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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝15万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第一章

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第二八話「楽に再スタートとは行かず? ……後編」

挨拶回りの最中(さなか)、突如発生した地響き

轟音(ごうおん)響き渡る中、俺達は急ぎ

発生源と(おぼ)しき東門へと飛んだ……だが。


其処(そこ)に“あった”物は

俺達の想像を軽く超えて居て――


「なッ、何だあれ……」


「何でしょう……巨大な“船”に見えますけど」


「こっ、怖いですっ……」


轟音(ごうおん)と共に

政令国家東門前へ現れて居たのは巨大な“戦艦”だった。


……そしてこの直後

戦艦から此方(こちら)に向け発せられた男の声は……


「……此方(こちら)から危害を加えるつもりは無い

私達は(ただ)、この国の国王に話を聞きたいだけだ。


国王と話をさせて貰いたい……」


そう一方的な“要求”を伝えて来た。


だが、男の声は“魔導拡声(メガホン)”では無く

明らかに“スピーカー()し”の声だ。


俺もマリアも……この世界に

そんな文明を“設定”した(おぼ)えは一切無い。


……一体、何が起きて居る?


余りにも理解の出来ない状況の中、俺は

その声から感じ取った“嘘の無さ”を信じる事にした。


「あの~ッ!! 少しお待ちを!!!


魔導通信、ラウドさん――


――ええ、そちらからも見えて居るとは思いますが

“戦艦”が東門前に……男は“国王と話がしたい”と

ええ……“国の仕組みが変わった”事を知らない様です」


◆◆◆


「ふむ……兎に角すぐに行くから待っておるんじゃよ!!

転移の魔導、東門へ! ――」


◆◆◆


直後

東門へと現れたラウドさんは……眼前の戦艦に驚愕(きょうがく)しつつも

政令国家の長として、その責務を果たす(ため)


戦艦に向け……


「わしがこの国の長……“大統領”をしておるラウドじゃ!

何の用かは知らぬが、此方(こちら)に戦闘の意思は無い!

(ゆえ)に……一度、顔を見て話せるじゃろうか! 」


戦艦上部に設けられた窓

其処(そこ)から(かす)かに見える人影に向けそう問うたラウドさん。


直後……


「“大統領”だと? まぁ良い、承知した……少し待って居てくれ」


開かれた可動式階段(タラップ)


其処(そこ)から下船して来た一団の(おさ)(おぼ)しき男……


……赤黒い長髪に(するど)眼光(がんこう)

一部の(すき)も無い立ち居振る舞いを見せたこの男は

ラウドさんに対し、深々と一礼した後……


「……お初にお目に掛かる、私の名前はディーン

我が“ディーン隊”の隊長を務めて居る者だが……


……ラウド大統領殿、申し訳無いが

私は大統領と言う役職を聞いた事が無い

先ずはその説明をして頂きたい」


「うむ……大統領と言うのは

“国民の投票で選ばれた長”の事じゃ。


……前国王が魔族に成り代わられており

既にその血筋も途絶えておった(ため)

国の崩壊を招かん様、決まった仕組みなのじゃ」


「成程、では本題だが……一年程前だったか

此方(こちら)の方角に“大量の魔物”が飛来しては居ないだろうか? 」


「……何故その様な質問をするのかね? 」


「それは何か知って居る者のだ……出来れば隠さず教えて頂きたい」


「……見抜かれて居おるならば()えて問おう

“原因”を見つけたら……どうするつもりかね? 」


「教えては頂けないのか? 」


この一触即発の状況の中

ディーンと名乗る男へと近付き耳打ちをした

燕尾(えんび)服姿の老紳士”……


「ディーン様、お戻り下さい……話すつもりは無さそうです」


「いや……残念だがその隙を与えて貰えるとは思えない

(ラウド)”の背後を見ろ……分かるだろう、腕利きが数名居る」


この瞬間

俺達に視線を向けつつそう言った“ディーン”に対し

俺は……


「あの、すみません……平和的な解決は無理なのでしょうか? 」


「……君は? 」


「主人公と申します……俺は、この国の外交大臣であり

そして、魔物を“吸収した”張本人です」


「主人公殿っ!! 」


俺が白状した瞬間、ラウドさんは強く制止した

だが……


「不思議な事を言う……人間が魔物を吸収?

(いく)ら大臣とは言え……君の様な子供がかね?

いや……確かに、魔導適正は相当に高い様だ。


色々と詳しく聞きたい……話して貰えるかな? 」


「ええ、勿論です……が、その前に

民が怖がります……せめて“戦艦(ふね)”の動力をお切り下さい」


そう要求したこの瞬間

この(ディーン)微笑(ほほえ)み……


「ほう……戦艦に動じないだけで無く

大方の仕組みまで予想するとは……そう言う事だ。


ギュンター……“仕舞え”」


「了解致しましたディーン様……では

戻れ、戦艦よ――」


燕尾服の老紳士

もとい“ギュンター”がそう発した瞬間

戦艦は、彼の掲げた小瓶へと収まってしまった。


その姿は、宛ら“ボトルシップ”の様で……


「こ、これは……“予想外”過ぎて言葉が出ません」


直後

思わずそう言った俺に対し……


「それは……お褒めの言葉と(とら)えておきます」


そう言って深々とお辞儀をした“ギュンター”

そして……


「さて、これで話して貰えるかな? 」


「ええ……ですが他国からのお客様と

この様な所でお話をするのは失礼に当たりますので

宜しければ……俺の腕を掴んで頂けますか? 」


「良いだろう……皆、彼に掴まる様に」


「有難う御座います……マリアとメルちゃんも掴んで。


では皆さん……御手をお離しにならない様にお願いします

では、行きます……転移の魔導


大統領執務室へ! ――」


直後

“ディーン隊”と名乗る一行を引き連れ

執務室へと転移した俺……幸いにも

これに大層驚いてくれた“ディーン”は……


◆◆◆


「転移魔導とは驚いた……初めての経験だ」


「喜んで頂けたのなら幸いですが……

……兎に角、ご質問の続きをどうぞ」


「ああ、では単刀直入に聞くが……君は魔族、()しくは魔族の手先か?

或いは“改造”を受け……いや。


……最後のは忘れてくれて構わない」


「どちらも否定します……魔族は憎むべき敵です

普通の……と言っても信じて頂けないかもしれませんが

俺は人間です……それでその

此方(こちら)からも質問を宜しいでしょうか? 」


「答えて貰うだけでは不公平だろう……答えよう」


「有難うございます、では此方(こちら)も単刀直入に

最重要な質問を一つだけ……この国を襲う

()しくは滅ぼす等、この国に対し

悪影響を与える様な目的は御座いますか? 」


この瞬間

俺のド直球な問いに()って執務室の空気は張り詰めた。


だが……


「……本来なら

“場合に()る”と(にご)すべきなのだろう。


だが、正直に答えよう……この国や君が

魔族や魔王に(くみ)していないのなら決して手は出さない

何より、無闇矢鱈(むやみやたら)と他人に刃を向ける趣味は無い。


とは言え、個人的な興味と危機管理の(ため)聞いて置きたいのだが

先程、君は“俺が吸収した”と言った。


……それが一体どう言う事なのか

詳しく説明して貰いたい」


「ええ……ですが正直、俺は覚えて無いんです

ですので、伝え聞いた話の“受け売り”には成ってしまいますが……


……俺が生命の危機に(おちい)った直後

俺の“固有魔導”が暴走し、俺の命を(まも)(ため)

異常な事態を引き起こした……そうです。


そのせいで国民を怖がらせてしまい

俺は地下牢に一年程|幽閉(ゆうへい)されていました。


(ちな)みに……今日、釈放されたばかりです」


「成程、正直に話して居る目だ……(いつわ)りがない事を確認した

流石に君の固有魔導が“どんな物なのか”

教えて貰うのは……無理かな? 」


「それは……お約束して頂けるならお教えします」


「……何を約束すれば良い? 」


「この国の国民に成る、()しくは

友軍か友好国でも何でも構いません

どの様な形でも良いので……味方に成っては頂けませんか? 」


「それは外交としてか?

それとも、此方(こちら)の戦力が目当てかね? 」


「いえ、ディーン様のお人柄に魅力を感じた

と言うのが素直な感想です。


……失礼な言い方で申し訳ありませんが

教養(きょうよう)の無さと笑ってお許しください」


「いや、光栄だよ……では、暫定(ざんてい)的に

傭兵(ようへい)”としてならばどうかね? 」


「ええ、それで充分です!

では、此方(こちら)は何をお支払いすれば? 」


「……先ずは君の固有魔導についての説明を

それが一つ目の報酬だ……その他は

食事、武器弾薬等の補給……それと、宿の提供など

生活に必要な物を提供して頂きたい」


「……ラウド大統領、構いませんか? 」


「うむ……許可する」


「ではその様に……先ずは

俺の固有魔導について、でしたね? 」


「ああ……“魔物を吸収”など聞いた事が無い

一体、どんな固有魔導なのかね? 」


「……先ほど説明した理由に(から)

この国の民の安寧(あんねい)(ため)

今、此処(ここ)で発動させる事は出来ませんが

端的(たんてき)に説明をするならば――


“死を(のぞ)く全ての事象(じしょう)に強制的に介入(かいにゅう)出来る”


――と言うのが精一杯の説明です」


「良く分からないが……それが暴走したと言う事は

国民は相当に恐怖したのだろう……(ゆえ)に一年の幽閉(ゆうへい)、納得はした。


だが、もう少し具体例は出せないのかね? 」


「では……あくまで例え話ですが

固有魔導を起動した状態で“ディーン様を消去”と言えば

恐らく、ディーン様はこの世界から消滅するものかと」


「成程……説明が難しい事も理解したよ

だが、もし君が本当に邪悪な存在ならば

そうして語る事さえ無く私達を“消去”して居ただろう。


……今までに暴走したのは

君が生命の危機に(おちい)った時だけかね? 」


「はい……国を良くする(ため)、と奔走(ほんそう)した結果

食事と睡眠の不足に魔導の乱発による

慢性的(まんせいてき)な魔導力の回復不足……


……暴走の原因を作ってしまったのは恐らく俺自身です。


今後、絶対無いとは言い切れませんが

二度と起きない様、細心(さいしん)の注意を払うつもりです」


「ふむ……ならばこうしよう

私達はこの国の傭兵(ようへい)として雇われる形を取る

報酬は先程の内容で問題ない……その上で“君の監視”も行おう。


万が一君が暴走した場合には此方(こちら)で対応する

それはこの国の(ため)でもあり、私達ディーン隊の(ため)でもある。


だが、何よりも……心根(こころね)の真っ直ぐな君の名誉の(ため)だ」


この直後

ラウドさんの承認に()

ディーン隊は“傭兵”として正式に迎え入れられた。


だが、この時……あまりにも真っ直ぐな目で

“君の名誉の(ため)”と言われた事に少しドキッとした俺は

逆に違和感を感じる(ほど)

素っ気無い対応をしてしまった。


「ええ……その時はお願いします。


では……俺達は用がありますので

皆様は一先(ひとま)ずこの国の観光をどうぞ。


……おすすめはドワーフの工房です

“ボードゲーム”が楽しめますので」


「ボードゲーム? ……何だねそれは? 」


「遊び道具ですが……詳しくはドワーフの工房でお聞き下さい

ではラウド大統領、俺達は引き続きオークの居住区

並びに、ドワーフの居住区に挨拶回りに……」


そう言って

この場を立ち去ろうとした俺、だが……


「……待ってくれ

ドワーフの工房と“居住区”が近いのであれば

其処(そこ)まで一緒に連れて行っては貰えないだろうか? 」


「あ~……“転移魔導”って意味なら俺もそうしたいのですが

幽閉中(ゆうへい)に出来た建物ですので

一度、歩きで行かないと飛べなくて……その

申し訳有りません……」


「成程、それは悪い事を聞いたね……では

私達が“同行”するのは構わないのかな? 」


「ええ、では先にドワーフの工房に行きましょう

一度近くまで飛びますので、掴まって下さい。


それでは行きます、転移の魔導


ギルドへ! ――」


◆◆◆


直後

ギルドに到着した俺達は、メルちゃんの案内で

“ドワーフの工房”へと向かった。


「……此処(ここ)が新しく出来たドワーフ族さん達の工房で

そ、その後ろが居住区ですっ! 」


何故だか妙に緊張気味なメルちゃんは

ディーン隊の皆さんに対してそう説明をした。


一方、彼女の説明を聞き終え

御礼を言ったディーンさんだったが

メルちゃんは、やはり何処か緊張して居て……


「い、いえ! ……お役に立ててよかったですっ! 」


そう答えた後

少しばかり“あたふた”として居た様に見えた。


……(ちな)みに、これは後で知った事だが

この時、メルちゃんはディーン隊の皆さんの事を

“俺に対する最大の脅威”……と思って居たらしい。


……まぁ、俺が暴走したら

俺を“始末する”役目を買って出たんだから

そう思うのも分からなくは無いのだが

何れにしても、メルちゃんに対し

いらぬ心配を掛けてしまったのは事実だ。


「では、ドワーフ族の工房をご案内します!

とは言え、俺も此処(ここ)に来るのは初めてなのですが……」


ともあれ。


メルちゃんから案内を引き継いだ俺は

重厚感の漂う工房の扉を開いた。


「いらっしゃ……おぉ主人公!

ん? 後ろに居るのは……何方かな? 」


「お初にお目に掛かる……私はディーン

後ろにいるのは部下のギュンター・タニア・ライラ・オウルだ。


我々は縁あってこの国の傭兵(ようへい)と成った者

だが、期間は特に設けて居ない……


……勝手だが、此方(こちら)の都合も有るのでね。


とは言え、暫くは

この国にお邪魔させて頂く事に成る

短い間かも知れないが……よろしく頼む」


そう言うと

ガンダルフさんに握手を求めたディーンさん

一方のガンダルフさんは握手を受け入れつつ……


「ふむ……しかし皆|只者では無さそうじゃな?

この国では見た事も無い様な装備品もちらほらと……


……いや、いらぬ詮索じゃったか。


っとマリア殿! 漸く盾が完成したぞ!

ほれっ! ……持って行くが良い! 」


「えっ?! 凄い……い、色まで一緒じゃないですか!

と言うか、良くこんなに寸分違わずな感じに作りましたね?! 」


「……そりゃあ、お前さんの持ってる武器も防具も

全て元々わしらドワーフの技術で作られておるからな。


あの時は……っといかんいかん!


昔話は兎も角……主人公よ、何か用があったんじゃろう?


その様子じゃとディーン隊の皆さんを

“見せびらかし”に来た訳でもあるまい? 」


ディーンさんの直ぐ近くで

ずっと“もじもじ”として居た俺の様子に違和感を感じたのか

そう、(わず)かに訝しむ様に問うたガンダルフさん。


そんな彼に対し……


「そ、その……“今回の事”で

各所にお礼を言いに回って居るのですが

ガンダルフさんにはとてもお世話になりましたので

その(ため)というのが一つ……それから

ディーン隊の皆さんに“ゲーム”をご紹介したかった

と言うのが二つ目の理由です」


「……何じゃそう言う事じゃったか!

しかし、気など使わんでも良いんじゃぞ?

そもそもわしが好きで動いたのじゃからな。


ともあれ……ゲームの紹介ならわしに任せるが良い!

ディーン殿! これが記念すべき一作目のゲーム

“オセロ”じゃ……そしてこっちが二作目

“バックギャモン”じゃ!

どちらも二人で対戦をする遊びなのじゃが! ……」


直後


ガンダルフさんの“セールストーク”を

興味津々に聞いて居たディーン隊の面々、だが……


「大変魅力的な製品だ……しかし

現在我々にはこの国の通貨の持ち合わせが無い。


……後日必ず、改めて(うかが)う」


そう、少し残念そうに言ったディーンさんの様子に

俺は……


「あ、あのッ! でしたら俺がプレゼントします!

……ガンダルフさん、俺の払いで

どちらも“特級”をお包みして下さい! 」


「ほう? ……流石“発案者”は太っ腹じゃのぉ? 」


「い゛ぃッ?! いや、そもそも貧乏生活と無縁に成ったのは

ガンダルフさんのお陰ですからッ! 」


などと話して居たら

オセロの箱へと派手に記された

俺の名前を指し示しつつディーンさんは……


「確かに、箱には君の名前が“発案者”として記されて居るが

主人公君……君は多才なのだね」


「い、いえ……幽閉(ゆうへい)中、暇だっただけで……」


“転生前の知識です”などと言える筈も無く

そう言って(にご)した俺の視線の(はし)で……


「ううむ……すまん、バックギャモンの特級は売り切れておった

明日以降に届けるのでも構わんじゃろうか? 」


と言ったガンダルフさん。


だが……“届け先”

つまり、彼らの宿泊先が

未だ決まっていない事に気付いた俺は

急ぎラウドさんへと魔導通信を繋ぎ――


◆◆◆


「……おぉ主人公殿!

丁度伝えようと思っておった所じゃよ!

“東門宿”を使える様に手配した(ゆえ)

御一行には主人公殿から伝えて貰えるじゃろうか? 」


「ええ、ではその様にお伝えします……では! 」


◆◆◆


――直後

ガンダルフさんにもこの件を伝えた俺は

工房と同じく、俺の幽閉(ゆうへい)中に出来たと言う

“東門宿”に向かう(ため)一度

東門付近に一行を連れて行く事と成り……


「……俺も詳しい場所を知らないので

宿への案内は付近に居る憲兵にお任せする形には成りますが

名前からして東門の近くである事は間違い無いと思いますので

一度、皆様を東門付近へ転移でお送りしますね」


「それは助かる……では皆、主人公君に掴まれ」


「えっと……メルちゃんとマリアは此処(ここ)で待ってて!

すぐ戻って来るからさ! ……では、行きます。


転移の魔導、東門前へ! ――」


◆◆◆


この後

ディーン隊を連れ東門前へと転移した主人公は

近くに居た憲兵に対し、一行の案内を頼んだ後

ドワーフの工房へと“蜻蛉返(とんぼがえ)り”する事と成った。


一方、主人公(かれ)の去った直後

ディーン隊副隊長“ギュンター”は……


「しかし……あの様な若き青年がこの短期間に

転移魔導を“(ただ)の移動手段”かの(ごと)くに連続使用するとは。


私めは、恐ろしい相手と意気投合|()さる

ディーン様にお仕え出来て居る事を

とても光栄に感じております……」


と言った、だが

そんな彼に対しディーンは……


「いや、違うな……彼は“恐ろしい相手”では無い。


……力は確かに凄まじい、だが同時に彼はとても真面目だ

彼の“人を幸せにしたい”と言う言葉に(いつわ)りは無いだろう。


とは言え“敵に回したく無い”のも確かではあるが……」


そう言って

何かを“思い出し”微笑(ほほえ)んだディーン

一方、工房へと戻った主人公へと齎されたマリアの“危惧”


◆◆◆


「……お疲れ様です、主人公さん

それにしても……“大変な相手”でしたね」


(ねぎら)いの言葉もそこそこに

ディーン隊を警戒する様な発言をしたマリア。


だが、そんな彼女に対し……


「そうだな……お互い理解し合えた様な気もするけど

それだって、もしかしたら俺の勘違いかも知れない

でもまぁ……成る様に成るさ。


さてと……メルちゃん、引き続き

オーク族の居住区への案内頼めるかな? 」


「はいっ! ……こっち側からだと

“水の都居住区”を通って行けますっ! 」


「へぇ~そうなんだ……なら、丁度良いしそっちから行こっか!

って事でガンダルフさん、また……」


「うむ……って、待つのじゃ主人公!

悪いが、そろそろ御主の“取り分”を持って帰ってくれんか?

これが中々に嵩張(かさば)ってのぉ……」


「あッ、そう言えば!

長らく預かって頂いててすみま……せ゛ッ?!


ちょッ……い、(いく)らなんでも“多過ぎ”ませんッ?! 」


この瞬間

主人公の眼前へと準備された大量の金貨。


……彼の“身の丈(たけ)”と(たが)わぬ(ほど)の量に

圧倒されて居た主人公(かれ)であったが……同時に

(かね)てより心に決めて居た――


“皆に恩返しをする(ため)、皆の(ため)に使う”


――と言う願いを充分以上に叶えられる金貨(それ)を前に

主人公(かれ)は、ガンダルフに対し深々と頭を下げ……


「……これで、皆に恩返しが出来ます

本当に……有難う御座いました」


そう、涙ながらに言った。


「ううむ……“人の(ため)”も御主らしくて良いとは思うが

たまには自分の(ため)にも使うんじゃぞ?

……まぁ、全て御主の金じゃ!

どう使うも御主の好きにすれば良いがのぉ? 」


「で、ですね! ……俺もたまにはパーッと使ってみます! 」


「うむ……じゃが、あまり羽目を外し過ぎぬ様にのぉ?

それに“挨拶回り”の途中なんじゃろ?

日も暮れ始めて居るし、急いだ方が良いのでは無いか? 」


「あッ! ……そうでした!

また後日、改めて御礼に来ますので! ……それでは! 」


◆◆◆


直後、ガンダルフに別れを告げ

メルの案内に()って

“水の都居住区”へと到着した主人公は……


「想像してたよりも更に立派な(つく)りだ……良かった」


そう驚きと共に喜びを感じて居た。


まるで“観光客”の様に目を輝かせ

居住区を見回して居た彼の様子が(ゆえ)か……直後

彼に気付き、声を掛けた“マリーナ”は……


「主人公さんにお二人さんまで……

……どうかされたのですか? 」


「あッ! ……マリーナさん!

えっとその……俺の件でご迷惑をお掛けした方々に

お礼とお詫びをして回って居るのですが……」


「お詫びだなんて……その様なお気遣いは必要ありませんよ?

それはそうと、皆さん凄い汗ですが

まさか此処(ここ)まで徒歩でお越しになられたのですか? 」


「え、ええ……その“新しく出来た場所”には流石に飛べなくて

お見苦しい所をお見せしてしまい申し訳有りません……」


「いえ、その様な意味で言ったのでは……兎に角

皆様のお陰で私も……そして民達も

安定した暮らしをさせて頂いております。


改めて感謝を……」


そう言うと

深々と頭を下げたマリーナ……


「そ、そんなッ! 当たり前の事をしただけですから

どうか頭をお上げくださいッ! 」


「……主人公さんにとってはそうであっても

私達が救われたのは事実です……今後とも

この良好な関係性を、末永(すえなが)く宜しくお願い(いた)します」


「こ、こちらこそ……宜しくおねがいします! 」


(しばら)くの後


“水の都居住区”を後にした一行は

最後の目的地であるオーク族の居住区へと向かった。


……だが、一行が居住区に辿(たど)り着いた頃には

夜も更け、周囲は松明(たいまつ)の明かりのみと成って居て……


◆◆◆


「こっ、此処(ここ)がオーク族の居住区ですっ……けど

流石に……ちょっと疲れましたぁ~っ……」


此処(ここ)まで文句の一つも言わず

道案内を続けて居た彼女(メル)……だが

流石にへたり込みそう言った彼女に同意する様に……


「私も流石に歩き疲れました……だぁ~っ!

お風呂に入りた~いっ!

アロマオイル“のみ”のお風呂じゃないとや~だ~! 」


汗を拭いながらそう言ったマリア

そんな二人に対し……


「メルちゃん、案内ご苦労様……本当にありがとう

それからマリア、俺も同じ気持ち……じゃ無いわ。


……と言うかマジでそんな風呂に入ったら

なんか“変な病気”になると思うぞ?

湯船に数滴に垂らす位で……」


「良いんです! 一生身体から

薔薇(ばら)の匂いがする(のろ)いが(かか)っても!

今はそんなお風呂に入りたい気分なんです! 」


「い、いやそれ(のろ)いと言うより……って

“話が()れまくってる”から戻すけどさ。


……この居住区も想像より遥かに完璧だ。

ちゃんとした広さもあるし

グランガルドさんが希望してた通り

農業も畜産(ちくさん)も両方出来る様に成ってるし

正直、ホッとしたよ……」


と、(むね)()で下ろして居た主人公。


だが、この瞬間その背後に迫った

一際(ひときわ)大きな


“影”……


「こんな時間にどうした? ……何かあったのか? 」


「ぬおをッ?! ……グランガルドさん!?

い、今……何処(どこ)から来ましたッ?! 」


「いや、此処(ここ)が“(かく)(とびら)”に成って居てな……


……と、そんな事はどうでも良い

御主達は何か用があって訪ねて来たのでは無いのか? 」


何故(なぜ)(かく)(とびら)……って、そんな事は置いといて!


……その、俺が幽閉(ゆうへい)されてから釈放されるまでの間

言葉で(あらわ)すのが(むずか)しい(ほど)

多くの方々にお世話に成りましたので

今日はその御礼を伝えて回って居るんです。


とは言え、最後に成ってしまった上に

こんな夜遅くになってしまって

本当に申し訳有りませんでした……」


「何を言う……礼を言うべきは吾輩(わがはい)達の方だ。


……御主が居なければ、吾輩(わがはい)達は(いま)

旧居住区に“幽閉(ゆうへい)”されて居た事だろう。


吾輩(わがはい)こそ……恩を返すのが遅くなって済まなかった」


そう言うと

グランガルドは主人公に対し深々と頭を下げた。


「そ、そんな……頭を上げて下さいッ!

俺の方こそ感謝してもしきれませんよ!

と言うかそもそも、大きく状況が動いたのは

俺みたいな無礼者の話を(しっか)りと聞いて下さって

大きな心で受け入れて下さったからこそです。


その……これから先もご迷惑をお掛けする事が

多々あるかもしれませんが、これから先も

変わらず懇意(こんい)にして頂けますか? 」


「うむ……(たと)え命尽きようとも

吾輩(わがはい)と御主との友情が消える事は無いと誓おう。


吾輩(わがはい)の方こそ……今後もよろしく頼む」


「はいッ! ……お願いします! 」


この瞬間

固い握手を交わしたグランガルドと主人公。


だが……この直後、そんな彼らの背後では

誰一人として予想し得ない“状況”が発生して居た。


「お二人の友情、(とうと)過ぎます……ぐすん」


「は? ……え? マリアお前……嘘だろ?

“あの”マリアが泣いてる……だと?! 」


「なっ?! ……どう言う意味ですか主人公さん!! 」


「ふむ……“マリアーバリアンの目にも涙”か」


「もう! グランガルドさんまで! 」


「ふふっ♪ ……“語呂(ごろ)が悪い”ですかっ?? 」


「メルちゃんまで?! ……って

さ、先に言わないで下さいよ~!! もぉぉぉぉっ!!!

帰ったら絶対に私“アロマオイルのみ風呂”に入りますから!! 」


「いや、どんな()ね方だよ」


騒がしい一日と成った今日と言う一日


俺を(した)ってくれる人達

そして、俺が(した)う人達……


……結果として、それぞれとの関係性を

一層深い物へ昇華(しょうか)させる出来事と成った幽閉(ゆうへい)生活。


突如として現れた謎の一団……もとい

“ディーン隊”一行も、意外な(ほど)あっさりと

俺の要求を受け入れてくれて

暫定(ざんてい)的とは言え“仲間”と成った。


……今日、この日から俺は新たな人生を歩んで行く

此処(ここ)からが、新たな異世界生活の幕開けだ。


「す、()ねてなんて無いもん! 」


「いや、キャラまで変わってるけどぉッ?! 」


◆◆◆


()くも平和な出来事が続いたこの日から(かぞ)え数日後

“帝国”は完全に魔王軍に()らい尽くされる事と成った。


===第二八話・終===

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