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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第一章

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第三十話「楽しい湖ハプニング?! 」

<――ディーンと仲良くなるきっかけでもあった

“魔物討伐”の日から数日後の事。


ヴェルツでは――>


………


……



「……それにしても

メルちゃんの新しい装備、おどろく程似合ってるよ。


売り文句通り、まさに“上級魔導師様”って感じだ! 」


「ほ、本当ですか?! ……嬉しいですっ! 」


「……でもそうなると

私の兜も早く完成しないかなぁって思っちゃいますね」


<――と、指で兜のツノ部分を表現しながら

完成を待ちわびて居る様子のマリア。


……てか

安直なその“動き”がちょっとだけ可愛いと思った――>


「……急いではくれるらしいけど、ドワーフ製の装備は

本来、凄い手間と時間を掛けて

名のある戦士とかの為に制作される装備だから

ある程度時間が掛かるのは覚悟しておいた方が良いかもな。


どうする? ……完成するまでの間

マリアはなるべく戦闘には参加しないでおくか? 」


「う~ん……A級の依頼までなら然程ですけど

S級からはちょっと怖いかもです。


……でも、何でいきなり戦闘の話に? 」


「いや、メルちゃんに装備プレゼントしたのは良いんだけど

簡単な敵だと何もしない間に終わりそうで

メルちゃんがつまらないんじゃないかなって思ってね。


何か丁度良い依頼を受けてみたいんだけど……」


「あのっ……私の事なら気にしないで下さいっ!


もしもの為の装備ですし、そもそも回復術師ヒーラーが必死になる時って

多分“大変な状況”ですから……」


「それもそうだね……とは言え

今日は大臣としての仕事もお休みだし

じっとしててもつまらないから……久しぶりにギルドに行ってみよう! 」


<――と、軽い気持ちでギルドへと向かった俺達。


だが“肩慣らし程度”の簡単な依頼を探して居た


その時――>


………


……



「おぉぉぉぉぉぉっ! 主人公っち~~~~っ!!! 」


<――突如として俺の名前を叫び

尋常成らざる興奮状態、つ凄まじい勢いで走り寄ってきた女性。


それは、言うまでも無く“エリシアさん”だった――>


「ぬわっ?! ……エ、エリシアさん?! 」


<――現れるなりエリシアさんは

驚き、った俺の腕をがっちりと掴み――


“い……一年ぶり……薬草取りぃ……

早くぅ~っ……準備……しろぉぉぉ~っ!! ”


――と、ホラー映画顔負けの雰囲気をかもし出しながら

そう言った――>


「ちょッ?! 怖ッ!? ってか……有無を言わさずですか!? 」


「……大丈夫です主人公さんっ!

薬草で怪我しちゃったら私が直しますからっ! 」


<――この様子を見た上で何故そんなに乗り気なのかは知らないが

何故かメルちゃんはとんでも無く目を輝かせていた。


嗚呼……これは

完全に“断れない”雰囲気だ――>


「た、確かにそれは助かるけど……」


「じゃあ、切り倒したい木が有ったら私が切りますね~! 」


「いや、何故マリアは唐突に“木こり”の様な発言をッ?! 」


<――とは言え。


幽閉中にエリシアさんと薬草採集に行く約束をして居たが

それ自体かなり前の事だし

現状“待たせまくってる”状態だった事もあり

素直におうじようとして居た俺の発言を――>


「確かにそろそろ約束を果たさ……」


「……よしけってぇ~~いっ!!

んじゃ、早速行こぉぉっ~! ……ほら早くッ! 」


<――完全に遮り

“一を聞いて十を知る”と言うべき速度で“察した”エリシアさんは

飛んだり跳ねたり踊ったりと、全身で薬草採集の喜びを表現していた。


……うん。


可愛いなぁおいッ! ――>


………


……



「所で~っ! ……荷馬車どうする~ぅ? 」


「えっ? ……普通ので良くないですか? 」


「いや、そうじゃなくてぇ~


“何台必要かな~っ? ”


……って思ってね♪ 」


「どんだけ刈り取るつもりですかッ!? 」


「う~ん……満足するまで~っ? 」


「成程“無限”って言う意味ですね分かります……」


「其処まで取っちゃったら次が生えなくなるから駄目だよぉ~?


……って、そうそう! “旧水の都跡地”だけどぉ~

“例の一件”の後、主人公っち達は行った事あるかぃ?

自然って凄っごいよぉ~っ? 」


「いえ、行けては無いですが……どう凄いんです? 」


「そっか……なら今日は水の都に行ってみよう! 」


「そうですね! ……あっ!

なら、マリーナさんやマリーンさんにもお声掛けしてみては? 」


「おぉ~それもそだねぇ~!

マリーナさんには私が連絡入れるから

主人公っちはマリーンちゃんに魔導通信よろしくぅ~! 」


「はいっ! ……」


<――そう意気揚々と返事を返した後

マリーンさんへの魔導通信を繋いだ俺……だが

俺の“連絡不足”が原因か、マリーンさんはとても不機嫌な様子で――>


………


……



「……何よ?

えらく放置してくれるじゃない……何の用? 」


「そ、それはその……も、申し訳有りませんでしたッ! 」


「で? ……どうしたのよ? 」


「そ、それがですね……約一年ぶりに

“旧水の都跡地”にエリシアさんと行く事に成ったんですけど

マリーンさんも誘った方が良いんじゃ無いかって話に……」


「……そう。


お父さんにいろんな報告もしたいし……ついていくわ」


「ほ、本当ですか?! ……では決定と言う事で!


……えっと、マリーンさんは今何処に?

お迎えに上がろうかと思っているのですが……」


「今は居住区だけど……主人公は何処に居るのよ? 」


「ギルドです!

エリシアさんとマリアとメルちゃんも居ます! 」


「そう、なら……ちょっと用事を済ませてから東門に行くから

待ってて貰えるかしら? 」


「分かりました! ……では東門で待ってますね! 」


………


……



「……と、言う事ですので

ずは東門に行きましょうエリシアさん! 」


「そかそか~……んじゃあ東門へレッツゴォ~ッ!

荷馬車は……うんうんっ♪

ちゃ~んと二台あるねぃ! ……これで沢山取れるぞ~っ♪ 」


<――と、エリシアさんが“指差し確認”した荷馬車は

さながら“超大型トラック”とでも形容したく成る程の大きさで……


果たして、俺達は“今日中に帰ってこられる”のだろうか? ――>


………


……



「し、しかし……前回の荷馬車よりさらに大きいですね」


「そそ! ……だって一年だからさ~!

他に護衛してくれそうな人も全員国政に駆り出されてたし~?

色々取りたい薬草が溜まってるんだよねぇ~」


「……まぁ正直、エリシアさんってとんでも無く強いので

一人でも大丈夫だとは思いますけど……」


「ありがと~っ! ……そうなの! それを分かってくれないの~!

秘書官ったら、本っ当ぉ~にウザいんだよ~っ?! 」


<――と、エリシアさんが

悪口を言った瞬間――>


「だれが“ウザい”んです? 」


<――何処からともなく現れた秘書官さんは

エリシアさんの背後でそう言った――>


「ぬわぁぁぁっ?! ……何処から出てきた妖怪秘書官っ! 」


「……誰が妖怪ですか! あれだけ騒げば誰だって気付きますッ!


っと……主人公様、マリア様、メル様

今回も、何卒なにとぞよろしくお願い致します……」


<――そう言って

俺達に深々とお辞儀をした秘書官さん――>


「勿論です! ……責任を持って護衛しますのでご安心下さい」


「お手数お掛け致します……では、エリシアさん?

“日暮れまでには”……必ず、お戻りに成って下さいね? 」


「むぅ~……」


「……もしお戻りに成られなかったら

二度と採集には行かせられませんが……よろしいのですね? 」


「え~っ! ……分かったよぉ~もぉ~っ!

約一年ぶりなのにぃ~……早く行こう主人公っち! 」


「は、はい! ……で、では秘書官さん!

い、行ってきます……」


「ええ……宜しくお願い致します」


<――直後、秘書官さんは更に深々とお辞儀をした。


……ともあれ。


この後、約束通り東門で二人の到着を待って居た俺達は

しびれを切らしたエリシアさんの様子を見守って居た――>


………


……



「まだかなぁ~……む~ぅ! ……二人共遅いっ! 」


<――荷馬車の前でイライラとしている姿は

怒っているのだろうがちょっとだけ可愛くもあった。


……まぁ、その事を今伝えたら

怒りの矛先が俺に向きそうだが……ともあれ。


この後、一足早く合流したマリーナさんは兎も角として

少し遅れて現れたマリーンさんは

俺の顔を見るや否や――>


「“本当に”……久しぶりね、主人公」


<――と、見るからに不機嫌な様子をかもし出した。


だが、明らかに怒っている事を察した俺がもじもじとしていると――>


「むぅ~……挨拶とか良いから早く乗った乗った~っ!

はい出発ぅ~! ――」


<――と、俺達を無理やり荷馬車に押し込んだエリシアさん。


ともあれ……直後“旧水の都跡地”を目指し

少し“急ぎ足”で出発した荷馬車内では――>


………


……



「……いやぁ~っ! 久しぶりに採集に行けると思うと

今からワクワクが止まらないよ~っ! ……特に!

主人公っちが“消し飛ばした”旧水の都跡地は

本当に凄いんだよ~っ? 」


「じ、事実ではありますけどもっと言い方を……」


<――エリシアさんの発言に慌てつつそう言った俺

だが、マリーンさんはなおも不機嫌で――>


「でも……確かに消し飛ばしたわよね? 」


「うぅっ……何か……本当にすみませんでした。


放置も……水の都の事も……」


<――居心地の悪さが限界突破した所為もあり

露骨な程にテンションが下がってしまった俺に対し

マリーンさんは――>


「……私を放置したお返しのつもりで強く言っただけだから

そんなに落ち込まないで良いわ……けど、言い過ぎね。


ごめん……お父さんもあれで良かったんだと思う」


「いえ、俺の方こそ……」


<――少しだけしんみりとした荷馬車内の空気

すると、エリシアさんは――>


「むぅ~っ……暗い、暗い、暗~~~~~いっっ!!!


二人共……そんな暗い気分が吹っ飛ぶ位

“今の”水の都跡地は素敵な事に成ってるんだからねぇ~?


って! そろそろ見えて来たぞぉ~っ!!


あ・れ・が! “今の姿”だ~っ!! ――」


<――直後

そう言ってエリシアさんが指差した先にあった光景は――>


………


……



「嘘っ?! 湖が……元通りに成ってる?! 」


<――マリーンさんが驚くのも当然だ。


俺達の目に映った水の都跡地の姿は、俺が想像していた様な

痛々しい“クレーター”では無く……底が見える程に透き通った

みずうみ本来の姿へと変貌をげて居たのだから――>


………


……



「ねっ? 凄いでしょ~!?


まぁ、人が住んでないって言うのもあるけどぉ~

自然の力って本当に凄いんだよ~っ♪

やっぱり、良い景色だ~っ♪ 空気も美味しい気がする~っ♪ 」


「けどそれにしても、こんなに見事に復活してるなんて

一体どうやって? ……まさかエリシアさんが?! 」


「……んな訳無いじゃん主人公っち!


そもそも、みずうみって言うのは元々雨が溜まったりとか~

地下水が滲み出たりとか~……そんな感じで出来てるから

環境が整ってたら、直ぐに元に近い形には成るんだよん~?


ま、それにしても奇跡って感じだけどねぇ~っ♪


っと着いた~っ! ……ってぇ事で!


採集ぅぅぅぅぅっ! スタートォッ! ――」


<――言うや否や


目にも留まらぬスピードで荷馬車を飛び降り

薬草採集を始めたエリシアさん――>


………


……



「早っ?! ……って、それにしても綺麗な景色だ」


<――と誰に言うでも無く発した俺の言葉に対し

マリーンさんは感慨深い様子で――>


「ええ……もう一度水の都を再建出来そうな程ね」


<――そう答えた。


だが、マリーナさんは――>


「……確かに美しい光景ですが

今となっては政令国家での生活の方が圧倒的に民達も幸せでしょう。


とは言え……それでも一度、民達に

この風景を見せたいのも事実ですわね……」


「……そうねお母さん。


本来深い筈のこの湖が底まで見える程透き通っているなんて

見て! ……素敵、魚が泳いでる。


って……何で魚がいるのよ?! 」


<――とおどろき俺の顔を見たマリーンさん。


だが、その疑問に答えられそうな“唯一の人物”は――>


………


……



「えぇぇぃっ! ……とぉっ! ……ハッ?!

これはめちゃくちゃ美味しいキノコじゃないかぁぁっ! 」


………


……



「そ、その……“一番知ってそうな人”が採集に夢中なので

あ、後で改めて聞いてみましょうか……」


《――エリシアを眺めつつ

半ば諦めた様にそう言った主人公の少し先では

メルとマリアがみずうみの水に手をけ、楽しそうに話して居た――》


………


……



「……本当に透き通ってますね~

こんな湖に入ったら気持ち良さそうですっ♪ 」


「あ~……でも水着がないと無理ですよ?


って……そうだ!

メルちゃん、今度一緒に買いに行きませんか? 」


「はいっ! ……楽しみですっ♪ 」


《――などと楽しそうに話して居た二人


だが……そんな二人に対し

マリーンとマリーナは口を揃え――》


「ねぇ! ……水着って何? 」


「私も教えて頂きたいですわ? ……新しい流行り物か何かかしら? 」


《――と言った。


“えっ? いえ、流行りとかそう言う類いの物では無くて……”


と、返答に困っていたマリアの様子に気付き

会話に参加した主人公はわずかに“興奮”した様子で

二人に対し“ある”質問をした――》


………


……



「つ……つかぬ事をおうかがいしますが!


そ、その……お二人は泳いだりする時……もしかして

その……なっ、何も身に付けずに……その、泳がれたりとか……」


「……当たり前じゃない!

何か着てたら水吸って重たいし乾くまで相当時間掛かるじゃない!

凄く効率が悪いわよ……主人公は着たまま泳ぐの? 」


《――主人公の質問に対しそう答えたマリーン。


だが、更に興奮気味に――


“あ、あの! ……それってもしかして

男が居ても……その、関係無かったり……? ”


――とたずねた主人公かれの姿に

メルは――


“主人公さん、鼻の下が伸びてます……むぅ”


――と、頬を膨らませた。


そして……動揺する主人公に対し

マリアは更に追い打ちを掛けるかの様に――


“あーあ、嫌だ嫌だっ! 結局身体目当てですか~?

最低ですねぇ~? 悪い男ですねぇ~? ”


――そう言って

主人公の動揺を更に悪化させ――


“いぃっ?! そ、そんな意味で聞いたんじゃ無いって!! ”


――動揺を超え

最早もはや“挙動不審”とも言うべき状況におちいった主人公に

マリーンは――》


………


……



「……流石に異性がいる場では泳がないわ?

普通、女は女……男は男で別れて泳ぐものでしょ?


……って言うか主人公。


もしかして私の裸だけじゃ無くて

まさか……お母さんの裸まで想像してたんじゃ?! 」


「ち、違う! ……誤解だッ!!

そ、そりゃあ二人共ナイスバディだし

想像すれば綺麗な姿だろうなぁとは思うけど! ……って!?

こっ、この“想像”って言うのは全く違う意味で! ……」


<――どうやら俺は“ドツボ”にはまったらしい。


女性陣はどんどんと詰め寄って来ている。


やばいッ!! ――>


………


……



「何か本当に……すみませんでしたぁぁぁっっ!! 」


<――完全なる土下座をした俺。


ともあれ……その後

若干の不信感を全員から感じつつも話をそらした俺は――>


「……は、話を戻しますが

お二人が水着を知らないのは意外でした! 」


<――変な汗を大量にかきながらそう言った。


だが、マリアは冷静に――>


「……そうは言いますが、よく考えたら

湖も海も近くにない政令国家で

ちゃんと水着文化が浸透してる方が不思議では? 」


<――と、疑問をてい

そんなマリアの疑問に答える様に

メルちゃんが俺達の知らない事実を教えてくれた――>


「それは多分……公衆浴場があるからですね! 」


「えっ? ……そんなのあるの? 」


「はいっ! ……ヴェルツで過ごしているとお風呂は自由に入れますが

そもそも、あれって凄い事なんですよ? 」


「そうだったのか……当たり前だと思ってた」


「当たり前じゃ無いですよ? ……お家に自分用のお風呂が付いてるのって

ほとんどの場合“お金持ちのお家”ですから!


……なので、よく考えたらミリアさんがいつもお肌すべすべなのは

そう言う理由かもしれないですねっ! 」


「そうだったのか……確かにミリアさんいつも肌綺麗だもんね!


……っと、そう言う訳で

政令国家には“水着”と言う物がありまして、泳ぐ時とか

公共浴場を使用する際に着て、水に入っても重くならない作りで

隠したい部分を隠せる布で出来た物があるんですよ! 」


<――と言う俺の説明にとても興味を持ってくれた様子の二人


引き続き二人に対し説明を続けていたその時

泥だらけのエリシアさんが走って来て

“ある意味”ベストなタイミングで――


“お~い皆~っ! 泳ごうぜぃ~! ”


――と言った。


だが――>


「……い、今丁度話してたんですが

皆さんも俺も水着が無いので、もしどうしてもと言うなら

“俺だけ帰る”……とかしないと駄目では? 」


「チッチッチ……そう言うだろうと思ってぇ!


はいッ――


――この“葉っぱッ! ”」


「……いや、ただの葉っぱにしか見えないんですが。


一体これをどうしろと? 」


「これをねぇ~……こうしてこうしてこうっ!


ほら~っ! ……出来たぁ~っ♪


どう? 水着みたいでしょ~? 」


<――と、あっと言う間に葉っぱで水着を作り出したエリシアさん。


だが、形こそ確かに水着ではあるが

強度についての心配をした俺に対し――>


「……この葉っぱ、水に浸かると丈夫になるんだよ?

不思議な葉っぱでしょ~っ♪


あっ、それとも……主人公っち的には

“強度に不安が有る方が”……良かったかなぁ~? 」


「い、いえそんな事は……ゴホンッ!

とっ……取り敢えずッ!

この葉っぱで泳げるのは分かりましたけど

そうなると次は着替える場所が……って! 」


「クックック……主人公っち。


何故、荷馬車が“二台”あるのか気付いた様だねぃ~♪ 」


「……ま、まさか其処まで考えていたとは。


ですが……俺、手先がとんでも無く不器用なんで

自分の水着を作れる自信が無いんですけど……


……エリシアさんにお願いしても良いですか? 」


「……そう言う場合を想定して

もう作っておいたよぉ~……はいこれっ! 」


「おぉ……凄い!

てか、エリシアさん……服飾の才能も有るんですね」


「ん~? 褒めても何も出ないぞ~?


……さぁさぁ! 兎に角早く着替えておいでぇ~っ! 」


「はい! じゃあ俺はこっちの荷馬車で着替えますね! ……」


………


……



「凄い、丁度良いサイズだ……ウエスト部分に“伸縮性”まで有るとは

流石、自然に詳しいエリシアさんって感じだな。


っと……皆着替え終わったかな? 」


《――同時刻


もう一台の荷馬車内では、凄まじい勢いで

全員分の水着を作成して居たエリシアの姿があった――》


………


……



「よぉし! 全員分出来たよぉ~っ♪


……はい、これがメルちゃん~


これがマリアちゃんで~これがマリーンちゃん~

これがマリーナさんだね~っ♪


私のは……さっき作った奴っ!


……どう? 似合うでしょ?? 」


「……エリシアさん細っ! スタイルいいですね~」


「ん? ……私から見ると

マリアちゃんみたいな体型が羨ましいんだよねぇ~


……ちょっと“其処の肉”寄越よこせぇぇ~」


「もぉ~っ! エリシアさんのエッチ~っ! 」


《――じゃれ合うエリシアとマリア。


そんな中――》


「ど……どう……ですかっ? ……」


《――そう

緊張気味にたずねたメル――》


「おおぉっ!? ……メルちゃんナイスバディだねぇ~!

これは、主人公っち絶対に悩殺されるぜ~! 」


「へっ?!! ……そのっ、あのっ……はぅぅぅ……」


《――と、照れるメルの横では

マリーンとマリーナが初めての水着に感動し――》


「これが水着……確かに便利ねお母さん! 」


「本当ですわね~! ……これは葉っぱですけれど

もっと色々な素材で様々なデザインが有るのでしょうし

是非とも手に入れたいですわね~♪ 」


《――と、夢を膨らませて居た二人。


一方……既に着替え終わって居た主人公は、湖の前で一人

転生前を思い出し、感慨かんがいふけって居た――》


………


……



「……しかし、いい天気だな。


こんな最高の条件で男は俺一人……おまけに

嘘みたいに綺麗な女性ばかりと水着姿でこんなイベントとか……


……あの頃なら考えられなかったな。


今、俺は……間違い無く世界で最も幸運だ。


いやっほぉぉぉぃ!!! 異世界最高~ッ! 」


《――と、浮かれて居た主人公かれの背後には

水着姿の女性陣がずらりと並んで居た――》


………


……



「完全に聞こえてますよー……主人公さん? 」


「なっ?! マリア?! ……い、いや俺はただ!!


って……皆さん凄く素敵です!

何だか本当に幸せな気分に……あっ。


なっ……何でもありませんッ!!! 」


《――と慌てて居た主人公かれに対し

エリシアは一言――


“……悩殺されそう? ”


――と言った。


そして、そんな彼女に対し――》


「えっと……エリシアさんは本当に年齢が分からないです」


「ふむ……それ褒めてるぅ~?

それとも……“胸のサイズ”の話してる? 」


「い、いやその……

……珍しく持って来てる“魔導の杖”を構えながら聞かないで下さい。


どう考えても褒め言葉なんで……」


《――突如として訪れた“死の危機”をギリギリで回避した主人公。


だがこの後、次々と訪れる事と成った女性陣からの質問攻めに――》


………


……



「じゃあ私はどうですか~? 」


「あ、ああ……マリアはやっぱりモデル体型だな」

(出来るだけ平常心で褒めるぞ……)


「そ、そうですか? ……有難うございます」


「わ、私は……どうですかっ?! 」


「……凄く似合ってるよ!

それに、褐色の肌が健康的で素敵だね! 」

(ぬ、ぬぉぉっ?! メルちゃんは俺には刺激が強過ぎるッ!

ぐっ!!……冷静に、冷静に……)


「ほ、本当ですかっ?! 恥ずかしかったけど、着てよかった……」


《――内心“いっぱいいっぱい”な主人公とは裏腹に

マリアもメルも彼の褒め言葉にとても喜んで居た。


そんなメルの横でマリーンは主人公に対し――》


「ねぇ? ……私も当然綺麗よね? 」


「い、いや……そんな言い方しなくても半端無く綺麗ですよ!

……世の男性全員を虜にしそうなレベルです! 」

(こ、このナイスなスタイルで

水の都では何も身にまとわず泳いでたんだよな……ゴクリッ。


だ、駄目だッ! 冷静さを忘れるな俺ッ! ……)


「べっ……別に全員虜にしたいわけじゃないし!!

って……聞いてるの? 主人公」


「へっ? ……あ、はい! 勿論ッ! 」

不味マズい……冷静さが失われつつある……)


「ですが……私は少し恥ずかしいですわね」


「おぉ……とてもお似合いになってます!

流石はマリーナ様、女王の風格と言いますか……気品があります! 」

(ぐッ!! ……恥ずかしがって“体をくねらせる”のを止めてくれッ!!

セクシー過ぎるッ!! ……)


「まぁ主人公様ったら! ……褒め上手ですわね♪ 」


「事実ですよ~……って、早速湖に入ってみます? 」

(湖に入れば少しは水着が目立たなく成る筈……)


「……ならおさきぃ~っ!!


トウッ! ――」


《――言うや否や

湖に勢い良く飛び込んだエリシア――》


「って早っ! ……俺達も入りましょうか! 」


《――と皆をうながし、危機を脱したかに見えた主人公だったが


そんな中、メルだけは彼のそばから離れず――》


………


……



「主人公さん……あのっ……そのっ……手を繋いでてくださいっっ!

私……泳げなくて……」


「……そうだったのか。


ああ、分かった……ならゆっくり入ろうか」


《――暫くの後、皆が楽しそうに湖を泳いで居た一方で

主人公とメルはいまだ浅瀬に居た――》


………


……



「ふ、深いですっ! …… 」


「おわっ!? ……い、今胸が当た……い、いやッ!


だっ……大丈夫ッ!

手を離したりしないから! ……」


《――“何かに耐えながら”そう言うと

メルの手を先程よりも強く握り直した主人公。


だが、それでも怖かったのか――》


「も、もうこれ以上は怖いですっ! ……」


「ひゃぇぃ??!! ……」

(半端なく“当たって”るっ?! ……って不味マズいっ!

もし今“反応”してしまったら……)


「ど……どうしたんですかっ!?

まさか……主人公さんも怖いんですか?! ……」


「へっ? ……そ、そうじゃなくて!

そのっ……って、そうだ! 足に魚が当たってびっくりしただけで! ……」

(“本当の理由”なんて言える訳無いよ……)


「わ、私……もう怖くて限界です……もっと浅瀬に戻りたいですっ……」


「うん、そうだね……やっぱりもう少し浅瀬に……ハッ」

(ヤバい……“反応”してるッ!?

……不味い、このままだと最悪な結果に……)


「さぁ、早く戻りま……きゃっ!? 」


《――瞬間

足先に小魚が触れた事に驚いたメルは

更に主人公の腕を強く引き寄せた――》


「はうっ?! ……」

(一刻も早くおさえなきゃ……こう言う時は

何か気持ち悪い物を想像して……)


「主人公さん!? ……目をつぶってどうしたんですか?!

まさか気分でも悪くっ?! もしそうなのでしたら早く浅瀬にっ!! ……」


《――みずからも恐怖を感じて居た一方で

主人公かれを心配し、必死に浅瀬の方へと引っ張り始めたメル。


だが――》


………


……



「……ちょちょちょッ?!

ちょっと待ってぇぇ~~~っ!? 」

不味マズいっ! ……まだ元気過ぎるッ!

気持ち悪い物! 気持ち悪い物! ……


……ヤバい、しずまらないッ!! )


「み、皆さんっ!


……主人公さんの気分が優れないみたいなんですっ!

たっ、助けに来てくださいっ!!! ……」


「ち、違っ! ……皆を呼ぶのだけは!!


……って。


水から上がっちゃ駄目ぇぇぇっっ!!! ――」


《――彼女メルの必死の呼び掛けに慌てて駆けつけた女性陣。


直後、女性陣の悲鳴がみずうみ一帯に響き渡った――》


「終わった……何もかも……」


………


……



「主人公さん!……あれっ!! 」


《――放心状態の主人公に対し

慌てた様子でそう言ったのはマリアだった――》


「ち、違う! これには訳が……って。


……何だっ!? 」


《――マリアが指差したのは

主人公……の後ろに見える空であった。


直後、言われるがままに慌てて振り向いた主人公の視線の先には

巨大な“緋色のドラゴン”……直後

明らかに一行の方へと進行方向を変えたかと思うと――》


「あれはドラゴン?!! ……何でこんな所に?!

って、何か“見覚えが有る”様な……」


………


……



「ドラゴン……急降下……彼処あそこに降りて……」


………


……



《――直後

一行のそばへと着地したドラゴン……そして


その背中から降りて来たのは……ディーン隊の隊員、ライラであった。


彼女は、主人公を見るなり――》


「……主人公さん……こんな所で……何……してるの? 」


「な、何って……ライラさんこそ、何でドラゴンと飛んでたんですか? 」


「この間……この子食べ過ぎた……から……その消化を助ける運動」


「あぁ! そう言う事でしたか!

って! この間は本当にお世話になりまして! ……」


「いい……この子も喜んでた……それに……

ディーン様も楽しんでた……から……良い。


私……もう帰るね……ドラゴン、飛翔……」


《――そう言い残しドラゴンの背に乗ると

政令国家のある方角へと帰って行ったライラ。


その一方で、呆気あっけにとられて居た女性陣に対し――》


………


……



「……そう言えば皆さんに説明して居なかったですよね。


少し前、巨大な戦艦で現れた“ディーン隊”の事はご存知かと思いますが


その隊員の一人で、彼女も一応“傭兵”と言う扱いなのですが

ご覧になった通り“ドラゴンを使役して居る”女性でして……」


《――そんな主人公の説明に

マリーナは――》


「政令国家にも恐ろしい傭兵が居る物ですわね……ただ

優しそうな方には見えましたが……」


「ええ……普段は使役にる負荷の所為で

ほとんど睡眠を取っている方なので

俺自身もあんなに長く喋ったのが初めてって感じですが……」


「あっ……そう言えば私の兜の材料を取りに行った時

“ディーン隊の皆さんに協力して貰った”って……


……もしかしてあのライラさんも? 」


「そうそう! ……その時

材料以外の部位をドラゴンが一瞬で食べたんだけど

どうやら、今のはその“消化不良”を解消する為の

運動だったみたいだね……」


《――マリアに対し

そう説明する主人公の言葉を聞いた瞬間、メルは

“ド……ドラゴンさんも消化不良に成るんですね”

と言った――》


「……言われてみればそうだね、っと……夕焼け空に成って来た。


そろそろ帰らないとエリシアさんが怒られちゃいますし

取り敢えず……着替えて帰りましょうか! 」


「え~っ……もっと遊びたいのにぃ~

でも、秘書官怒ると怖いし~……仕方無い。


帰る準備しよっかぁ~っ……」


「ええ、そうした方が良いです!


では皆さん、着替え終わったらそのまま帰りましょうか! 」


《――そう主人公がうながすと

マリーンとマリーナは――》


「私達は……先にお父さんに色々報告してから着替えるわね」


「ええ、私も娘と同じ様に致しますので……」


「……では、俺達は着替えてますからごゆっくりどうぞ!

では後ほど! ……」 


《――そう言い残し荷馬車へと戻った主人公の背中に向け

マリアは――》


「主人公さん……覗かないでくださいね! 」


「覗かないわ!! 」


………


……



《――直後

荷馬車に戻った主人公は“例の件”を思い出して居た――》


「たっ……たっ……助かったぁ~っ!!

ライラさんマジで最高のタイミングだったな!


……メルちゃんは怖がってたから仕方無いけど

押し当てられた瞬間、柔らかくてつい……って不味マズいッ!!

思い出したらまた元気に……駄目だッ!

馬鹿な事考えてないで早く着替えないと! ……」


《――直後

急いで着替えを済ませようとした主人公。


一方、女性陣の荷馬車内では――》


………


……



「また皆で来たいですね~」


《――そう言ったマリアに対し

エリシアは――》


「まぁ、主人公っちは大変そうだけどねぇ~? 」


「えっ? 何がですか? 」


「それはね~……主人公っちの為にぃ~秘密っ! 」


「え~っ! 教えてくださいよ~っ!

メルちゃんも絶対に気になってますって~……ね! メルちゃん? 」


「へっ? は、はい! 」


《――その一方

湖のほとりでは――》


………


……



「お父さん……私達はお父さんのお陰で元気に暮らしています。


政令国家って言う、お父さんが見たら大喜びしそうな

素敵な所で……とっても幸せに暮らして居ます。


……今私達がそう出来ているのは

お父さんが身をていして皆を守ってくれたから。


ありがとうお父さん……また、会いに来るから。


お母さん……私先に着替えてくるね……っ……」


《――マリーンは一筋の涙を拭いながら

少し足早に荷馬車へと向かったのだった。


一方、マリーナは――》


「ええ、私も後で行きます。


……貴方、娘も少しづつ強くなる努力をしています

そうする事が出来ているのも、きっと貴方のお陰ですわね。


それから……政令国家と言う国は

私達が国政へと参加出来るまでにり成して下さいました。


貴方なら……きっと、とても喜んで下さったでしょうね。


って……いけませんわね

貴方が嫌いな泣き顔を見せてしまいそう……でも

今日だけは……お許しに……成って下さいね……ッ……」


《――そう言うと、みずうみに向かい静かに手を合わせ

その手に顔を埋めながら一筋の涙を流したのだった――》


………


……



《――女性陣の荷馬車内

少し急ぎ気味に着替え始めたマリーンの横で、メルは――》


「私、主人公さんが心配なんです……」


《――と言った。


そんな彼女に同意する様に、着替え中のマリーンは――》


「……そう言えば

“ドラゴン騒ぎ”で有耶無耶うやむやになってたけど

メルちゃん“主人公の調子が悪い”って言ってたわよね? 」


「そうなんです……私、もし主人公さんが

“一年前”みたいな事に成っちゃったらって思うと心配で……


……私、ちょっと確認してきますっ! 」


「ええ! ……私も着替えてから行くわね! 」


《――と、荷馬車を降りたメル。


一方、その後姿を見つめて居たエリシアは“意味深”に――》


「主人公っちは“別の意味で”大変だなぁ~……ふふふ♪ 」


《――直後

この意味深な発言をマリアとマリーンにたずねられるも――》


「フッフッフ……秘密ぅ~! 」


《――そう言って、誤魔化したのだった。


そして――》


………


……



「最悪だ……着替え終わってもまだ“元気”とか。


たっ……確かにメルちゃんの事は気になるし

かなりタイプだとは思うけど、それにしても……って、誰か来る?!


あ、あれは……メルちゃんっ!?


……ヤバいっ!


早くしずまれっ! ――」


《――酷く慌てて居た主人公。


一方のメルは、扉越しに――》


………


……



「……あ、あのっ!

主人公さん……大丈夫ですか?

先ほどは体調が優れないご様子でしたけど……」


「へっ?! ……あ、ああ大丈夫!!!

ちょっと立ちくらみがしただけだからッ!


……い、今は“断じて”何とも無いからッ! 」


<――正直

早く本当に“何とも無くなって欲しい”と

心の底から願って居た俺の気持ちを知ってか知らずか……


……もう一人の“俺”は“ハイテンション”なままだった。


嗚呼、最悪だ――>


………


……



「で、でもっ……もしもの事があったら大変ですっ!

私の治癒魔導で一応……」


「へっ?! ……い、いや!

だって大丈夫なのに無駄に技を消費するのも……ね?! 」


「き……気を使わないでくださいっ!

それに、新しい装備の力を試す事だって出来ますし!

兎に角、一度入りますねっ! ――」


「ちょっと待ってッ?! ――」


《――瞬間

有無を言わさず荷馬車の扉を開けたメル。


そして、そのまま乗り込むと――》


………


……



「主人公さん、お腹をさえて……やっぱり!

何処か辛いんですね?! 今、助けますからっ! ……」


「い、いやこれは……その……」


「大丈夫です……治癒魔導で治しますからっ!

手をどけてくださいっ! 」


「……ち、違うって! お腹が少し冷えただけだからっ!! 」


「だとしてもですっ!

折角主人公さんが買って下さった装備で治せるんですから

早く手をどけてくださいぃぃぃっ!! ……」


《――そう言いながら

彼の手をグイグイと引っ張り続けたメル。


そして――》


「えっ?! ……ちょっ!? ……メルちゃん?!

嘘だろ……ち、力強ちからつよッ!? ……」


《――無論、メルの力が特別強い訳では無く

単に彼の“物理適性の無さ”があだと成っていただけではあった。


だが、服越しとは言え……この直後


メルにとっても“ハイテンション”な姿を

しっかりと見られてしまった主人公は――》


………


……



「えいっっ!!


……へっ?


あっ……あの……」


「ち、違うんだ! ……こ、これはそのっ!!!

あの……魚が入っちゃってて……家で飼おうかな~って……」


「きゃあああああああああああっ!!! 」


………


……



《――この後、悲鳴を聞きつけ集まって来た女性陣全員に

“ハイテンション”な姿を見られてしまった主人公は……


……あらぬ“誤解”も含め

普段通りに接して貰えるまでに一週間以上を要したと言う――》


===第三十話・終===

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