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異世界転生って楽勝だと思ってました。【17万PV突破感謝! 】  作者: 黒崎 凱
第一章

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第三四話「楽勝装備で稼ごうか? それとも“フラグ”を立てようか? 」

大会開催まで後“四日”と成った政令国家


主人公を発端(ほったん)とするちょっとした“騒ぎ”の翌日

改めてギルドでの依頼を探して居た“主人公一行(かれら)”は


「昨日はマジでごめん……考えが至(いた)ってなかった」


「わ、私が勧(すす)めた事が発端(ほったん)だし私の方こそごめんね……」


そう、互いに謝り続けて居た主人公とマリーン

そんな二人に対しメルは


「誰が悪いとかはやめにしてっ!

今日こそは依頼を受けましょうっ! 」


そう元気に言った

そんな彼女に同意しつつ、マリアは更に


「昨日受けられなかった分も考えて

今日は“SS級”以上の依頼を受けてみませんか? 」


「は?! SS級ッ?! 流石に危なく無いか?! 」


と慌てる主人公を横目に

更に難易度の高い依頼を指(さ)し示(しめ)した“ディーン”


「私達が居るんだ、安心してくれ……ん?

これなど良い依頼じゃないか」


そう言って彼が一行に見せた依頼は

あろう事か“L級”で――


【依頼主:政令国家大統領府

依頼内容:東門より約一五キロ地点に出没した都市級魔物の討伐

魔物情報:全長約二〇〇メートル


蛇(へび)に似た形状の魔物、名称不明の魔物につき

討伐者が命名権を得る物とする。


成功条件:当該(とうがい)魔物の討伐

材料の回収を行える場合、別途報酬の上乗せあり。


失敗時ペナルティ:一〇〇万金貨


報酬金額:五〇〇万金貨


備考:材料の回収を行う場合

必要部位は目と牙……可能であれば頭部毎が望ましい】


――と、言う


“規格外の依頼”であった


「す、凄い依頼だな……こんなの倒せる人間が居るのか? 」


「何? ……本気で言って居るのか主人公?

第一に、此方(こちら)には“戦艦(オベリスク)”があり

第二に、いざと成れば主人公(きみ)の転移魔導が有る。


……何の心配も無いだろう? 」


「そうかも知れないけど……でも

失敗時の“ペナルティ”に嫌な予感がするんだが」


正直、流石(さすが)に断ろうと思って居た俺。

だが、何故(なぜ)か皆尋常(じんじょう)じゃ無く乗り気で

気がつくと、俺だけが説得されて居る様な状況と成って居て


「わ、分かったよ……引き受けてみるか……」


結局、皆の熱意(ねつい)に負けた俺は

直後、俺は勿論(もちろん)の事

全員が初となる“L級依頼”を受ける事と成った。


まぁ、内心穏やかでは無かったが……ともあれ

暫(しばら)くの後、依頼を受け

戦艦(オベリスク)へと乗船した俺達は

仮にも“最高難易度”の依頼である事を鑑(かんが)みたディーンから

目的地到着までの間の時間を使い、隊員一人一人の“能力”について

詳細な説明を受けて居た。


◆◆◆


「……ギュンターは戦艦(オベリスク)の他、体術と剣術が

オウルは隊全体の防御を全て担当し

タニアは薬草や毒物に関する知識と才能に溢(あふ)れて居る。


ライラは……皆知っての通り“巨龍(ドラゴン)”を使役して居る

残る私は、この“銃(オルトロス)”が全て……と言った所か」


「いやいや……一番簡単に説明したその銃の能力が

俺には一番怖かったけどね……」


「ふっ……そう褒めてくれるな主人公、照れてしまう」


そう言って微笑んだディーンだったが

その直後、ギュンターさんの叫び声が船内に響き渡った


「目標の魔物を視認致しましたッ!! 」


この直後、船内は慌ただしく成った


「良し……総員戦闘準備ッ!

遠距離攻撃、全体防御……及(およ)び全体回復の行える者は甲板(かんぱん)へ!


……オウルはオベリスク全体の防御を

ギュンターは操舵(そうだ)と砲門(ほうもん)

ライラ、タニア両名にはギュンターの助手を任せる。


状況開始ッ! ――」


ディーンの発したこの指示に

迅速(じんそく)且(か)つ的確(てきかく)に反応した隊員達


直後……それにつられる様に

俺達も急ぎ甲板(かんぱん)へと向かった


「皆様……防御致しますので暫(しばら)くお待ちを

固有魔導:一方通行(いっぽうつうこう)ッ!! ――」


彼(オウル)がそう唱(とな)えた瞬間

オベリスクを包み込んだ分厚い魔導防壁(ぼうへき)


……因(ちな)みに先日覚えた防衛術師(ガーディアン)のどの技の中にも

似た物は存在していない。


「……此方(こちら)からの攻撃は

一切の減衰(げんすい)無く通ります、ですが

外からの攻撃は絶対に通りません……


……時間は長くとも一時間

それまでには討伐を完了して頂きたい」


「出来るだけ早く倒します、それまでお願いしますッ! 」


「はい……お任せを」


その“一方通行(めいしょう)”通り

展開後から、甲板には土埃一つさえ入らなく成って居た。


……この、桁違いの固有魔導を展開したオウルさんは

寡黙(かもく)な態度で返事をすると、直後

防御壁の維持に全神経を集中し始めて居た


「で、デカいな……」


この瞬間


思わずそう口走った俺の目に写った魔物の姿は

まさに“巨大な蛇(へび)”だった。


とは言え、魔物との距離は“数キロ単位”で離れて居たし――


“出来る限り今の距離を保(たも)ったまま奴の体力を削りたい”


――そう考えて居た俺の横で

明らかに“近距離特化”な“斧使い”は……目を閉じ

意識を集中して居て


「……な、なぁマリア?

残念だけどマリアの斧は“近接装備”だから

今やれる事は無いし、一度下に戻って……」


そう言い掛けた矢先

マリアは目を見開き


「おりゃぁぁぁっ!!!! ……斧術奥義ッ!

投擲斧(ブーメランアックス)ッ!!! ――」


瞬間

討伐対象の魔物に目掛け勢い良く斧を投げつけた。


……直後“数キロ先”の魔物に向かい

人間業(ワザ)とは思えない程の勢いで飛んで行った彼女の斧は

魔物に重い一撃を与えた後、そのままの回転を維持し

マリアの手元へ戻ろうとして居た。


だが――


「いや、どう言う腕力(わんりょく)ぅッ?! ……って

流石(さすが)は“マリアーバリアン”だな……」


「だから語呂(ごろ)が悪いっ! ……って

“斧りん”が帰ってきましたよ~! 」


「いや、ネーミングセンス悪ッ?! ……


……ってか、ちょっと待った

よく考えたら“外からの攻撃を通さない”って事は……」


「え? 」


――直後、俺の“予想通り

”マリアの斧は“防壁(ぼうへき)”に跳ね返された挙(あ)げ句(く)

あろう事か、オベリスクの“進行方向”へと落下し


「えっ? ……は? ……ちょ?!

う、うわぁぁぁぁっ!! ……“斧りん”がぁぁぁぁっ!

どうしよう……どうしようっ?! 」


「ちょ?! おまッ?! ……マジかッ?!


あ、後で拾うから! ……取り敢えず危ないから

マリアは一旦(いったん)操縦室に戻るんだ!! 」


直後、肩を落とし操縦室へと消えて行ったマリア

その一方で


「“よろけ”はしてたけど、どう見ても無傷だな……恐ろしい。


って言うか、寧(むし)ろ今の攻撃で……不味(マズ)いッ!

此方(こっち)に迫って来てるぞ?! ……皆、急いで攻撃だ!


くそッ! ……雷の魔導:過剰電圧(オーバーボルト)ッ! 」


瞬間


慌てて放った俺の攻撃は魔物の脳天へと直撃した

だが、余りに効果が薄過ぎて


「なッ?!! ……って、クソッ!

馬鹿か俺はッ!! ……マリーン、援護を頼むッ! 」


直後

自(みずか)らが“減衰装備を外していない”と言う事実に

遅ればせながら気付いた俺は、揺れる甲板の上で

急いで減衰装備を外そうとして居た


「任せてッ!! 悪魔之槍(デビルズスピア)ッッ!! ――」


直後


マリーンの放った攻撃は

魔物の胴体へと直撃し、魔物の動きを僅(わず)かに鈍化させた

だが、その反面……動きを止めるまでには至らず

直後……戦艦(オベリスク)諸共(もろとも)に破壊せんと

突進を繰り出した魔物の桁外れな挙動に


「くッ?! ……」


“どう見ても直撃は免(まぬか)れない”

そう判断し、直ぐに対ショック姿勢を取った俺達


だが


「全砲門、一斉発射ッッ!!! 」


瞬間


俺達の鼓膜を震わせたギュンターさんの叫び

直後、轟音(ごうおん)と共に放たれた大量の砲弾……


……“衝突不可避”と思われた魔物の横腹付近へと着弾した砲弾の雨は

その凄まじい破壊力を以(もっ)て魔物を怯ませ


「回避ッ!! ――」


その僅(わず)かな隙(すき)を縫(ぬ)う様に巧(たく)みな操舵技術を見せると

彼(ギュンター)は衝突の危機から俺達全員を救った。


……この直後、彼はホッとした様に


「――いやはや

間一髪……でしたな? 」


と余裕を見せたのだった。


そして


「流石だギュンター……我々も負けては居られないな。


では……行くぞ。

“魔弾(まだん):弐型(にがた)”――」


瞬間、彼(ディーン)の銃から放たれた無数の弾丸は

魔物が砲撃を食らった“横腹(ばしょ)”へと

吸い込まれる様に着弾し……直後

“ダメ押し”を食らった魔物の動きは大幅に鈍(にぶ)り


「ディーンこそ流石(さすが)だ! ……っと

やっぱり慣れてない技だと使いづらいし

一度、氷刃(ヒョウジン)系の上位技を試す!


皆少し離れてくれッ! ……行くぞッ!

氷刃(ヒョウジン):終(ツイ)之(ノ)陣太刀(ジンタチ)ッ! 」


瞬間


全ての減衰装備を外し放った一撃は、巨大な氷の斬撃となり

地を切り裂きながら一直線に進むと魔物を一刀両断し爆散


……“終之陣太刀(それ)”が切り進んだ道には

“細雪(ささめゆき)”が降って居た


「はぁ~ッ……毎回毎回、本当に“規格外”ね?

と言うか、最初からやってよね? ……“それ”」


この瞬間

呆(あき)れた様子でそう言ったマリーンに皆同意し


「ごめん……“外し忘れ”もそうだけど

そもそも終之陣太刀(あのわざ)があんなに“大きい”とは知らなくて……


……減衰装備二個位付けたまま撃てば丁度良かったのかな? 」


と、反省を込めてそう言った俺

だが、ディーンは


「仮にも“L級”の魔物を相手に……恐ろしい事を言うものだ」


と、見るからに引いて居たのだった。

まぁ……なにはともあれ。

討伐後、オベリスクを下船した俺達は

先(ま)ず斧の回収を優先することとなり……


◆◆◆


「う~ん……此処(ここ)ら辺(あた)りに落ちた気がするんだけど

お~いッ! ……マリアも良く探せよ~ッ! 」


周囲の捜索を続けつつ

マリアに対しそう呼び掛けた俺……暫(しばら)くの後

漸(ようや)く砂に埋まった斧の“柄(つか)”を見つけたマリアは

これを勢い良く引き抜いた。


だが


「あれ? ……あ、あの……“斧りん”の先っちょが“無い”んですけど」


「えッ、お前……それ、まさか……」


「ですよね?! やっぱりそうですよね!?

うわぁぁぁぁぁんっ!!! 斧りん壊しちゃったぁぁぁっ!! 」


と、慌てふためくマリアの直ぐ近くには

“斧”部分を見つけたメルの姿があった、だが


「斧の部分ありましたっ! ……って!?

ばっ、バラバラに成ってますよっ?! 」


「ちょ?! ……うそぉッ?!

それ、バーバリアン用の凄いレアな装備だったよな!?

これは絶対に不味(マズ)い……兎に角一度

ガンダルフに聞いてみないと……」


そうして魔導通信を繋ごうとして居た俺に対し

マリアは縋(すが)る様に


「ねぇ主人公さん! ……治りますよね?!

ねぇっ! “斧りん”治りますよねっ?! 」


「とッ……取り敢えずちょっと落ち着けマリアッ!


魔導通信――ガンダルフ、最悪だ。


マリアが斧を壊した……見る限り完全に“粉々”なんだが

これって直せる物なのか? 」


◆◆◆


「な、なんじゃとぉッ?! ……ま、まさか“あの”斧か?! 」


「ああ……それで、どうだ? 」


「何たる事じゃ……いや、直せる。


直せはするじゃろうが……取り敢えず

出来る限り全ての残骸(ざんがい)を持って帰ってくれんか。


わしの工房に材料はある……どうにか形にしてやるから

出来る限りの残骸(ざんがい)を持ち帰るんじゃ! 」


「……助かるよ、迷惑ばかり掛けて済まないが

よろしく頼む……通信終了。


……と言う事らしい、直るらしいから安心しろマリア」


「よ、良かった~っ! ……でも、ごめんね“斧りん”」


「な゛ッ……と、取り敢えずディーン達を手伝おうか」


“斧りん”

もとい、斧の“残骸(ざんがい)”を回収後

ディーン達のもとへと素材回収の手伝いに向かった俺達。


だが、直ぐにマリアの異変に気付いたディーンは

ギュンターさんに対しマリアを“手厚く扱う様”指示を出し


「承知致しました……では、マリア様此方(こちら)へ

“残骸(ざんがい)”はお持ち致しますので……」


「いえ、可愛い我が子みたいなものなので……自分で持ちます

グスン……」


直後、ギュンターさんに付き添われ

戦艦内部(オベリスク)へと帰って行ったマリア


一方、状況をいまいち理解して居なかったタニアさんは


「あれって確か、マリアさんの斧ですわよね?

あんなにバラバラに……大丈夫ですの? 」


「ええ……一応直せるみたいなんですが

本人は張り切り過ぎた分、ショックだったみたいで……」


「た、確かに武器が壊れたらショックよね……でも

それなら今回の報酬で余裕で直せる筈ですわね♪ 」


「い……いや、タニアさん

そう言うセリフって“死亡フラグ”って言うんですよ? ……」


「そんな物があるの? ……兎に角、早く素材回収を終わらせて

なるべく早く修理に出してあげましょう? 」


「え、ええ……そうですね……」


と、かなり強めな“フラグ”を立てたのだった。


一方、そんな俺達の会話を聞いて居たディーンは


「頭部ごとの回収ならば報酬も期待出来るだろう」


そう言って

オベリスクの上へと魔物の頭部を乗せる様提案し


「なら……浮遊の魔導!!

っと……どうにか載(の)せられたけど何だかすっげぇグロい。


なぁ、ディーン……あの“汚れ”は落とすのが大変そうだけど

ほ……本当に構わないのか? 」


直後

浮遊魔導でこの提案を叶えた俺は、反面

船体に垂(た)れた魔物の血液のグロさに引きつつそう問うた。


だが


「なに、瓶(ビン)に戻した後水を入れて振れば

大抵の汚れは直ぐに綺麗になる様でな」


「なッ……い、意外な洗浄方法だ」


「ああ、私も初めて見た時は驚いたよ……


……さて、そろそろ帰るとしようか」


なにはともあれ。


この後、帰路に就(つ)いたオベリスクの船内では

斧の“残骸(ざんがい)”を抱(かか)えたまま

涙ながらに“斧りん”に謝(あやま)り続けるマリアの姿があった


◆◆◆


「グスンッ……ごめんね斧りん……」


「……あ、愛着湧いてたんだったら辛いよな

けど、ちゃんと直して貰えるんだから……もう泣くなって」


「はい……でも可哀想な事をしてしまったなぁって……」


そう酷(ひど)く落ち込んだマリアを励ます為か

メルは


「でっ、でも!……マリアさん凄い技覚えましたねっ?!

ひっ……日頃から鍛錬してる証拠ですっ! 」


「薪割りの時“色々試してた”のが効いたのかも……グスンッ」


「薪割りで斧を投げる瞬間とは……」


「それは“空中に投げた丸太を割る時”とかですよ主人公さん……


………グスンッ」


「うん、改めてすげぇ割り方」


ともあれ。


暫(しばら)くの後……東門前へと到着した俺達は

魔物の頭部を載(の)せたオベリスクが

東門を“通れない”事に困り果てる事と成った


◆◆◆


「……やはり入れないか

主人公……この場合、ギルドの人間にはどう報告をする? 」


「う~ん……なら俺が行ってくるよ

ディーン達は取り敢えず此処(ここ)で待っててくれ!


転移の魔導、ギルドへ! ――」


◆◆◆


「――あの、討伐依頼完了したんですけど

素材がどう考えても“門を通らない”大きさでして……


……ど、どうしたら良いですかね? 」


ギルドへの到着直後

受付嬢(セリーヌ)さんに対しそう問うた俺……直後

目を見開き“驚愕(きょうがく)”した彼女から返って来た答えは


「へっ?! ……L級の討伐依頼をこんなに早くですか?!

さ、流石(さすが)は主人公様のパーティですね!


……それにしても、門を通らない大きさですか

であれば……素材は憲兵の方々にお願いし処理して頂きますので

取り敢えず、部位の報告をお願いします」


「えっと……頭部丸ごとです」


「……そ、そうですか。


で、では! ……報酬は材料分を合わせ

全部で七〇〇万金貨になります! ……小切手で宜(よろ)しいですか? 」


「あッ……少しお待ちをッ!


魔導通信――


――ディーン、報酬は七〇〇万金貨だそうなんだが

均等(きんとう)に半分に分ける感じで良いかい? 」


◆◆◆


「勿論だが……そちらが多く取っても構わんぞ? 」


「嬉しい申し出だが今後の信頼関係もあるし

やっぱり此処(ここ)は半分ずつで! 」


「ああ、承知した」


◆◆◆


「……と言う事ですので

小切手を均等(きんとう)に二枚に分けて頂いても宜(よろ)しいですか? 」


「承(うけたまわ)りました……では、此方(こちら)が報酬です。


……早速(さっそく)憲兵さんに回収依頼を出しておきますので

材料は東門の外での受け渡しと言う形でお願い致します。


さて、以上で依頼は完了です……ご苦労様でしたっ! 」


「ええ、では……

転移の魔導、東門前へ! ――」


◆◆◆


「――おまたせ! これが報酬だ!

小切手だから銀行に受け取りに行く感じだと思うけど

この国の銀行って何処(どこ)にあるんだろ?

……まぁ、後で誰かに聞いてみるよ! 」


「成程、便利だな……さて

この“頭”は憲兵に渡せば良いんだな? 」


「ああ、頼めるかい? 」


「任せてくれ……それより主人公

後処理は我々がやって置くから

マリアさんの斧を早く修理に持って行ってやれ」


「ああそうだな……今日は助かったよ、また頼む」


「ふっ、此方(こちら)こそだ……またな」


◆◆◆


直後


ディーン達と別れ

ガンダルフの工房へと直行した俺達は


「来たか……早(はよ)う見せるのじゃ!

って……こ、これは!? 何と言う壊れ方じゃ。


……まるで“巨大な何か”に踏み潰されたかの様ではないか! 」


「“かの様”って言うか、その通りなんだけどね……」


「ふむ……じゃが、わしの職人人生の全てを懸(か)け

元よりも綺麗に直す事を約束しよう! ……じゃが主人公。


費用は相当に掛(か)かるぞ? ……大丈夫か? 」


「う゛ッ……出来れば

“お手柔らかな金額”でお願いしたいんだけど……」


「分かっておるわい……じゃが

それでも五〇〇万金貨程は掛かるぞ?


……わしの儲けは一切無しでもじゃ」


「い゛ぃッ?! い、いや……分かった払うよ

前金でこの小切手と、インベントリ!


……一〇〇万金貨を渡しておくよ。


残り五〇万金貨は後で必ず払う……けど

今は全く持ち合わせが無いから少しだけ待ってて欲しい」


「ふむ……承知した、これでこの斧専用の炉(ろ)が作れるわい

製作期間は少々掛かるが……我慢してくれるか? 」


「専用の炉(ろ)? ……どの位掛かるんだい? 」


「本来ならば二週間は掛かるじゃろうが

出来るだけ急ぐ事を約束しよう……」


「マリア……我慢出来るか? 」


「はい……主人公さんに借金をさせてしまいましたし

本当にゴメンなさい……グスンッ」


「……何とかするから気にするな。


っと……そう言う事で頼んだよガンダルフ!

俺も頑張って働いて出来るだけ早く残りを持って来るよ! 」


「ふむ、すまんのぉ……これでも

“専用炉(せんようろ)”の建造費と

コークス代位にしか成らんのじゃ

この斧は随分(ずいぶん)と特殊な素材でのぉ……ともあれ


マリア殿……今度こそ、何が踏んでも壊れぬ様な堅牢(けんろう)さと

靭(しな)やかさを兼(か)ね備(そな)えた斧として

より完全な形で復活させる故(ゆえ)、楽しみに待って居るのじゃぞ? 」


「は、はいっ! 」


暫(しばら)くの後

俺達はガンダルフに斧を託(たく)し、ヴェルツへと戻った。


◆◆◆


一方“L級魔物討伐”の噂を聞きつけたミリアさんは


「……皆おかえり! 聞いたよ?

凄い速さでL級の依頼を達成しただけじゃ無く

東門には“魔物の頭”があるそうじゃないかい! 」


「ええ、とは言えディーン隊の協力も大きいですが

何とか成りました! 」


「そうかいっ!そうかいっ! ……って

そう言えば受付嬢のセリーヌちゃんから伝言だよ?

“あの魔物の名前をお決め下さい” ……だそうだ。


……って、どうしたんだい?

何か浮かない顔してるが……疲れてるのかい? 」


「い、いえその……五〇万金貨の借金が出来まして」


「なっ……何でだいっ!?

成功報酬貰ったんじゃないのかい?! 」


と慌てたミリアさんに対し

“斧の件”を説明した俺


「成程、それは災難だったねぇ……でも

主人公ちゃん達なら絶対にこの苦境から抜け出せるさ。


……あたしは前にした約束通り

主人公ちゃん達に食事と住居を提供する

だから、もう落ち込まなくて良いさ!


今日は疲れただろう?

た~んと食べてしっかり休みな!

待ってなよ! ……今、料理を持って来るからねっ! 」


そう言うと

ミリアさんは厨房へと戻って行った


「ミリアさん……本当に有難うございます

っと……マリア、もう落ち込まなくて良いからな?


……マリアが負(お)う可能性のあった大怪我を

斧が“身代わりに成ってくれた”って思えば良いんだ

そうすれば、無駄じゃなかったって思えるだろ? 」


「主人公の言う通りね……マリアさん

もう落ち込むのはやめて、魔物の名前でも考えましょうよ! 」


落ち込むマリアを励ます為(ため)か

この瞬間、そう提案したマリーン


直後、そんな彼女の提案に依(よ)り

僅(わず)かに気分を上向かせたマリアは

自(みずか)らの雰囲気を払拭(ふっしょく)する為(ため)かの様に

張り切り始め……この後

俺達は魔物の名前を考える事と成ったのだが


「じ、じゃあっ……“巨大蛇(きょだいへび)”とかどうでしょうかっ?? 」


「メルちゃん安直過ぎですよ~

う~ん……あっ! “重(ヘビー)蛇”とかでどうですかねッ!? 」


「……マリアさんだって安直だし

そもそもそれ、唯(ただ)のダジャレじゃない!


とは言った物の、私も思いつかないし……」


「う~ん……“大蛇(オロチ)”とかでいいんじゃない? 」


そこそこ難航(なんこう)した名付け


そんな中、何と無く俺の発した“大蛇(オロチ)”は満場一致で賛成され

正式名称として政令国家の魔物図鑑へと記載される事と成った。


だが、本当にこんなに

安直に決めて良かったのだろうか?


◆◆◆


ヴェルツの女将、ミリアの気遣いに依(よ)り

どうにか今まで通りの生活を続けられる事と成った主人公一行


一方、この日の夜の事……政令国家東門付近には

白衣姿の男と、それに連れ立って現れた

妙な雰囲気の男達が居た


「……やはり

オベリスクの“移動痕(こん)”はこの国に到着して居る様だが


ん? ……あれは、都市級魔物の頭か?!

なんと恐ろしい……この国には中々の“化け物”が居る様だ。


お前達、目立たぬ様に潜入するぞ……」


「承知……」


直後

彼らは衛兵に依(よ)る検問を突破し

政令国家へと入国した。


◆◆◆


一方、翌朝


大会開催まで後三日と成った政令国家では

ゲーム大会に関する話題が其処彼処(そこかしこ)で交わされ

街は賑やかな雰囲気に包まれて居た。


だが、その一方で……ヴェルツの一階では

主人公が大量の書類と共に頭を悩ませて居た


「う~ん……武器完成まで二週間と仮定して

大会需要も落ち着いてるし

ゲームの利益は其処(そこ)まで期待出来ない……


……和装の利益が一ヶ月平均なら一万金貨で

俺とメル、マリアの給料が合わせて約二〇万金貨

マリーンはハンターとしてだから歩合で……」


五〇万金貨の返済方法に苦慮(くりょ)しつつ

必死に遣(や)り繰(く)りを考えて居た主人公。


だが、この直後そんな彼の元へとミリアが現れ


「……何だいこんなに散らかして!

って、この紙は……返済計画かい? 」


「ええ、そうなんです……ガンダルフ曰(いわ)く

遅くても二週間位で完成するらしいので

五〇万金貨の捻出(ねんしゅつ)方法を考えないとで……」


「……今幾(いく)ら足りないんだい? 」


「それが……俺達の給料が二〇万金貨で

前借りするとしてもあと三〇万金貨程足りなくて

討伐依頼か何かで稼ぎたいんですが大会前って事もあり

此処(ここ)の所国政(こくせい)が忙しくて

殆(ほとん)ど出られそうに無いんです……なので

ある程度難易度が高い物を選ぶしか無いんですけど

そもそもマリアは武器が無いので、俺達でどうにかするとしたら……」


と苦悩する主人公に対し

ミリアは


「大変だねぇ……あたしが貸してあげようか? 」


「えッ? ……いやいやッ!

唯(ただ)でさえ無料で食事も住居も提供して頂いて

その上お金までお借りするなんて

申し訳無さすぎて駄目ですよッ! 」


「何言ってるんだい! マリアちゃんもメルちゃんも

それにマリーンちゃんだって

何時(いつ)も薪割り手伝ってくれたり皿洗い手伝ってくれたり

主人公ちゃんだって掃除を手伝ってくれてるじゃないかい!


それに、あたしが今こうして稼げているのは

間違い無く主人公ちゃん達のお陰だよ?


……あたしは主人公ちゃん達に

恩を売ってるつもりなんて無いし

寧(むし)ろ、少しでも恩返しが出来るなら

って思ってるんだが……それでも受け取って貰えないかい? 」


「で、でも……」


「主人公ちゃん……ガンダルフさんの所は

長くても二週間が期限なんだろう?

あたしはそれよりも長く待てるって言ってるのさ。


……“出世払い”で構わないし

主人公ちゃん達は約束を破らない

もし仮に破ることがあっても、あたしには何の損も無いさ。


たかが五〇万金貨程度、主人公ちゃん達のお陰で

どれだけこの店が大きくなったと思ってるんだい?


……あたしに取っちゃ、返しても返しきれない恩さね」


「ミリアさん……本当に甘えても良いんでしょうか? 」


「あたしが“そうしたい”って言ってるんだ、受け取ってくれるかい? 」


「……はいッ!

ミリアさん、何から何まで……ありがとうございますッ!! 」


「よし! そうと決まれば

ガンダルフさんの所にはあたしが代わりに届けてくるよっ! 」


「なッ?! それは流石に自分で行きますから! 」


「良いから……そんな事より、その“計算”止めて

早く朝ごはん食べちまっとくれ

折角(せっかく)のご飯が冷めて美味しく無く成っちまうだろう?

そっちの方があたしは嫌なんだよ? 」


「あッ……ごめんなさいッ! 頂きますッ! 」


「分かったならそれで良いさ……けど

慌てず良く噛んで食べるんだよ?

さてと……メルちゃん

渡して来る間“店番”任せてても良いかい? 」


「はいっ! 任せてくださいっ! ……」


元気良くそう応(こた)えた直後

自分専用の“割烹着(かっぽうぎ)”を鞄(かばん)から取り出し

慣れた手付きで着替え始めたメル……一方

ミリアの立ち去った後、マリアはしみじみと


「……本当、ミリアさんって素敵な人ですよね

私も“ああ言う風に成らなきゃ”って思います」


「ああ、いつもツッコミ必須のセリフしか吐(は)かないマリアが

マトモな発言してると凄く違和感だけど……その通りだな! 」


「ちょっとぉッ?! 返事の九割が

“大悪口(おおわるぐち)”ってどう言う事ですか?! 主人公さん! 」


談笑する一行

そんな中、ヴェルツに入店して来た“白衣姿の男”


……彼は、作り笑いをしながら

主人公(かれ)に近寄(ちかよ)ると


「あの、すみません……其処(そこ)のお方」


「ん? ……は、はい何でしょう? 」


「この様な者達を見ませんでしたかな? 」


“ディーン隊全員の似顔絵が描(えが)かれた紙”を

主人公(かれ)に見せながらそう訊(たず)ねた。

だが……主人公(かれ)は見るからに

この男から怪しい雰囲気を感じ取り


「いいえ? ……所で貴方は? 」


咄嗟(とっさ)に嘘を吐(つ)き

この男が何者かを知る為(ため)そう問うた、だが


「見かけて居ないのであれば……では、失礼」


そう言い残し

男は足早にヴェルツから立ち去った


「……見るからに怪しいな。


魔導通信――


――ディーン、今|何処(どこ)にいる? 」


◆◆◆


「今は宿に居るが……どうした主人公? 」


「……東門宿(そこ)の主人(しゅじん)は口が堅いか? 」


「恐らく口は堅いだろうが……何かあったのか? 」


「それが……たった今“白衣姿の男”がヴェルツに現れて

ディーン達を探してたんだが

表には妙な雰囲気の“お付き”も数人居て……」


「成程……ん? 下が騒がしく成った

どうやら此方(こちら)にも来た様だ……通信を終了する」


◆◆◆


「なッ?! ちょッ! おい、ディーンッ! ……切れた。


クソッ! ……ごめん! 二人は此処(ここ)で店番しててくれ!

マリーン、援護頼めるか? 」


「ええ! 任せなさいッ! 」


「有難う……なら、ディーン達を助けに行くぞッ! 」


直後

俺達はディーン達の救援へと向かった


===第三四話・終===

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