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異世界転生って楽勝だと思ってました。【17万PV突破感謝! 】  作者: 黒崎 凱
第一章

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第三一話「人付き合いは楽じゃない!」

“湖(みずうみ)での出来事”から数日後


大統領執務室では、約一年ぶりに

主人公を交(まじ)えた会議が執(と)り行われて居た。


「……以上が本日までの事故と、対応策の一覧です」


「うむ……報告ご苦労じゃったカイエル殿

概(おおむ)ね順調に行っておる様じゃな……さて

主人公殿は何か報告があるかね? 」


「ええ、外交とそれに関連する法整備の問題が幾(いく)つか

此処(ここ)の所、急ぎ足で我が国へ編入された国と種族が多いので

関連する法整備にはやはり少し遅れが目立ちます……


……関連法の制定を急ぐべきかと」


「うむ……各種族での話し合いも含め

慎重(しんちょう)かつ迅速(じんそく)な法整備を行わねばらんのぅ。


……教育についてはどうじゃね? 」


「教育に関しては、各種族に対する差別派が激減した事や

国民の意識が大幅に変わった事、学校教育が上手く機能して居る事で

識字率(しきじりつ)も少しずつ上がっては居ますが

まだ完璧とは程(ほど)遠く……看板、店のメニュー等は

未(いま)だ文字よりも絵が多いと言った現状です。


なので……」


この後、滞(とどこお)り無く会議は進み

久々の公務を無事に終えた主人公だったが

反面、何処(どこ)か機嫌の優れない彼は


ヴェルツに戻ると……


◆◆◆


「……はぁ~ッ!!!

何だよちきしょぉ~ッ! ……ヒック!


……ミリアさんッ!

この“ジュース”おかわりでッ! ……ヒック! 」


「どうしたんだい? ……えらく荒れてるじゃないかい?

あたしでよけりゃ相談に乗るよ? 」


「あ、有難うございます……でも

女性にこんな“内容”の相談って問題があるので……」


「……嫌な話だったら聞かなかった事にしてあげるから

気にしないで言ってみな、主人公ちゃんが荒れてる方が

あたしには辛いんだよ? 」


「お気遣い有難うございます……そ、その

何と言うか……見れば分かるとは思うんですが……」


「ああ……“マリアちゃん達と妙に距離がある件”だろう?

数日前から距離感がおかしいとは思ってたんだよ。


……一体、何があったんだい? 」


「そ……その、皆で“水の都|跡地(あとち)”に行った時なんですが……」


この後

俺は、ミリアさんに対し

“ハイテンション事件”の全貌(ぜんぼう)を説明した。


……暫(しばら)くの後

最後まで真剣に耳を傾けて居たミリアさんは……


「成程ね……まぁ、年頃の男の子なら仕方の無い事なんだろうが

それで皆から避けられてるって言うのかい? 」


「は、はい……」


「主人公ちゃんは今、何が……いや

誰に避けられてるのが一番|辛(つら)いんだい? 」


「特にキツイのは何時(いつ)も一緒のメルちゃんとマリアです……」


「だろうねぇ……分かった、ここはあたしに任せな

それで、主人公ちゃんはこの件についてもう考えない。


……良いね? 」


「えッ、でも! ……」


「……じゃあ無視され続けるかい?

良いから……あたしに任せな」


「はい……何から何まで

ご迷惑ばかりおかけして本当に申し訳有りません……」


「馬鹿だねぇ……そんな事は良いから

落ち込んでないで確(しっか)りご飯食べるんだよ? ……良いね? 」


「は、はいッ! ……頂きますッ! 」


◆◆◆


この日から更に数日の後


ヴェルツには“事件”に関係のあるメンバーが

ミリアの招集に依(よ)り集められて居た。


「さて……今日は貸し切りさね。


……このメンバーに集まって貰った理由は

勘の良い子なら、もう分かってるかも知れないねぇ? 」


そう訊(たず)ねたミリアに対し

エリシアは……


「ん~……メンバー的に

“主人公っちの事”かなって思ってるけど~……当たってるぅ~? 」


「その通りさね……しかし、あんたも何だい? “無視”なんて。


男のそんな“様”なんて、あんたの年齢なら

一度や二度は見て来てる筈だよ? 」


「ん? ……別に私は無視してないよぉ~?

そもそも主人公っち自身が此処(ここ)の所ギルドに来ないし~

会う機会がないんだから喋れる訳無いじゃん?


あと……“年齢の話”は出さないでミリア」


「……あ相変わらず“年齢(その)”話題に成ると怖いねぇ?

まぁ……あんたの件は解決さね。


次はメルちゃんだが……メルちゃんみたいに可愛い子が

多感な時期の主人公ちゃんに引っ付いたら

“そう言う風”に成るだって有る物なんだよ?

あの年頃の男の子って言うのはそう言う物さね。


別にメルちゃんを傷つけようとはして無い筈さ……


……ゆっくりで良いから許してあげなよ? 」


「わ、私はそのっ……ち、違うんですっ!

唯(ただ)、びっくりして……つい悲鳴あげちゃっただけで!

し、主人公さんをき……嫌いとかそう言う事は無いですからっ!

寧(むし)ろ私は主人公さんの事を……はっ?!


……な、なんでも無いですっ! 」


「なら何で避けてるんだい? 」


「そ、それは……そのっ……恥ずかしくてっ……」


「そうかい……でも、それが理由なら避けちゃダメさね

本人は相当落ち込んでたよ? 何(なに)せ

酒の“入って無い”飲み物を飲んで

酔っ払いの“管巻(くだま)き”をやってた位さ。


そう言えば、何でマリアちゃんは同じ様に避けてるんだい? 」


「えっ? 私は別に避けてませんよ?

メルちゃんと一緒に居てあげようとしてただけで

主人公さんに含む所は無いですけど? 」


「なら……何も怒ってないって事かい? 」


「まぁ、私を見て“元気”になって欲しかったとは思いますけどね! 」


「おや! 正直で良いじゃないかい!

その想(おも)いは伝えないのかい? 」


「ちょ!? ……冗談ですってば!

ツッコミを入れてくれないと変な空気に! ……むぅ

主人公さんに会わないと“ツッコミ不足”ですよ~!! 」


「……なら、早く話し掛けてあげな。


あんたも怒ってるんだと思って

主人公ちゃんは相当に落ち込んでる

徐々にで構わないから、ちゃんと話し掛けてあげなよ? 」


「は、はい……」


と、ここまで順調に解決し続けたミリア

だが、マリーンはこの問題に対し何故か酷く頑(かたく)なで……


「わ……私は別に無視してたって良いでしょ?!

一緒にパーティ組んでる訳じゃ無いし? 」


「何だい? ……“パーティに入りたい”なら

本人達にそう言えば良いじゃないかい」


「べッ、別に組んで欲しい訳じゃないわよ!!

って言うかそもそも主人公は、私に約束してくれた

“装備”とかも完全に忘れてる位だし……私以外

民達は皆(みんな)国からの支援で好きな職業を選んだのに

私はずっと……待ってたのに……兎に角!!

私は主人公が傷ついてるとか知らないわよ!!

あんな馬鹿、暫(しばら)くは反省し続けてるべきなのよ!! 」


そう言って許す事を拒否した

だが、そんな彼女に対しミリアは……


「……成程ね、マリーンちゃんは

他の子に夢中な主人公ちゃんを見て“妬(や)いた”訳だね? 」


敢えてか、少し意地悪げにそう言った

だが……当然の如(ごと)く

直後、これに強く反発したマリーン……


「なッ!? 好きとかそう言う事じゃ無いでしょ?!

大体、約束を破るのなんて最低のッ! ……」


「いいや……“心から嫌いな相手”の事なら

其処(そこ)まで傷ついたりはしない筈さね。


少なくとも、主人公ちゃんの事を嫌いな訳じゃ無いんだろう?


それと……一つ質問しても良いかい? 」


「な、何よ……」


「……主人公ちゃんがマリーンちゃんに対して

“喋り方の嘘”について、一度でも文句を言った事はあるのかい? 」


「そ、それは……無いけど! 」


「そうだろう? ……大体、主人公ちゃんは

貴族共に依(よ)って掛けられた冤罪(えんざい)で捕まってたんだよ?

その状態でどうやって約束を守れるってんだい?

それに、その後|直(す)ぐにまた

“例の問題”で幽閉(ゆうへい)されちまっただろう?

その後、釈放されるまで一年も掛かっちまったんだ。


……にも関わらず、釈放されてから日も浅いのに

あの子はこの国の民の為(ため)に必死で働いてる

自分が楽しめる時間なんて殆(ほとん)ど無い筈なのに

この国を良くする為(ため)にずっとさね……


……そんな主人公ちゃんが息抜きで“失敗”しちゃった事と

マリーンちゃんとの約束を忘れて居る

“かも知れない”からって責めるのかい?


あの子の事を少しでも大切に思って居るのなら

もう少しだけでも、待ってやれないのかい? 」


「……で、でもッ!!

どんなに待ってても……思い出してくれなかったら? 」


「……いいや、あの子は約束を必ず守る子さね

それは、あたしが保証するよっ! 」


そう自信を持って宣言したミリアに対し

マリーンの母、マリーナも賛同し……


「……確かにそうですわね

あの方が仰(おっしゃ)られた事は必ず実行されています。


それがどんなに困難な事だとしても……必ず」


「おや? ……その口振りなら

マリーナさんは別に避けてる訳じゃないんだね? 」


「ええ……私は大臣としての職が忙しいので

主人公さんに対して何か含みがある訳ではございませんわ? 」


「成程……エリシアの件と言い

主人公ちゃんが勘違いしてる節(フシ)もあるって事かい。


そこは本人に言って聞かせないと駄目だねぇ?

さて……マリーンちゃんはどうするつもりだい? 」


「……分かったわ、もう少し待ってみる

メルちゃんに対しての件もきっと

私がメルちゃんと同じ立場だったら……って

な、何でも無いからッ!! 」


「隠さなくても良いさ……人を好きになるのは素敵な事さね」


この日、この瞬間

解決への糸口が見え掛けて居たその時


“貸し切り”の札に気付かず

ヴェルツへと入店した一人の“男”……


「ん? ……あれ? 今“貸し切り”って書いてあった様な……って。


ぬわぁッ?! し、失礼しましたッ!!! 」


入店直後

勢揃(せいぞろ)いした女性陣に気付き

慌てて走り去ろうとした男……それは、主人公であった。


……だが、直(す)ぐ様(さま)ミリアに引き止められ

居心地悪そうにモジモジとして居た彼は

直後、覚悟を決め……


「……あ……あのッ!

ま、先(ま)ずは皆さんに一度謝罪をッ!


……水の都|跡地(あとち)での事

本当に……申し訳有りませんでしたッ!!


そ、その……メルちゃんにも

本当に嫌な思いをさせちゃって……しかも俺

あの時、言い訳までして……本当にごめんッ!!! 」


そう言って頭を下げ続けて居た主人公

一方、そんな彼にそっと近づき……


「あ……あのっ!

さ、避けてたのは……そのっ……は、恥ずかしかったからなんです。


でも、そのせいで主人公さんを不安にさせちゃって……


……私の方こそごめんなさいっ! 」


そう言って頭を下げたメル

直後、そんな彼女に対し主人公(かれ)は更に……


「そんな……メルちゃんは悪くないよ!!

俺が圧倒的に悪いんだ! ……本当にごめんッ!! 」


「いえっ! 私の方こそ、主人公さんのお気持ちを! ……」


この後

暫(しばら)くの間、互いに謝罪し続けて居た二人

だが、そんな流れを止める為(ため)かの様に

口を開いたマリアは……


「あの~……因(ちな)みに私は

メルちゃんに付添(つきそ)ってただけなので

そもそも怒ってませんよ~? 」


「いや、だとしても本当に……ごめん」


「え? ……い、いやそんなに真剣に謝られると

此方(こっち)も困りますから気にしないでください! 」


「だとしても、不愉快にさせた可能性はゼロじゃ無い

……許してくれてありがとう、マリア」


「い、いえ……此方こそ……」


先(ま)ず二人との問題を解決した主人公

だが、ホッと胸を撫で下ろして居た彼に対し

ミリアは少しばかり不機嫌な様子で……


「さて……因(ちな)みにだが

主人公ちゃんの勘違いも多いみたいだよ?


先(ま)ず、エリシアは避けてなんか無い

寧(むし)ろ、主人公ちゃんがギルドに来ないから

“喋る機会が無いだけ”だそうだ。


マリーナさんだって似た様な状況さ

仕事が忙しくて、そもそも

話せる機会が無いって言うじゃ無いかい。


正直、これは主人公ちゃん自身の欠点だが

一人二人がそうだったら“全員そうだ”と思い込む

“傍(はた)迷惑(めいわく)”なマイナス思考は少し控えな

良い加減にして置かないと

周りも変に気を使って余計に拗(こじ)れる事に成るよ?


……現(げん)に今回だってそうだっただろう?

分かったら、肝(きも)に銘(めい)じておきなよ? 」


そう言って

主人公(かれ)を注意した。


「いッ……以後、気をつけます!

それで、その……エリシアさん、マリーナさん。


ご迷惑をお掛けして、本当に申し訳有りませんでしたッ! 」


「……いえ、私も配慮が足りませんでしたわ?

ですが、そうお気に為(な)さらないで下さいませ」


「うん! 私も別に気にしてないよぉ~……って言うか!

巨龍(ドラゴン)騒ぎで有耶無耶(うやむや)に成ってただけで

そもそも主人公っち、浅瀬(あさせ)でも“元気”だったもんねぇ~? 」


エリシアのこの暴露(ばくろ)に依(よ)り

主人公の顔は信じられない程に引き攣(つ)り……


「へッ?! ……何でそれを!? 」


「フッフッフッ……秘密にしてたけど喋ってみた~♪ 」


「かッ……重ね重ね申し訳ありませんでしたッ!!

騒ぎで有耶無耶(うやむや)になったのを良い事に

俺は……って、そう言えば!!!

マリーンさん……本当にすみませんでした、俺……」


「なッ?! ……“そう言えば” って何よ?!

……私は“ついで”なの?!

私、貴方の事許すとか言って無いから! 喋り掛けないでよ! 」


「う゛ッ……ご、ごめんなさい……」


「マリーンちゃん! ……素直に成りなっ! 」


「いや、ミリアさん俺が悪いんです……」


「そッ……そんなに落ち込まれたら

まるで私が悪いみたいじゃないッ!


……し、仕方無いから“言い訳”位は聞いてあげるわ?

けど……一分だけだからッ! 」


「……あ、有難うございますッ!

で、では急いで説明を!! ……そ、その

ライラさんが巨龍(ドラゴン)と共に現れた時

マリーンさんが構えた“武器”を見て思い出したんです。


そう言えば俺、一年位前に――


“マリーンさんの装備を奢ります! ”


――なんて言って置きながら

ずっとその約束を放置してしまって居て

タイミングが合わなかったとは言え本当にすみませんでしたッ!

もしまだ間に合うなら、改めて

俺にプレゼントさせて頂きたくて……」


「何なのよ今更……べッ、別に要らないわよ!!

大体、そんな事で駄々をこねる女だと思われたく無いし

装備位自分で買えるわよ! 」


「でも俺、マリーンさんとの約束を! ……」


素直に成れないマリーンと

押しの弱い主人公……上手く噛み合わず

そう、堂々巡(どうどうめぐ)りして居た二人の会話に

痺(しび)れを切らしたミリアは……


「……主人公ちゃん。


マリーンちゃんの態度が頑(かたく)なな理由はね

主人公ちゃんを、ずっと待ってたからなのさ

あんたの事を嫌ってる訳じゃない……寧(むし)ろその逆さ。


……だから、約束を放置された事に傷つき

“主人公ちゃんのパーティに入りたい”なんて

尚(なお)伝えられる筈(はず)も無い……そんな想いを

この子は一年以上も胸に秘めて居たのさ。


主人公ちゃん……その想い、理解してやりな。


……それから、マリーンちゃん。


主人公ちゃんは確かに、あんたとの約束を

“忘れてた”のかも知れない……だが、確(しっか)りと思い出し

その約束を果たそうとして居る……だが、あんたが受け入れなきゃ

そして、あんたが許さなきゃ……何も進みはしないのさ。


マリーンちゃん……良い加減、素直になりな」


そう、互(たが)いの問題点を指摘したミリア

直後、彼女の発言に依(よ)って二人の蟠(わだかま)りは

徐々に解(ほど)け始め……


「マリーンさんが俺を嫌ってない? ……ほ、本当ですか?! 」


「なッ……何で嫌ってるって思ったのよ?!

仮にも貴方は私達の恩人でしょ?!

嫌いになんて成る訳無いじゃない……」


「い、いやだって……俺、間違ってばかりですし

と言うか……装備の件、ずっと放置してしまって居て

本当にすみませんでしたッ! 」


「も……もう良いわよ、許すから

お、お詫びにちょっと高い装備買ってくれるならだけど! 」


「はいッ! ……一番高い奴買いますッ! 」


雪解けと呼ぶべき状況に安堵(あんど)しつつ

そう必死に成って居た主人公……だが、そんな中

ミリアは少しばかり困った様な表情を浮かべつつ

ある“暴露”をした。


「主人公ちゃん、恐らくは気付いて無いだろうから

一応、伝えて置くが……メルちゃんもあんたを好きなんだ。


……今は状況的に仕方が無いが

今後は気配りを忘れるんじゃないよ? 分かったかい? 」


「えッ? ……メルちゃんまで俺の事を?

ちょっと待って下さい……頭が整理出来ないですよ。


……俺、女の子に好意を持って貰えたのとか初めてで

それも、二人からとか……どうして良いか判らないですし

その……ほ、本当なの? メルちゃん」


「そ、それはそのっ……あのっ……は……は……はぅぅぅっ……」


主人公(かれ)の質問に対し、メルは言葉に詰まり

この場に如何(いかん)ともし難(がた)い静寂(せいじゃく)が流れた。


……だがそんな中、マリーンは

思い切った様に立ち上がり……


「ねぇメルちゃん、私……貴女から

主人公を取ったりなんてしないから。


……安心してメルちゃん、貴女(あなた)が

“駄目(ダメ)”って叫びたく成る様な事なんてしないから」


そう言って微笑(ほほえ)んだ。

だが、その瞳(ひとみ)は微(かす)かだが

明らかな悲しみを纏って居て……


「あ、あのッ!! ……俺、気の利いた言葉の一つも言えなくて

どうして良いのかも本当に分からなくて……」


直後

そんな彼女の苦しみに居ても立っても居られず

立ち上がり何かを言い掛けた主人公は……この直後

言葉に詰まり俯(うつむ)いてしまった。


だが……そんな主人公に対し

マリーンは……


「……無理しないで良いわ、主人公。


私が初めて好きになった相手は貴方よ

貴方がそれを分かってくれただけで

私は……それだけで良いから」


そう告げると再び悲しく微笑(ほほえ)んだ

そんな彼女に対し、彼が精一杯

絞り出した言葉は……


「こ、光栄です……」


それだけだった。


そして……直後

主人公(かれ)は激しい自己嫌悪に陥(おちい)った。


(……転生前、アニメや漫画で“ハーレム物”を見る度

俺は“羨ましい”と思ってた……だが、現実は違った。


……嬉しさよりも申し訳なさだけが勝つ状況

身を引く決意を発したマリーンさんの事さえ

全く気遣える余裕が無い……どうしたら、何をしたら?

俺は誰も傷付けないで居られるんだ? ……)


だが、そんな中

主人公(かれ)を“譲(ゆず)られた”メルは

静かに立ち上がり……深く息を吸い込むと

マリーンに対し……


「あ、あのっ!!! ……わ、私っ!

マリーンさんに譲(ゆず)られるのだけは嫌ですっ!

し、主人公さんはまだ誰の者でも無いのに

マリーンさんが勝手に“譲(ゆず)る”なんてっ……


……そんな風に言うのはずるいですっ!!


だから……私決めたんですっ!

じ……実力で主人公さんを勝ち取りますからっ!!!

マリーンさんの事、正式に倒さないと……私……私っ!!


……絶対にダメなんですっ! 」


そう、精一杯の勇気を振り絞り言い放った。


……だが、彼女が何故(なぜ)此処(ここ)までの発言をしたのか

それが可能だったのか……理由は明白であった。


彼女は、マリーンが抑(おさ)えた“本当の気持ち”を

自(みずか)らの事の様に理解し、敢(あ)えて挑発する為(ため)

そう言い放ったのだ。


そして……直後。


この“挑発”を受けたマリーンは、彼女(メル)の“読み”通り

抑(おさ)えて居た想(おも)いを“爆発”させた。


「な……何よッ?!

私だって本当は諦めたくないわよ! ……良いわ?

其処(そこ)まで言うのなら、私だって本気を出して

主人公の事、勝ち取るんだから! ……メルちゃん

私に喧嘩を売った以上……覚悟しなさいよ?!! 」


「はいっ! ……望む所ですっ! 」


この瞬間

“争奪戦”の火蓋を切って落とす様に交わされた二人の会話

一方、その“原因”である主人公は……


「えッ? 何(なに)この幸せな状況……ってそうじゃなくてッ!!

あの~お二人共、此処(ここ)はもう少し穏便(おんびん)にですね……」


と、穏やかに話し掛けた主人公

だが二人は……


「主人公は黙ってて!!! 」


「主人公さんは黙っててくださいっ!!! 」


と、彼の要求を“却下”した

直後、二人の迫力に押された主人公は……


「は……はひぃッッッッッ! 」


そう“悲鳴”にも似た返事をすると

しょんぼりとした表情を浮かべつつ

静かに席へと座ったのであった。


「あらら……これは“別の問題”が浮上しちゃったみたいだねぇ?

悪いが、こればっかりはあたしじゃ解決出来ない問題さね。


さて……あたしはそろそろ料理の仕込みに戻るとしようかねぇ! 」


そう言い残すと

そそくさと厨房へと戻っていったミリア。


「い゛ぃッ?! ちょっとミリアさん!?

この件は“あたしに全部任せろ”って……


……ねぇ、ちょっとぉぉぉぉぉぉぉぉッ?! 」


ともあれ。


この日、何とか全員との蟠(わだかま)りを解消する事に成功した主人公

だが、同時に……この日を境(さかい)に、長きに渡り

“女性経験|皆無(かいむ)”な主人公(かれ)を悩ませる事と成る

メルVSマリーンの主人公を賭けた女の戦いが勃発(ぼっぱつ)し

その戦いが一層“解決に苦労する物”となるのは


また、別のお話……


===第三一話・終===

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