第三五話「仲間の為なら楽より苦を取れッ! 」
突如として訪れた“ディーン隊”の危機
マリーンを引き連れ急ぎ東門へと走った主人公
一方、東門宿では
「……ですから!
その様な方は当宿にお泊りでは無いと
先程から何度も申し上げております!
他のお客様のご迷惑となりますので
早急にお引取りください! 」
宿の主人はそう言って白衣の男を制止していた。
だが、男は一切引かず
「ええ、承知しておりますが
念の為捜索するだけでございます
決してご迷惑はおかけしませんので……」
「ですからそれが迷惑だと申し上げて居るのです!
第一、貴方達はこの国の憲兵でさえ無い
そもそもこの国に於いて貴方方は“捜査権”さえ! ……」
「チッ、面倒だ……殺れ」
幾度かの問答の末
そう命令を下した白衣の男……この直後
一刀の元に斬り伏せられた“宿の主人”を見下ろしながら
「馬鹿が……素直に通しておけば良い物を
おい、お前……此処の主人のフリをしておけ
良いか? ……人は通すなよ? 」
「承知……」
「さて、捜索だ……」
直後、数名のお付きと共に二階へと上がって行った白衣の男
……これに遅れる事数分
漸く東門宿前へと辿り着いた主人公とマリーン
◆◆◆
「足跡が多い……何だかマズイ感じがする
マリーン、慎重に行くぞ……」
「ええ……」
到着後、緊張の面持ちで宿の扉を開いた主人公は
宿の主人が“先程のお付きの一人である”と直ぐに気付いた。
直後……“お付き”に気付かれぬ様
ゆっくりと減衰装備を外した主人公は
「お帰り下さい、本日は満室で……」
と言う“お付き”の嘘に耳を傾ける事さえせず
睡眠の魔導を発動させ、これを無力化……一方
直ぐ様カウンターの裏を確認したマリーンは
隠された死体を発見し
「酷い……この人がきっと本物の主人よ
兎に角……急ぎましょう主人公! 」
「ああ! 」
◆◆◆
同時刻、ディーン隊は尚も宿の部屋に居た
「全員……戦闘準備を」
「いえ、ディーン様……私めに御任せ頂きたく」
「ギュンター……やれるか? 」
「……ええ、老骨ですが
まだまだ若い者には負けません故」
「分かった……では全員、ギュンターの援護だ」
この直後
彼らの部屋を訪ねて来た白衣の男
「失礼、扉を開けて頂けますか? 」
「ええ、構いませんが……その前にお名乗り頂けますかな? 」
「これは失礼……宿の者ですが、一度お部屋の点検を……」
この瞬間、宿の主人を騙った白衣の男
直ぐに嘘だと勘付いたディーンはギュンターに対し首を横に振り
隊員達の手には力が入った。
だが
「……あ~ッ! 居た居たッ!
なぁあんた! ……あんたが探してた似顔絵の奴らだけど
ついさっき、あっちの方に走り去っていったぞ? 」
そう、白衣の男らに対し“偽の情報”を伝えたのは
“主人公”であった
「……何だとっ?!
あ、いえ……有難うございます!
では、急ぎ追いますので失礼を……おいお前達! 急ぐぞっ! 」
言うや否や“お付き”を引き連れ
慌てて階段を駆け下りた白衣の男……一方
彼らが立ち去った事を確認した後
「ふぅ~ッ! ……良かった、全員無事だな。
……詳しい話は後で幾らでも聞く
今は奴らが戻って来る前に逃げるべき時だ
全員、俺の腕を掴んでくれ……良し、行くぞ。
転移の魔導、ヴェルツへ! ――」
主人公は皆を引き連れ
宿からの脱出を成功させたのだった。
◆◆◆
一方、同時刻
宿の一階へと駆け下りた白衣の男は
お付きの“状況”を確認し
「ん? ……何を悠長に眠ってい……違う
これは 、睡眠の魔導? ……まさか、先程の男か?!
クソがっ!! ……急げ上だ!!! 」
◆◆◆
「ふぅ~ッ……危ない所だったな」
間一髪、危機を脱しホッと胸を撫で下ろして居た主人公
一方、救出の礼もそこそこに、ディーンは
“ある決断”を主人公へと伝えた。
「主人公……迷惑を掛けてすまなかった。
……だが、我々はもうこの国には居られない
今日を以て、我々と政令国家との間に結ばれた
傭兵契約を“解除”として貰いたい……」
真剣な面持ちでそう言った
だが、そんな彼に対し
「何が遭ったとかは聞かないけど……要するに
彼奴等を“倒せば良い”んだろ?
俺も手伝うから、取り敢えずは……」
そう、協力を申し出ようとして居た主人公
だがその瞬間、突如としてヴェルツの入り口が開かれた。
当然、慌てて振り返った一行であったが
「ただいま~っ! ガンダルフさんに五〇万金貨渡して来たよっ!
って……皆、殺気立ってどうしたんだい? 」
「よ、良かったぁッ……ミリアさんでしたか。
って……詳しい話は後です!
危険な奴らがこの国に入り込みました!
安全を考え、此処では無く城に飛びます!
ミリアさんも含め、全員俺に掴まって下さい。
では……行きますッ!
転移の魔導、大統領執務室へ! ――」
◆◆◆
再び東門宿
同時刻、白衣の男らはディーン隊一行の宿泊して居た
部屋の扉を破壊し押し入り……直後
もぬけの殻と成って居た事に腹を立て
「クソが……クソがクソがクソがクソがぁぁぁぁっ!!!
あの男、魔導師だったとは……転移魔導などと厄介な!!
だがしかし……あの人数ならそう遠くへは飛べん筈。
お前達……周囲の捜索を急げっ!!! 」
「承知」
◆◆◆
所は変わり同時刻
無事、大統領執務室へと転移して居た一行は
ラウド大統領に対し、現在の状況を伝えて居た
「……成程のぅ?
では、ディーン隊は一先ず此処に待機
主人公殿は“面が割れた”様じゃが……それを逆に利用し
“囮作戦”に参加して貰うとしようかのぅ? 」
「お、囮? ……俺は何をすれば? 」
「うむ……主人公殿以外は皆、頭巾を被り
追跡者共の近くで分かり易く“逃げる素振り”をしてやるんじゃ
そして、怪しんで追って来た所を逆に一網打尽にするんじゃよ! 」
そう説明したラウド大統領
だが、この作戦を聞いていたマリーンは猛反対し
「……待ってよ!
そんな危険な事しなくても、敵を全員倒しちゃうだけなら
誘き寄せて主人公の技で纏めて叩けば良いじゃない! 」
そう指摘した、だがそんな彼女に対しディーンは
「いや……それは不味いかも知れない」
「何でよ?! 」
「……私達の体には即効性の毒を発生させ
絶命させる呪いが掛けられて居るんだ。
……国外に逃亡し範囲外に逃げたつもりだったが
恐らく奴らは間違い無くその“呪具”を持って居る。
そしてその“呪具”は、破壊された瞬間
発動する作りに成って居るんだ……すまない」
「じ、じゃあ“巻き込んで発動”も……」
「ああ……そう言う事になる」
圧倒的に不利な状況の中|主人公は
「大丈夫だマリーン……何かしら手は考える。
取り敢えず、今はラウドさんの作戦を軸に進めるのが一番だ。
けど、向こうにちゃんと勘違いさせたいなら
俺以外の“ニセディーン隊”をラウドさんとマリア
メルとマリーンに演って貰ったとしても
現状だと一人足りない計算になるんだ……」
そう、作戦進行に於ける問題を指摘した
だが、この直後その“問題”を埋める為
手を上げた者が居た
「なら……あたしにも頭巾を頂戴」
「なッ!? ……そ、それだけは駄目ですミリアさんッ!
ミリアさんにもしもの事があったら
俺は、俺はッ!! ……」
「大丈夫だよ、危なくなったら隠れるさ」
「だとしてもッ!!! ……」
「主人公ちゃんが拒否したってあたしは行くよ? 」
ミリアの決意揺るがぬ眼差しに
直後、主人公は大きく溜息を吐いた。
そして
「分かりました……でも、それならせめて
考えうる限りの防御魔導を掛けさせて下さい」
直後、ミリアに対し
最上級防御魔導を厳重に重ね掛けした主人公は
「心許無いかもしれませんが、これが今の精一杯です。
正直“永久防護”が全員に使えたら良かったんですが
……すみません」
「いいや、あたしはこれで充分さね……さぁ、作戦開始だ
悪い奴らを“だまくらかして”やろうじゃないかいっ! 」
「ええ……では
転移の魔導、東門へ! ――」
不安を押し殺すように転移魔導を発動させたのだった。
◆◆◆
「……皆、見るからに怪しい動きをするのじゃよ?
ミリア殿、難しければ誰かの真似をすれば良いからのぅ? 」
「ああ、分かってるさ……ラウドさんが
“そう言うお店に行く時”の挙動を真似すりゃ良いだけさね」
「なっ?! ……ミリア殿っ!? 御主、何故それを!?
ゴ、ゴホンッ! ……兎に角……怪しく動くのじゃよ?! 」
突然の“暴露”に酷く狼狽えたラウド大統領
だが……この直後
“怪しい動き”を続けて居た一行に最も早く気付いたのは
事情を知らない“憲兵”であった。
「……貴様達! そこで何をしている?!
って……主人公様?! ラウド大統領まで?!
い、一体……どうされたのです!? 」
「静かにッ! ……これは“囮捜査”です
怪しい男数人が俺達を追い掛けて来ても
どうかそのまま通して下さい! ……
……くれぐれも戦わない様お願いします」
「な、何と……承知致しましたッ!
皆様……お気をつけて! 」
「ええ、では! ……皆続けるぞッ! 」
◆◆◆
「奴め……一体|何処に逃げたんだ? 」
幾許かの時が経ち
東区周辺の捜索を続けて居た白衣の男は
苛立ちを隠せぬ様子でそう言って周囲を見回した。
そして
「ん? あれは……奴だ! 追えっ!!! 」
直後、漸く囮作戦中の一行を発見し
追跡を開始した。
一方
「き、来たッ!! 皆……程々の速度で逃げるぞッ! 」
“見つかった”事に気付いた主人公は
そう言って仲間達に指示を出した。
だが……普段、転移魔導での移動が主であり
そもそもの物理適性が著しく低い主人公に取って
この作戦は余りに厳しく……
「はぁはぁッ……皆……早過ぎ……ッ……」
(そうは言いながらも俺は気付いて居た……皆が早いのでは無く
自らの物理適正が問題なのだと)
作戦を成功に導く為
懸命に走り続けて居た一行の中にあり
ついて行く事さえ難しくなり始めて居た主人公……だが。
そんな彼の様子に焦れた様子のマリアは
「主人公さん遅い! ……それッ! 」
言うや否や、彼を担ぎ上げ
そのまま走り始めてしまったのだった。
「いや、ちょッ?! ……いやぁぁぁぁぁッッッ! 」
直後、絹を裂く様な“主人公の悲鳴”が
辺り一面に響き渡る事と成った
「待て貴様らっ!!! ……どう言う状況だ?
いや、そんな事は良い……止まれっ!
止まらないとこの“呪具”を使うぞ?!
これを破けばお前達は死ぬ事となるぞ? ……良いのか?! 」
暫くの後
東門を抜け、領土外まで逃亡を続けて居た主人公達
一方、白衣の男は立ち止まると
懐から数枚の紙を取り出し
そう強い脅しを口にした。
……直後、全員に止まる様指示を出した主人公
彼は
「皆止まってッ!! ……な、何ですか? 俺達は別に何も……」
(成程……あれがディーンの言って居た“呪具”か)
「貴様……まだ私を欺けるとでも思って居るのか?!!
転移魔導など使いやがって……何者だ?
言え! 言わんならこの“呪具”を! ……」
「ま……待ってくれッ!!
と、友達になったからつい……すまなかった!
それを破ったりしないでくれ! ……頼む!
それを破ったらディーン達が……」
「ククク……最初から素直に言えば良かった物を
転移魔導なんぞ使いやがって!
……そうして“担がれて居る”所から見て
差し詰め、貴様は身の丈に合わぬ魔導を使ったせいで
既に自分で走れぬ程に弱って居るのだろう?
フハッハッハ! 」
「そ、それは……」
(走れない“理由”は違うが……兎も角、良い勘違いをしてくれた
この調子で此奴を油断させて、どうにか呪具を奪わないと……)
ディーン隊の皆を護る為
この瞬間、必死で策を練って居た主人公は
直後、尚も怯えた振りを続けながら
「お……お願いだぁ~……み、見逃してくれぇぇぇッ……」
(よし、このまま少しでも近づけば……)
縋る様な態度で
白衣の男に向け“這い寄り”始めた主人公
そんな彼の態度に、白衣の男は尚も勘違いし
「ふッ……どうするかなぁ?
そうだっ! ……貴様、私の靴を舐めてみろ
そうすれば……許してやらん事もないぞぉ? 」
「あ、ああ! 分かった! だから、ディーン達の事を……」
(よしッ! この流れなら近付いて一気に……)
直後、それまでよりも少し早く距離を詰め始めた主人公
少しずつ、少しずつ……怯えた演技を続けながら
彼は白衣の男との距離を詰めて居た……だが
彼のそんな姿に
「……ふざけないでよ!
あんた達なんか主人公が本気出したらッ! 」
「なッ?!! ……マリーン駄目だッ!! 」
「……何っ?! “DEENシリーズ”では無いだと?!
き、貴様ら全員、頭巾を外せッ!! ……
……どう言う事だ?! 言えッ! 本物は何処に居る?! 」
「そッ、それは……」(クソッ……この流れは不味いッ! )
「……構わんぞ? 貴様が言わずとも
奴らがこの国に居るのであれば“呪具”の効果範囲内だ。
……最悪“全員殺しても良い”と
所長様からの許可も出て居るのだからなぁ?! 」
「お、お願いだ……見逃して……」
「貴様……“臭い芝居”をするなぁっ!!! 」
直後、男の蹴りが主人公を襲った……だが、それでも諦めず
傷だらけに成りながらも、男の足へと必死に縋り付き
「ぐッ! ……たッ、頼む……ッ……」
「ふむ……“愉快”な事だな? 魔導師の男よ。
確か……主人公と言ったか? 先程も言ったが
お前が“友”だと言ったゴミ共は、所長様から
“殺しても構わない”と言われたゴミ共だ
だが、そんな只の“失敗作共”のせいで
私はこんな辺境の地にまで……
……お陰でお気に入りの靴が泥だらけだ!!!
私は今、酷く機嫌が悪い……だが
少しは気が晴れるかも知れん……全員一気に
“破り捨てて”しまえばなあぁぁぁっ!!! 」
「やッ、やめろおおおおおおおおっっっっっ!!! 」
「させないっ! ……“瞬盗ッ! ” 」
瞬間――土煙を巻き上げ、吹き抜けた突風
直後
「な、何だ?! ……何?! 呪具が無い?! 」
周囲を見回し
酷く慌てた様子でそう言った白衣の男
直後、そんな彼に対し土煙の中から発せられた
“若い男の声”
「っと……大丈夫? 主人公、事情は分かんないけど
この“禍禍しい紙”は僕が回収したからもう安心さ! 」
この瞬間、主人公に対し呪具を差し出しながら
そう“天真爛漫な態度で接した”男
それは“獣人族族長リオス”であった。
だが、この直後……そんなリオスから呪具を取り返そうと
必死に彼の事を追い掛け始めた白衣の男
……無論、どれ程頑張った所で
人族の身で獣人族に追いつける筈も無く
暫くの後、荒い息を上げ
ついにはその場にへたり込んでしまった白衣の男とは裏腹に
尚も楽しそうに走り続けて居たリオス
一方、そんなリオスの姿を眺めながら
砂だらけの服を叩きゆっくりと立ち上がった主人公は……
「おい、お前……ディーン達を“失敗作”って言いやがったな? 」
「チッ……呪具を奪った程度で粋がるなど!
力の切れた魔導師風情に……はぁはぁ……やられる護衛など……
はぁはぁ……連れては……はぁはぁ……居らん!
……改造兵共! “主人公”を殺れぇぇぇ! 」
「……誰の力が切れてるって?
“ブチ切れてる”の間違いだろッ!!! ――」
この瞬間
全ての怒りを自らの技に込めた
「――氷刃:乱舞之太刀ッッ!!! 」
「ガ……ァ……ッ……!! 」
直後、四方八方から迫りくる氷の刃に
為す術などあるはずも無く
改造兵達は砂塵の如くに刻まれた。
「な……なっ?! 何なんだ貴様はぁぁぁっ?!! 」
「“何”って……ブチ切れてる“魔導師風情”だが? 」
「ひ……ひぃっ?!
……た、頼む! 見逃してくれ! 私は只の研究員なんだ!
戦闘する腕なんてこれっぽっちも無い!
見逃してくれるなら靴でも何でも舐めるっ!!
だから……た、頼むっっ!!! 」
「……俺もあまり人の事は言えないけど
信じられない程“変わり身早い”なお前……あと
お前みたいなのに舐められたら靴が腐るから断る。
分かったら、もう諦めろ氷刃:終之……」
直後
攻撃魔導の詠唱を開始した主人公
だが、そんな彼を慌てて制止したラウド。
「……待つんじゃ主人公殿!
此奴は何か情報を持っておるやも知れん!
気持ちは分かるが、一度尋問をするべきじゃ! 」
「それもそうですね……では、捕縛の魔導ッ! 」
「なっ?! ……ウグッ?! 」
苛立ちや八つ当たりと呼ぶべき気持ち
この瞬間、そんな最低な理由を以て……白衣の男に対し
僅かに少し強く捕縛の魔導を掛けた主人公。
だが
「主人公ちゃん……よく我慢したね、あんたは強い子だ」
そんな悪意さえ許すように、ミリアは主人公を褒めた。
「そんな、俺は今……と、兎に角
ミリアさんに何も無くて本当に良かったです……」
「それも、主人公ちゃんのお陰さ……怪我は大丈夫かい? 」
「え、ええ……ち、治癒魔導が使えますからッ!
兎に角……一度執務室へ戻ります。
ミリアさん、手を掴んで下さい」
「ああ、手を繋ぐんだね!
主人公ちゃんとなら何度だって喜んで繋ぐさ! 」
「へッ?! い、いやその……とッ、兎に角!
行きます……転移の魔導
大統領執務室へ! ――」
この瞬間
俺の調子はミリアさんの優しさで狂いに狂った。
……いや、寧ろミリアさんは
俺の調子を“戻して”くれたのだろうか?
嗚呼……何時もミリアさんには助けてもらいっぱなしだ――
◆◆◆
「き、貴様はッ! ……」
帰還直後
“白衣の男”を目にするや否や
一挙動で掴み掛かり、怒りを顕にしたディーン。
……直後、俺は
そんな彼を落ち着かせる為
敢えて少し強い言葉を使った。
「落ち着け、ディーン……其奴を生かして居るのは
情報を聞く為だ……じゃなければ
俺がとっくに手を下してる……それと
リオスからディーン隊の皆に“プレゼント”があるらしい。
……リオス、彼らに渡してくれ」
「あぁ! えっとね~……はいっ! “これ”あげるっ! 」
直後、リオスから手渡された“呪具”に
驚きを隠せず居たディーンは
「こ、これは!? 一体どうやって……いや、違うな
私達のせいで皆を危険な目に遭わせてしまった事
心から謝罪する、申し訳……」
「待った、ディーン……それも多分違うぞ?
俺達は皆、謝罪より“感謝”が欲しいんだ」
「主人公……ああ、皆本当にありがとう。
……ラウド大統領、私達は貴方に対し
“一時的な傭兵”などと大変に失礼な要求を突きつけ
今日、追っ手の為貴方に許可も取らず任を離れようとした。
にも関わらず……貴方達は
我々を縛る“呪具”を取り返してくれた……今日、我々は
本当の意味で“自由に戦う力”を得た。
……これで、我々は力を自らの為に使う事が出来る
だが私は、この国で引き続き傭兵として
いや……出来る事ならば
正式に“仲間”に加えて頂きたいと……そう、思っている。
これは、何とも身勝手な申し出だが……
……どうか、許可しては頂けないだろうか? 」
そう言うと
ラウドさんに対し頭を下げたディーン
直後、部下達も彼に倣い深々と頭を下げて居た。
暫しの沈黙の後、そんな彼らに対し
「勿論、構わんよ? ……じゃが先ずは
“呪具”の解除方法も含め
此奴に色々と訊ねるのが先じゃ」
そう言うと
白衣の男を威圧するかの様に見つめたラウドさん。
すると
「な……何でも話すっ!
は、話すから殺さないでくれ! ……そ、そうだ!
此処で雇ってくれ! 損はさせない! だから頼む!
死にたく無い……そもそも私は只の研究員なんだ!
だから……頼む!! いや……お願いします!!! 」
ついさっきまでの威勢の良さは何処へやら
一八〇度|態度を変えた白衣の男……何だろう。
本気で“気分が悪い”
「……幾ら油断させる為だったとは言え
お前みたいなのに足蹴にされたのかと思うと
虫酸が走るし、お陰で
“嫌な記憶”も沢山|蘇ったよ……」
「も、申し訳ありませんでしたぁっ!!!
お願いします! 何でもしますからどうか命だけは……」
「って言ってる相手を殴る趣味は俺には無い
だから代わりに、この呪具の解除方法を吐け……
……どうすれば解除出来る? 」
「そ、それは……知らないんです!
ですが、手元に呪具をお持ちであれば安全な筈で……」
「……ん?
お前、俺が最も嫌いな“典型的嘘つきの目”をしたな? 」
「な、何を仰います?! わ、私は嘘など! ……」
「まだ言うか……ま、最初から
期待も信頼もして無いから良いけどさ。
自白の魔導ッ! ――」
「……ぐっ?!
なん……なりと……お訊ね下さい……」
「……この呪具の解除方法は? 」
「所長が掛けた呪いですから……所長が解くか
所長が死ねば解除されます……呪具が此方に無くとも
持ち主である所長ならば、効果範囲で呪文を唱えれば……いつでも
完全な状態で……発動……しま……す……」
「やっぱ嘘だったか……もう一つ質問だ
この国で雇われたら何を目的に働くつもりだった? 」
「隙を見て逃げ……国に帰り
内部の事情を所長へお伝えします……手柄を
認めて頂く……為……全ては出世の……為……」
「……俺達に協力するつもりは? 」
「微塵も……ありません」
「大した忠誠心だな、感心するよ」
そう吐き捨てる様に皮肉を発した俺の横で
ラウドさんは尋問を引き継ぎ
「……御主の国の所在、及び防衛策や攻撃兵器
その他の設備等を分かる限りこの紙に書くのじゃ」
「はい……」
直後
白衣の男に対し様々な情報を書き記させたラウドさん
そして
「……設備はこれで全てかね? 」
「はい、私が知る限りは……」
「ふむ……では、わしからの質問は以上じゃ
他に何か訊ねて置きたい者は居るかのぅ? 」
「じゃあ僕がっ! ……ねぇ、ディーン達みたいな人達って
君の国は他にも居たりするの? 」
と質問したのはリオスだった
直後、白衣の男は彼の質問に対し
「ええ、特殊な実験体を……三体|程製造中と聞いた事が
只の改造兵なら……あと三〇体|程は居た様に
記憶しております……」
「酷いね……もう他に隠してる情報はないの? 」
「……ございません
私の生い立ちならばお話できますが……」
この答えを聞いた瞬間
ディーンは
「……漸くか。
魔弾ッ!! ――」
男を“処理”したのだった。
◆◆◆
「ううむ……このままじゃと
“追撃部隊”が攻めてくる可能性もあるじゃろう。
得られた情報を元に“研究所”とやらを早急に叩くべきじゃろうが
魔族が何時攻めて来るやも知れん中
国民に要らぬ不安を与えてしまっては元も子も無いし
この上、三日後にはゲーム大会も控えておる。
仮に少数|精鋭、且つ内密に動くにしてものぅ……」
そう頭を悩ませて居たラウドさん
直後
「なら、俺が魔導力を溜めてその国へ行き
“固有魔導”を使えば良いのでは?
最低でも“所長”とやらを倒せば
ディーン達は安全に成る筈で……」
そう問うた俺、だが
ディーンはこの案に否定的で
「仮にあの国全土を消滅させる為であろうと
転移魔導も使わずあの国に向かうなど
幾ら主人公であっても危険過ぎて現実的とは思えない。
私達の安全の為だと言ってくれる事には
心から感謝して居る……だが、それならば
その様な危険など冒さず
私達の体内に仕込まれて居る呪いを
主人公の固有魔導で消せるかどうか
“試す”……と言うのはどうだろうか? 」
と、提案をした。
直後、そんな彼の提案に対しラウドさんは
「ふむ……例の“地下牢”で使用する分には
仮に主人公殿が弱ったとしても
わしらで充分守れるじゃろうて! 」
そう言って
ディーンの提案を受け入れたのだった
「そう言うやり方もあるか……なら俺は
ディーン達の呪いを解く事に専念し
今日から一切の魔導消費を行わない……今出来る事は
それ位しか無いかも知れないですね」
「うむ、それが良いじゃろう!
この所主人公殿は余りに多忙じゃったからのぅ? 」
「ええ……でも、そうしてみると
ミリアさんの存在が本当に有難いですよ」
「ん、あたしが? ……何でだい? 」
「いえその……魔導が使えない以上
ギルドの依頼は受けられない、そうなると
五〇万金貨を“急がなくて良い”形にして頂いた事が
とても有難くて……」
「……何だいそんな事かい!
それにしても……まさかあたしが
主人公ちゃんを助ける事が出来るなんてねぇ……嬉しいよ! 」
「いやいや! ……ずっと助かってますよ!
だからこそ申し訳無いので
お金は出来るだけ早くお返しします!
それで、ちゃんと自分達のお金でヴェルツに住みますから! 」
「馬鹿だねぇ……急がなくても良い形にしたんだから
“急がなくたって良い”んだよ? ……それに
主人公ちゃん達が笑顔で居るのが
あたしにとって一番のご褒美さね!
宿代なんてのはどうだって良い話さ! 」
この瞬間
笑顔でそう答えてくれたミリアさんの優しさに
必死に涙を堪えていた俺……そんな時
ディーンは唐突に
「ふむ……所でミリアさん
もし迷惑で無ければ、我々が使用する宿を
ミリアさんの所へ変更したいのですが構いませんか? 」
「勿論構わないよ? ……だが
何でいきなりウチに来る事にしたんだい? 」
「……主人公を見て居ると“羨ましく”なりましてね
それに、ミリアさんの作る料理は天下一品です
ヴェルツの宿に住んでいれば、何時でも
あの美味い食事が楽しめるのですから」
「なんだいなんだい!
嬉しい事を言ってくれるじゃないかい!
勿論構わないよ! 今日からでも歓迎するからね! 」
「有難う……心から感謝致します」
この瞬間
ディーン達がヴェルツへと移り住む事を決めた一方
ラウドさんは俺に休みを取らせる為
敢えて休暇を“命令”として発動させたのだが
「あッ、でも確か……此処数日間は
俺の担当する仕事が多かった筈ですけど……
……宜しいんですか? 」
「何、構わんよ……ゲーム大会の細かい支度は
全てわし達に任せるのじゃよ!
そもそも、主人公殿の事じゃ……一日でも早く
ディーン殿一行を治療してやりたい
……そう思って居るのじゃろう? 」
「ラウドさん……ありがとうございますッ!
とは言え……国民に対し
“固有魔導を使用しない”と約束して居るにも関わらず
幾ら人命の為とは言っても……せめて
国外で行うべきでしょうか? 」
「う~む……状況が状況じゃし
わしらも傍に居るんじゃ……わしは構わんと思うが
一応、情報管理と言う意味に於いては
注意を払っておかねば成らんかも知れんのぅ」
◆◆◆
翌日
ゲーム大会まで残す所後二日……主人公達は
ヴェルツでのんびりと過ごして居た
「……“ディーン達の為”とは言え
暫く休暇だ~ッ! 堂々と休めるぞ~ッ!
唯……移動が暫く“歩き”になるのがなぁ」
「そうですね……でも、健康的で良いと思いますっ!
私達も同じく休暇です……よねっ??
主人公さんは何時もお忙しいですから
この際、一緒に沢山のんびりしましょうっ♪ 」
この瞬間
心做しか上機嫌にそう言ったメル。
一方のマリアは
「そ~ですか……じゃあ私は
ガンダルフさんの所に遊びに行って来ますね~」
「行ってら……って、もう居ないッ?!
しかし……ガンダルフと仲良いなぁ~マリアは
ひょっとしてガンダルフの“面倒見が良い”ってだけか? 」
「やっぱり装備の関係もあるんじゃないかしら? 」
「あ~……マリーンの言う通りかも
良く考えたらマリアの装備って全部
“ドワーフ技術の塊”みたいな物だし
仲良くなるのも不思議は無いか……って。
そんな事より……いざ休みとなると
“じっとしてる”のも何だか暇に感じるなぁ……」
と、少々贅沢な悩みを打ち明けた主人公に対し
メルとマリーンは
「で、でしたらっ! ……お部屋でゲームしませんかっ?? 」
「あッ! それ私も参加したいわ!
ゲーム大会にも出たいし、練習がてら遊びましょうよ! 」
「おぉ、良いね! ……じゃ、部屋に戻ろう!
転移の魔……あっぶねッ?!
普通に使い掛けてた……」
「え、えっと……もし“発動させても”良い様に
装備外しておきましょ~っ! 」
「ああ、メルの意見に賛成っ! ……っと、部屋に戻ろっか」
「ええ“歩き”でね! 」
「ちょッ?! 其処はイジるなよ~マリーン! ……」
◆◆◆
久々の休みに些か“浮かれ気分”と成って居た三人
些細な出来事を楽しみつつ部屋へと戻って行ったのだった。
一方、ドワーフの工房では
「ガンダルフさ~ん! ……来ちゃった♪ 」
「……おぉ、マリア殿!
御主の斧じゃが予定より上手く行っておるぞぃ!
この調子ならばそろそろ完成するじゃろう!
それと……一つ、良いアイデアが浮かんだんじゃが
その“盾”を預かっても良いかね? 」
「……わ、私は構いませんけど
主人公さんにこれ以上お金を出して貰うのは
正直、申し訳無いんですけど……」
「なぁに……わしの思いつきじゃし
材料の端材で出来るちょっとした“改修”じゃ
“盾の分”は完全にサービスじゃよ! ……安心せい! 」
「おぉ~それは助かります! ……けど、それにしても
私の装備に掛り切りで普段の商売は大丈夫ですか? 」
「うむ! それに関しても問題無いぞぃ!
……主人公発案のゲームが売れに売れてくれたお陰で
弟子達も腕を上げ、道具も良い物を扱える様に成ったんじゃよ。
お陰で弟子の作る物だけでも稼ぎが出ておる
本当に主人公様様じゃ……まぁ、その礼と言っては何じゃが
主人公がまた新しいゲームを思いついてくれた際には
主人公に対する利益の割合を
今までよりも増やすつもりで居るぞぃ!
……わしらの利益など一割程度有れば充分じゃ! 」
「……それ、主人公さんが聞いたら喜んでくれると思います!
帰ったらそれと無くゲームのアイデアを聞いておきますね! 」
「うむ、ぜひ頼むぞぃ! 」
「……ってそう言えばガンダルフさん
ずっと私の装備に掛り切りですし、息抜きがてら
オセロを一戦……やってみます? 」
「ぬっ?! ……まだまだマリア殿には負けんぞ? 」
「望む所です! 」
こうして
マリア、ガンダルフの両名が“オセロ”に興じて居た頃
主人公達もゲーム大会の練習がてら
ゲームを始めようとして居た、だが……
◆◆◆
「え~っと……まずはどっちで遊ぶ? 」
「ねっ……念の為
どっちも練習したいんですけど……良いですかっ?? 」
メルがそう希望した瞬間
マリーンはそれに“ある条件”を付け加えた
「そうね……私も両方練習したいけど
唯、普通に練習しても張り合いが無いじゃない?
だから、勝った方には“景品が欲しい”って思うんだけど
お金が掛かる事は避けるべきでしょ?
だ・か・ら! ……主人公に勝った方は
主人公を――
“一分間自由に出来る権利! ”
――とか、どうかしら? 」
「なッ!? ……いきなり何言い出すんだよマリーン!?
そんなルールは……」
「そっ……それ良いですっ!!! 」
「って、メルまで何をッ?! 」
「じゃあ決定ね! ……
……オセロとバックギャモン、両方で勝てたら二分!
いいえ……“五分”自由にするのはどうかしら? 」
「さっ、賛成ですっ! 」
「おいおいッ! 二人共悪ノリが過ぎ……」
「ねぇねぇメルちゃん! どっちが先に対戦する? 」
「じ、じゃんけんで決めたいですっ! 」
「……ちょ?! 二人共、俺の意見も聞いてくれよッ! 」
暫くの後
“じゃんけん”はマリーンの勝利となり
「やったわ! 私の勝ちね! じゃあ私から……
……ってちょっと、何ぼーっとしてるのよ?
早くやるわよ主人公! 」
「は~ッ……こう言う“恐ろしいルール”って、普通
“男が女の子に強要する物”だと思ってたよ……」
「はぁ?! 恐ろしく無いわよ!
そんな馬鹿な事言ってないで、せめて
“綺麗な女の子に囲まれて幸せだ”位思いなさいよね?! 」
「は~ッ……流石はマリーン“御代官様”
ルールだけじゃなくて美貌まで褒めろと強要するとは。
まぁ、確かに二人共絶世の美女だとは思うけどさ……」
完全に俺の意見が無視されて暫くの後
ゲーム対決を終え、勝敗の結果に喜んで居たのは
◆◆◆
「フッフッフッ……主人公!
オセロでは負けたけどバックギャモンは勝てたわ!
私の技術を見せてあげるんだから……覚悟しなさいよ? 」
そう言いながら
指を“わしゃわしゃ”とさせて居たマリーンだった
「ま、待て! ……止めろって!
そ、それは流石に!……」
この直後
俺達の様子を見て居たメルは
恥ずかしさのあまり顔を隠して居た。
……そんな中、ゆっくりと俺に近付いたマリーンは
そのまま俺の“腰の辺り”に手を滑り込ませ
そして
「こ~ちょこちょこちょこちょ~っ!!! 」
「あぁぁぁぁぁっはっはっはっはっはっは!!!
やめッ! ……やめッ?! ……あひゃひゃひゃぁぁぁッ!!
し、しぬぅぅぅぅ~~しんじゃう~~ッ! ……」
俺を“くすぐりの刑”に処したのだった
そして……暫くの後“酸欠寸前”まで笑い転げた俺に対し
マリーンは
「……ハイ終了っ!
余った時間は……わ……私の事……抱きしめてよ」
「はぁッ……はぁッ……笑い死ぬかと思った……って。
え゛ッ?! ……だッ、抱きしめるって……そんな……」
「何よ? ……嫌なの!? 私には魅力が無いって事なの!? 」
「い、いやそう言う意味じゃ無くて!
普通そう言う行為は……って、あ゛~もうッ!
わ、分かったよッ! ――」
直後、観念しマリーンの事を抱きしめた俺
無論、抱きしめる事が嫌だった訳では無かった。
……唯、俺の心の奥底にある
決して小さくは無い想いが
“暴走”しないかが怖かっただけだった
「主人公……い、意外と暖かいのね!
っと……つ、次はメルちゃんの番よ! 」
「あ、ああ! ……そ、そうだな!!
ってその……さ、流石にメルはお手柔らかに……」
「嫌ですっ! 私は時間いっぱい抱きしめて下さい!
それからっ……最後に……キッ、キスもっ! 」
この瞬間
頬を真っ赤に染めながらそう言ったメル
「な゛ッ?! ……そッ、それは流石にほら!
その~何と言うか……さ?
とッ、取り敢えず抱きしめはするけど……キスは……
でも……その……」
どう答えて良いのか
そもそも“応える”べきなのかさえも判らず
酷く混乱して居た俺は
そう“モゴモゴ”と言いつつもメルの事を抱きしめて居た。
だが……この直後
マリーンは
「メルちゃん、流石にそれは駄目よ
ハグだけにしておきましょ? ……ね? 」
「そ、そうだぞメルッ?! ……それにほら
悪ノリは程々が楽しいんであってさ?! ……」
助け舟の様に注意をしたマリーンの意見に
“全乗っかり”した俺は……まるで
自らさえ宥める様にそう言った。
だが
「あのっ……主人公さんは
わ、私の事……女性として見て下さっていますかっ?? 」
「ふひぇッ?! ……そ、それはッ!
メ……メルは素敵だし
女性としても魅力的だと思う
でッ……でも! それとこれとは別問題だよ!
俺、キスなんて……した事も……無いし……」
「そっ、そうですよねっ! ……さ、流石に
私も強引過ぎましたっ!! ごめんなさいっ!
でも、そのっ……み、魅力的って褒めて下さって
有難うございましたっ! ……私、もっと
主人公さんが自分から“キス”したく成る様な
みっ、魅力的な女性に成れる様に……が、頑張りますっ! 」
……俺は、メルを“拒絶”した訳では無い
だが、俺の断り方はきっと拙ず過ぎて。
俺は……彼女を傷つけてしまったのだろうか?
「メル、そんな風に思ってくれて有難う……なのに
上手く言えなくてごめん……って、そうだ!
おッ……“おでこ”とかなら俺にでもッ! 」
終了間際
“せめて彼女の希望を叶えなければ”と言う
謎の使命感が暴走した俺は、そう言って
メルの額にキスをした。
「ちょっとぉ?! ……それが有りなら私にもしてよ!! 」
だが、この直後
マリーンから“ルール違反”を指摘され
「い゛ぃッ!? いやそのッ……
……そ、そうだッ! ふ、二人共時間終了だから!!
俺を自由に出来る時間は終了ッ! ……はい終わりッ! 」
“おでことは言え勢いでキスしちゃったけど
一体何してるんだ俺は?!
やばい、頭が回らない! ……顔が熱い
はッ……恥ずかし過ぎるッ!!! ”
……と、内心全く穏やかでは無かった俺に対し
“妙なテンション”に成って居たマリーンは――
「……嫌よ?!
私もキスして貰うまで時間終了とか認めないからッ!
どうしてもしてくれないなら……私からするわ?!
えいッ!! ――」
――直後
妙なテンションのままマリーンは俺に飛び掛かり
「ぬわぁッ?! ……危ないよ!!
な、何でそんなに積極的に……って、やめろぉッ?! 」
「あっ! マリーンさん自分からとかずるいですっ!
わ、私だってぇっ! ……
えぇぇぃっ! ――」
直後
明らかに何かの“箍が外れた”様子のメルも
俺へと飛び掛かって来て
「ふ、二人共離せぇぇッ! ……って。
うわあぁぁッ?! ――」
◆◆◆
この後
勢い付いた二人を支え切れる筈も無く
勢い良く転倒した主人公……そんな中
ガンダルフとの“激闘”を終え帰宅したマリアは
部屋の外まで響き渡った主人公の叫び声を聞きつけ
慌てて部屋の扉を開いた……そして。
その“惨状”に呆気に取られる事と成った
「な、何……してるんですか? 」
彼女が目にした光景
それは――
“横たわるメルとマリーンの胸に手を置き
二人に覆い被る主人公”
――そんな姿であった。
最早、言うまでも無いが
“誤解”では済まされないこの状況に
「ち、違うんだッ! ……こッ、これは!
って何だ? 何だか柔らかい感触が……」
「ひゃぁんっ?! 」
「どっ、何処触ってるのよっ馬鹿主人公ッ!! 」
「へッ?! ……うわぁッ!?
ふ、二人共ごめんッ!! ……って何でこんな所に手がッ?!
いッ……今|退けるからッ!
……って、うぐッ?!
こッ、腰が……起き上がれない……た、頼むマリア
お、起こしてくれッ……」
「……へぇ~っ?
“起き上がれない程”お二人と……“何”してたんですか? 」
「へッ? ……ち、違うッ!!
なッ、なに変な誤解してるんだよ?! ……っておい
な、何で拳を固めてるんだ? ……なぁマリア?
一旦落ち着けって! ……なぁッ!
やッ……やめッ……やめッ……
……いやぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!! 」
この後
誤解を解く為、必死に釈明をし続けた主人公
だが、メルとマリーンの両名は
主人公を“景品”にして居た件について
最後まで完全否定を続け……その結果、彼はマリアから
“変態”の称号を授けられてしまったのだった。
===第三五話・終===




