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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第一章

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第二十九話「楽しいギフト大作戦!!」

《――釈放後、防犯の意味も

一人で政令国家を散策して居た主人公。


暫くの後……散策を終え、ヴェルツに戻ると

仲間に対し、町を行き交う人々の服装や流行り物など

幽閉前と大きく変わった点についての話を始め――》


………


……



「……何気なにげ無く町を散策して分かったけど

マリアの言ってた“江戸時代”ってのが何となく分かった様な気がするよ。


それに、色んな所でゲームの話してたり実際に対戦してる人達が居たり

中には“賭け事”に使ってる人まで居てビックリしたけど

此処まで流行ってるとは思って無かったよ……」


《――と、興奮した様子で話す主人公に

メルは――》


「……はいっ! そのお陰も有って

町の人達の主人公さんに対する印象はとても良く成りましたし

発案料も定期的に入ってくるので“お財布的にも”安心ですっ! 」


「んまぁそれはそうなんだけど……とは言え、かなりの金額だから

個人的にはちょっと怖い位かなって思ってたり……」


《――などと話して居た二人、だがそんな中

マリアは痺れを切らした様に――》


「あのぉ~っ……主人公さん?

いい加減そのお金で、ずっとそばに居た私達に

“お礼のプレゼント”とか買って下さらないんですかねえ~? 」


「……あっ!!

いつもなら突っ込み入れる所だろうけど、確かにマリアの言う通りだ。


てか、気が利かなくてごめん

流石に高額過ぎる物だと困っちゃうけど

二人共、何か欲しい物が有ったら言ってね! 」


<――と言う俺の質問に対し

メルちゃんが遠慮した一方で、マリアは直ぐに何かを思いついた。


と言うかむしろ……“それ”が欲しいからこそ

“プレゼント”を要求したのだろうか? ……いずれにせよ

この直後、マリアは――>


………


……



「私……決まりましたっ!! 」


「まさか高い宝石とかじゃないだろうな? ……値段によるぞ? 」


<――と、警戒する俺の予想を

“ある意味で”上回る物を要求した――>


「ドワーフ製で、私の装備にピッタリな……“兜”が欲しいです」


「は? ……マジで? 」


「だって……私美人過ぎてモテモテなので

せめて顔を隠せる物が欲しいんですよ! 」


「いや……仮にツッコミ待ちだとしても

美人なのを否定出来ないからツッコミの入れ様が無いんだが? 」


「むぅ……主人公さんが私を珍しく褒めるから照れました!

責任とって下さい! 」


「い、いや……前にも言ったけど実際美人だからね?

ってそれはそれとして……本当に兜が欲しいの? 」


「本当に欲しいです! まぁ……理由は違いますけど」


「そっか……本当の理由、嫌じゃないなら教えて欲しいな」


「い、いえその――


“防具も武器も盾も最高で、私の装備完璧っ! ”


――って思ってたんですけど、頭だけ全く守られて無い事に気がついて

其処から、正直ギルドの依頼を受けるのも怖く感じてて……」


<――何時もならヘラヘラと冗談っぽく話す筈のマリアが

珍しく弱気にそう言った事……この後もマリアはまだ話を続けて居たが

気がついた時には、俺はガンダルフさんに魔導通信を入れて居た――>


………


……



「……ガンダルフさん、急遽注文です」


「何じゃ?! ……主人公か、どうした?

……新しいゲームでも思いついたか? 」


「いえ……マリアの装備に合う兜って作れますか? 」


「ほう? ……“完全体”に仕上げたいのじゃな? 」


「完全体って言うのは良く分かりませんが……マリアの為なんです。


その……可能でしょうか? 」


「うむ! ……ならば直ぐにでも取り掛かるとしよう。


しかし、一度頭の型を取らねば成らんからのぉ

マリア殿に店へ来る様に伝えて貰いたい……それと

マリア殿の装備に使用する材料はちと特殊でな……


……ついこの間、盾で全て使ってしまって手元に無いんじゃよ」


「成程……どうすれば手に入りますか? 」


「ある強力な魔物からしか取れん……まぁ主人公なら余裕じゃろうが」


「マリアの為です……その魔物の生息地域と種類を教えて頂ければ

何としても直ぐに取って来ます」


「……ふむ、それならば詳しい場所は地図を渡すから

それを参考に取りに行く事になるじゃろう……それと

材料は主人公持ちじゃから制作費は少しサービスしてやろう!


そもそも……ゲームで稼がせて貰っておるしのう? 」


「助かります! では後ほど! マリアを送り届ける際に――」


………


……



「――と言う事らしい、マリアは後で一緒に工房に行こうな」


「あ、あの……」


「ん? ……何だ? マリア

まさか、剣も弓矢も槍も欲しいとか言い出すんじゃないだろうな? 」


「い、いえ……注文のあまりのスマートさに

不覚にも主人公さんをイケメンって思ってしまいまして……」


「なっ?! ……ふ、不覚とはいえありがと。


兎に角、マリアの件は解決として……


……メルちゃんは欲しい物、思いついたかい? 」


「わ、私はっ! 魔導力を強化して……そのっ……少しでも

皆さんのお役に立ちたいので、魔導力強化用の……


……ゆ、指輪をっ!! 」


<――そう言った瞬間

メルちゃんは何故か頬を赤くした――>


「えっと……指輪だけじゃなくて

アクセサリ系装備のフルセットでも構わないよ?

と言うか、メルちゃんは本当に欲が無いね……


……何だったら普通に宝石の指輪とかでも良いよ? 」


「ちょっと主人公さん! ……私との扱いの差! 」


「いや……マリアの場合はドワーフ製装備だろ?

多分だけど、メルちゃん用の高級な装備を

フルセット揃える金額の倍以上掛かるぞ?


後、金額云々じゃ無くてマリアにも他に欲しい物があるなら

買える範囲なら頑張るから他に欲しい物が有るなら言ってくれよ? 」


「い、いや……他に欲しい物は無いですけどっ!

でも、確かに本来ドワーフ製の装備はその位はしますよね……」


「だと思うけどね……で、話を戻すけど!

メルちゃんは何が欲しいの? ……本当に指輪だけでいいの? 」


「でしたら、主人公さんとおそ……いえ、やっぱり良いですっっ! 」


「……う~ん。


まぁ取り敢えずはマリアの“マリアーバリアン化装備”と

メルちゃんの魔導の指輪を買いに行こうか! 」


「だから語呂が悪いっ! 」


「は……はいっ……」


《――この瞬間

メルはわずかに後悔した様な表情を浮かべて居た――》


………


……



《――暫くの後、彼らは工房に到着して居た。


その一方で、挨拶もそこそこに

早速マリアの頭の型を取り始めたガンダルフ。


彼の目は何処か真剣さを感じさせる物で――》


「主人公……これが御主の狩る魔物とその生息地の載った地図じゃ。


減衰装備は最低二個は外した方が良いかもしれん。


必要なのは“角”と“尻尾”……可能ならば

“牙”もあるとより良い物が出来るじゃろうて」


「了解です……狩る頭数は? 」


「うむ、主人公の実力ならば一体分を綺麗に回収出来るじゃろう

本来なら大事を取って二体分じゃが……まぁ必要無いわい」


「了解です……では、なるべく早く手に入れ……っと、その前に

メルちゃんへのプレゼントを買って来ますね。


……マリア、俺達が遅かったら宿に帰ってて良いからね」


「は~い、行ってらっしゃい~」


「メルちゃん、掴まって……転移の魔導、魔導道具店へ! 」


《――直後、魔導道具店へ転移した主人公とメル。


だが、店前では無く“店内に”転移した所為で

店主は大層驚いており――》


………


……



「おぉっ!? ……い、いらっしゃいませ!? 」


「あっ、ミスった……驚かせちゃってすみません!

驚かせついでで申し訳ないのですが……


……メルちゃんに合う魔導道具をフルセット下さい!

出来ればこの店で一番良い物で! 」


「は、はい! ……直ぐにご用意を!

こ、此方にお座りになってお待ち下さいッ! ……」


《――言うや否や慌てた様子で装備を見繕みつくろいに行った店主。


一方、メルは主人公の“大盤振る舞い”な発言に気を遣って居て――》


「えっ!? でも、そんなに高い物……」


「いや……メルちゃんは俺達にとって替えの効かない存在だ。


道具はあくまで道具……どれだけ値段が高かったとしても

メルちゃんの身を護ってくれる確率が少しでも上がるなら安いんだ。


あと……“一回言ってみたかった”って言うのも有るんだけどね!


“この店で一番良い物をくれ! ”……って言うセリフッ! 」


「主人公さんっ! ……ありがとうございますっ! 」


<――瞬間、メルちゃんは屈託くったくの無い笑顔を見せてくれた。


何だかこっちまで嬉しく成った瞬間だった――>


………


……



《……暫くの後、店の奥から現れた店主は

店頭には決して陳列される事の無い“逸品いっぴん”を持ち出した。


その為か、店主のセールストークにも花が咲き――》


………


……



「……お待たせいたしました。


此方が当店で最も高品質な魔導師道具一式でございます。


もしもこの装備を身につければ、たとえ魔導力が最低値であろうとも

たちまち上級魔導師の様な強さに成れるでしょう! 」


<――店主のセールストークを“話半分”と考えても

そもそものデザイン的にメルちゃんに似合いそうだと思った俺は

値段も聞かずに即決してしまった。


だが、大丈夫だろうか? ――>


「ではそれを……サイズは合わせて頂けますか? 」


「はい、勿論でございます!


メル様専用の最高の装備に仕上げさせて頂きます!

価格は相応に致しますが、少しサービスさせて頂いて……


……この価格で如何でしょう? 」


<――と満面の笑みで店主が差し出した金額を見た瞬間


メルちゃんは――>


「だ、駄目です主人公さんっ!! こんなに高い物私……」


<――そうとても慌てたメルちゃんの雰囲気に

若干の不安を感じた俺は、店主の差し出した金額をチラ見した。


……確かに凄く高額ではあるが、払えない金額では無かったし

何よりも、メルちゃんがこれを装備した姿を

見たくて見たくて仕方が無かったのだ。


とまぁ……そんなこんなで

半ば強引に支払いを済ませた俺は――>


………


……



「遅くなってごめん……プレゼント、受け取ってくれるかい? 」


「ほ……本当に良いんですか? 」


「えっと……良い悪い以前に、メルちゃん専用に合わせて貰ったから

受け取って貰えなかったら、結構困っちゃうかな~……」


「有難うございますっ! ……とっても大切にしますっ! 」


<――直後、再び屈託くったくの無い笑顔を浮かべたメルちゃん。


だが、俺がメルちゃんに渡そうと考えていたプレゼントは

これだけでは無くて――>


………


……



「喜んで貰えて良かった~っ! ……あ、店主さん!

それとは別に“二人でお揃いになる様な”魔導の指輪ってありますかね? 」


「ええ、ございます! ……用途はどうされますか?


たがいに魔導を分け与える事が出来る物”


たがいの見ている景色を交換出来る物”


“互いの現在地が分かる物”


……など、様々な効力がありますので

ご希望が有れば何なりとおっしゃって下さい! 」


「ほぇ~……実用性で言えば

魔導力を分け与えるのが一番だけど、仮にも俺はトライスターだから

俺から分ける分には必要無いんだよなぁ……メルちゃんはどうしたい? 」


「な、何で主人公さんに私の気持ちが……なっ、何でも無いですっ! 」


「えっとね……メルちゃんの事が大切だから分かった!

って言ったらちょっとチャラいか! ……アハハ! 」


「本当に……本当にっ……嬉しいですっ! 」


「……喜んで貰えて本当に良かった。


ただ正直俺は今“例の一件”を思い出しちゃってて

メルちゃんと離れ離れに成った時

場所が分かる様な物の方が良いのかなとか思ってたんだけど……


……メルちゃんはどう思う? 」


「そ、それならマリアさんにも同じ物を……」


<――と二人で相談していると

店主は“マリア”と言う名前が気になった様で――>


「……今、マリアとおっしゃられましたが

もしかして、あの“マリアーバリアン様”の事で?! 」


「え……ええ、そうですけど……あいつ怒るだろうな

このあだ名がこんなに浸透してるとか……」


「……あの方は“バーバリアンの生まれ変わり”と言われていますし

魔導力が“ゼロ”とも言われております。


ですので……残念ですが

魔導力の無い方がこの指輪を装着した場合、何の効力も無く

むしろ健康をがいする事もございますので……


……お止めに成った方がよろしいかと」


「そうですか……その理由って

店主さんのサイン入りで紙に書いて頂けますか? 」


「構いませんが……何故です? 」


「その……マリアだけ“無し”って言ったらキレられそうなので」


「な、成程……おさっし致します、ではその様に書かせて頂きます」


「なら取り敢えず……メルちゃんと俺の指輪は購入と言う事で! 」


「へっ?! でもマリアさんに無いのに……」


「大丈夫! 何か代替案を考えるから

メルちゃんは俺とペアの指輪……してくれるかい? 」


「は……はいっ! 」


<――内心

“嫌です”って言われたらどうしようかと思って居た。


だが、照れた様な嬉しい様な表情を浮かべて居たメルちゃんからは

そんな雰囲気など微塵も感じられなかったし

心の底から転生前の俺に是非とも教えてやりたい。


“お前には絶世の美女とお揃いの指輪を買う日が訪れるんだぞ! ”


……と。


まぁ、ともあれ……この後


“店主さんの直筆サイン入り、マリアへの言い訳書”も手に入り

指輪も無事に購入した俺は、メルちゃんと共に

工房へと戻ったのだが――>


………


……



「……マリアはまだ居ます? 」


「ん? ……さっき帰ったぞぃ? 」


「入れ違いか……あの、ガンダルフさんに質問があるんですけど

マリアに作る兜で、もし材料が余った場合

その素材でお揃いに成る様な指輪……しくはネックレスとか

何かしらのアクセサリを作れませんかね? 」


「可能じゃが……誰が装備するんじゃ? 」


「えっと……俺とマリアです」


「ふむ……とは言え御主は魔導師じゃからのう。


何の意味も無い装飾品にしかならんが……それで良いなら作れるぞい? 」


「ええ、それで大丈夫です! ……助かります! 」


「構わんよ……っと、メル殿は装備が一新されておるでは無いか!

よ~く似合っておるぞい! 」


「あ、有難うございますっ! 」


「ん? 揃いの指輪……成程のぉ主人公。


……モテる男は大変じゃのぉ? 」


「ち、違いますって! これはその……ゴホンッ!

取り敢えず、素材取りに行って来ますッ!


えっと、メルちゃん……宿に送るから待っててくれるかい? 」


「えっ? ……私もご一緒した方が良くないですか? 」


「いや、折角せっかくの新しい装備だし

買った初日に泥だらけになる可能性があるのも何だか勿体無もったいないし

そもそもマリアにこの“証明書”を見せて欲しくてさ……


……あと、代わりのアクセサリに関しての話も含めて

頼まれてほしかったり……良いかな? 」


「分かりました……でも、気をつけて下さいね?

もしも危なかったら直ぐに呼んでくださいっ! 」


「うん、ありがとッ!


……ではガンダルフさん、行ってきます。


転移の魔導、ヴェルツ前へ! ――」


………


……



《――メルをヴェルツへと送り届けた後

直ぐに東門前へと転移した主人公。


だが、地図を確認していると――》


「一度旧オークの居住区に飛んでからの方が近……」


「……主人公君、何をして居るのかね? 」


「あっディーン様! ……えっと

マリアの装備制作に必要な素材を入手する為

魔物討伐に行く予定なんですが……」


「ほう、ならば手伝おう……この国周辺の魔物の程度を知りたい

手出しされるのが不快ならば見学でも構わないのだが……


……同行しても良いかね? 」


「ええ……でしたら是非! 」


「助かる、では――


――全隊員此処へッ!! 」


《――言うや否や、何処からとも無く現れた隊員達は皆

いつの間にかディーンの背後に整列して居て――》


「あ、相変わらず凄い統率力ですね……」


「これでも皆自由過ぎで困っている事も多いがね……さて。


討伐と言ったが、何処に行くのかね? 」


「此処なのですが……一旦、旧オークの居住区に飛び

後は徒歩かなと思って居まして……」


「ふむ……ならば一度旧居住区へ飛んだ後

ギュンターの戦艦オベリスクで目的地へ向かうのはどうだろうか? 」


「よ……よろしいんですか? 」


「おや? ……仮にも会ったばかりの私達に

みずからの監視任務を許してくれた割にはえらく他人行儀だね? 」


「い、いえそんな事は……」


「いや……少し寂しく感じてしまう。


せめて、お互いに呼び捨てにする様な……所謂いわゆる

友の様な扱いをお願いしたいのだが、迷惑だろうか? 」


「で、では……俺の事も呼び捨てにして頂けますか? 」


「ああ、互いを対等の友と認める行為だ……勿論呼ばせて頂こう」


「分かりました、ではディーン……って本当に良んですか? 」


「勿論だ主人公……敬語も要らない。


ギュンター……そう言う事だ、彼の転移後は

オベリスクで目的地へ向かう……構わんな? 」


「勿論です、ディーン様が友とお認めになった御方に

ご乗船頂けるのでしたら、これ以上の光栄はありません。


……是非ともこの大役、つとめ上げさせて頂きます」


「よし、そうと決まればまずは主人公……転移魔導をよろしく頼む」


「あ、ああッ! ……掴まってくれ!

転移の魔導、旧オークの居住区へ! ――」


《――この瞬間から暫くの間

主人公かれはディーンに対し

“ぎこちないタメ口”で話し続ける事と成った――》


………


……



「しかし、相変わらず一瞬で到着する物だな……


……さてギュンター、頼んだぞ」


「……かしこまりました。


よみがえれ、オベリスクよ――」


《――ギュンターが“瓶船ボトルシップ”を掲げながらそう唱えた瞬間


戦艦オベリスクは一瞬で一行の眼前に出現し――》


………


……



「では……主人公様、此方からお乗りください」


「何度見ても憧れる固有魔導です……で、ではお邪魔します」


「……お褒めに預かり光栄至極にございます」


《――そんな会話を交わした後

ゆっくりと戦艦オベリスクに乗り込んだ主人公

だが彼は、その内部に再び驚愕きょうがくする事と成った――》


「お邪魔しま……えっ!?


あ、あの……外から見るより広いんですけどッ?!

しかも戦艦だから、これで攻撃も防御も凄いって事ですよね? 」


《――ギュンターに対しそうたずねた主人公。


そんな彼に対し――》


「ディーン様が本気に成られれば簡単に破壊されてしまうでしょうが

低位の魔物であれば、武装さえもちいず蹴散らす事が可能でございます」


《――そう説明したギュンター

なおも感心する主人公に対し、ディーンは――》


「……驚いて貰えて良かった。


だが、私達の固有魔導は皆“派手な物”が多くてね。


……それと引き換えに、転移魔導は一切使えないのだよ」


「そうなのか……でも、俺からすると

転移魔導より優秀な物に感じるけどなぁ……」


「そうか……お互いに“無い物を”求めて居るのかもしれんな。


……ギュンター、地図の場所付近まで頼む」


「……かしこまりました。


オベリスク、全速前進――」


《――直後、オベリスクは凄まじい推進力を発揮し

またた主人公かれらを目的地に到着させたのだった――》


………


……



「……到着致しました。


あちらに見えるのが、恐らくは目標の魔物かと……」


《――ギュンターがそう言うと

隊員達は皆戦闘準備を整え始めて居た……だが。


ディーンは彼らに対し“待機命令”を出した上で――》


「……私と主人公だけで良い。


主人公、準備は良いか? ……」


「へっ? ……あ、ああ!

必要な部位が角と尻尾と牙だから

其処だけは破壊しない様に討伐って事だけ頼んでも

よろし……い、いや。


……良いかな? 」


「ああ、任せてくれ……ん? 丁度二体か

ならば私は左を担当しよう、主人公は右を頼む。


どちらが早いか勝負するのも面白いかも知れないな……」


「確かに! ……んじゃ行くぞ?


せーのっ! ――」


………


……



「魔弾――」


《――愛銃“オルトロス”を構えたディーン


引き金を引きつつそう唱えた瞬間――


――放たれた弾丸は魔物の眼前で大きく

そして……急上昇し


魔物の脳幹のうかんを貫いた――》


………


……



「氷刃ッ! ……」


《――遅れる事わず


凄まじい斬撃にり魔物の首を一撃の元に切り落とした主人公。


だが、そんな彼に対し――》


「ふむ……引き分けか」


《――そう言ったディーン


無論、この発言に違和感を感じた主人公は

すかさずこれを“否定”した――》


「えっ? ……いやいやいや!

どう考えても俺よりディーンの方が早かったでしょ?! 」


「……何を言う、私は本気だったが

君は“減衰装備”を付けたままだ……ましてや二個も

信じられない男だよ君は……」


「い、いやその……低級の魔物相手なら四個つけてる事もあるけど

流石に今回の魔物は大事を取って二個外したから

ある意味では“本気”みたいな物だし! ……そっ、そもそも!

減衰装備で“速度は変わらない”って言うか、何て言うか……」


「主人公……余りいじめてくれるな。


仮に私達が敵対し“君が本気を出していたら”……そう考えただけで

恐怖を感じる位の強者だよ君は……」


「……いやいやいやッ!

俺だってディーン達とは敵対したく無いし!

もし仮に俺が攻撃力“だけ”勝ってたとしても

ディーンの“速度”に勝てなきゃ俺の負けは確定……って。


……この話やめないか?

終わりが見えないし、お互いに得が無いよ……」


「フッ……それもそうだな。


さて、素材を取るにしても少々手間だ……


……ライラ、必要部位以外を“餌”にしろ」


《――そう命令が下された直後

今にも倒れそうな様子でディーンの直ぐ側に現れた少女

“ライラ”は――


“おいで……ドラゴン”


――そう静かにつぶやいた。


瞬間――》


………


……



「う、うわぁぁっ!? ……な、何だッ?! 」


《――耳をつんざく様な咆哮ホウコウと共に

突如としてうごめき出した彼女の刺青いれずみ

巨大な緋色のドラゴンと成り――》


………


……



「そ、そんな……い、今……刺青いれずみから……」


《――直後

驚愕きょうがくする主人公かれの眼前に降り立った緋色のドラゴン。


そんなドラゴンに対し――》


「ドラゴン……角と尾と牙以外は食べて……良いよ……」


《――彼女ライラがそう命じた瞬間


必要部位だけを残し

二体の魔物を凄まじい勢いでらいつくしたドラゴン――》


………


……



「ド……ドラゴンを使役するのも凄いけど

刺青いれずみから現れるとは思わなかったよ……」


「ああ……だが、その代償として

彼女ライラは普段、ほとんど睡眠を取っているがな」


「成程……負担が大きいって事か」


「ああ、その上使える時間にも限りがある。


彼女はとても苦労人だ……」


《――何かを思い出し、そう言ったディーンの表情に

“これ以上彼女の事を詮索しないでおこう”と考えた主人公は

直ぐにこの話を切り上げた。


そして――》


………


……



「ドラゴン……戻って……」


《――彼女ライラがそう命じた瞬間


その体に吸い込まれ、元の刺青いれずみへとその姿を戻したドラゴン――


――同時に、彼女は倒れる様に眠りについた。


隊の仲間であるオウルは、そんなライラを抱え

オベリスク船内へと連れ戻った。


そんな様子を見ていた主人公は

ほんの一瞬、何か思い詰めた様な表情を浮かべ――》


「……あ、あのッ!!


ライラさん、オウルさん! ……お、お手間をお掛けしましたッ!


そ、その……有難うございましたッ! 」


《――と言った。


現時点でみずからに出来る精一杯の礼儀を通した主人公……そして

そんな彼の誠実さに気付いたディーンは、主人公かれに対し

“礼ならば良い、私達が好きで手伝っているのだから”と

彼を気遣きずかう発言をしたが――


“でも……流石に回収位は俺がやるよ”


――と、やはり

何かを思い詰めた様な表情を浮かべていた彼の為――》


「いや……それも任せて貰いたい。


ギュンター、出来るだけ早く集めて見せろ」


「おまかせを――


――おたせ致しました」


《――瞬間


そう、謙遜けんそんして居たギュンターの横には

既に全ての部位が整然と並んで居て――》


「い……何時いつ動きました? 」


「……主人公様は人を褒める才能に長けておりますね。


この様な老骨の動きをお褒め頂き感謝申し上げます……」


「い、いや……本当に全く動いた様に見えてなかったと言うか

そもそも見えていなかったって言うか……」


「……其処までにしてやってくれ主人公

ギュンターが調子に乗らんとも限らん。


さて……折角だ。


タニア、此方に接近するあの魔物を“お前の技”で倒せ――」


「――了解ッ!


“溶解液”――」


《――そう唱えた直後

からの手で吹き矢を吹く様な構えを見せたタニア。


すると……遥か遠くの魔物は一行の元に到達する事無く

みるみる内に溶け落ち、跡形も無く超滅したのだった――》


………


……



「完了致しました……ディーン様、他にご用命はございますか? 」


「いや、手間を掛けたな……戻って良い」


………


……



「……み、皆強いんだな。


てか、さっきディーンが言ってた“敵対問題”だけど

正直俺の方が恐怖してるよ。


“魔物消失事件”って俺が言って良いのかは分からないけど

それの捜査って目的以外に、ディーン達は何が望みなんだ?

それだけ強いと大体の事は叶えられそうだけど……」


「……我々の目的が

“平和に暮らす事”だと言っても信用してくれないか? 」


「いいや?


“力を持つ者は鬱陶しい事に巻き込まれる”……だったかな?


昔、ラウドさんに言われた事があってさ……それで

聞きにくい事を聞く様だけど

もしかしてディーン達もそうなのか? 」


「……まぁそんな所だ。


私達の願いは“平和に暮らす事”……だが

皆、普通の仕事では食べていけないだろう

“こんな事”位しか出来ないのだからな。


ただ、これ以上踏み込んだ話は……少なくとも今は控えさせて貰いたい」


「ああ、話したく成った時は聞くよ。


さて用事はこれで終わりだし……帰ろうか」


「ああ、今日は色々と楽しかった……また呼んでくれ」


「勿論だ……帰りは俺が皆を送るよ」


「ああ、助かる……皆、主人公に掴まれ」


「んじゃ、行くよ。


転移の魔導、東門へ! ――」


………


……



「本当に一瞬だな……助かった」


「此方こそ……って。


材料だけど、本当に全部貰っても良かったのか? 」


「……ああ、ライラのドラゴンが大量に“貰った”からな。


あれで暫くはライラも健康だろう」


「そっか……何か必要な時は遠慮無く言ってくれ! 」


「ああ、助かるよ……ではな」


「うん! じゃあまた!


転移の魔導、ドワーフの工房へ! ――」


………


……



「……やはり、彼が味方で良かったと言う他無いだろう。


しかし、ギュンターよ……主人公を見て思うのだが

あの年にしては余りにも出来過ぎた男だと思わないか? 」


「ええ……左様でございますね

私めも主人公様を素晴らしい御方だと思っております。


……しかし、ディーン様が

あの様に砕けてお話になっているお姿を久しぶりにご拝見致しました」


「それもそうだな……さて、そろそろ宿に戻るか」


「ええ……」


………


……



《――その一方


ドワーフ族の工房では――》


「……戻りましたっ! 」


「早いのぉ?! ……もう討伐して来たのか?! 」


「ええ! ディーン様達……じゃ無い

ディーン達が手伝ってくれまして……材料はこれで足りますか? 」


「ん? ……さてはあの者達と仲良くなったのじゃな?


……っとぉ?!


主人公……御主、その量は丸々二匹分じゃぞ!?

足りる所か、これでは大幅に余るじゃろうて!


ううむ、流石と言う他無いが……余りを譲ってくれると言うなら

更に値引きしてやろう……どうする? 」


「ええ、勿論そのつもりですけど……って!

時間も遅いので後はお任せします!

早く宿に帰らないと皆心配してそうなので! 」


「うむ! 完成したら届けに行くからのぉ! 」


「はい、お願いします! ……では!


転移の魔導、ヴェルツ前へ! ――」


………


……



「う~ん……」


<――ディーン達のお陰で早く済んだとは言え

それでも遅く成っちゃったな……二人共怒ってないかな?


などと考えながら、店の前に居たら――>


………


……



「あっ! 主人公さんっ! ……おかえりなさいっ! 」


「メ、メルちゃんッ?! ……良く俺が居る事に気がついたね?! 」


「はいっ! ……ずっと入り口を見てました! 」


「……そうだったのか、待たせてごめん」


「いえいえっ! お疲れ様ですっ! ご無事で何よりでした……」


<――などと話しながらヴェルツへと入店した俺達

だが、俺の姿を確認するなり

マリアは大層不機嫌そうに――>


………


……



「遅いですよ~……お腹すきましたっ! 」


「ごめん! ……けど、これでも

ディーン達が協力してくれて早く済んだ方なんだよ? 」


<――などと話していたら

些細な変化に気がついた様子のメルちゃんは――>


「あ、あの……呼び捨てにしてるって事は

も、もしかして……お友達に成れたんですかっ?! 」


<――と、俺達の関係性を言い当ててしまったのだった。


だが、その事に驚き

ついつい話し込んでしまった俺に対し、マリアは――>


「そんな事はどうでもいいからごはん~~~~っ!!


ガルルル……」


「……げっ?!


ミ、ミリアさんッ! ……

“マリアーバリアン”が切り株でも食べそうな勢いなので

出来るだけガッツリとした食事をお願いします! 大至急で! ……」


「ガルルル……語呂が悪いっ!


……って、狩り終わったと言う事は

材料はガンダルフさんに渡したんですか? 」


「お、おう……後は完成を待つのみって感じだ」


「楽しみですね~……あっ、そう言えばなんですけど

メルちゃんの装備が全体的に凄い綺麗に成りましたよね? 」


「えっとね……その店で一番良い奴注文してみた」


「ちょ……どこの富豪ですか!?

とは言え、凄く似合ってますから良いですけどね~」


「ああ……けどそうなると、マリアの兜も楽しみだな。


一体どんな形になるんだろうな? 」


「あっ! ……それなんですけど!


私、この盾を見てて分かったんですけど

ガンダルフさんってああ見えて結構ちゃんと

“女性向け”にもデザインしてくれるみたいなので、意外と期待してたり! 」


「あ~……言われてみれば確かにその盾の作りは女性的かも?

その感じなら兜も良い出来上がりになりそうだな! 」


「はい! 今から凄く楽しみです!

それこそ、余計に美人が強調されるデザインだったりして! 」


「お前なぁ……でも確かに美人だからツッコミは無理だぞ? 」


《――この時、三人は完全に忘れていた。


ガンダルフは、バーバリアン装備の“完全体”と言っていた事を。


そしてバーバリアンは屈強な“おとこ”で有った事を――》


………


……



「それで……現在地は分かったのか? 」


「必死で捜索しておりますが、いまだ……」


「……何故あれだけの人数が見つからない? 」


「それが、魔導探索の可能範囲外に出て居る様で……」


「それならば探索可能範囲を広げるなり

他国に潜入するなりしたらどうなんだ……無能がッ! 」


「し、しかし所長! ……派手に捜索をして

他国に彼らの存在がバレてしまえば……」


「……あの“研究結果”を他国に奪われれば

我が国の優位性が失われる事になる。


そうなる前に、なんとしても奴らを回収しろッ!!

……最悪殺してでも連れ帰って来いッ! 」


「しかし、私はただの研究員です!

あの様な化け物共、私の力だけでは……」


「チッ……ならば五体ほど警護をつけてやる。


それでも回収不可能ならば……これを使い、奴らを抹殺せよ」


「……こ、これは? 」


「奴らの体内には呪いを仕掛けてある……その紙を破れば

それぞれに紐付けられた実験体が一瞬で絶命する」


「な、成程……では、全員回収不可能の場合はどうすれば……」


「残念だが……全て“破り捨てて”しまえ」


「り、了解致しましたッ! 」


===第二十九話・終===

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