第三〇話「楽しい湖ハプニング?! 」
ディーンと仲良く成る切っ掛けと成った
“魔物討伐”の日から数日後の事、ヴェルツでは……
「……それにしても、メルちゃんの新しい装備
驚く程似合ってるな……売り文句通り
まさに“上級魔導師様”って感じだ! 」
「ほ、本当ですかっ?! ……う、嬉しいですっ! 」
「ですね~……でも、そうなると
私の兜も早く完成しないかなぁって思っちゃいますね」
そう、指で兜の“ツノ部分”を表現しながら
自らの装備の完成を待ちわびて居たマリア。
……てか、安直なその“動き”が
ちょっとだけ可愛いと思った。
「い……急いではくれるらしいけど
ドワーフ製の装備は本来、凄い手間と時間を掛けて
名のある戦士とかの為に制作される装備だから
ある程度時間が掛かるのは覚悟してた方が良いかもな。
……どうする? 完成までの間
マリアは戦闘に参加しないとかでも良いぞ? 」
「う~ん……A級の依頼までなら然程ですけど
S級からはちょっと怖いかもです……でも
何でいきなり戦闘の話に? 」
「いや、その……メルちゃんに
装備をプレゼントしたのは良いんだけど
簡単な敵だと何もしない間に終わりそうで
メルちゃんがつまらないんじゃないかなって思ってさ。
何か、丁度良い依頼を受けてはみたいんだけど……」
「あのっ! 私の事なら気にしないで下さいっ!
装備は“もしもの為”に揃えて頂いた訳ですし
そもそも回復術師が必死になる時って
多分“大変な状況”ですし……」
「あ~……それもそうだね。
とは言え、今日は大臣としての仕事もお休みだし
じっとしててもつまらないから……
……久し振りにギルドに行ってみよう! 」
と軽い気持ちでギルドへと向かった俺達。
だが“肩慣らし程度”の簡単な依頼を探して居た
その時……
◆◆◆
「おぉぉぉぉぉっ! 主人公っち~~~っ!!! 」
そう、突如として俺の名前を叫び
尋常成らざる興奮状態、且つ凄まじい勢いで走り寄って来た女性。
……それは、言うまでも無く
“エリシアさん”だった。
「ぬわぁッ?! って……エ、エリシアさん?! 」
現れるなりエリシアさんは
驚き、仰け反った俺の腕をがっちりと掴み……
「い……一年ぶり……薬草取りぃ……
早くぅ~っ……準備……しろぉぉぉ~っ!! 」
と“ホラー映画顔負け”の雰囲気を醸し出しつつ
そう要求した。
「ちょッ?! 怖ぁッ!? ってか……有無を言わさずですか!? 」
「大丈夫です主人公さんっ!
薬草で怪我しちゃったら私が治しますからっ! 」
この“様子”を見た上で
何故そんなに乗り気なのかは知らないが
メルちゃんはとんでも無く目を輝かせていた。
嗚呼……これは
完全に“断れない”雰囲気だ。
「た、確かにそれは助かるけど……」
「じゃあ、切り倒したい木が有ったら私が切りますね~! 」
「いや、何故にマリアは唐突に“木こり”の様な発言をッ?! 」
確かに
“幽閉中”エリシアさんと薬草採集に行く約束はして居たし
それ自体かなり前の事だ……現状
どう考えても“待たせまくってる”状態だった事もあり
素直に応じようとして居た俺の発言を……
「とは言え確かに、そろそろ約束を果た……」
「……よしけってぇ~いっ!!
んじゃ、早速行こおぉぉぉっ! ……ほらほら! 早くッ! 」
と、完全に遮り
“一を聞いて十を知る”と言うべき速度で
俺の言わんとする事を“察した”エリシアさんは
飛んだり跳ねたり踊ったりと
全身で薬草採集の喜びを表現して居た……うん。
“可愛いなぁおいッ! ”
「と・こ・ろでぇ~っ! ……荷馬車どうする~ぅ? 」
「えッ? ……普通ので良くないですか? 」
「いや、そうじゃなくって――
“何台必要かな~っ? ”
――って思ってね♪ 」
「いや、どんだけ刈り取るつもりですかッ!? 」
「う~ん……満足するまで~っ? 」
「成程“無限”って言う意味ですね分かります」
「其処まで取っちゃったら
次が生えなくなるから駄目だよぉ~?
……って、そうそう! “旧水の都跡地”だけど
“例の一件”の後、主人公っち達は行った事あるかぃ?
自然ってすっごいよぉ~っ? 」
「いえ、行けては無いですが……どう凄いんですか? 」
「ふむふむ……なら今日は水の都に行ってみよぉ~っ! 」
「そうですね! ……あッ! でしたら
マリーナさんやマリーンさんにもお声掛けしてみては? 」
「おぉ~っ! それもそだねぇ~!
マリーナさんには私が連絡入れるから
主人公っちはマリーンちゃんに魔導通信よろしくぅ~! 」
「はいッ! 」
そう意気揚々と返事した後
マリーンさんへと魔導通信を繋いだ俺。
……だが、俺の“連絡不足”が原因か
マリーンさんはとても“不機嫌”で……
◆◆◆
「……何よ?
えらく放置してくれるじゃない……何の用? 」
「そ、それはその……も、申し訳有りませんでしたッ! 」
「で? ……どうしたのよ? 」
「そ、それがですね……約一年ぶりに
“旧水の都跡地”にエリシアさんと行く事に成ったんですが
どうせならマリーンさんも誘うべきでは? って話に……」
「……そう。
なら、お父さんにいろんな報告もしたいし……同行するわ」
「ほ、本当ですか?! ……では決定と言う事で!
えっと……マリーンさんは今何方に?
お迎えに上がろうかと思って居るのですが……」
「今は居住区だけど……って、主人公は何処に居るの? 」
「ギルドです! エリシアさんとマリア、メルちゃんも居ます! 」
「そう……なら、ちょっと用事を済ませてから行くから
東門で待ってて貰えるかしら? 」
「分かりました! ……では東門でお待ちしてますッ! 」
◆◆◆
「……と、言う事ですので
先ずは東門に行きましょうか」
「そかそか~……んじゃあ東門へレッツゴォ~っ!
……一台目、よぉ~しっ!
二台目、よぉ~しっ! ……荷馬車の準備よぉ~しっ!
ふっふっふっ……これで沢山取れるぞぉ~っ♪ 」
と、エリシアさんが“指差し確認”した荷馬車は
宛ら“超大型トラック”とでも形容したく成る程の
途轍も無い大きさだった……嗚呼果たして俺達は
“今日中に帰ってこられるのだろうか? ”
「し、しかし……前回の荷馬車よりさらに大きいですね」
「だって一年だよぉ~っ?
……色々忙しかった上に、他に護衛してくれそうな人達は
全員国政に駆り出されてたし~?
色々取りたい薬草が溜まりに溜まってるんだよねぇ~」
「成程……でも正直
エリシアさんってとんでも無く強いので
一人でも大丈夫だとは思いますけど……」
「おぉ~ありがと~っ! ……そうなの!
それを全ッ然ッ! 分かってくれないの~!
秘書官ったら、本っ当ぉ~にウザいんだよ~っ?! 」
と、エリシアさんが“悪口”を言い放った
直後……
「だれが“ウザい”んです? 」
何処からともなく現れた秘書官さんは
エリシアさんの背後でそう言った。
「ぬわぁぁぁっ?! ……何処から出てきた妖怪秘書官っ! 」
「……誰が妖怪ですか!
これだけ騒げば誰だって気付きますッ!
っと……主人公様、マリア様、メル様
今回も、何卒宜しくお願い致します……」
そう言って
俺達に深々とお辞儀をした秘書官さんに対し……
「勿論です! ……責任を持って護衛しますのでご安心下さい」
と、返事をした俺
直後……
「毎度お手数お掛け致します……では、エリシアさん?
“日暮れまでには”……必ず、お戻りに成って下さいね? 」
「むぅ~っ……」
「……もしお戻りに成られなかったら
二度と採集には行かせられませんが……宜しいのですね? 」
「え~っ?! ……分かったよぉ~もぉ~っ!
約一年ぶりなのにぃ~……早く行こう主人公っち! 」
「は、はいッ! ……で、では秘書官さん!
い、行ってきます……」
「ええ……宜しくお願い致します」
直後
秘書官さんは更に深々とお辞儀をした。
……ともあれ。
この後、約束通り東門で二人の到着を待って居た俺達は
痺れを切らしたエリシアさんの様子を眺めて居た。
◆◆◆
「まだぁ~? ……む~ぅ! ……二人共遅いっ! 」
荷馬車の前でイライラとして居る姿は
怒って居るのかも知れないがちょっとだけ可愛くもあった。
……まぁ、その事を今伝えたら
怒りの矛先が俺に向きそうだが……ともあれ。
この後、一足早く合流したマリーナさんは兎も角として
少し遅れて現れたマリーンさんは
俺の顔を見るや否や……
「“本当に”……久し振りね、主人公? 」
そう、ありありとした“不満”を醸し出した
だが、明らかに怒っている事を察した俺が
“もじもじ”として居ると……
「だぁぁぁっ! 挨拶とか良いから早く乗った乗った~っ!
はい! 出発出発ぅ~! 」
俺達を無理やり荷馬車へと押し込んだエリシアさん。
“助かった”と言うべきかは兎も角として……
……直後“旧水の都跡地”を目指し
少し“急ぎ足”で出発した荷馬車内では……
◆◆◆
「……いやぁ~っ! 久し振りに採集に行けると思うと
今からワクワクが止まらな~いっ!
特に、主人公っちが“消し飛ばした”旧水の都跡地は
本当に凄いんだよ~っ? 」
「う゛ッ……事実ではありますが、もっと言い方を……」
エリシアさんの発言に慌てつつそう言った俺
だが、マリーンさんは尚も不機嫌で……
「でも……確かに“消し飛ばした”わよね? 」
「う゛ッ……本当にすみませんでした
放置も、水の都の事も……うぅッ……」
居心地の悪さが“限界突破”したせいもあり
酷くテンションが下がってしまった俺に対し
直後、マリーンさんは……
「放置のお返しのつもりで強く言っただけ……けど
流石に少し責め過ぎだったわね……ごめん。
……お父さんもあれで良かったんだと思う」
「い、いえッ! 俺の方こそ! ……」
直後
僅かに沈み始めた荷馬車内の空気に……
「むぅ~っ……暗い暗い、暗ぁぁぁぁぁ~いっ!!!
……二人のそんな暗い気分が吹っ飛ぶ位
“今の”水の都跡地は素敵な事に成ってるんだから!
って! ……そろそろ見えて来たぞぉ~っ!!
あ・れ・が! “今の姿”だ~っ!! 」
直後
そう言ってエリシアさんが指し示した場所には……
「う、嘘……湖が……元通りに成ってる……」
マリーンさんが驚くのも当然だ。
眼前に広がる光景は、俺が想像して居た様な
痛々しい“抉れた地形”では無く……
……底が見える程に透き通った
美しい湖の姿へと変貌を遂げて居たのだから。
「ねっ? 凄いでしょ~っ!?
……ま、人が住んでないって言うのもあるけど
自然の力って本当に凄いんだよ~っ♪
やっぱり良い景色だ~っ♪ 空気も美味しい気がする~っ♪ 」
そう言って深呼吸しながら“伸び”をしたエリシアさん
直後、そんな彼女に対し……
「それにしても、こんな見事に復活してるなんて
一体どうやって? ……まさかエリシアさんが?! 」
「いやいや! そんな訳無いじゃん主人公っち!
……そもそも、湖って言うのは
元々、雨が溜まったりとかぁ~
地下水が滲み出たりとかぁ~
そんな感じで出来てるんだし、環境が整ってたら
割と直ぐに元に近い形には成るんだよん~?
……ま、それにしても奇跡って感じの光景だけどねぇ~っ♪
ってぇ事で! ……採集開始だぁぁぁぁぁっ!!! 」
言うや否や
目にも留まらぬスピードで薬草採集を始めたエリシアさん
その一方で……
「早ッ?! ……って、それにしても綺麗な景色だ」
そう、誰に言うでも無く発した俺に対し
マリーンさんは感慨深い様子で……
「ええ……もう一度、水の都を再建出来そうな程に」
そう言った
だが、マリーナさんは……
「確かに美しい光景ではありますが……今となっては
政令国家での生活の方が圧倒的に民達も幸せでしょう。
とは言え……それでも一度
民達にこの光景を見せたいのも事実ですわね……」
と、複雑な心境を口にした
直後、そんな“母”に対し……
「本当にそうね……とても深い筈の湖が
底まで見える程透き通ってるなんて……見てお母さん!
素敵、あんなにも楽しそうに魚が泳いで……って。
……何で魚がいるのよ?! 」
そう、突如として現実に引き戻された様に驚き
何故か俺の顔を見たマリーンさんに狼狽えた俺。
そして、その疑問に答えられそうな
“唯一の人物”は……
「えぃっ! とぉっ! ……ハッ?!
これはめちゃくちゃ美味しいキノコじゃないかぁぁっ! 」
“ご覧の有様”だった。
直後、仕方無く……
「そ、その……“一番知ってそうな人”が採集に夢中なので
後で改めて聞いてみましょうか……」
半ば諦めた様にそう言った俺と
同じ様な反応をしたマリーンさん。
……一方、そんな俺達の視線の少し先では
メルちゃんとマリアが湖の水に手を浸け
とても楽しそうに話して居て……
「綺麗……透き通ってますっ!
こんな湖に入ったら気持ち良さそうですっ♪ 」
「水着がないと無理ですね~……って、そうだ!
メルちゃん、今度一緒に買いに行きませんか? 」
「はいっ! ……楽しみですっ♪ 」
と、今後の予定を立てて居た二人
だが……そんな二人に対し
マリーンさんとマリーナさんは口を揃え……
「ねぇ! ……水着って何? 」
「ええ、私も教えて頂きたいですわ? ……
……新しい流行り物か何かかしら? 」
そう問うた
直後……
「えっ? いや……流行りとかそう言う類の物では……」
と、珍しく返答に困って居たマリアの様子に気付き
慌てて会話に参加した俺は……“興奮”を抑えつつ
二人に対し“ある”質問をした。
「そ、その……“水着を知らない”と仮定してお伺い致しますが
そ、その……お二人は泳いだりする時、もしかして
その……なッ、何も“身に付けず”泳がれる訳では……」
「何言ってるのよ? ……当たり前じゃない!
服なんて身につけてたら水を吸って重たいし
乾くまで相当な時間が掛かるじゃない!
凄く効率が悪いわ? ……って、貴方は着たまま泳ぐの? 」
そう
至極当然と言った様子で応えたマリーンさん。
直後……
「あ、あのッ……それってもしかして
おッ……男が居てもかかかッ……関係無かったり? ……」
と訊ねた
瞬間……
「主人公さんからいやらしい気を感じますっ……むぅっ」
そう
頬を膨らませながら言ったメルちゃんを皮切りに
更に追い打ちを掛けるかの様に……
「あ~ぁ、嫌だ嫌だっ! 結局|身体目当てですか~?
最低ですねぇ~? 悪い男ですねぇ~?
主人公さんってそんな人だったんですねぇ~? 」
そう
状況を悪化させる様な発言をしたマリアに……
「い゛ぃッ?! そ、そんな意味で聞いたんじゃ無いって!! 」
動揺を超え、最早
“挙動不審”とも言うべき状況に陥って居た俺の様子に
マリーンさんは……
「……流石に異性が居る場では泳がないわよ?
普通、女は女……男は男で別れて泳ぐものでしょ?
って言うか主人公……もしかして、私の裸だけじゃ無くて
まさか……お母さんの裸まで想像してたんじゃ?! 」
「ち、違う! ……誤解だッ!!
そ、そりゃあ二人共魅力的だし
想像しなくても綺麗な姿なのは分かるけど! ……って!?
こッ、この“想像”って言うのは言葉の綾でッ! ……」
嗚呼。
どうやら俺は“ドツボ”に嵌ったらしい……
……女性陣はどんどんと詰め寄って来ている。
“嗚呼、やばいッ!! ”
「何か本当に……すみませんでしたぁぁぁっっ!! 」
直後
ひれ伏す様に土下座をした俺は……その後
若干の不信感を全員から感じつつも、話を逸し……
「は……話を戻しますが!
お二人が水着を知らないのは意外でした」
変な汗をかきながらそう言った
だが、マリアは冷静に……
「そうは言いますけど、良く考えたら
湖は勿論も海さえ近くに無い政令国家で
ちゃんとした水着文化が浸透してる方が不思議では? 」
と、疑問を呈し
そんなマリアの疑問に答える様に
メルちゃんは俺達の知らない事実を教えてくれた。
「それは多分“公衆浴場”があるからだと思いますっ! 」
「えッ? ……そんなのあるの? 」
「はいっ! ……そう言えばヴェルツで過ごしていると
お風呂って自由に入れると思いますけど
そもそも、あれって凄い事なんですよっ?? 」
「そうだったのか……当たり前だと思ってた」
「……当たり前じゃ無いですっ!
お家に自分用のお風呂が付いてるのって
殆どの場合“お金持ちのお家”ですからっ!
なので、ミリアさんがいつもお肌すべすべなのは
そう言う理由かもしれないですねっ! 」
「そうだったのか……確かにミリアさん肌綺麗だよな。
……っと、そう言う訳で
政令国家には“水着”と言う物がありまして
泳ぐ時とか、メルちゃんが教えてくれた
“公衆浴場”を使用する際などに着るのですが
水に入っても重くならない様な素材で
隠したい部分を隠せる物があるんです! 」
と言う俺の説明に
とても興味を持ってくれた様子の二人……だが
説明を続けて居た俺の所へと走って来たエリシアさんは
ある意味ベストなタイミングで……
「お~い皆~っ! 泳ごうぜぃ~! 」
と言った。
だが……
「ど、泥だらけですね……って、今|丁度話してたんですが
皆さんも俺も水着を持って来て居ないので
もしどうしてもと言うなら
“俺だけ帰る”とかしないと駄目かも知れなくて……」
「ちっちっちぃ~……そう言うだろうと思って!
はいッ――
――この“葉っぱッ! ”」
「い、いや……何処からどう見ても
唯の葉っぱにしか見えないんですが。
……一体これをどうしろと? 」
「えっとぉ~これをねぇ~っ……こうしてこうしてこうっ!
ほら~っ! ……出来たぁ~っ♪
どう? ……水着みたいでしょ~? 」
そう言うと
あっと言う間に葉っぱで水着を作り出したエリシアさん。
……だが、形こそ確かに水着ではあるが
“強度”について指摘した俺に対し……
「それがねぇ~……この葉っぱ
水に浸かると丈夫になるんだよ?
不思議な葉っぱでしょ~っ♪
あっ、それとも……主人公っち的には
“強度に不安が有る方が”……良かったかなぁ~? 」
「い、いえそんな事は……ゴホンッ!
とッ……取り敢えずッ!
その葉っぱで泳げるのは分かりましたけど
そうなると次は着替える場所が……って! 」
「クックック……主人公っち
何故荷馬車が“二台”あるのか
漸く気付いた様だねぃ~♪ 」
「……ま、まさか其処まで考えて居たとは
ですが……俺、手先がとんでも無く不器用なんで
自分の水着を作れる自信が無いんですけど
ご迷惑で無ければエリシアさんにお願いしても良いですか? 」
「てか、もう作っておいたよぉ~……はいこれっ! 」
「おぉ……凄いッ! てか、エリシアさん
服飾の才能まで有るんですね」
「ん~? 褒めても何も出ないぞ~?
さぁさぁ! 兎に角早く着替えておいでぇ~っ! 」
「はい! じゃあ俺はこっちの荷馬車で着替えますね! 」
直後、荷馬車へと戻った俺は
“葉っぱ水着”の出来に感心しつつ、着替えて居た。
◆◆◆
「……凄い、丁度良いサイズだし
ウエスト部分に“伸縮性”まで有る。
葉っぱだけで出来てるとは思えない……流石
自然に詳しいエリシアさんって感じだな。
っと……皆着替え終わったかな? 」
◆◆◆
同時刻
女性陣の荷馬車内では
凄まじい勢いで全員分の水着を作成して居た
エリシアの姿があった。
「……よぉし! 全員分出来たよぉ~っ♪
はい、これがメルちゃん~!
これがマリアちゃんでぇ~!
これがマリーンちゃん~! ……これがマリーナさんだね~っ♪
私のは……さっき作った奴っ!
どう? どう? ……超似合うでしょ?? 」
「エリシアさん細っ?! スタイルいいですね~」
「ん? ……私から見ると
マリアちゃんみたいな“体型”が羨ましいんだよ?
おらおらぁ~ちょっと“胸の肉”寄越せぇぇ~」
「もぉ~! エリシアさんのエッチ! 」
「アハハハッ! ……」
じゃれ合うエリシアとマリア
そんな中……
「ど、どう……ですかっ? 」
そう
緊張気味に訊ねたメル。
「おぉっ!? ……メルちゃんナイスバディだねぇ~っ?!
これは、主人公っちの奴
絶対に“悩殺”されるぜぃ~?! 」
「へっ?!! そのっ、あのっ……はぅぅぅ……」
と、照れるメルの横では
マリーンとマリーナが初めての水着に感動して居た。
「こ、これが水着っ! ……確かに便利ねお母さん! 」
「本当ですわね~! ……これは葉っぱですけれど
もっと様々なデザインが有るのでしょうし
これは、是非とも手に入れたいですわね~♪ 」
と、夢を膨らませて居た二人
一方……既に着替え終わって居た主人公は
湖の前で一人、転生前を思い出し
感慨に耽って居た。
◆◆◆
「……しかし、いい天気だ。
こんな最高の条件で男は俺一人……おまけに
嘘みたいに綺麗な女性ばかりと水着姿でこんなイベントとか
あの頃なら考えられなかったな。
今、俺は……間違い無く世界で最も幸運だ。
いやっほぉぉぉぃッ!!! 異世界最高~ッ! 」
と、浮かれて居た主人公の背後には
水着姿の女性陣がずらりと並んで居た。
「完全に聞こえてますよー……主人公さん? 」
「な゛ッ?! マリア?!
そ、その今の大はしゃぎは! ……って
凄い……同じデザインの筈なのに三者三様に綺麗だ
嗚呼幸せ過ぎる……って。
……すみませんッ! 何でもありませんッ!!! 」
この瞬間
“本心”が溢れ出して居た主人公
そんな中、エリシアは唯一言……
「悩殺されそうでしょ? 」
そう問うた
直後、そんな彼女に対し……
「えっと……エリシアさんはマジで年齢が分からないです」
「それ褒めてるぅ~? それとも……“胸のサイズ”の話してる? 」
「い、いやその……珍しく持って来てる
“魔導の大杖”を構えながら聞かないで下さい。
どう考えても褒め言葉なんで……」
突如として訪れた“死の危機”を
ギリギリで回避した事は兎も角として……この後
次々と訪れる事と成った女性陣からの質問攻めに……
「じゃあ私はどうですか~? 」
「あ、ああ……マリアはやっぱり“モデル体型”だな! 」
(出来るだけ平常心で褒めるぞ……)
「そ、そうですか? ……有難うございます」
「じ、じゃあっ! わっ、私は……どうですかっ?! 」
「すッ……凄く似合ってるよ!
それに、その……かかかッ褐色の肌が健康的で素敵だね! 」
(ぬ、ぬぉぉッ?! メルちゃんは俺には刺激が強過ぎるッ!
ぐッ!!……冷静に、冷静に……)
「ほ、本当ですかっ?! ……恥ずかしかったけど
着てよかったですっ! ……」
内心“いっぱいいっぱい”な俺とは裏腹に
マリアとメルちゃんが俺の感想を喜んでくれた一方で
“質問攻め”はまだ終わらず……直後
マリーンさんは俺に対し……
「ねぇ? ……私も“当然”綺麗よね? 」
「……そんな言い方しなくても半端無く綺麗ですよ!
世の男性全員を虜にしそうなレベルです! 」
(マリーンさん……このナイスなスタイルで
水の都では何も身に纏わず泳いでたんだよな……
ゴクリッ……だ、駄目だッ! 冷静さを忘れるな俺ッ! )
「べっ……別に全員|虜にしたいわけじゃないし!!
って……聞いてるの? 主人公」
「へっ? ……あ、はい! 勿論聞いてますッ! 」
(ま、不味い……俺の中の冷静さが失われつつある……)
「ですが……私は少し恥ずかしいですわね」
「おぉ……とてもお似合いになってます!
流石はマリーナ様、女王の風格と言いますか……気品があります! 」
(ぐッ!! 恥ずかしがって“体をくねらせる”のを止めてくれッ!!
セ、セクシー過ぎるッ!! ……)
「まぁ主人公様ったら! ……褒め上手ですわね♪ 」
「事実ですよ~……って、早速湖に入ってみます? 」
(湖に入れば少しは水着が目立たなく成る筈……)
「ならお先ぃ~っ!! ……トウッ!! 」
言うや否や
湖に勢い良く飛び込んだエリシアさん。
「って早ッ?! ……っと、俺達も入りましょうか! 」
と皆を促し、危機を脱したかに見えた俺。
だがそんな中、何故かメルちゃんだけは
俺の傍から離れてくれなくて……
「し、主人公さんっ! ……あのっ……そのっ……
お願いしますっ……手を繋いでてくださいっ!
わ、私っ……泳げなくてっ……」
「そうだったのか……ああ、分かった
なら、浅瀬で遊ぼうか! 」
暫くの後
皆が楽しそうに湖を泳いで居た一方、俺は浅瀬で
メルちゃんの恐怖心を和らげようとして居た。
だが……
「そ、そんなに進んで行ったら……駄目っ! 深いですっ! 」
瞬間
怖がるメルちゃんは俺の腕に抱きつき……
「のわぁッ!? い、今胸が当た……い、いやッ!
っ……大丈夫ッ! 手を離したりしないから! ……」
直後
腕に感じた幸せな“柔らかさ”……不味い。
“このままでは理性が崩壊する”……そう考えた俺は
一刻も早くメルちゃんを安心させる為……
「……じ、じゃあ! この場所から動かず
唯“深さに慣れる”のはどうかなッ?! 」
そう提案した
だが、メルちゃんは既に恐怖心が限界だった様で……
「無理ですっ! もうこれ以上は怖いですっ! 」
そう言うと
更に強く俺の腕へとしがみつき……
「ひゃぇぃッ?!! 」
(は、半端なく当たってる ……って不味いッ!
このままじゃ……“反応”してしまうッ!! )
「ど……どうしたんですかっ!?
まさか、主人公さんも怖いんですかっ?! ……」
「ち、違うッ! ……そうじゃなくて!
そのッ……そう! 足に魚が当たってびっくりしただけでッ! ……」
(“本当の理由”なんて言える訳無い)
「そ、そうなんですね……でも、私怖くて限界ですっ
もっと浅瀬に戻りませんか? ……」
「うん、そうだね……やっぱりもう少し浅瀬に……あッ」
(ヤ、ヤバい……“反応”してるッ!?
ま、不味い……このまま浅瀬に戻ったら最悪な結果に……)
「さぁ、早く戻りま……きゃっ!? 」
瞬間
足先に小魚が触れた事に驚いたメルちゃんは
更に強く俺の腕を引き寄せ……
「はうッ?! 」
(さ、最高だ……じゃなくて最悪だァァァッッ!!!
……不味い不味い不味いッ!!
一刻も早く抑えなきゃ……こう言う時は
何か“気持ち悪い物を想像”して……)
「し、主人公さんっ!?
目を瞑ってどうしたんですかっ?!
ま……まさか気分でも悪くっ?!
もしそうなのでしたら早く浅瀬にっ!! ……」
直後
自らも恐怖を感じて居る筈のメルちゃんは
俺の“異変”を心配し、必死に浅瀬の方へと引っ張り始めた。
だが、当然……
「……ちょちょちょッ?!
ちょっと待ってぇぇ~~~ッ!? 」
(不味いっ! ……まだ“元気”過ぎるッ!
気持ち悪い物! 気持ち悪い物! ……ヤバい、鎮まらないッ!! )
“状況”は悪化する一方で
そんな中、危機的状況と判断したメルちゃんは
よりにもよって……
「……み、皆さんっ!
主人公さんの気分が優れないみたいなんですっ!
たっ、助けに来てくださいっ!!! ……」
「ち、違ッ! ……皆を呼ぶのだけは!!
って……これ以上|浅瀬は駄目ぇぇぇぇぇッ!!! 」
メルちゃんの必死の呼び掛けに
慌てて駆けつけてしまった女性陣。
……直後、数人掛かりで引っ張られ“力負け”した俺は
何一切“収まらない”状態の中
女性陣の悲鳴が響き渡る湖で
絶望して居た。
「終わったッ……何も……かもッ……」
「主人公さん! ……あれッ!!! 」
何れ程の時が流れたのだろうか?
放心状態の俺に対し
酷く慌てた様子でそう言ったのはマリアだった。
「ち、違うッ! これには訳が……って、何だッ!? 」
瞬間
マリアが指差したのは俺……の後ろに見える空だった。
……直後、言われるがまま慌てて振り向いた俺の視線の先には
巨大な“緋色の巨龍”が飛んで居て……
「あれは……巨龍?!!
な、何でこんな所に?! ……って、あれ?
ちょっと待てよ? 何か“見覚えが有る”様な……」
◆◆◆
「ドラゴン……急降下……彼処に降りて……」
この瞬間
巨龍に騎乗した操り手は静かにそう命じた。
直後、一行の直ぐ側へと着地した巨龍
その背中から降り立ったのは……
……ディーン隊の隊員“ライラ”であった。
直後、彼女は主人公に対し……
「主人公さん……こんな所で……何、してるの? 」
そう問うた。
「な、何って……ライラさんこそ
何で“巨龍”と飛んでたんですか? 」
「この間……この子食べ過ぎ……だから……その消化を助ける運動」
「あぁ! そう言う事でしたか!
って! この間は本当にお世話になりまして! ……」
「良い……この子も喜んでた……それに……
ディーン様も楽しんでた……だから……良い。
私……もう帰るね……ドラゴン、飛翔……」
そう言い残しドラゴンの背に乗ると
彼女は巨龍と共に政令国家のある方角へと帰って行ったのであった。
一方、呆気にとられて居た女性陣に対し……
「って……そう言えば皆さんは知らなかったですよね。
少し前、巨大な戦艦“オベリスク”で現れた
“ディーン隊”の事はご存知かと思いますが
彼女はその隊員の一人で、名前をライラさんと言います。
……彼女も一応“傭兵”と言う扱いなのですが
ご覧になった通り、彼女は
“巨龍を使役して居る”女性でして……」
そんな主人公の説明に
真剣に耳を傾けて居たマリーナは
ライラに対する所感を語った。
「巨龍使いの傭兵ですか……とは言え
優しそうな方には見えましたが……」
「ええ……普段は使役に依る負荷のせいで
殆ど睡眠を取っている方なので
俺自身もあんなに長く喋ったのは初めてですが……」
などと話して居たその時
マリアは、何かに気付いた様に……
「あっ! そう言えば主人公さん
兜の材料を取りに行った帰りに
“ディーン隊の皆さんに協力して貰った”って……
……もしかして、今の“人”もですか? 」
そう問うた
そしてこの直後……
「そうそう! ……その時に材料以外の部位を
今の巨龍が一瞬で食べちゃったんだけど
どうやら、今のはその“消化不良”を解消する為の
運動だったみたいだね……」
そう語った主人公の説明に対し
真剣に耳を傾けて居たメルは、とても不思議そうに……
「ド、巨龍さんも消化不良に成るんですね……」
と言ったのだった。
ともあれ……
「言われてみればそうだね……って、もう夕暮れ時か。
皆さん! そろそろ帰らないと
エリシアさんが怒られちゃいますので
取り敢えず着替えと帰り支度をお願いします! 」
直後、そう皆に対し号令を掛けた主人公
だが、当のエリシアはまだ“遊び足りなかった”様で……
「え~っ! もっと遊びたいのにぃ~っ!
でも“秘書官”って怒ると怖いしなぁ~っ……
……仕方無い、帰る準備しよ」
「ええ、そうした方が良いですね……では皆さん
着替え終わったらそのまま帰りましょうか! 」
そう更に主人公が促すと
マリーンとマリーナは……
「私達はお父さんに色々報告してから着替えるわね」
「ええ、私も娘と同じ様に致しますので……」
「了解です! ……では俺達は着替えてますね! 」
そう言い残し
荷馬車へと戻った主人公の背中に向け、マリアは……
「あの~主人公さん……覗かないでくださいね? 」
「なッ?! ……の、覗かないわッ!! 」
なにはともあれ。
この後、荷馬車へと戻った主人公は
“先程の状況”を思い出していた。
◆◆◆
「たッ……たッ……助かったぁ~ッ!!!
ってか、ライラさんマジで最高のタイミングだったな。
引っ張り出された瞬間はどうなる事かと思ったけど
皆に見られず済んだのは幸いだった……にしても
メルちゃんの胸……柔らかかったなぁ……って、不味いッ!!
思い出したらまた“元気”にッ!?
だッ……駄目だッ! 馬鹿な事考えてないで
早く着替えないとッ! ……」
再び“復活”してしまった事に大慌てして居た。
一方、女性陣の荷馬車内では……
◆◆◆
「また皆で来たいですね~」
そう言ったマリアに対し
エリシアは……
「だねぇ~っ! ……ま、主人公っちは“大変そう”だけどね! 」
「え? 何がですか? 」
「それはね~……秘密ぅ~っ! 」
「え~! 教えてくださいよ~!
メルちゃんも絶対に気になってますって~……
……ね! メルちゃん? 」
「へっ? ……は、はいっ! 」
一方、湖の畔では……
◆◆◆
「お父さん……私達はお父さんのお陰で
民達と共に元気に暮らしています。
……“政令国家”って言う、お父さんが見たら大喜びしそうな
素敵な所で、とっても幸せに暮らして居ます。
今、私達がそう出来ているのは
お父さんが身を挺して皆を守ってくれたから
ありがとう、お父さん……また、会いに来るから。
お母さん……私、先に着替えてくる」
涙を拭いながら少し足早に荷馬車へと向かったマリーン
一方、マリーナは……
「ええ、私も後で行きますわ……
……貴方、娘も少しずつ強くなる努力をしています
そうする事が出来て居るのも、きっと貴方のお陰ですわね。
それから……政令国家と言う国は、私達を
国政へと参加出来るまでに執り成して下さいました。
貴方ならきっと
とても喜んで下さったでしょうね……って
いけませんわね、貴方が嫌いな泣き顔を……でも
今日だけは……お許しに……成って下さいね……ッ……」
そう湖へと告げた彼女は
直後、静かに手を合わせると……その手に顔を埋め
暫しの間、最愛を想い泣いた。
◆◆◆
再び女性陣の荷馬車内
湖から戻ったマリーンは
少し急ぎ気味に着替え始めて居た。
一方、そんな彼女の横でメルは……
「あのっ……私、主人公さんが心配で……」
と言った。
直後、そんな彼女の発言にマリーンは……
「そう言えば“巨龍騒ぎ”で有耶無耶になってたけど
メルちゃん確か“主人公の調子が悪い”って言ってたわよね? 」
「はいっ……その、私っ……もし、主人公さんが
“一年前”みたいな事に成っちゃったらって思うと心配でっ……
……わ、私っ! ちょっと確認してきますっ! 」
「分かったわ! 私も着替えたら直ぐに行くから! 」
直後
荷馬車を降りたメルの背中に向けそう言った……一方
そんな二人を見つめて居たエリシアは
僅かに“意味深”に……
「ほうほう? ……これは主人公っち
“別の意味で”大変だなぁ~っ……ふふふ♪ 」
と言った。
そしてこの直後、発言の真意を
二人から訊ねられるも……
「フッフッフッ……秘密ぅ~! 」
そう言って誤魔化したのだった。
一方……一人荷馬車で大慌てして居た主人公は
“尚も”……
◆◆◆
「さ、最悪だ……着替え終わってもまだ“元気”とか」
“危機的状況”に在った。
そして、この直後
状況は更に“悪化”する事と成る。
「たッ……確かにメルちゃんの事は気になるし
正直“タイプ”ではあるけど、それにしても……って。
だ、誰か来るッ?! あ、あれは……メルちゃんッ!?
ヤバいッ! は、早く鎮まってくれッ! ……」
酷く慌てて居た主人公
直後、彼の荷馬車へと辿り着いたメルは
扉越しに……
「あ、あのっ! 主人公さん……大丈夫ですかっ??
先程体調が優れないご様子でしたので……」
「へッ?! ……あ、ああ大丈夫ッ!!!
ちょっと立ち眩みがしただけだからッ!
い、今は“断じて”何とも無いからッ! 」
“本当に何とも無くなって欲しい”
そう、心の底から願って居た
主人公の気持ちを知ってか知らずか……もう一人の“彼”は
尚も“ハイテンション”なままであった。
「で、でもっ……もしもの事があったら大変ですっ!
私の治癒魔導では不足かも知れませんが
応急処置位にはっ! ……」
「へッ?! ……い、いや!
だって大丈夫なのに無駄に技を消費するのも……ねッ?! 」
「き……気を使わないでくださいっ!
それに、新しい装備の力を試す事だって出来ますしっ!
と、兎に角……一度入りますっ! 」
「な゛ッ?! ちょっと待ってぇッ?! 」
瞬間、有無を言わさず荷馬車の扉を開けたメル
そして、そのまま荷馬車へと乗り込むと……
「主人公さん……何とも無いのなら
何でお腹を抱えてるんですかっ?!
やっぱり……何処か辛いんですねっ?!
い、今助けますからっ! ……」
「い゛ッ?! いやこれは、そのッ! ……」
「大丈夫ですっ! ……治癒魔導で治しますからっ!
手をどけてくださいっ! 」
「ち、違うって! お腹が少し冷えただけだからッ!! 」
「……だとしてもですっ!
主人公さんが苦しい時は私が助けるんですっ!
だから、早く手をどけてくださいぃぃぃっ!! ……」
そう言うと彼女は彼の手をグイグイと引っ張り始めた
そして……
「えッ? ちょッ!? ……メルちゃんッ?!
や、やめッ……って、嘘だろ!?
力……強い……ッ!? ……」
主人公が彼女に力負けした理由は
単に主人公の“物理適性の低さ”が原因であった。
だが……この状況に於ける問題は
“其処”では……無い。
「えいっっ!! ……へっ?
あっ……あのっ……そのっ……」
「……ちッ、違うんだッ!
こッ、これはそのッ……あの……さ、魚が入っちゃってて!
い、家で飼おうかな~って……あははは……」
「きゃああああああああっっっっっ!!! 」
この直後
彼女の悲鳴を聞きつけ集まって来た女性陣全員から
“ハイテンション”な姿を見られてしまった主人公。
彼が……あらぬ“誤解”も含め
元の距離感で接して貰えるまで
実に一週間以上を要したと言う。
===第三〇話・終===




