第二二話「外交は楽勝?……後編」
マリーンさんの故郷である“水の都”を目指し
大量の物資と共に荷馬車に揺られて居た俺達。
その一方で、転生後初めて政令国家を離れた俺は
荷馬車の中でマリーンさんを“質問攻め”にして居た
「水の都ってどの辺にあるんですか? 」
「……御主達の国から東に二山程越えた場所が水の都じゃ」
「成程~……でも、船の上で生活って酔ったりしないんですか? 」
「船と言うても筏の様な物を繋げ、土地の様に使い
その上に家を建てておるし、風も殆ど吹かぬ
揺れなど殆どありはせん」
「成程、船と言うよりも陸の様に成って居るのですね……
……それなら修繕もし易いって事ですね! 」
「うむ……じゃが最近は魔物が出る故
修理中に襲われ怪我をする者が後を絶たぬのじゃ……」
「そうなんですね……なら、一刻も早く魔物を退治しなければ」
「うむ、頼むぞぇ? ……さて
そろそろ水の都が見えてくる筈じゃが……
……って、何じゃあれは?!! 」
窓の外を見るなり
慌てた様子でそう言ったマリーンさん。
……彼女の視線の先にあった光景
それは……巨大な魔物
逃げ惑う民達、破壊される家屋……阿鼻叫喚の声が響き渡る
水の都の姿だった
「くッ! ……マリーン様、あの筏の上に飛びます!
二人も早く掴まってッ! ……転移の魔導
あの、筏の上へ! ――」
◆◆◆
直後
筏の上に転移した主人公の視線の先には
八本の触手を持つ巨大な魔物の姿が有った。
……魔物は、今にも民の一人を捕食せんと
その触手を操り民の一人を軽々と持ち上げた。
だが
「間に合えッ!! 氷刃ッ! ――」
主人公が咄嗟に放った攻撃に依り
魔物の触手は切り落とされ、民は無事に救助される事と成った。
……だが、その一方で
触手を切り落とされ、暴走を始めた魔物は
周囲の筏を激しく乱打し始め
「不味い、筏の繋ぎ目が外れ掛けておる!
主人公殿! ……御主の転移魔導で
民を避難させてくれ! どうか! どうかっ!! ……」
「……も、勿論そのつもりです!
ですが一人ずつでは間に合いませんっ!
マリア、メルちゃん! ……マリーン様も!
出来るだけ皆さんを一箇所に集めて居て下さい!
その間に俺はあの魔物を出来るだけ抑えますッ! 」
「承知した……民よ、集まるのじゃ!
この者に掴まれば避難出来る! ……何をしておる
荷物など棄て置け! 早う集まるのじゃッ! ――」
直後
民に向け懸命にそう呼び掛け続けたマリーン
一方、その声に気づいた民達は
「お、王女様っ?!! ……皆こっちだぁぁぁ!! 」
「一体どう言う事だ? って……彼奴魔導師だぞ?! 」
「王女様、まさか魔導師を雇ったのか?
だが、そんな金は……」
「そんな事は後だ! 急げ! ……おい! 女子供を優先しろ! 」
彼女の懸命な呼び掛けに気付いた多数の民達は
急ぎ彼女の元へと走った……一方
続々と集まり始めた民達を横目に
魔物との死闘を繰り広げて居た主人公は
「出来るだけ大人数で手を繋いで居て下さいッ! 」
そう指示を出した。
そして……この直後
攻撃に怯み、水中へと逃げた魔物の隙を見計らい
百人を優に超える民達の下へと走った彼は
その内の一人に触れ、そのまま一気に
民達を馬車の近くへと転移させると
「皆、今は此処でじっとして居てくださいッ!
……そこの衛兵さん! 彼らの保護をッ!
俺は引き続き、残りの民達を救出して来ますのでッ!!
では! ……転移の魔導
筏の上へ! ――」
民達と衛兵にそう言い残すと
直ぐ様崩れ行く筏の上へと戻った主人公
「……民達は避難は出来たのかぇ?! 」
「ええ、馬車の近くへ避難させて居ます!
兎に角……早く民を集めて下さい! 」
「分かっておる! ……此方じゃ! 早う来るのじゃ!!! 」
緊迫した状況の中
この後も懸命に民達の避難の為
尽力し続けたマリーン……一方
彼らの居る場所から少し離れた筏の上では
傷を受けながらも懸命に魔物との戦闘を繰り広げて居る
一人の勇敢な王が居た
「来いッ! ……邪悪な魔物め!!!
皆、早う逃げよッ! ……マリーナも早く逃げるのだ! 」
剣を振るい、必死に戦い続けて居た王は
離れた筏に居る自らの妻
マリーナの身を案じ……彼女は逃げ遅れた民達と共に
不安定な筏を慎重に渡り歩いて居た
「ち……父上っ?! 母上っ!?
主人公殿、頼むッ! どうか、父上と母上を! ……」
「い、今助けますからッ!
くッ……届けッ!! 氷刃三連撃ッ!! ――」
瞬間
主人公の放った攻撃は魔物の触手を数本切り落とし
僅かに魔物を怯ませた……直後
その隙を狙い、彼と最も近い距離に居た
女王マリーナを含む民達を迎えに走った主人公は
先ず彼女達を馬車の近くへ転移させると
「此処でお待ちに成って居て下さい! 」
そう伝え、踵を返した
一方、そんな主人公の背に向け女王マリーナは
「魔導師様、民達を……王を……お救い下さいっ! 」
そう懇願した
直後
「はい……必ずッ!
転移の魔導、筏の上へッ!! ――」
そう、約束をした主人公。
だが
「マリーン!? ……今、隣に居たのは魔導師か!
皆逃げるんだ、筏はもう長くは持たぬ!
ぐっ! この……魔物め……」
「は、早く父上も! 」
「分かって居る! ……今そちらに向かう! 」
直後
マリーンの下へと走り出した王……これに遅れる事|僅か
再び筏へと舞い戻った主人公も
王を救う為王の元へと走り始めて居た……だが。
……触手を切り落とされ
苦痛に暴れる魔物の乱打に依り
周囲の筏は激しく崩壊……不運にも
破片の一つは王の太腿を貫いた。
……足を引き摺り尚も懸命に進む王であったが
“血の匂い”を嗅ぎ取った魔物は
筏を諸共に、王を飲み込んだ
◆◆◆
「ち……父上?
父上?! ……父上ぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
嫌ぁぁぁぁぁっっっっっ!!! ……」
「そ、そんなッ……くッ……筏がもう……
……マリーン様、もう持ちません!
出来るだけ民を集めて飛びますッ!
だから……マリーン様も早くッ! 」
俺の声は彼女の耳には届いていなかった。
届く筈も無い……何れ程叫び、呼び掛けようとも
半狂乱と成った彼女の叫び声が全てを掻き消し続けた。
……徐々に崩壊していく筏
怯える民達……どうする事も出来ない状況に
俺は“苦渋の決断”をした
「くッ……マリーン様、ごめんなさいッ!!!
睡眠の魔導:眠れ、永久に――」
「父……う……え……ッ……」
「……皆さん、今は何も言わず俺に掴まって下さい。
転移の魔導、馬車の近くへ――」
彼女を救い
彼女の民を救う為……俺は、彼女を眠らせ
強制的にこの場から移動させる事を選んだ。
俺は……救えるだけの命を全て救った筈だ。
だが、犠牲が出てしまった……“約束”を違えてしまった。
俺は……王を救う事が出来なかった。
俺は、なんて無力なんだ
「……クソッ。
クソックソックソックソックソッ!!!!!
俺の……せいでッ……俺がもっと強かったら……
俺のせいで、王は……王はッ! ……」
マリーンさんにも、女王にも顔向け出来ない
全てを救うと言って置きながら……俺は
彼女の“父”を救えなかったのだ
「魔導師様……私を含め
多くの民と娘を救って頂いた事……心よりお礼申し上げます。
ですが、もう……顔をお上げ下さい」
この瞬間
自らの不甲斐無さを悔い続けて居た俺の肩に手を当て
気遣う様にそう言った女王。
「でもッ……俺のせいで王は……」
「いいえ、断じて貴方のせいなどでは有りません。
……貴方は沢山の民を救ってくれました
王は、あの人は……あの人らしい立派な最期を飾ったのです。
王として、誇るべき最期を……」
彼女は、崩壊した水の都を見つめ、静かにそう言った。
……直後、彼女が流した背中越しの涙を
俺は一生忘れられないだろう
「う、ううっ……ちッ……父上っ!! 」
「なッ……マ、マリーンさん?! 」
この瞬間
睡眠の魔導を打ち破り目覚めた彼女は
一頻り周囲を見回し……自らの目にした惨状が
夢では無かったと知り、再び半狂乱と成った
「マリーンさん……俺が……俺がもっと強ければ……ッ……」
「そんな……父上……父上ぇぇっっ!! ……」
何れ程謝った所で許される事など無いだろう
彼女は、父を失ったのだ……俺と言う
余りに不甲斐ない魔導師のせいで……
……頭を下げ続ける事しか出来ない
俺のせいで……
「マリーン……あの人は立派な最期を迎えたのです
あの人は……最期まで王で在り続けた。
貴女は……彼の娘、その様な無様を晒しては成りません
耐えるのです、マリーン……」
「お母様……お母様ぁぁぁぁぁッ!!! 」
「マリーン、せめて貴女が生きて居て良かった……ですが
此処にはもう……」
◆◆◆
此処まで気丈に振る舞い続けて居た女王
だが、悲しみに暮れる娘を抱き締めた瞬間
僅かに緊張の糸が解けた様に
そう弱気を口にしてしまった。
だが……この直後、主人公は
泥だらけの顔を静かに上げ、涙を拭いつつ
「……俺なんかの言葉では信用して頂けないかも知れません
ですが……必ず、皆様を安全な国へとお連れします。
でもッ……“あの魔物”だけは
マリーン様のお父様を手に掛けたあの魔物だけは
民達の王を奪ったあの魔物だけはッ!! ……この通りです。
これが俺の勝手なエゴだとは判っています
ですが、どうかお願いします……俺に
王の仇を討たせて下さい
お願い……しますッ……」
真っ直ぐに女王マリーナを見つめそう言った主人公
だが、そんな彼に対し女王は
「悔しいのは私も同じ……ですが
相手は並の魔物ではありません……そもそも
貴方が其処まで気負う必要などありません
酷い言葉を投げ掛ける様ですが……
……“無謀は毒”なのですよ? 」
主人公を気遣いそう諭した女王
だが……この直後、主人公は減衰装備を彼女に手渡すと
彼女の目を真っ直ぐに見つめながら
真摯に語った
「恐らく……無謀ではないのですマリーナ様
仇は必ず討ちます……
……此処からでも確りと見える様
派手な一撃を、あの魔物に確りと叩き込みます。
この国の素晴らしい王と、共に散った
清らかな民達へのせめてもの弔いとして
俺が今使う事の出来る最上級の技を以て。
……行って来ます。
転移の魔導、湖の畔へ――」
直後
返事も待たず半ば強引に転移した主人公。
……当然、主人公の身を案じたマリーナであったが
そんな中、マリアは
「心配要りません……今は主人公さんに任せてください
“あの状態”の主人公さんは、絶対誰にも止められませんから! 」
「そう……なのですか? 」
「はい! ……間違い無く! 」
そう、力強く言った。
一方
◆◆◆
湖の畔に立って居た主人公。
強い怒りに打ち震えて居た彼は
湖に向け、ありったけの“文句”をぶつけて居た
「……虐げられている人々を救おうと
必死で願い、動いた人々の努力を……この酷い世界で
やっと王様らしい王様に出会えたって言うのに……彼は
彼の民達だって……お前みたいな“蛸の化け物”風情が
簡単に踏み躙って良い人達じゃ無かった。
それを……お前みたいなクソ化け物のせいでッ!!!
お前だけは……お前だけは絶対に許さないッ!! 」
主人公の怒り
その殺気に呼応するかの様に再び水面へと姿を現した魔物
直後、魔物は残る全ての触手を一斉に差し向けた。
だが、主人公は掌を高く掲げ
「……愚かなる愚者よ
全てを焼き払う傍若無人な黒炎に焼かれ
跡形も無く、消え去れ――」
そう、唱えた。
……直後、湖を覆う様に急激に広がった黒い液体
液体は、湖を瞬く間に“侵食”し
魔物はこの液体に強く拒絶反応を示した。
……強く、嗅覚を刺激する“炭化水素”の香り
悲鳴を上げる魔物を眼の前に……主人公は
静かに振り上げた掌を下ろし
詠唱を完了させた
「――“滅殺之爆焔”
防衛魔導:防火壁――」
瞬間
彼の掌から放たれた“種火”は
黒く染まった湖へと燃え広がり
直後……轟音と共に
辺り一面を巨大な“窪地”へと変貌させる程の
“爆轟”を発生させた
「――王よ、挨拶すら出来ず
お別れをしなければならない非礼をお許しください。
……俺の様な者の賛辞では不足でしょうが
貴方は間違い無く、水の都の民達に取って最高の王でした。
俺の……この技を以て、貴方への弔いとさせて下さい
どうか……安らかにお眠り下さい……」
立ち上る黒煙の中
主人公は、静かに手を合わせ祈りを捧げた。
そして
「……転移の魔導
“護るべき人々の元へ”――」
◆◆◆
「――マリーン様……女王様。
この程度では不足だと分かって居ます
ですが、仇は……討ちました」
帰還後
静かにそう告げた主人公
「父上は……天でご覧に成られたと思うかぇ? 」
直後
涙を堪えそう訊ね返したマリーン
そんな彼女の眼を見つめ
「ええ……間違い無く」
そう答えた主人公
彼は、涙を拭うマリーンから視線を外すと
再び湖の方角へと向き直り
静かに手を合わせたのだった
「な、何ですあの威力は……湖が跡形も無く……」
暫くの後
そう、驚愕の声を挙げた女王
そんな彼女に対し
「こ、これはその……王への弔いのつもりだったのですが
驚かせてしまい、申し訳ありませんでした……」
そう伝えた主人公
だが、尚も戸惑う女王に対し
マリアは冷静に
「あの、女王様……とお呼びしても宜しいですか? 」
「……構いません、マリーナとお呼び捨てください」
「流石に呼び捨ては……ではマリーナ様とお呼びします。
兎も角……一つだけ、覚えて頂きたい事がありまして」
「覚えて欲しい事ですか? ……何でしょう? 」
「えっと……主人公さんの規格外は“気にしたら負け”
“慣れる”のが一番……って事です! 」
「そ、そうなのですね……
……と、それより訊ねるべき事を失念しておりました。
主人公様……先程
私達を“安全な国へ送る”……そう仰りましたね?
周辺の国は何処も私共を疎ましく思って居る筈ですが
何処かに私達が移住出来る国や村があるとでも言うのですか? 」
そんな女王の問いに応えようとして居た主人公
だが、彼よりも僅かに早く口を開いたマリーンは
「母上、主人公殿は王国……もとい“政令国家”の
教育、外交、法務大臣を兼任為さる御方
妾達を救って下さると約束して頂いた故……
……こうしてお連れしたのです」
そう
主人公の代わりに状況を説明したのだった。
だが……この直後
女王の表情は凍り
「王国が私達を救う? ……まさか?!
マリーン……まさか、貴女の身を取引の材料に!?
もしそうなのであれば……わ、私が代わりになります!!
ですから……娘だけはどうかっ!! 」
そう言うや否や
主人公に縋る様に懇願した女王
だが、当の主人公は少し落ち込んだ様子で
「そッ……その……どうか落ち着いて下さい
その様な恐ろしい取引はしておりませんから……ですが。
……王国が如何に下劣な取引を行って居たのか
嫌と言う程分かってしまう反応で少々辛いです。
ご安心下さい……我が国は、今後水の都だけで無く
どの国に対しても“他者の身柄”を
取引の材料になど要求しませんし
今回もその様な事は一切ありませんから」
「そ、それでは……私達は、一体何をお返しすれば良いのです? 」
直後、不思議そうに訊ねた女王に対し
マリーンは微笑みながら
「母上、彼らが求めるのは
曰く――
“感謝と信頼”
――だ、そうです。
主人公殿……合うておるかぇ? 」
「ええ……完璧ですッ!
……さて、木材は不要に成ってしまいましたので
持ち帰って皆様の一時的な居住区を作る足しにでも致しましょうか」
「一時的なじゃと? ……木材を使えば
それはもう立派な家では無いのかぇ? 」
「いえ、マリーン様……あくまで予定ではありますが
皆様には政令国家で一般的な“石造り”の家を
ご家族分、確りとご用意させて頂きたいと思っています。
唯……完成までには暫く掛かりますので
その間、一時的に住む場所として……と言う事ですね」
「であれば、我らの民も後々
“義務教育学校”とやらに通わせても良いのかぇ? 」
「後々も何も……勿論ですッ!
政令国家に元々住んで居る民達と同等の暮らしを保証します! 」
主人公がそう宣言した瞬間
民の一人は興奮し
「お、おれ達が王国民……いや……な、なぁ魔導師の兄さん!
おれ達“政令国家”って国の国民に成れるって事かい?! 」
「はい、その通りですッ!
とは言え……この人数です、荷馬車には
とてもではありませんが乗せきれませんし
皆さんこんな事の後ですからお疲れだと思います。
なので……俺が直接政令国家にお連れしますね」
「ほ、本当か? 兄さん、あんた凄えな……」
「いえいえ! ……っと。
衛兵の皆さんは、先に荷物を国へ持ち帰って下さい
お手間をお掛けしますが、宜しくお願いします……」
「ハッ! 主人公様もご無理を為さらぬ様ッ!! 」
「お気遣い感謝します……では、先ず
女王様を含めた百名程をお運びしますので
皆さん手を繋いで頂いて……では行きますッ!
転移の魔導、政令国家東門前へ! ――」
◆◆◆
「――さッ、流石に“転移続き”で少し疲れて来たな。
っと……皆様、無事到着しましたので暫くお待ち下さいませ!
魔導通信――
――ラウドさん、これから東門前に
水の都から女王様と王女様を含めた
約三〇〇人程を避難させて来ます。
皆様かなり疲れていらっしゃいますので
出来る限り丁寧に歓迎して頂けると助かります。
それと、荷馬車の荷物と衛兵達は
少し遅れて帰って来る予定です」
◆◆◆
「……何ぃ? 避難と言ったか!?
何か有ったのじゃな?! ……細かい話は後で良い!
主人公殿、救助活動を頼んだぞぃ! 」
「はいッ! ……さて
皆様は此処で暫く待機して居てください
残る方々を連れて来ますので……それでは!
転移の魔導、馬車の近くへ! ――」
◆◆◆
この後、複数回に分け
転移魔導を用い、何とか全ての民を東門へと運び切った主人公。
だが、次第に疲労の色が見え始めた主人公の姿に
メルは
「治癒……では治りませんよね
本当にご苦労様ですっ! ……」
「う~ん、メルちゃんの笑顔で治るかも? ……な~んちゃって! 」
「へっ!? ……あのっ……そのっ……はぅぅぅ……」
「あ~……超高速で旅行したみたいな物ですもんね
って事で……お土産カモン! 」
「マリアお前……本当にブレないな」
「……えっへん! 」
「いや、一ミリも褒めて居ないが……って、まぁいいや!
ラウドさんが来たみたいだ! 」
直後、挨拶もそこそこに
出来るだけ早く饗す為か
皆を大統領城へと招く事を伝えたラウド大統領。
一方……ラウドの優しい言葉と声に
強張って居た民達の表情は少しずつ緩み始めて居た
「……と、言う事じゃ
城までは馬車を用意しておるので、皆慌てずに乗り込む様にのぅ! 」
暫くの後
民達が大統領城へと到着する頃には
既に食事の用意は完了しており
「……細かい挨拶は皆疲れておるじゃろうから後回しにするぞぃ?
先ずは皆に食事を楽しんで貰おうと思うて居る! 」
ラウドがそう言うと
民達は目の前の豪勢な食事に目を輝かせて居た
「おぉ、栄養価が高そうな料理ばかりだ……
……流石です、ラウドさんッ!
っと……これは皆様の疲れを癒やす為の食事です。
“テーブルマナー”などお気に為さらず
どうか、ご自身の楽しめる形でお召し上がりください」
主人公がそう言うや否や
水の都の民達は久しぶりの温かい食事を思い思いに食べ始めた。
一方、そんな民達の姿を目の当たりにした女王
“マリーナ”は
「民が皆、笑顔に……ラウド様、主人公様……私達は何とお礼を……」
そう恐縮して居た、だが
そんなマリーナに対し、主人公は
「……感謝をして頂くのはとても有難いのですが
仮にも女王であるマリーナ様に“その様に”されますと
民達の手前、俺達も困りますから……どうかお気を遣われず
マリーナ様もお食事をお召し上がりに成って下さい。
あッ! ……それと、晩ごはんには
また違う“味わい”をご用意致しますので
そちらも楽しみにして居てくださいね! 」
と言った。
そして、この直後マリーンに対し
「唯、その為には……マリーン様
出来れば晩ごはんは例の願いを叶えられる“店”へと
お連れしたいと思って居るのですが……
……どう、でしょうか? 」
そう、確認を取った
直後
「“例の願い”? ……はっ?!
御主は本当に良い男じゃな……
……斯様に優しくされ続けては
流石の妾も……ほ、惚れてしまうぇ? 」
自らの不意に発した一言を気遣った彼の優しさに
マリーンは頬を赤らめながらそう言った。
だが、この直後……そんなマリーンの態度に
またしてもメルは
「だっ……駄目ですっ! 」
と、慌てて立ち上がり
叫んだ
「な゛ッ?! ……だ、だからメルちゃん!
俺は! ……その……ッ……何と言うか……さ……」
「はっ?! ……ま、また私っ……ごっ、ごめんなさいっ! 」
「時に……メル殿は主人公殿を愛しておるのかぇ? 」
「へっ?! ……そ、そんなっ!
でもっ! あのっ……えっと……っ……はぅぅぅ……」
マリーンの質問に顔を真っ赤にして俯いたメル
そのいじらしい姿に、普段|鈍感な主人公さえ何かに気付いた直後
彼は、慌てて話を逸した
「……そッ、それはそうとマリーナ様!
水の都出身者の中で政治に関わって居た方は
お二人の他にいらっしゃいますか? 」
「いえ、私と娘の他には……もう……」
「……申し訳ありません、配慮が足りませんでした。
それで、その……お訊ねした理由なのですが
水の都出身者にも、この国の政治に関わって頂きたくて
それなら元々政治に関わって居た方が適当かと思い
質問した次第なのですが……」
「……私達がこの国の政治に?
主人公様、私達は今日現れたばかりの“新参者”ですよ? 」
「ええ……“だとしても”です」
「全く何処までも……いえ。
“主人公さんは規格外、慣れてください”……でしたね? 」
「……細かい事は後々説明致しますが
“旧王国の様な下劣な扱いはあり得ない”
と言う事だけでも理解して頂ければと思います。
あともう一つ……お二人に
この国の政治に関わって頂きたい理由としましては
“民の苦しみが分かる方”を政治家として迎え入れたいのです。
……党利党略など何の役にも立ちませんし
寧ろ悪影響さえあったりしますから
マリーナ様……この国を
もっと素敵にしたいと思いませんか? 」
「ええ、民が幸せな国を作るのは為政者として当然の事です」
「良かった……では、正式にラウド大統領の認可を頂き
マリーナ様を我が国の大臣として迎え入れたいと思います。
ラウド大統領……宜しいでしょうか? 」
「うむ……それが良いじゃろう」
「ラウド様……では、謹んでお受け致します。
必ずやこの国の為、民の為に
正しき為政者として、この身を捧げましょう」
「はいッ! ……よろしくおねがいします!
これからは正式に此処に居る皆さん全員が
政令国家の国民です……共に、良い国にしていきましょう! 」
「ええ、私の方こそ宜しくお願い致します」
こうして
水の都出身者達を正式に迎え入れる事と成った政令国家
今後、この国は一段と大きく成って行く事と成る……だが
この国が主人公の理想に近づくにつれ
貴族達の不満は確実に溜まりつつあった。
“光が強まる時、闇は尚強まる”
……主人公の目指す完璧な国家
だが、その国家運営には
少しずつ暗雲が差し掛かり始めて居た
===第二二話・終===




