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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝16万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第一章

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第三五話「仲間の為なら楽より苦を取れッ! 」

突如として訪れた“ディーン隊”の危機

マリーンを引き連れ急ぎ東門へと走った主人公


一方、東門宿では


「……ですから!

その様な方は当宿にお泊りでは無いと

先程から何度も申し上げております!

他のお客様のご迷惑となりますので

早急にお引取りください! 」


宿の主人はそう言って白衣の男を制止していた。

だが、男は一切引かず


「ええ、承知しておりますが

念の(ため)捜索するだけでございます

決してご迷惑はおかけしませんので……」

「ですからそれが迷惑だと申し上げて居るのです!

第一、貴方達はこの国の憲兵でさえ()

そもそもこの国に()いて貴方方は“捜査権”さえ! ……」

「チッ、面倒だ……殺れ」


幾度(いくど)かの問答の(すえ)

そう命令を下した白衣の男……この直後

一刀の元に斬り伏せられた“宿の主人”を見下ろしながら


「馬鹿が……素直に通しておけば良い物を

おい、お前……此処(ここ)の主人のフリをしておけ

良いか? ……人は通すなよ? 」

「承知……」

「さて、捜索だ……」


直後、数名のお付きと共に二階へと上がって行った白衣の男

……これに遅れる事数分

(ようや)く東門宿前へと辿(たど)り着いた主人公とマリーン


◆◆◆


「足跡が多い……何だかマズイ感じがする

マリーン、慎重に行くぞ……」

「ええ……」


到着後、緊張の面持ちで宿の扉を開いた主人公は

宿の主人が“先程のお付きの一人である”と直ぐに気付いた。


直後……“お付き”に気付かれぬ様

ゆっくりと減衰装備を外した主人公(かれ)


「お帰り下さい、本日は満室で……」


と言う“お付き”の嘘に耳を傾ける事さえせず

睡眠の魔導を発動させ、これを無力化……一方

()(さま)カウンターの裏を確認したマリーンは

隠された死体を発見し


(ひど)い……この人がきっと本物の主人よ

兎に角……急ぎましょう主人公! 」

「ああ! 」


◆◆◆


同時刻、ディーン隊は(なお)も宿の部屋に居た


「全員……戦闘準備を」

「いえ、ディーン様……私めに御任せ頂きたく」

「ギュンター……やれるか? 」

「……ええ、老骨(ろうこつ)ですが

まだまだ若い者には負けません(ゆえ)

「分かった……では全員、ギュンターの援護だ」


この直後

彼らの部屋を(たず)ねて来た白衣の男


「失礼、扉を開けて頂けますか? 」

「ええ、構いませんが……その前にお名乗り頂けますかな? 」

「これは失礼……宿の者ですが、一度お部屋の点検を……」


この瞬間、宿の主人を(かた)った白衣の男

直ぐに嘘だと勘付いたディーンはギュンターに対し首を横に振り

隊員達の手には力が入った。


だが


「……あ~ッ! 居た居たッ!


なぁあんた! ……あんたが探してた似顔絵の奴らだけど

ついさっき、あっちの方に走り去っていったぞ? 」


そう、白衣の男らに対し“偽の情報”を伝えたのは

“主人公”であった


「……何だとっ?!


あ、いえ……有難うございます!

では、急ぎ追いますので失礼を……おいお前達! 急ぐぞっ! 」


言うや否や“お付き”を引き連れ

慌てて階段を駆け下りた白衣の男……一方

彼らが立ち去った事を確認した後


「ふぅ~ッ! ……良かった、全員無事だな。


……詳しい話は後で(いく)らでも聞く

今は奴らが戻って来る前に逃げるべき時だ

全員、俺の腕を掴んでくれ……良し、行くぞ。


転移の魔導、ヴェルツへ! ――」


主人公(かれ)は皆を引き連れ

宿からの脱出を成功させたのだった。


◆◆◆


一方、同時刻

宿の一階へと駆け下りた白衣の男は

お付きの“状況”を確認し


「ん? ……何を悠長(ゆうちょう)に眠ってい……違う

これは 、睡眠の魔導? ……まさか、先程の男か?!

クソがっ!! ……急げ上だ!!! 」


◆◆◆


「ふぅ~ッ……危ない所だったな」


間一髪、危機を脱しホッと胸を撫で下ろして居た主人公

一方、救出の礼もそこそこに、ディーンは

“ある決断”を主人公(かれ)へと伝えた。


「主人公……迷惑を掛けてすまなかった。


……だが、我々はもうこの国には居られない

今日を(もっ)て、我々と政令国家との間に結ばれた

傭兵(ようへい)契約を“解除”として貰いたい……」


真剣な面持ちでそう言った

だが、そんな彼に対し


「何が()ったとかは聞かないけど……要するに

彼奴等(あいつら)を“倒せば良い”んだろ?

俺も手伝うから、取り敢えずは……」


そう、協力を申し出ようとして居た主人公

だがその瞬間、突如としてヴェルツの入り口が開かれた。


当然、慌てて振り返った一行であったが


「ただいま~っ! ガンダルフさんに五〇万金貨渡して来たよっ!

って……皆、殺気立ってどうしたんだい? 」


「よ、良かったぁッ……ミリアさんでしたか。

って……詳しい話は後です!

危険な奴らがこの国に入り込みました!

安全を考え、此処(ここ)では無く城に飛びます!

ミリアさんも含め、全員俺に掴まって下さい。


では……行きますッ!

転移の魔導、大統領執務室へ! ――」


◆◆◆


再び東門宿

同時刻、白衣の男らはディーン隊一行の宿泊して居た

部屋の扉を破壊し押し入り……直後

もぬけの殻と成って居た事に腹を立て


「クソが……クソがクソがクソがクソがぁぁぁぁっ!!!

あの男、魔導師だったとは……転移魔導などと厄介な!!

だがしかし……あの人数ならそう遠くへは飛べん筈。


お前達……周囲の捜索を急げっ!!! 」

「承知」


◆◆◆


所は変わり同時刻

無事、大統領執務室へと転移して居た一行は

ラウド大統領に対し、現在の状況を伝えて居た


「……成程のぅ?

では、ディーン隊は一(ひとま)此処(ここ)に待機

主人公殿は“面が割れた”様じゃが……それを逆に利用し

(おとり)作戦”に参加して貰うとしようかのぅ? 」


「お、(おとり)? ……俺は何をすれば? 」


「うむ……主人公殿以外は皆、頭巾(フード)を被り

追跡者共の近くで分かり(やす)く“逃げる素振(そぶ)り”をしてやるんじゃ

そして、怪しんで追って来た所を逆に一網打尽(いちもうだじん)にするんじゃよ! 」


そう説明したラウド大統領

だが、この作戦を聞いていたマリーンは猛反対し


「……待ってよ!

そんな危険な事しなくても、敵を全員倒しちゃうだけなら

(おび)き寄せて主人公の技で(まと)めて叩けば良いじゃない! 」


そう指摘した、だがそんな彼女に対しディーンは


「いや……それは不味(マズ)いかも知れない」

「何でよ?! 」


「……私達の体には即効性の毒を発生させ

絶命させる呪いが掛けられて居るんだ。


……国外に逃亡し範囲外に逃げたつもりだったが

恐らく奴らは間違い無くその“呪具”を持って居る。


そしてその“呪具”は、破壊された瞬間

発動する作りに成って居るんだ……すまない」

「じ、じゃあ“巻き込んで発動”も……」


「ああ……そう言う事になる」


圧倒的に不利な状況の中|主人公(かれ)


「大丈夫だマリーン……何かしら手は考える。

取り敢えず、今はラウドさんの作戦を軸に進めるのが一番だ。


けど、向こうにちゃんと勘違いさせたいなら

俺以外の“ニセディーン隊”をラウドさんとマリア

メルとマリーンに()って貰ったとしても

現状だと一人足りない計算になるんだ……」


そう、作戦進行に()ける問題を指摘した

だが、この直後その“問題”を()める(ため)

手を上げた者が居た


「なら……あたしにも頭巾(フード)を頂戴」


「なッ!? ……そ、それだけは駄目ですミリアさんッ!

ミリアさんにもしもの事があったら

俺は、俺はッ!! ……」


「大丈夫だよ、危なくなったら隠れるさ」

「だとしてもッ!!! ……」


「主人公ちゃんが拒否したってあたしは行くよ? 」


ミリアの決意揺るがぬ眼差しに

直後、主人公(かれ)は大きく溜息(ためいき)()いた。


そして


「分かりました……でも、それならせめて

考えうる限りの防御魔導を掛けさせて下さい」


直後、ミリアに対し

最上級防御魔導を厳重に重ね掛けした主人公(かれ)


心許(こころもと)無いかもしれませんが、これが今の精一杯です。

正直“永久防護(エターナルプロテクト)”が全員に使えたら良かったんですが

……すみません」


「いいや、あたしはこれで充分さね……さぁ、作戦開始だ

悪い奴らを“だまくらかして”やろうじゃないかいっ! 」


「ええ……では

転移の魔導、東門へ! ――」


不安を押し殺すように転移魔導を発動させたのだった。


◆◆◆


「……皆、見るからに怪しい動きをするのじゃよ?

ミリア殿、難しければ誰かの真似をすれば良いからのぅ? 」


「ああ、分かってるさ……ラウドさんが

“そう言うお店に行く時”の挙動(きょどう)を真似すりゃ良いだけさね」


「なっ?! ……ミリア殿っ!? 御主、何故(なぜ)それを!?

ゴ、ゴホンッ! ……兎に角……怪しく動くのじゃよ?! 」


突然の“暴露”に(ひど)狼狽(うろた)えたラウド大統領


だが……この直後

“怪しい動き”を続けて居た一行に最も早く気付いたのは

事情を知らない“憲兵”であった。


「……貴様達! そこで何をしている?!

って……主人公様?! ラウド大統領まで?!

い、一体……どうされたのです!? 」


「静かにッ! ……これは“(おとり)捜査”です

怪しい男数人が俺達を追い掛けて来ても

どうかそのまま通して下さい! ……


……くれぐれも戦わない様お願いします」


「な、何と……承知致しましたッ!

皆様……お気をつけて! 」


「ええ、では! ……皆続けるぞッ! 」


◆◆◆


「奴め……一体|何処(どこ)に逃げたんだ? 」


幾許(いくばく)かの時が()

東区周辺の捜索を続けて居た白衣の男は

苛立(いらだ)ちを隠せぬ様子でそう言って周囲を見回した。


そして


「ん? あれは……奴だ! 追えっ!!! 」


直後、(ようや)(おとり)作戦中の一行を発見し

追跡を開始した。

一方


「き、来たッ!! 皆……程々の速度で逃げるぞッ! 」


“見つかった”事に気付いた主人公(かれ)

そう言って仲間達に指示を出した。


だが……普段、転移魔導での移動が(おも)であり

そもそもの物理適性が(いちじる)しく低い主人公(かれ)に取って

この作戦は余りに厳しく……


「はぁはぁッ……皆……早過ぎ……ッ……」

(そうは言いながらも俺は気付いて居た……皆が早いのでは無く

(みずか)らの物理適正が問題なのだと)


作戦を成功に導く(ため)

懸命(けんめい)に走り続けて居た一行の中にあり

ついて行く事さえ難しくなり始めて居た主人公……だが。

そんな彼の様子に()れた様子のマリアは


「主人公さん遅い! ……それッ! 」


言うや否や、彼を(かつ)ぎ上げ

そのまま走り始めてしまったのだった。


「いや、ちょッ?! ……いやぁぁぁぁぁッッッ! 」


直後、(きぬ)()く様な“主人公の悲鳴”が

(あた)り一面に響き渡る事と成った


「待て貴様らっ!!! ……どう言う状況だ?

いや、そんな事は良い……止まれっ!

止まらないとこの“呪具”を使うぞ?!

これを破けばお前達は死ぬ事となるぞ? ……良いのか?! 」


(しばら)くの後

東門を抜け、領土外まで逃亡を続けて居た主人公達


一方、白衣の男は立ち止まると

(ふところ)から数枚の紙を取り出し

そう強い脅しを口にした。


……直後、全員に止まる様指示を出した主人公

彼は


「皆止まってッ!! ……な、何ですか? 俺達は別に何も……」

(成程……あれがディーンの言って居た“呪具”か)


「貴様……まだ私を欺けるとでも思って居るのか?!!

転移魔導など使いやがって……何者だ?

言え! 言わんならこの“呪具”を! ……」


「ま……待ってくれッ!!

と、友達になったからつい……すまなかった!

それを破ったりしないでくれ! ……頼む!

それを破ったらディーン達が……」


「ククク……最初から素直に言えば良かった物を

転移魔導なんぞ使いやがって!


……そうして“(かつ)がれて居る”所から見て

差し詰め、貴様は身の丈に合わぬ魔導を使ったせいで

既に自分で走れぬ程に弱って居るのだろう?

フハッハッハ! 」


「そ、それは……」

(走れない“理由”は違うが……兎も角、良い勘違いをしてくれた

この調子で此奴(こいつ)を油断させて、どうにか呪具(あれ)を奪わないと……)


ディーン隊の皆を(まも)(ため)

この瞬間、必死で(さく)を練って居た主人公は

直後、(なお)も怯えた振りを続けながら


「お……お願いだぁ~……み、見逃してくれぇぇぇッ……」

(よし、このまま少しでも近づけば……)


(すが)る様な態度で

白衣の男に向け“()()り”始めた主人公

そんな彼の態度に、白衣の男は(なお)も勘違いし


「ふッ……どうするかなぁ?

そうだっ! ……貴様、私の靴を()めてみろ

そうすれば……許してやらん事もないぞぉ? 」


「あ、ああ! 分かった! だから、ディーン達の事を……」

(よしッ! この流れなら近付いて一気に……)


直後、それまでよりも少し早く距離を詰め始めた主人公

少しずつ、少しずつ……怯えた演技を続けながら

彼は白衣の男との距離を詰めて居た……だが

彼のそんな姿に


「……ふざけないでよ!

あんた達なんか主人公が本気出したらッ! 」


「なッ?!! ……マリーン駄目だッ!! 」


「……何っ?! “DEEN(ディーン)シリーズ”では無いだと?!

き、貴様ら全員、頭巾(フード)を外せッ!! ……


……どう言う事だ?! 言えッ! 本物は何処(どこ)に居る?! 」


「そッ、それは……」(クソッ……この流れは不味(マズ)いッ! )


「……構わんぞ? 貴様が言わずとも

奴らがこの国に居るのであれば“呪具”の効果範囲内だ。


……最悪“全員殺しても良い”と

所長様からの許可も出て居るのだからなぁ?! 」


「お、お願いだ……見逃して……」


「貴様……“臭い芝居”をするなぁっ!!! 」


直後、男の蹴りが主人公を襲った……だが、それでも諦めず

傷だらけに成りながらも、男の足へと必死に(すが)り付き


「ぐッ! ……たッ、頼む……ッ……」


「ふむ……“愉快”な事だな? 魔導師の男よ。


確か……主人公と言ったか? 先程も言ったが

お前が“友”だと言ったゴミ共は、所長様から

“殺しても構わない”と言われたゴミ共だ

だが、そんな(ただ)の“失敗作(しっぱいさく)(ども)”のせいで

私はこんな辺境の地にまで……


……お陰でお気に入りの靴が泥だらけだ!!!


私は今、(ひど)く機嫌が悪い……だが

少しは気が晴れるかも知れん……全員一気に

“破り捨てて”しまえばなあぁぁぁっ!!! 」


「やッ、やめろおおおおおおおおっっっっっ!!! 」


「させないっ! ……“瞬盗(モーメントスティール)ッ! ” 」


瞬間――土煙を巻き上げ、吹き抜けた突風


直後


「な、何だ?! ……何?! 呪具が無い?! 」


周囲を見回し

(ひど)く慌てた様子でそう言った白衣の男

直後、そんな彼に対し土煙の中から発せられた


“若い男の声”


「っと……大丈夫? 主人公、事情は分かんないけど

この“禍禍(まがまが)しい紙”は僕が回収したからもう安心さ! 」


この瞬間、主人公(かれ)に対し呪具を差し出しながら

そう“天真爛漫(てんしんらんまん)態度(たいど)(せっ)した”男

それは“獣人族族長リオス”であった。


だが、この直後……そんなリオスから呪具を取り返そうと

必死に彼の事を追い掛け始めた白衣の男


……無論(むろん)、どれ程頑張った所で

人族の身で獣人族に追いつける筈も無く

(しばら)くの後、荒い息を上げ

ついにはその場にへたり込んでしまった白衣の男とは裏腹に

尚も楽しそうに走り続けて居たリオス


一方、そんなリオスの姿を眺めながら

砂だらけの服を(はた)きゆっくりと立ち上がった主人公は……


「おい、お前……ディーン達を“失敗作”って言いやがったな? 」


「チッ……呪具を奪った程度で(いき)がるなど!

力の切れた魔導師風情に……はぁはぁ……やられる護衛など……

はぁはぁ……連れては……はぁはぁ……()らん!


……改造兵共! “主人公(そいつ)”を殺れぇぇぇ! 」


「……誰の力が切れてるって?

“ブチ切れてる”の間違いだろッ!!! ――」


この瞬間

全ての怒りを(みずか)らの技に込めた


「――氷刃(ヒョウジン)乱舞(ランブ)之太刀(ノタチ)ッッ!!! 」


「ガ……ァ……ッ……!! 」


直後、四方八方から迫りくる氷の刃に

()(すべ)などあるはずも無く

改造兵達は砂塵(さじん)(ごと)くに刻まれた。


「な……なっ?! 何なんだ貴様はぁぁぁっ?!! 」


「“何”って……ブチ切れてる“魔導師風情”だが? 」


「ひ……ひぃっ?!


……た、頼む! 見逃してくれ! 私は(ただ)の研究員なんだ!

戦闘する腕なんてこれっぽっちも無い!

見逃してくれるなら靴でも何でも舐めるっ!!


だから……た、頼むっっ!!! 」


「……俺もあまり人の事は言えないけど

信じられない程“変わり身早い”なお前……あと

お前みたいなのに舐められたら靴が腐るから断る。


分かったら、もう諦めろ氷刃(ヒョウジン)終之(ツイノ)……」


直後


攻撃魔導の詠唱(えいしょう)を開始した主人公

だが、そんな彼を慌てて制止したラウド。


「……待つんじゃ主人公殿!

此奴(こやつ)は何か情報を持っておるやも知れん!

気持ちは分かるが、一度尋問をするべきじゃ! 」


「それもそうですね……では、捕縛の魔導ッ! 」


「なっ?! ……ウグッ?! 」


苛立(いらだ)ちや八つ当たりと呼ぶべき気持ち

この瞬間、そんな最低な理由を(もっ)て……白衣の男に対し

(わず)かに少し強く捕縛の魔導を掛けた主人公。


だが


「主人公ちゃん……よく我慢したね、あんたは強い子だ」


そんな悪意さえ許すように、ミリアは主人公を褒めた。


「そんな、俺は今……と、兎に角

ミリアさんに何も無くて本当に良かったです……」


「それも、主人公ちゃんのお陰さ……怪我は大丈夫かい? 」


「え、ええ……ち、治癒魔導が使えますからッ!

兎に角……一度執務室へ戻ります。


ミリアさん、手を掴んで下さい」


「ああ、手を(つな)ぐんだね!

主人公ちゃんとなら何度だって喜んで(つな)ぐさ! 」


「へッ?! い、いやその……とッ、兎に角!

行きます……転移の魔導


大統領執務室へ! ――」


この瞬間

俺の調子はミリアさんの優しさで狂いに狂った。


……いや、(むし)ろミリアさんは

俺の調子を“戻して”くれたのだろうか?


嗚呼(あぁ)……何時もミリアさんには助けてもらいっぱなしだ――


◆◆◆


「き、貴様はッ! ……」


帰還直後

“白衣の男”を目にするや(いな)

一挙動で掴み掛かり、怒りを(あらわ)にしたディーン。


……直後、俺は

そんな彼を落ち着かせる(ため)

えて少し強い言葉を使った。


「落ち着け、ディーン……其奴(そいつ)を生かして居るのは

情報を聞く(ため)だ……じゃなければ

俺がとっくに手を下してる……それと

リオスからディーン隊の皆に“プレゼント”があるらしい。


……リオス、彼らに渡してくれ」


「あぁ! えっとね~……はいっ! “これ”あげるっ! 」


直後、リオスから手渡された“呪具”に

驚きを隠せず居たディーンは


「こ、これは!? 一体どうやって……いや、違うな

私達のせいで皆を危険な目に()わせてしまった事

心から謝罪する、申し訳……」


「待った、ディーン……それも多分違うぞ?

俺達は皆、謝罪より“感謝”が欲しいんだ」


「主人公……ああ、皆本当にありがとう。


……ラウド大統領、私達は貴方に対し

“一時的な傭兵(ようへい)”などと大変に失礼な要求を突きつけ

今日、追っ手の(ため)貴方に許可も取らず(にん)を離れようとした。


にも関わらず……貴方達は

我々を縛る“呪具”を取り返してくれた……今日、我々は

本当の意味で“自由に戦う力”を得た。


……これで、我々は力を(みずか)らの(ため)に使う事が出来る

だが私は、この国で引き続き傭兵(ようへい)として

いや……出来る事ならば

正式に“仲間”に加えて頂きたいと……そう、思っている。


これは、何とも身勝手な申し出だが……


……どうか、許可しては頂けないだろうか? 」


そう言うと

ラウドさんに対し頭を下げたディーン

直後、部下達も彼に(なら)い深々と頭を下げて居た。


(しば)しの沈黙の後、そんな彼らに対し


勿論(もちろん)、構わんよ? ……じゃが()ずは

呪具(それ)”の解除方法も含め

此奴(こやつ)に色々と(たず)ねるのが先じゃ」


そう言うと

白衣の男を威圧するかの様に見つめたラウドさん。


すると


「な……何でも話すっ!

は、話すから殺さないでくれ! ……そ、そうだ!

此処(ここ)で雇ってくれ! 損はさせない! だから頼む!

死にたく無い……そもそも私は(ただ)の研究員なんだ!

だから……頼む!! いや……お願いします!!! 」


ついさっきまでの威勢(いせい)の良さは何処(どこ)へやら

一八〇度|態度(たいど)を変えた白衣の男……何だろう。


本気で“気分が悪い”


「……(いく)ら油断させる(ため)だったとは言え

お前みたいなのに足蹴(あしげ)にされたのかと思うと

虫酸(むしず)が走るし、お陰で

“嫌な記憶”も沢山|(よみがえ)ったよ……」


「も、申し訳ありませんでしたぁっ!!!

お願いします! 何でもしますからどうか命だけは……」


「って言ってる相手を殴る趣味は俺には無い

だから代わりに、この呪具の解除方法を()け……


……どうすれば解除出来る? 」


「そ、それは……知らないんです!

ですが、手元に呪具をお持ちであれば安全な筈で……」


「……ん?

お前、俺が最も嫌いな“典型的嘘つきの目”をしたな? 」


「な、何を(おっしゃ)います?! わ、私は嘘など! ……」


「まだ言うか……ま、最初から

期待も信頼もして無いから良いけどさ。


自白の魔導ッ! ――」


「……ぐっ?!

なん……なりと……お(たず)ね下さい……」


「……この呪具の解除方法は? 」


「所長が掛けた呪いですから……所長が解くか

所長が死ねば解除されます……呪具が此方(こちら)に無くとも

持ち主である所長ならば、効果範囲で呪文を唱えれば……いつでも

完全な状態で……発動……しま……す……」


「やっぱ嘘だったか……もう一つ質問だ

この国で雇われたら何を目的に働くつもりだった? 」


(すき)を見て逃げ……国に帰り

内部の事情を所長へお伝えします……手柄を

認めて頂く……(ため)……全ては出世の……(ため)……」


「……俺達に協力するつもりは? 」


微塵(みじん)も……ありません」


「大した忠誠心だな、感心するよ」


そう吐き捨てる様に皮肉を発した俺の横で

ラウドさんは尋問を引き継ぎ


「……御主の国の所在(しょざい)(およ)び防衛策や攻撃兵器

その他の設備等を分かる限りこの紙に書くのじゃ」

「はい……」


直後

白衣の男に対し様々な情報を書き(しる)させたラウドさん


そして


「……設備はこれで全てかね? 」


「はい、私が知る限りは……」


「ふむ……では、わしからの質問は以上じゃ

他に何か(たず)ねて置きたい者は()るかのぅ? 」


「じゃあ僕がっ! ……ねぇ、ディーン達みたいな人達って

君の国は他にも居たりするの? 」


と質問したのはリオスだった

直後、白衣の男は彼の質問に対し


「ええ、特殊な実験体を……三体|(ほど)製造中と聞いた事が

(ただ)の改造兵なら……あと三〇体|(ほど)は居た様に

記憶しております……」


(ひど)いね……もう他に隠してる情報はないの? 」


「……ございません

私の生い立ちならばお話できますが……」


この答えを聞いた瞬間

ディーンは


「……(ようや)くか。


魔弾(まだん)ッ!! ――」


男を“処理”したのだった。


◆◆◆


「ううむ……このままじゃと

追撃(ついげき)部隊”が攻めてくる可能性もあるじゃろう。


得られた情報を元に“研究所”とやらを早急に叩くべきじゃろうが

魔族が何時(いつ)攻めて来るやも知れん中

国民に要らぬ不安を与えてしまっては元も子も無いし

この上、三日後にはゲーム大会も控えておる。


仮に少数|精鋭(せいえい)()つ内密に動くにしてものぅ……」


そう頭を悩ませて居たラウドさん

直後


「なら、俺が魔導力を()めてその国へ行き

“固有魔導”を使えば良いのでは?

最低でも“所長”とやらを倒せば

ディーン達は安全に成る筈で……」


そう問うた俺、だが

ディーンはこの案に否定的で


「仮にあの国全土を消滅させる(ため)であろうと

転移魔導も使わずあの国に向かうなど

(いく)ら主人公であっても危険過ぎて現実的とは思えない。


私達の安全の(ため)だと言ってくれる事には

心から感謝して居る……だが、それならば

その様な危険など(おか)さず

私達の体内に仕込まれて居る呪いを

主人公(きみ)の固有魔導で消せるかどうか

“試す”……と言うのはどうだろうか? 」


と、提案をした。

直後、そんな彼の提案に対しラウドさんは


「ふむ……例の“地下牢”で使用する分には

仮に主人公殿が弱ったとしても

わしらで充分守れるじゃろうて! 」


そう言って

ディーンの提案を受け入れたのだった


「そう言うやり方もあるか……なら俺は

ディーン達の呪いを解く事に専念し

今日から一切の魔導消費を行わない……今出来る事は

それ位しか無いかも知れないですね」


「うむ、それが良いじゃろう!

この所主人公殿は余りに多忙じゃったからのぅ? 」


「ええ……でも、そうしてみると

ミリアさんの存在が本当に有難いですよ」


「ん、あたしが? ……何でだい? 」


「いえその……魔導が使えない以上

ギルドの依頼は受けられない、そうなると

五〇万金貨を“急がなくて良い”形にして頂いた事が

とても有難くて……」


「……何だいそんな事かい!

それにしても……まさかあたしが

主人公ちゃんを助ける事が出来るなんてねぇ……嬉しいよ! 」


「いやいや! ……ずっと助かってますよ!

だからこそ申し訳無いので

お金は出来るだけ早くお返しします!

それで、ちゃんと自分達のお金でヴェルツに住みますから! 」


「馬鹿だねぇ……急がなくても良い形にしたんだから

“急がなくたって良い”んだよ? ……それに

主人公ちゃん達が笑顔で居るのが

あたしにとって一番のご褒美さね!

宿代なんてのはどうだって良い話さ! 」


この瞬間

笑顔でそう答えてくれたミリアさんの優しさに

必死に涙を(こら)えていた俺……そんな時

ディーンは唐突(とうとつ)


「ふむ……所でミリアさん

もし迷惑で無ければ、我々が使用する宿を

ミリアさんの所へ変更したいのですが構いませんか? 」


勿論(もちろん)構わないよ? ……だが

何でいきなりウチに来る事にしたんだい? 」


「……主人公を見て居ると“羨ましく”なりましてね

それに、ミリアさんの作る料理は天下一品です

ヴェルツの宿に住んでいれば、何時(いつ)でも

あの美味い食事が楽しめるのですから」


「なんだいなんだい!

嬉しい事を言ってくれるじゃないかい!

勿論(もちろん)構わないよ! 今日からでも歓迎するからね! 」


「有難う……心から感謝致します」


この瞬間


ディーン達がヴェルツへと移り住む事を決めた一方

ラウドさんは俺に休みを取らせる(ため)

えて休暇を“命令”として発動させたのだが


「あッ、でも確か……此処(ここ)数日間は

俺の担当する仕事が多かった筈ですけど……


……(よろ)しいんですか? 」


「何、構わんよ……ゲーム大会の細かい支度は

全てわし達に任せるのじゃよ!

そもそも、主人公殿の事じゃ……一日でも早く

ディーン殿一行を治療してやりたい


……そう思って居るのじゃろう? 」


「ラウドさん……ありがとうございますッ!


とは言え……国民に対し

“固有魔導を使用しない”と約束して居るにも関わらず

(いく)ら人命の(ため)とは言っても……せめて

国外で行うべきでしょうか? 」


「う~む……状況が状況じゃし

わしらも(そば)に居るんじゃ……わしは構わんと思うが

一応、情報管理と言う意味に()いては

注意を払っておかねば成らんかも知れんのぅ」


◆◆◆


翌日


ゲーム大会まで残す所後二日……主人公達は

ヴェルツでのんびりと過ごして居た


「……“ディーン達の(ため)”とは言え

(しばら)く休暇だ~ッ! 堂々と休めるぞ~ッ!


(ただ)……移動が(しばら)く“歩き”になるのがなぁ」


「そうですね……でも、健康的で良いと思いますっ!

私達も同じく休暇です……よねっ??

主人公さんは何時(いつ)もお忙しいですから

この(さい)、一緒に沢山のんびりしましょうっ♪ 」


この瞬間

心做(こころな)しか上機嫌にそう言ったメル。

一方のマリアは


「そ~ですか……じゃあ私は

ガンダルフさんの所に遊びに行って来ますね~」


「行ってら……って、もう居ないッ?!

しかし……ガンダルフと仲良いなぁ~マリアは

ひょっとしてガンダルフの“面倒見が良い”ってだけか? 」


「やっぱり装備の関係もあるんじゃないかしら? 」


「あ~……マリーンの言う通りかも

良く考えたらマリアの装備って全部

“ドワーフ技術の塊”みたいな物だし

仲良くなるのも不思議は無いか……って。


そんな事より……いざ休みとなると

“じっとしてる”のも何だか暇に感じるなぁ……」


と、少々贅沢な悩みを打ち明けた主人公(かれ)に対し

メルとマリーンは


「で、でしたらっ! ……お部屋でゲームしませんかっ?? 」


「あッ! それ私も参加したいわ!

ゲーム大会にも出たいし、練習がてら遊びましょうよ! 」


「おぉ、良いね! ……じゃ、部屋に戻ろう!

転移の魔……あっぶねッ?!


普通に使い掛けてた……」


「え、えっと……もし“発動させても”良い様に

装備外しておきましょ~っ! 」


「ああ、メルの意見に賛成っ! ……っと、部屋に戻ろっか」


「ええ“歩き”でね! 」


「ちょッ?! 其処(そこ)はイジるなよ~マリーン! ……」


◆◆◆


久々の休みに(いささ)か“浮かれ気分”と成って居た三人

些細(ささい)な出来事を楽しみつつ部屋へと戻って行ったのだった。


一方、ドワーフの工房では


「ガンダルフさ~ん! ……来ちゃった♪ 」


「……おぉ、マリア殿!

御主の斧じゃが予定より上手く行っておるぞぃ!

この調子ならばそろそろ完成するじゃろう!

それと……一つ、良いアイデアが浮かんだんじゃが

その“盾”を預かっても良いかね? 」


「……わ、私は構いませんけど

主人公さんにこれ以上お金を出して貰うのは

正直、申し訳無いんですけど……」


「なぁに……わしの思いつきじゃし

材料の端材(はざい)で出来るちょっとした“改修(かいしゅう)”じゃ

“盾の分”は完全にサービスじゃよ! ……安心せい! 」


「おぉ~それは助かります! ……けど、それにしても

私の装備に掛り切りで普段の商売は大丈夫ですか? 」


「うむ! それに関しても問題無いぞぃ!


……主人公発案のゲームが売れに売れてくれたお陰で

弟子達も腕を上げ、道具も良い物を扱える様に成ったんじゃよ。


お陰で弟子の作る物だけでも稼ぎが出ておる

本当に主人公様様じゃ……まぁ、その礼と言っては何じゃが

主人公がまた新しいゲームを思いついてくれた(さい)には

主人公に対する利益の割合を

今までよりも増やすつもりで居るぞぃ!


……わしらの利益など一割程度有れば充分じゃ! 」


「……それ、主人公さんが聞いたら喜んでくれると思います!

帰ったらそれと無くゲームのアイデアを聞いておきますね! 」


「うむ、ぜひ頼むぞぃ! 」


「……ってそう言えばガンダルフさん

ずっと私の装備に掛り切りですし、息抜きがてら

オセロを一戦……やってみます? 」


「ぬっ?! ……まだまだマリア殿には負けんぞ? 」


「望む所です! 」


こうして

マリア、ガンダルフの両名が“オセロ”に(きょう)じて居た頃

主人公達もゲーム大会の練習がてら

ゲームを始めようとして居た、だが……


◆◆◆


「え~っと……まずはどっちで遊ぶ? 」


「ねっ……念の(ため)

どっちも練習したいんですけど……良いですかっ?? 」


メルがそう希望した瞬間

マリーンはそれに“ある条件”を付け加えた


「そうね……私も両方練習したいけど

(ただ)、普通に練習しても張り合いが無いじゃない?

だから、勝った方には“景品が欲しい”って思うんだけど

お金が掛かる事は避けるべきでしょ?

だ・か・ら! ……主人公に勝った方は

主人公を――


“一分間自由に出来る権利! ”


――とか、どうかしら? 」


「なッ!? ……いきなり何言い出すんだよマリーン!?

そんなルールは……」


「そっ……それ良いですっ!!! 」


「って、メルまで何をッ?! 」


「じゃあ決定ね! ……


……オセロとバックギャモン、両方で勝てたら二分!

いいえ……“五分”自由にするのはどうかしら? 」


「さっ、賛成ですっ! 」


「おいおいッ! 二人共悪ノリが過ぎ……」


「ねぇねぇメルちゃん! どっちが先に対戦する? 」

「じ、じゃんけんで決めたいですっ! 」


「……ちょ?! 二人共、俺の意見も聞いてくれよッ! 」


(しばら)くの後

“じゃんけん”はマリーンの勝利となり


「やったわ! 私の勝ちね! じゃあ私から……


……ってちょっと、何ぼーっとしてるのよ?

早くやるわよ主人公! 」


「は~ッ……こう言う“恐ろしいルール”って、普通

“男が女の子に強要する物”だと思ってたよ……」


「はぁ?! 恐ろしく無いわよ!

そんな馬鹿な事言ってないで、せめて

“綺麗な女の子に囲まれて幸せだ”位思いなさいよね?! 」


「は~ッ……流石(さすが)はマリーン“御代官様”

ルールだけじゃなくて美貌(びぼう)まで褒めろと強要するとは。


まぁ、確かに二人共絶世の美女だとは思うけどさ……」


完全に俺の意見が無視されて(しばら)くの後

ゲーム対決を終え、勝敗の結果に喜んで居たのは


◆◆◆


「フッフッフッ……主人公!

オセロでは負けたけどバックギャモンは勝てたわ!

私の技術を見せてあげるんだから……覚悟しなさいよ? 」


そう言いながら

指を“わしゃわしゃ”とさせて居たマリーンだった


「ま、待て! ……止めろって!

そ、それは流石に!……」


この直後


俺達の様子を見て居たメルは

恥ずかしさのあまり顔を隠して居た。


……そんな中、ゆっくりと俺に近付いたマリーンは

そのまま俺の“腰の(あた)り”に手を(すべ)り込ませ

そして


「こ~ちょこちょこちょこちょ~っ!!! 」


「あぁぁぁぁぁっはっはっはっはっはっは!!!

やめッ! ……やめッ?! ……あひゃひゃひゃぁぁぁッ!!

し、しぬぅぅぅぅ~~しんじゃう~~ッ! ……」


俺を“くすぐりの刑”に(しょ)したのだった

そして……(しばら)くの後“酸欠寸前”まで笑い転げた俺に対し


マリーンは


「……ハイ終了っ!

余った時間は……わ……私の事……抱きしめてよ」


「はぁッ……はぁッ……笑い死ぬかと思った……って。

え゛ッ?! ……だッ、抱きしめるって……そんな……」


「何よ? ……嫌なの!? 私には魅力が無いって事なの!? 」

「い、いやそう言う意味じゃ無くて!

普通そう言う行為は……って、あ゛~もうッ!


わ、分かったよッ! ――」


直後、観念しマリーンの事を抱きしめた俺

無論(むろん)、抱きしめる事が嫌だった訳では無かった。


……(ただ)、俺の心の奥底にある

決して小さくは無い(おも)いが

“暴走”しないかが怖かっただけだった


「主人公……い、意外と暖かいのね!

っと……つ、次はメルちゃんの番よ! 」


「あ、ああ! ……そ、そうだな!!

ってその……さ、流石(さすが)にメルはお手柔らかに……」


「嫌ですっ! 私は時間いっぱい抱きしめて下さい!

それからっ……最後に……キッ、キスもっ! 」


この瞬間

(ほほ)を真っ赤に染めながらそう言ったメル


「な゛ッ?! ……そッ、それは流石にほら!

その~何と言うか……さ?

とッ、取り敢えず抱きしめはするけど……キスは……


でも……その……」


どう答えて良いのか

そもそも“(こた)える”べきなのかさえも判らず

(ひど)く混乱して居た俺は

そう“モゴモゴ”と言いつつもメルの事を抱きしめて居た。


だが……この直後

マリーンは


「メルちゃん、流石(さすが)にそれは駄目よ

ハグだけにしておきましょ? ……ね? 」


「そ、そうだぞメルッ?! ……それにほら

悪ノリは程々が楽しいんであってさ?! ……」


助け舟の様に注意をしたマリーンの意見に

“全乗っかり”した俺は……まるで

(みずか)らさえ(なだ)める様にそう言った。


だが


「あのっ……主人公さんは

わ、私の事……女性として見て下さっていますかっ?? 」


「ふひぇッ?! ……そ、それはッ!

メ……メルは素敵だし

女性としても魅力的だと思う

でッ……でも! それとこれとは別問題だよ!

俺、キスなんて……した事も……無いし……」


「そっ、そうですよねっ! ……さ、流石(さすが)

私も強引過ぎましたっ!! ごめんなさいっ!

でも、そのっ……み、魅力的って褒めて下さって

有難うございましたっ! ……私、もっと

主人公さんが自分から“キス”したく成る様な

みっ、魅力的な女性に成れる様に……が、頑張りますっ! 」


……俺は、メルを“拒絶”した訳では無い

だが、俺の断り方はきっと(まづ)ず過ぎて。


俺は……彼女を傷つけてしまったのだろうか?


「メル、そんな風に思ってくれて有難う……なのに

上手く言えなくてごめん……って、そうだ!

おッ……“おでこ”とかなら俺にでもッ! 」


終了間際


“せめて彼女の希望を叶えなければ”と言う

謎の使命感が暴走した俺は、そう言って

メルの(ひたい)にキスをした。


「ちょっとぉ?! ……それが有りなら私にもしてよ!! 」


だが、この直後

マリーンから“ルール違反”を指摘され


「い゛ぃッ!? いやそのッ……


……そ、そうだッ! ふ、二人共時間終了だから!!

俺を自由に出来る時間は終了ッ! ……はい終わりッ! 」


“おでことは言え勢いでキスしちゃったけど

一体何してるんだ俺は?!

やばい、頭が回らない! ……顔が熱い

はッ……恥ずかし過ぎるッ!!! ”


……と、内心全く穏やかでは無かった俺に対し

“妙なテンション”に成って居たマリーンは――


「……嫌よ?!

私もキスして貰うまで時間終了とか認めないからッ!

どうしてもしてくれないなら……私からするわ?!


えいッ!! ――」


――直後

妙なテンションのままマリーンは俺に飛び掛かり


「ぬわぁッ?! ……危ないよ!!

な、何でそんなに積極的に……って、やめろぉッ?! 」


「あっ! マリーンさん自分からとかずるいですっ!

わ、私だってぇっ! ……


えぇぇぃっ! ――」


直後

明らかに何かの“(タガ)が外れた”様子のメルも

俺へと飛び掛かって来て


「ふ、二人共離せぇぇッ! ……って。

うわあぁぁッ?! ――」


◆◆◆

この後


勢い付いた二人を支え切れる(はず)も無く

勢い良く転倒した主人公……そんな中

ガンダルフとの“激闘”を終え帰宅したマリアは

部屋の外まで響き渡った主人公(かれ)の叫び声を聞きつけ

慌てて部屋の扉を開いた……そして。


その“惨状(さんじょう)”に呆気(あっけ)に取られる事と成った


「な、何……してるんですか? 」


彼女が目にした光景


それは――


“横たわるメルとマリーンの胸に手を置き

二人に(おお)(かぶさ)る主人公”


――そんな姿であった。


最早(もはや)、言うまでも無いが

“誤解”では済まされないこの状況に


「ち、違うんだッ! ……こッ、これは!

って何だ? 何だか柔らかい感触が……」


「ひゃぁんっ?! 」


「どっ、何処(どこ)触ってるのよっ馬鹿主人公ッ!! 」


「へッ?! ……うわぁッ!?

ふ、二人共ごめんッ!! ……って何でこんな所に手がッ?!

いッ……今|退()けるからッ!


……って、うぐッ?!


こッ、腰が……起き上がれない……た、頼むマリア

お、起こしてくれッ……」


「……へぇ~っ?

“起き上がれない(ほど)”お二人と……“(ナニ)”してたんですか? 」


「へッ? ……ち、違うッ!!

なッ、なに変な誤解してるんだよ?! ……っておい

な、何で拳を固めてるんだ? ……なぁマリア?


一旦(いったん)落ち着けって! ……なぁッ!


やッ……やめッ……やめッ……


……いやぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!! 」


この後


誤解を()(ため)、必死に釈明(しゃくめい)をし続けた主人公

だが、メルとマリーンの両名は

主人公(かれ)を“景品”にして居た件について

最後まで完全否定を続け……その結果、彼はマリアから


“変態”の称号を授けられてしまったのだった。


===第三五話・終===

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