ええ、ご馳走ちそうに成ります……」


《――こうして

バルン村の危機と盗賊達の命、二つを救った主人公。


だが……彼の心には釈然としない思いが渦巻いていた。


そして……そんな鬱屈うっくつとした心のまま

再び招かれた藁葺わらぶき屋根の家の中

一人、鬱屈うっくつとし続けていた彼であったのだが――》


===第四十五話・終===

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