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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第一章

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33/309

第三十三話「楽観的に……成れるかぁぁぁぁっ!」

《――ドワーフの工房へと転移した一行

だが、ガンダルフは主人公の顔を見るなり――》


………


……



「ん? どうした主人公……顔色が悪いぞ? 」


「……“見えてる貧乏生活”って怖くない? 」


「良くわからんが……おぉ、マリア殿!


完成したぞぃ! 質が良い材料のお陰で思ったより早く完成じゃ!

これが“完全体装備”の為の“兜”じゃ~っ! 」


《――直後

ガンダルフが自信満々に掲げた兜は……


……何処どこぞの“世紀末覇者”が被っていそうな形状をしていた。


絶句する一行、それを勘違いしたガンダルフは

とても上機嫌に成り――》


「……ガハハハ! 感動して声も出ぬか!

よし! ……気分が良いから特別価格じゃ!

主人公よ! ……この兜、一〇〇万金貨で構わんぞ! 」


「えっ……値引きしてその値段なの? 」


「ん? ……何を言う

本来ならこれだけわしが掛り切りで作った装備じゃぞ?

一〇〇〇万金貨でも安い程の一品に仕上がっておるわぃ! 」


「……そ、そうだよね。


インベントリ――


――はい一〇〇万金貨。


はぁ~っ……痛いなぁ……」


「ん? ……うむ、確かに受け取ったぞぃ!

って何をしておるマリア殿……早う被ってみんか! 」


「え、ええ……こんな感じですけど……どうでしょうか? 」


《――と、明らかに不満そうにたずねたマリア

そんな彼女に対し――》


「うん……すっごい強そう」


《――と

主人公――》


「そ、そのっ……誰も勝てないと思いますっ! 」


《――と

メル――》


「そ、そうねぇ……あっ!

鬼神のごとしって奴ねお母さん! 」


「え、ええ! ……魔王ですら全速力で逃げていきそうな見た目ですわね! 」


《――マリーンとマリーナまでもが

そう“形容した”事で――》


………


……



「……嫌だぁぁぁっ!!

こんな厳つい兜嫌だぁぁぁぁぁっ!

女子力がマイナス一億とかに成っちゃうから嫌だぁぁぁっ!! 」


《―― “駄々っ子化”してしまったマリア。


そして、そんな彼女の発言に気を悪くしたガンダルフは――》


「なっ?! ……御主達が“完全体にする”と言うから

バーバリアン様のイメージ通りに仕上げたと言うに! 」


「だって……おかしいですよ!! 盾とか凄い“女性的”で

私の事を考えてカスタムしてくれてると思ってたのにっ!! 」


「……何を言うか!

盾は強靭きょうじんしなやかで

女性的でなければ邪魔でしか無いわい!

兜は威圧も含めてその形になって居るのじゃぞ!? ……失礼なっ! 」


「失礼とかそんな問題じゃなくてこれは女としての! ……」


「……だぁぁぁもうこの話終わりっ!

そんな事よりもっと重要な話があるんですよ! 」


《――と

半ば強引に話を断ち切った主人公に対し――》


「ぬっ?! ……丹精込めた兜を “そんな事”扱いとは!


まぁ良いわぃ……して重要な話とはなんじゃ? 」


「いえその……黄金が取れる場所って知ってます? 」


「……黄金の採掘場所は各ドワーフ族の秘伝じゃからな

如何いかに主人公といえど……おいそれと教える訳にはいかん」


「ですよね……でしたら分けて頂けませんかね?

勿論代金はお支払いしますから」


「それならば構わんが……何に使うんじゃね? 」


「トライスター用の装備ですけど、俺のじゃなくて……マリーン用に」


「何っ?! ……トライスターじゃと?! 」


「い、いや……あくまでトライスター用と言うだけで

その……色々とややこしいんですよ」


「ん? ……その手袋はまさか。


マリーン殿、御主もしや……魔族の血が? 」


「ええ……そうよ」


「成程、そう言う事じゃったか……ならば黄金は渡そう。


代金は“他言無用”……これでどうじゃ? 」


「ええ、勿論です」


「ならば……これだけ有れば足りるじゃろう。


少し多めに入れておいたぞぃ……それと

約束の“指輪”じゃが、これはサービスしておこう。


しかし……主人公おぬしが妙に落ち込んでおる理由が分かったわぃ!

差し詰め……“財布が辛い”んじゃろう? 」


「その通りです……って指輪完成したんですね、有難うございます! 」


<――と、精一杯落ち込んだテンションを

無理にあげようとしていた俺、だったのだが――>


「えっ? 良く見たらメルちゃんも……


……今受け取った奴もだけど

何で二人共、主人公とお揃いの指輪してるのよ?!

それ、私も欲しいんだけど! 」


「……あの、お揃いの“トライスター装備”で勘弁してくれませんか

御代官マリーン様……」


《――主人公は思い出した様に

肩を落としながらそう言った――》


「うっ……じ、じゃあ

私が代わりに何処かで指輪買うから……それは付けてよね! 」


「……いや、それだとマリーンだけ不公平過ぎるよ。


ちょっと遅くなるかもしれないけど

必ず俺が買うから……少し待っててくれないか? 」


「分かった、待ってる……我儘わがまま言ってごめんね? 」


「いや、むしろごめんな……兎に角今は

マリーンの装備を作りに行くのが先決だ。


……それではガンダルフさん、また今度! 」


「うむ! 気をつけてのぉ! 」


「はい! ……皆掴まって。


転移の魔導、ラウドさん馴染みの店へ! ――」


………


……



「おお……お久しぶりですね主人公さん

装備の調子は良い様だと風の噂に聞いておりますよ」


《――直後、店内に現れた一行にも驚く事無く

そう応対した店主――》


「ええ、とても良い装備ですよ

店主さんの腕が超一流なのだと思っています」


「お褒めに預かり光栄です……が。


わざわざ大人数でお越しに成った理由は

“世辞を言う為”では無い筈……


……何と無くさっしはついておりますが、本日はどの様なご用件で? 」


「え、ええ……まずはこの魔導道具の修理と

マリーンにトライスター用装備をお願いしたいと思ってまして」


「……やはり“魔族の血”が流れて居ると言う事ですな? 」


「なっ?! ……か、隠せませんか? 」


「ええ……“手袋”が見えておりますからね。


しかし、そうなりますと……流石にこの前の様な

“大幅なお値引き”は出来かねますがよろしいか? 」


「その……お手柔らかな価格でお願いできればと……」


「ご希望に添える様努力は致しますが……兎も角

材料と、修理する魔導道具を此方へ……ん?


……ガンダルフ様の所の袋ですか。


少々多い様ですが……成程。


では……マリーンさん、こちらに来て下さい」


「ええ、それで私は何をすれば良いの? 」


「この鍋に直感を信じ、必要と思う量の黄金を入れて下さい」


「こう言う事……かしら? 」


「ええ……では次に

黄金を溶かしている間は目をつぶり……」


<――この後

俺の装備を作った時と同じ工程で鍋に念を飛ばしたマリーン。


だが、マリーンから飛ばされた念は少し“禍々しい”色をして居て――>


「良いと言うまでは目を開けないで下さい……ほぉ、面白い色ですな。


後少し……はい、目を開けて下さい」


<――そっと目を開けたマリーン。


鍋の中に溶けていたその色は――>


「水色、新緑色、黒色とは……面白い組み合わせですな」


「故郷をイメージした後……その

大切な人の事を考えてしまったのだけれど……まずかったかしら? 」


「いえ、何も問題はありません……さて。


鍋の上に手をかざし

“我に合う 形と成りて 我の為と成れ”……と唱えて下さい」


<――直後

店主さんの指示通り呪文を唱えたマリーン。


だが……俺の時とは違い、装備の材料はマリーンに絡みついた後

少し“暴れる様な”動きを見せ、その姿を見た店主さんは――>


「……恐らく少し辛いかもしれませんが

この調子ならば直ぐに完成するでしょう……


……少々痛みと熱さが来ますが、我慢を」


「本当……ね……痛いし……熱い……

主人公もこんなの……我慢したのね……ぐっ!! ……」


「ええ、もう少しで完成します……さてそろそろ……」


<――溶けた材料はマリーンにまとわり付き

それぞれが装備の形を形成し始めて居て……俺の時とは違い

続々とマリーンの身体に装着され始め――>


………


……



「こ……これが私の装備なの? 」


「ええ、今回も完璧に出来上がった様です」


「凄い綺麗……新緑色の髪飾りに水色のネックレス

黒色の……ってあれ?

ねぇ、黒色だけ無いんだけど、何処に有るのかしら? 」


「おかしいですな……どれか一つが内蔵型と言う事は無い筈ですが」


《――彼女の言う様に

何処を探しても黒い装備だけが見当たらなかった。


だが、この直後――》


「でも、何か違和感が……って。


あの……店主さん

装備の形に“制限”ってあるのかしら? ……」


「いえ、特に制限は御座いませんので大抵の形にはなりますよ? 」


「な、なら……全部揃ってるからこれで良いわ! ……」


《――そう言うと

何故か頬を赤らめ装備を探すのを止めたマリーン。


だが、そんなマリーンに違和感を感じた主人公は――


“えっ? ……黒色は何処に行ったの? ”


――と、至極真っ当な質問をした。


だが、そんな彼に対し

マリーンは更に顔を赤らめつつ――》


「み……見せるのは嫌っ!

どうしても見たいって言うなら……結婚してからにしてっ! 」


《――耳まで赤く染めそう言ったマリーン。


だが、この後も主人公はしつこくたずね続け――》


「結婚?! いや、何で装備を見せる位で……」


「もう!! ……あるって言ってるんだから良いでしょ?!

デ、デリカシー無いわよ主人公っ!! 」


《――そう言うと少し怒った様にスカートを強く抑えたマリーン。


この瞬間、マリアとメルだけが装備の種類を察し――》


「あっ……私分かっちゃいました」


「わ、私も分かっちゃいましたっ!

た、確かに……恥ずかしいかもですっ……」


「えっ……分かってないの俺だけとかずるいぞ!? 」


《――この後も更にしつこく訊ねた主人公。


だが、マリーンからのキツいビンタが飛んで来た以外

彼に得られた情報は無かった。


……彼が知る事の出来なかった最後の部位


それは“下着パンティ”であった――》


………


……



「さて、お代のお話ですが……」


「は、はい……おいくらでしょうか? 」


「そうですな……装備の修理代金はサービスさせて頂くとして

かなり余ってしまった黄金をお譲り頂く計算でも

……ざっと二五〇〇万金貨って所ですかな? 」


「に……二五〇〇万金貨?!

さ、流石にそれ以上の値引きとかは……」


「……申し訳ありませんが

私も足元を見ている訳では無いのです。


本来ならば前回同様の金額でお引き受けしたかったのです

ですが……万が一にもマリーンさんの情報が漏れた場合

直ぐに対応する為の諸経費が含まれているのですよ」


「ですよね……ご迷惑をお掛けします。


インベントリ! ……あっ、ヤバい足りない」


「おや……おいくら足りないんで? 」


「およそ一〇〇〇万金貨程……ですが

一旦ラウドさんにお借りして

店主さんには先に全額お支払いしておきますので……」


「此方はどの様にして頂いても構いませんが……主人公様。


少なくとも一〇〇万金貨程はお持ちに成っていて下さい。


……この国を救った貴方に貧乏生活を強いるなど

その様に寝覚めの悪い事をしたい訳では有りませんから」


「感謝します……では少々お待ちを。


魔導通信、ラウドさん――」


………


……



「ん? ……何じゃね? 」


「お金貸して下さい、持ち合わせでは全く足りないんです。


その……結構大きい金額ですけど」


「……何じゃね? やぶからぼう

金などゲームやら和装の発案料で山の様に持っておるじゃろう? 」


「……ラウドさんの馴染みの店

マリーンの装備がトライスター用と言えば分かって頂けますか? 」


「……何、トライスターじゃと?!

この国史上三人目と言う事かね?! 」


「……いえ、大きな声では言えない理由の所為です」


「何? まさか……分かった、いくら必要じゃ? 」


「一一〇〇万金貨程……」


「ふむ……主人公殿、その程度ならば国で持つ

その事実は此方でも最重要機密扱いにせねばならん事柄じゃ。


と、その前に一つ質問じゃ……まさかとは思うが

“手袋”が見えているままではなかろうな? 」


「見えてますよ? ……この状態が普通なのでは? 」


「何?! ……急ぎマリーン殿に

“隠れよ、抗魔の姿”……と唱える様に伝えるのじゃ」


「だそうだよ、マリーン」


《――直後

マリーンがそう唱えると手袋は一行の視界から完全に消えた――》


「……もしも再び現す時は

“いでよ、魔族の力”と唱えれば見える様には成るが

その必要も無いじゃろう……出来るだけ隠しておく事じゃぞい」


「ええ、この御礼はまたいずれ」


「……いやいや、気に病まずとも良い

わしは主人公殿を信じて居るからのぉ」


「ラウドさん……何時も本当にありがとうございます……」


<――この後、しんみりとした俺の空気をさとってか

ラウドさんは――


“何、わしの財布では無いから大丈夫じゃよ! ……ほっほっほ! ”


――と明るく振る舞ってくれた。


正直、心の底から有り難かった

マリーンの件を詳しく聞かなかった事も

“俺の事を信じている”と言ってくれた事も――>


………


……



「……そう言う事なので

残りの金額は国からと言う事で……とは言え

色々と御迷惑をお掛けして申し訳ありませんでした。


何時も面倒事を持ち込む俺ですが……店主さん

何時もありがとう御座います……俺、何時か必ず

大きなお礼が出来る様に成ります……」


「いえいえ、此方の方こそご贔屓ひいきにどうも……


……クレイン様の装備は修理が終わり次第、本人にお返ししておきます。


当然、今回の事はご内密にさせて頂きますが

主人公様も他言無用で宜しくお願いします。


それと……御礼ですが、この国を良くする事でお返し頂ければ

私にはそれ以上を望んでおりません……期待しております」


「はい……必ず。


転移の魔導、ヴェルツへ! ――」


<――嬉し泣きとは言え泣き顔を見せてしまいそうだったから

少し急ぎ足に転移を発動させた俺は……


……ヴェルツ帰還後

妙なテンションで全てを誤魔化そうとして居た――>


………


……



「……しかし、財布が軽くなったな~!

って、まぁ元々重量感無いけどね! ……アッハッハ! 」


「主人公……私の所為でごめんね、私も少しずつ協力するから……」


「……グヘヘ! それなら体で払ってもらおうかぁ~マリーン嬢ちゃんッ!!


な~んてね! ……気にしないで良いよマリーン

俺がそうしたいからそうしただけ……マリーンが気に病む事じゃないよ

寧ろ一年も待たせてごめ……って。


マ、マリーン? ……」


《――直後、みるみる内に顔を赤らめたマリーンは

意を決した様に――》


………


……



「ほ、本当に……体で払っても良いのよ? 」


「……い゛っ?!


じょ、冗談だから!! ……てか

そんな風に自分を安売りしちゃダメだッ!! 」


「や、安売りって言うけど……二五〇〇万金貨よ?

満更まんざら安売りでも無いと思うんだけど……」


「確かに……ってそう言う意味じゃなくてだな! 」


「ふふっ♪ ……ありがと。


……主人公のそう言う紳士な所大好きよ」


《――そう言って主人公に対し微笑んでみせたマリーン。


一方、マリアは――》


「所で、私の兜なんですけど……意外と気に入っちゃいました!


……つけ心地も良いですし

私の事を考えて作って頂いたんだなって感じの作りになってます。


後でちゃんとガンダルフさんに御礼を言い直しておきますね

それと……改めて、プレゼント有難う御座いました」


「い、いやマリアの身を守る為の道具だからさ!

良い物が手に入って良かったと俺も思ってるよ!

ただ……常に付けてるのはどうかと思うぞ? 」


「あっ、つけ心地が良過ぎてつい……って、そんな事は置いといて!


……金欠なのはショックかも知れませんけど

大臣の給料も定期的に出ますし

今回の装備でギルドのお仕事も受けやすくは成ると思いますし

また地道に頑張ってお金貯めましょ? 」


「そうだな……まぁ一〇〇万金貨も有れば

生活に困る事はまず無いだろうし……」


<――などと話していたら

ミリアさんが寄って来て――>


「何だい主人公ちゃん達……いきなり貧乏生活なのかい? 」


「ええ……でもまだ一〇〇万金貨程ありますから大丈夫です! 」


「なっ?! ……別に貧乏生活じゃ無いじゃないかい!

金銭感覚どうなってるんだい全く! ……でも、安心しな。


……たとえ主人公ちゃん達が無一文に成っても

ウチの宿は追い出したりしないし、食事だって出すからね! 」


「ミリアさん、何時も本当に有難う御座います……」


「良いんだよ……って、そう言えばもう夜も遅いじゃないかい。

まだご飯食べてないんだろう?

……今持って来てあげるからたんと食べなよ! 」


「助かります、実は腹ペコで……」


《――こうして

一日にして約半年分の稼ぎをほぼ全て“失い”

仲間からの絶大な信頼を“得た”主人公。


しかし、ひょんな事から一〇〇万金貨も長くは持たず――》


………


……



《――翌日、大統領執務室では

マリーナ、マリーン両名についての会議が執り行われていた――》


「さて……マリーナ殿は純粋な魔族

マリーン殿は半魔族と言う事じゃが……

もしこの事実が国民に漏れてしまえば“前国王の件”もあるゆえ

多かれ少なかれ混乱を引き起こしてしまうじゃろう。


そこでじゃが……この件は“最重要機密扱い”とする。


此処に居る者の他には一部の者しか知らぬ情報と成っておる故

くれぐれも表に出さぬ様、お願いしたい所じゃ。


……とは言え、マリーン殿の装備は

詳しい者が見ればトライスター用じゃとひと目で分かる。


故に……マリーン殿の事は

我が国史上三人目のトライスターで有ると発表するから

皆、口裏は合わせて貰いたい」


「うむ……吾輩は構わぬ

友の信用している者ならば……吾輩も信用しよう」


「有難う、助かるよガルド……」


《――と

グランガルドを呼び捨てにした主人公。


そんな様を見た長達は、何かを思い出した様に

自らも“そう”して欲しいと希望し始め――》


「わしも呼び捨てで構わんぞ?

いや、むしろそうして欲しいのじゃが……」


《――と、ガンダルフが口火を切った瞬間

同席している異種族の長達は

今後互いに“呼び捨て”で行く事を決定した。


そんな中――》


「……ならこの際ですし

全員親しみを込めて呼び捨てにしちゃうのも良いかも知れませんね」


《――そう発案した主人公。


だが、ラウド大統領は――》


「わしは流石に……なんてのう、冗談じゃよ!

呼び捨て……良いかもしれんのぉ! 」


《――と、おどけたつもりのラウド。


だが、マリアは――》


「流石にラウドさんは呼び捨てに出来ないですね、年齢的にも……」


「何でじゃ!? ……わしよりもエルフ族のほうが年上じゃぞ?! 」


「いえ、見た目の問題が……」


「……誰が死にぞこないじゃ! 」


「言ってません、言ってません」


………


……



<――結局、国の長であると言う事を鑑みた結果

ラウドさんの事は引き続き“大統領”呼びか

しくは“さん付け”で呼ぶ事を話し合いの末に決定した。


勿論、俺の異性に対する免疫の無さから

ラウドさん以外にも呼び捨てに関する例外はいくつかは有ったのだが

それでも、若干残念そうにしていたラウドさんが

ちょっとだけ可愛く見えたのは本人には内緒だ――>


「……わしだけ仲間外れみたいで嫌じゃぁぁぁl!!

と、わめいても仕方無い……議題に戻るぞぃ。


少し前からゲーム大会を国主催で開こうと思って居ったのじゃが……」


<――割りと本心に思える“わめき”の後

急激に我に返ったラウドさんは国家主導でのゲーム大会開催を議題にげた。


参加に必要な資格は――


“政令国家に属する者で有る”


――と言う事のみで

参加人数にも特に制限を設けないとの事だった。


当然反対者は出ず、満場一致での開催決定と成った瞬間

ラウドさんは伝達魔導メガホンもちいて

政令国家全土に向け――>


………


……



「国民の皆よ! ……五日後に国家主催

第一回オセロ&バックギャモン大会を執り行う事が決定した!


……本戦前に予選大会を各地区毎で開き

上位者の者を各地区代表選手として城内に招き決勝大会を行う。


……各ゲームの上位入賞者にはトロフィーが送られるぞい!


参加希望者はこの後

各地区に設置される参加申請場所で申請を行う様に! 」


<――と、大会の概要を伝えたのだった。


ともあれ……暫くの後、会議は終了し

俺達はヴェルツへと帰還した――>


………


……



「それにしても……国家主催のゲーム大会とか

まさか此処まで流行るとは思わなかったなぁ……びっくりだよ」


<――と、感慨かんがいふけりつつそう言った俺に対し

マリーンもメルも――>


「私もオセロは大好きよ! ……でも

バックギャモンも捨てがたいのよね……」


「わ、私も両方好きですっ! 」


「ありがとう、二人が楽しんでくれてるだけでも嬉しいよ」


<――などと話していると


“……ゲームの話か? ”


と、声を掛けて来たディーン――>


「おぉ、食事かい? 」


「いや……先程の“伝達”を聞いたのでね。


私もバックギャモンは得意だ、参加したいのだが構わないかな? 」


「ああ勿論だよ! ……楽しんでくれ! 」


「それは良かった……ちなみに

ギュンターはオセロで参加したいらしい」


「勿論全員参加出来るよ! ……ギュンターさんも楽しんで下さいね! 」


<――などと話していると

今度はリオスも寄って来て――>


「……ねぇねぇ! 僕も参加したいんだけど!

僕、一応大臣だし……ダメかな? 」


「いや“この国に属してる”だから……良いんじゃないかな? 」


「やった! ……僕、バックギャモンで出ようかなって思ってるの!

あっ、そう言えば風の噂に聞いたんだけどさ……


……“魔族”の間でも流行ってるらしいよ? ゲーム」


「マジか……それが本当だったらそれはそれで恐ろしいけど

もし可能ならこの大会に参加して貰いたくもあるね」


「うひゃ~……怖い事言うね主人公」


「いや……“魔族は敵”俺もそう思ってるし

ミネルバさんの一件を考えると俺自身も魔族達を認めるのは正直難しい。


だけど、もしも分かり会える道があるなら

どうにかして味方に成れないのかな? ……とも思うんだ。


勿論俺のエゴだって分かってる……けど

“魔族だから必ず倒します”って言うのも

それはそれでエゴじゃないのかと思うんだ。


正直、たかがゲームや和装で俺の人生が決まる位には人が動いたんだし

魔族だって“たかがゲーム”で

仲間に成る事が有っても良いんじゃないかって思ってるんだ。


まぁ……あくまで与太話よたばなしだし

そんなに真剣には受け取らないで欲しいんだけどね! 」


《――と言った主人公

一方、ディーンは――》


「しかし……奴らは人をらう上、それが生活の基盤になっている

分かり会える云々と言う次元では無い様に思うのだが」


「あ~……それについても

詳しい部分は此処で出来る話じゃ無いからはぶくけどさ。


……つい最近、とある“魔族”が

人間や多種族に危害を加えず生きていると聞いたんだ。


だから……何か方法はあるとおもう

共存共栄の出来る“何か”が……」


「しかしだな! ……いや。


主人公は私を友と認めてくれたのだ……その考え方を否定しては

私は恩をあだで返す恩知らずに成ってしまう。


……確かに、主人公が言う様な世界に成れば

皆が幸せに暮らせるのだろう……熱くなってすまなかった」


「いや、俺の方こそ……気を遣わせてすまなかったな」


《――そう互いに謝る二人に対し、この瞬間

メルは思い切った様に――》


「あのっ! ……私だって元は“嫌われる対象”でした。


でも……主人公さんの “エゴ”のお陰で

今、こうして笑って暮らせているんです。


だから、私も主人公さんの考え方……良いと思いますっ! 」


《――必死にそう言ったメルに対し

マリーンも同意し――》


「……悔しいけどメルちゃんに同意よ

私やお母さんだって主人公に救われた身だもの」


「二人共……って、何だか暗い話にしちゃってごめんね!


とっ、取り敢えず……この話はこれで終わりッ!!


そ、それで……ゲーム大会まではあと五日もあるし

マリーンの装備もマリアの装備も試してみたいってのも有るし!

その、久しぶりにギルドの依頼でも受けてみようと思うんだけど……


……どうかな? 」


《――暗い雰囲気を払拭する為か、そう提案した主人公

すると、ディーンは――》


「ふむ……ならば私達も同行したいのだが、邪魔になるだろうか? 」


「えっ?! むしろ大歓迎だよ! 多いと楽しいし

そもそも安全だし! ……」


《――暫くの後

ディーン隊らと共にギルドへと向かった主人公一行。


彼は……ギルドの依頼掲示板前で悩んで居た。


皆の実力を考えれば

“S級よりも更に上を目指せるのでは”……と考えていたのだ。


そして……思い切って考えを伝えた所ディーンは了承

それに続く様にマリアもメルも了承した。


だが、マリーンは――》


………


……



「……ちょ、ちょっと待ってよ! そもそも私はどうするべきなの?

魔導書とか一切貰って無いんだけど……」


「そ、そう言えば……ちょっと待ってて!

エリシアさんに聞いてくるからッ! 」


《――直後、主人公はエリシアの部屋へと走った。


だが、ディーンはこの違和感に――》


「……ん? 魔導書は転職した際に貰う物では無いのか? 」


「えっ? いえ、その……それはね……」


《――突然の質問に慌てるマリーン


そんな中、魔導書をてに帰って来た主人公は――》


「おまたせっ! ……エリシアさんに“手袋の件”と

魔導書これの件”凄く謝られちゃってびっくりしたよ。


兎に角……はいマリーン、これが君のだ」


《――そう言って彼が差し出した魔導書は異質な見た目をしていた。


当然、ディーンはこれを警戒し――》


「余り良くない見た目をしているが……どう言う事だ? 」


「あっ……えっと、これは国家機密でね。


ここでは話せないけど、後で必ず説明する

俺が保証するから気にしないでくれると助かるよ」


「ああ、君がそう言うなら信じよう」


《――その一方

手渡された魔導書に目を通して居たマリーンは――》


「この魔導書分厚いわね……ふむふむ………えっ?! 」


「ん? ……どうした? 」


「主人公! ……この書凄いわよ!?


この魔導書に手を当て

“知識を授けよ”と唱えると全て習得出来る……って書いてあるのよ!

ほら、此処ここ! 」


「マジか、羨ましいな~っ……」


<――俺自身

まだ全体の一割未満しか習得して居ない……それも必死に覚えた上で。


……正直死ぬ程羨ましかった。


だが、そんな俺に対しマリーンは――>


「ねぇ、私の装備って曲がりなりにも“トライスター用”じゃない?

だったら、主人公の魔導書も同じなんじゃない?

よく見てみたら、同じ様な説明が書いてあったり……」


「そ、そんなバカな~……えっと

回復術師ヒーラーの技一覧でしょ~?

攻撃術師マジシャンの技一覧でしょ~?

防衛術師ガーディアンの一覧でしょ~?

トライスター専用技の一覧でしょ~? ……って?!


“トライスター専用技ッ?! ”


……そ、そんなの有ったのか?! 」


「ねぇ主人公……そう言うのって普通、最初に確認しない? 」


「い、いや……ラウドさんが最初に職業の説明してくれた時

“三職全部使える職業”としか言わなかったから、てっきり……」


「は~っ……そう言う天然な所嫌いじゃないけど

ちゃんと確認しないと痛い目に合うわよ? 」


「はい、反省します……取り敢えずちょっと読んでみるよ。


……え~何々?


ふむふむ……えっ?! 」


「何? どうしたの?! 」


「……有ったんだけど“全部覚える系”の項目」


「でしょ? だと思ったのよね~……早速使ってみたら? 」


「それもそうだね……しかもこれ凄い。


“トライスター専用技”が結構なチートだわ

技によってはデメリットもデカイみたいだけど……ただ


“このページの技だけは”……どれも使いたくないな」


《――そう言った主人公に近付き、魔導書をのぞき見たメル。


そして――》


「主人公さん……この欄の技は絶対に使わないでくださいね? 」


《――と、真剣な面持ちで

主人公に釘を刺した――》


「ああ……流石に俺もこの国の初代トライスターみたいに

歴史の本には載りたく無いし、絶対に使わないから安心してよ。


……っと、まずはマリーンが全部の技覚えてみてよ! 」


「そうね……っと、手をかざしながら


“知識を授けよ! ”――」


《――瞬間


魔導書は発光し、その光はてのひらに集まり始め――》


「凄く変な気分ね……ってきゃっ?! 」


《――光は急激に彼女マリーンてのひらに流れ込み

その光が完全に吸い込まれた瞬間


魔導書に記載されている技の全てが

彼女マリーンの記憶へときざみ込まれた――》


………


……



「凄い……何だか凄く不思議だけど

まるで長い時間を掛けて学んだ様な気分よ。


ねぇ! 主人公も早くやってみてよ! 」


「……ああ、ちょっと怖いけどやってみるか。


まずは……


回復術師ヒーラーの知識を授けよ”――」


《――そう唱えた瞬間、光り輝いた魔導書。


彼女マリーンの物と同じく

その光はてのひらから主人公の身体を伝い

彼の記憶にその全てをきざみ込んだ――》


「――成程。


治す技にもこんなに種類があるのか……あと

マリーンが言ってる意味が分かったよ。


数年……いや、数十年掛けて学んだ気がするね」


《――と、喜んで居た主人公の横では

いささか不満そうなメルが居て――》


「むぅ、私の存在意義がなくなった気がしますっ……」


「いや……そんな事は絶対に無いよ

メルの治癒魔導はメルの優しさを感じられるから大好きなんだ。


そんな理由だけじゃ……駄目かな? 」


「い、いえっ……これからも宜しくお願いしますっ!! 」


《――メルは顔を真っ赤にしながらそう言った。


そんなメルに“萌えつつ”も、引き続き

他の二職分をも習得しようと考えた彼は――》


「……さてと。


攻撃術師マジシャンの知識、及び防衛術師ガーディアンの知識を授けよ”――」


《――瞬間


先程よりも激しく輝いた魔導書……しばらく経ち

三職全てを完全に習得した主人公。


だが、その直後――》


「五十年程経った気分に成る……仙人にでも成った様みたいだ」


《――そう表現した主人公を心配したメルは


“……大丈夫ですか? ”


たずねた、すると――》


………


……



「なぁに、大丈夫じゃよメル殿……ふぉっふぉっふぉ! 」


「えっ!? ……主人公さんっ?! 」


「ハハハッ! 冗談冗談っ! ……仙人みたいに喋ってみただけ! 」


「もぉ~っ!! ……びっくりさせないでくださいよっ! 」


《――と主人公の悪戯イタズラに怒るメルだったが

マリアは冷静に――》


「いや、喋り方ほとんど“ラウドさん”でしたけどね」


「た、確かに……ごめんごめん!

さてと、皆お待たせ! 早速依頼を……って。


後ろ……“凄い事”に成ってるんだけどぉっ!? 」


《――彼の背後に押し寄せて居た者達


それは、この日ギルドに居た者達“全員”であった――》


………


……



「え……えっと……あの

皆様、俺達は別に“怪しい者”じゃ無いんですが……」


《――と、狼狽うろたえた主人公。


だが――》


「すげぇなあんた! ……珍しい物を見れたぜ!

ってかあんたトライスターの大臣だろ?

依頼受けに来て戦い方をマスターするなんざ面白い事をするなぁ!

流石はトライスター様だぜ! 」


「い、いえ……お目汚し失礼しましたっ!

っと……皆、依頼を探そうか……」


《――と、話を変えようとしていた主人公に対し

今度は――》


「……主人公さんと言えばこの国の大臣だよな?


そう言えば前にラウド大統領が、主人公さん達の事を

“公認ハンター”……とか言ってたけど、本当に依頼受けてるんだ!


……凄いや! 」


「い、いえ……皆さんの方が……」


《――そう謙遜けんそんする主人公だったが

その存在の物珍しさに、ハンター達は続々と集まってしまい――》


………


……



「あ……あの……皆さん依頼をですね……あのッ! 」


《――この後

ギルドにいたハンター達に取り囲まれ質問攻めに会い続けた主人公。


……当然、依頼を受けるどころでは無くなってしまった彼らは

逃げる様にギルドを去ったのであった――》


===第三十三話・終===

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