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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝15万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第一章

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第二一話「外交は楽勝?……前編」

執務室に居た俺達の元へと突如(とつじょ)として現れた


“異国からの使者”


近衛兵から“マリーン様”と紹介された女性は

現れるなり


「……(わらわ)はマリーン、水の都からの使者じゃ

貴国の国王が変わったと聞いたが……それは御主か? 」


水色の髪に緑の瞳、若く容姿端麗(ようしたんれい)なこの女性は

少し尊大(そんだい)にも思える態度で

ラウドさんに対しそう(たず)ねた


「“国王”では無く“大統領”と言う役職じゃがのぅ?

して、本日はどう言ったご用件じゃろうか? 」


「大統領? 聞き馴染みの無い役職じゃが

国王と何が違うのじゃ? ……長なのであろう? 」


「それは……詳しい説明は主人公殿に頼むとしよう」


「え゛ッ?! ……い、いえ

では代わりに俺が……マリーン様。

“大統領”とは、国民の投票によって選ばれ

自身の身分に関係無く成る事が出来る存在です。

……簡単に言えば

元の王国と言う存在が“世襲(せしゅう)君主制”であるのに対して

“大統領制”とは国の(ため)になる人材を、国民の中から

国民自身が選ぶ事が出来ると言う仕組みです」


「何とも酔狂(すいきょう)な……

……しかし、国民が勝手者ばかりであれば

(ロク)でも無い者が“大統領”に成るのではないか? 」


「確かに……その可能性が“無い”とは言い切れません。

……ですが“世襲(せしゅう)君主制”で

血縁さえあれば成れてしまう王よりも、国民の(ため)を思い

立候補した者の方が、圧倒的に

良い長に成る確率は高いのでは……と俺は考えています。

も、勿論(もちろん)ッ! “君主制”が悪だとは言ってませんし

良い王は世の中に沢山居るはずですが! ……」


「……何を慌てて居る? 」


「い、いえ……その……失礼致しました」


「ふむ……所で、御主は政治家かぇ? 」


「はい……外交・教育・法務の三大臣を兼任させて頂いております」


「三つを兼任とは……人手が足りないのかぇ? 」


「い、いえその……とッ、所でマリーン様!

本日はどう言ったご用件でお越しに成られたのでしょうか? 」


「……おお、そうであった。

新しい国王……もとい、大統領へと変わった事で

我が国との関係性に変わりが無いかと

確認をしに参った次第じゃ……」


この瞬間

そう問うたマリーンさんに対し、ラウドさんは


「ううむ……誠に申し訳の無い事なのじゃが

わしは貴国との関係性を良く知らんのじゃよ。

前国王とは具体的に

どう言った取り決めをしておったんじゃね? 」


ラウドさんはそう(たず)ねた。

これに対し“協定書を交わした(はず)”と言ったマリーンさんの言葉に

慌てて近衛兵に協定書を探して来る様命じたラウドさんは


「マ、マリーン殿……すまんが(しば)らくお待ち頂けるじゃろうか? 」


と、冷や汗を拭いながら

そう言った


「ふむ……では待つ間にこの国の事を詳しく教えて貰おうかぇ? 」


「勿論じゃ……じゃが、大きく変化して居る途中でしてな

此処(ここ)はやはり、詳しくは主人公殿に……」


そう言いつつ俺を横目でチラリと見たラウドさん。


“また丸投げッ?! ”


内心そう思いつつも説明を引き受けた俺は


「え、えっと……マリーン様がお聞きに成られたい話は

恐らく、王国時代との差異(さい)についてでしょうか? 」


「その通りじゃ……話してくれるかぇ? 」


「ええ、では()ずこの城の内部に

“学校”が出来た事でしょうか――」


この後

マリーンさんに対し“義務教育学校”についての説明を始めた俺。

学費は国が負担して居る事

種族の差別が無い事などを話した所


「……のう、御主は今

“種族の差別無く”と申したが……」


「ええ、それが二つ目でもあります。

我々は多種族国家として

この国を再編している最中なのですが

恐らく、その反応を見る限り

マリーン様の母国に()かれましても

多種族に対する感情が“良い物では無い”のかと邪推(じゃすい)します。

どう……でしょうか? 」


そう(たず)ねた瞬間

マリーンさんは周りに居る各種族長達の顔を見渡しながら

少し、居心地の悪い顔をしつつ語り始めた


「……包み隠さず答えれば、(わらわ)の国では

オークやダークエルフは()み嫌われる存在じゃ。

その……に、人間を喰らうと聞くぞぇ?

そもそも……先程から気に成っておったのじゃが

この場には数多くの種族が居るが……皆、大臣なのかぇ? 」


「ええ、そうですが……やはり

色々とお伝えしなければならない事が有る様ですね。

()ず第一に……マリーン様の(おっしゃ)った

一部種族へのお考えは人間の勝手な思い込みや

嘘による所が(ほとん)どなのです。

その(ため)、我が国では

“義務教育学校”で正しい知識を教え

他種族との共生を目指そうとして居るのです。

……マリーン様の(おっしゃ)られた“人間を喰らう”と言うのも

恐らくは文献等に記されて居た情報などが

元に成って居るのかと思いますが……どうでしょうか? 」


「うむ……その通りじゃ」


「やはりそうでしたか……我が国の古い文献にも

余りにも事実と異なる物ばかりが記載されておりましたし

どれも記載した人間の悪意を許せなく成る程の物ばかりでした」


「で、では……オークもダークエルフも

人間は喰わぬと言うのかぇ? ……」


この質問に

グランガルドさんとクレインさんは


「当然だ……差し詰め吾輩(わがはい)達の

“悪食”とまで揶揄(やゆ)される食欲から連想しただけであろう」


「同じく……私達ダークエルフは

(ほとん)ど人間と変わらない食事を摂る」


そう訂正した

直後、そんな二人に対し


「ふ、ふむ……それは、知らぬ事とは言え失礼をした

(わらわ)の勉強不足じゃ……済まぬ」


と、頭を下げたマリーンさん。

直後、そんな誠意ある彼女の姿に

悪い人では無いと知った俺が説明を続けようとして居たその時

“協定書”を手に現れた近衛兵


「うむ、ご苦労じゃ……」


直後

近衛兵の手渡した協定書に目を通して居たラウドさん。

一方、そんなラウドさんに対し

妙に緊張した面持ちで


「……(わらわ)達との取り決めは

協定書(そこ)”に記されて居る物と相違(そうい)無く

今後も変わらず()り行われるか? 」


この瞬間

(わず)かに緊張の面持ちでそう問うたマリーンさん。

だが


(しば)し待ってくだされ……ふむふむ……何と?!

こ、これは何とも……主人公殿、これをどう思うかね? 」


直後

そう言ってラウドさんが差し出した協定書には

“水の都”(がわ)に取って、余りにも(こく)な協定文が

書き連ねられて居て


「な、何だこの協定書ッ?! ……

……マリーン様、本当に今までもこの様な協定で? 」


「どれ? ……うむ

何処(どこ)も変化は無いが……どうしてじゃ? 」


「で、ですがッ! ……これでは

そちらが圧倒的に損をする協定ですよ!?

一体|何故(なぜ)こんな(ひど)い協定をお飲みに成ったのです? 」


「そ、それは……ふむ、此方(こちら)も一度

自国の事情を説明しなければ成らぬ様じゃな……」


直後

マリーンさんは


「……(わらわ)の母国は“水の都”と呼ばれて居る。

その名だけを聞けば“聞こえ”は良いであろう?

じゃが、現実には船上で生活をする事を余儀(よぎ)無くされた

(さなが)ら……“難破船(なんぱせん)”の様な国なのじゃ」


「そ、その……他の土地に移り住めない理由でも? 」


「移り住めるものならば直ぐにでも移り住みたい

しかし、何処(どこ)(わらわ)達を受け入れてなどくれぬ。

じゃが、そんな最中(さなか)王国だけが

“協定を結ぶのならば”……と、巨大な船を建造する為の材料と

人員を寄越(よこ)してくれた。

文字通り、我が国は“(わら)にも(すが)る思い”で協定を結んだのじゃ。

しかし……月日が過ぎれば船は痛む

(すで)に木材など一切取れぬ様に成ってしまった我が国は

他国から木材を(ゆず)り受ける(ほか)に手は無い。

……生命線に等しい木材供給の(ため)ならば

それが如何(いか)なる不平等であろうとも飲む他が無い。

仕方が無いのじゃ……(ゆえ)に頼む

この通りじゃ……今まで通り、木材を融通(ゆうずう)して貰いたい。

その代わり……女は協定通りの数、御主達の国へと渡す

男も……奴隷として規定数渡す。

じゃから、どうか……今まで通り……ッ!! ……」


そうして必死に頭を下げるマリーンさんの瞳には

悔しさと情けなさの入り混じった涙が(にじ)んで居た


「……外交上の協定に関する裁量(さいりょう)、その他は

外交大臣である俺にも決定権がある……そうですよね? ラウドさん」


「その通りじゃが……どうする気じゃね? 」


「良かった、ではこの協定は……

……今、この時を(もっ)て“破棄”します」


そう宣言し“協定書”を破り捨てた俺。

その様を目にしたマリーンさんは

俺に(すが)り、涙ながらに懇願(こんがん)し始めた……だが

俺は決してマリーンさんに“意地悪をした”訳では無い


「……何をするのじゃ?!

必要ならばもっと差し出す! だから……どうか!

どうか……っ……ッ!!! 」


直後

(なお)も慌てふためくマリーンさんに対し、俺は


「マリーン様……説明不足を謝罪します

ですから、どうか落ち着いて下さいマリーン様。

俺が破棄すると言ったのは

“こんな不平等な物を”……と言う意味です。

当然、代わりの協定書も直ぐに用意致します

ですから……ご安心下さい。

……もっと平等で、お互いが幸せになる様な協定を

改めて、我が国と結んでは頂けませんか? 」


「そ……そうして貰う為にはどうすれば良いのじゃ?

御主が望むならば……この身でも差し出すぇ? 」


「な、何ですかそのとんでも無く惹かれるお誘い……って

そッ……その様な事は求めてませんからッ!!! 」


と、()(さま)我に返り

必死に否定した俺だったのだが


「鼻の下伸ばしながら言うと説得力無いですよ? 」


とマリアに言われ

メルちゃんからも静かに睨まれてしまった。

うん、最悪だ


「ふ、二人共……その視線止めてくれ……ゴホンッ!

とッ、兎に角! ……新たな協定書についてですが

水の都の皆様が“今まで通りの生活”を望まれるのであれば

木材の安定供給はこれまで以上に行います。

無論(むろん)、それに必要な人員も可能な限りお送りします

ですが……もし、皆様が“政令国家で暮らしたい”と望まれるのなら

()ぐに……とは行かないかも知れませんが

我が国の居住区を拡張し、皆様をこの国の民として迎え

行く行くは、我が国の国政にも関わって頂ける様に手配します。

そう言う協定を新たに結び直したい……そう言って居るんです」


「で、では……此方(こちら)は何を差し出せば良いのじゃ?

女も男も要らぬと言うなら何を差し出せと?

(わらわ)達には他に差し出せる様な物など何も……」


「う~ん……“感謝と信頼”ですかね? 」


そう告げた瞬間

マリーンさんは(しば)らくの間“ポカーン”として居た。

そして、ふと我に返り


「か、からかっておるのかぇ?! ……

……それでは貴国に何の得も無いではないか! 」


そう言ったマリーンさんの指摘は至極真っ当だ。

……そのせいか、この直後

ラウドさんは少し意地悪げに


「確かに……我が国には全く得がないのぅ?

主人公殿、さてはこの場で圧倒的に恩を売り

あわよくばマリーン殿と“ぱふぱふ”するつもりじゃなかろうのぅ? 」


「マリーン様(ほど)の美女と“ぱふぱふ”かぁ~

幸せな時間だろうな~……って!? ラウドさんまで何をッ!?

……って言うか、民が増えれば

後々の国力増強に繋がる事位

ラウドさんだって分かってて言ってませんッ?! 」


「うむ、理解はしておるが……面白くてつい、な?

……ほっほっほ! 」


「ほっほっほ! ……じゃないですよ全く!!

そ、その……マリーン様、お見苦しい所をお見せしてしまい

大変申し訳有りませんでした。

それで、その……話を戻しますが

マリーン様はどうされたいですか?

我が国に移り住まれるか

今まで通り水の都に残られるか……

……どちらでも、お望みの形で構いません。

(ただ)、その代わりと言っては何ですが

我が国とは最低でも“友好国”と言う形を取って頂き

貿易、その他に関し

何らかの優遇措置などを取れると、此方(こちら)としても幸いです」


◆◆◆


この瞬間

終始笑顔での会話を意識し続けて居た主人公

彼は、彼女(マリーン)の緊張と悲しみを取り除く事に

全力を尽くして居た。


だが、その一方……余りの“満額回答”が(ゆえ)

逆に困惑すると言う、謎の状態に(おちい)って居たマリーンは


「す、直ぐに決めるのは無理じゃ!

い、一度国に帰り……み、皆に確認をしなければ! 」


「成程……それもそうですね

(ちな)みに、今木材は足りていますか? 」


「正直、少し心許無(こころもとな)い、しかし……」


「マリーン様……どちらを選ばれるにしろ当面の木材は必要な筈

必要数は用意させて頂きますのでご安心を」


「そ、それならば……五十本程、頂いても良いかぇ? 」


「へッ? ……そ、その程度でしたら恐らく

すぐに準備出来るかと思いますが

その……お持ち帰りに成る手段は御座いますか? 」


「ううむ……頼んで置いて申し訳無いが

(わらわ)の馬にはとても全ては乗らぬじゃろう

じゃが……どうにかする他あるまい」


「そうですか……では護衛と外交を兼ね、俺とマリア

メルちゃんの三名で同行しても(よろ)しいですか? 」


「それは構わぬが……そちらは良いのか?

御主は仮にもこの国の大臣であろう?

御主程の者が不在ではこの国の国政が

停滞してしまうのでは無いかぇ? 」


「お褒めにあずかり光栄ですが……この場に居る皆さんは

俺などより遥かに優秀な方ばかりなのでッ!

なので……お気遣いなさらないで下さい。

……いざと成れば転移魔導で戻れますし

問題があれば魔導通信で連絡も取れますので! 」


「何?! ……御主は魔導師としても優秀な存在なのかぇ?!

ならば……御主を見込んで相談があるのじゃッ! 」


言うや否や

とんでも無い勢いでグッと距離を詰めて来たマリーンさん。

……いい香りがしてちょっとドキッとしたが

直後、必死に(こら)えつつ


「で、出来る事ならば協力させて頂きますが

な……何でしょうか? 」


「……先程も申したが(わらわ)の国は水の都じゃ。

それ(ゆえ)、水生の魔物が多く生息しておるのじゃが

最近、その魔物が原因で民が死亡する事件が多発しておるのじゃ。

頼み事ばかりですまぬが……力を貸しては貰えぬか? 」


「……そ、そう言う事でしたら是非!

所で……水の都に魔導師は何名程いらっしゃるのでしょうか? 」


「それが……魔導適正こそ高い者ばかりじゃが

魔導に用いる道具を揃える余裕が無い(ゆえ)

皆、船を修理する為の道具を武器として使うしか無いのが実情じゃ。

(ゆえ)に……居らぬのと変わりは無い」


「成程……水や食料は足りていますか? 」


「……辺り一面が湖じゃ

水は尽きぬが、食料は正直心許無(こころもとな)い」


「では、当面の食料も持って行きましょう……民は何名程です? 」


「約七〇〇名程居るが、病気の者も居る(ゆえ)……」


と、話すマリーンさんに対し

メルちゃんは


「それなら私が治せますのでご安心下さいっ!

それに、主人公さんは回復術師(ヒーラー)としても優秀ですからっ! 」


「何? ……回復術師(ヒーラー)としても?

しかし“転移魔導”は回復術師(ヒーラー)の持つ技では無い筈。

攻撃術師(マジシャン)の技を持ち、回復術師(ヒーラー)としても優秀とは……御主何者じゃ? 」


「えっと……“トライスター”はご存知ですか? 」


「話には聞いた事があるが、まさか御主……トライスターなのかぇ?! 」


「ええ、一応……ですからご安心ください」


「全く……御主達には驚かされてばかりじゃな」


と、いちいち俺の力に驚いてくれる

マリーンさんの反応は嬉しかったが、反面

(いささ)か俺に“慣れ過ぎて居る”ラウドさんは


「マリーン殿……その様に

いちいち驚いておっては日が暮れますぞぃ?

……主人公殿と同じく

わしも早く水の都を救わねばと思うておる所ですじゃ。

(ゆえ)に、わしは主人公殿の決定に(したが)

木材は倉庫から、食料はミリア殿に頼むのが良いじゃろう。

無論(むろん)……主人公・マリア・メル

以上三名の水の都への訪問も許可するぞぃ! 」


そう、取り急ぎ命令を下した

だが、俺には一つだけ気掛かりな事があって


「えっと……流石にその物資の量ともなれば

準備にそれなりの時間が掛かる筈かと思います

ですので、俺は一度ミリアさんとの“ある約束”を果たす(ため)

食料を受け取るついでとしてヴェルツに戻りたいのですが

宜しいでしょうか? 」


「ん? それは構わんが……」


「有難う御座います! それと、その……

……使者であるマリーン様に

このまま“蜻蛉返(とんぼがえ)り”でご帰国頂くのは

外交的に無礼かと思います……ですので

ヴェルツでのお食事などを

合わせてご提供出来ればと思って居るのですが……」


「ふむ、では……食事が終わる頃までには全てを用立てて

ヴェルツ前に手配しておくから安心すると良いぞぃ? 」


「了解しました……ではマリーン様

俺を掴んで頂けますか? ……マリア、メルちゃんも」


「こ、これで良いのかぇ? 」


「はい……(しっか)りと掴んで居て下さいね?

では……転移の魔導

ヴェルツ前へ! ――」


◆◆◆


「なぁっっ?! ……て、転移魔導じゃと?!

何と言う事じゃ……城があんなにも遠い……」


「あッ……お、驚かせてしまい申し訳有りませんでしたッ!

そ、それとその……“私用”に付き合わせてしまい

申し訳ございません」


「構わぬ、(わらわ)も正直その……腹が減っておったのじゃ」


「……お気遣い痛み入ります

では、ヴェルツへご案内しますね! 」


「気遣いなどでは無く、本当に減っておったのじゃが……」


「あら! お帰り主人公ちゃん! ……ん?

そちらの女性は………“誰さん”だい? 」


「ただいまですッ! ……此方(こちら)はマリーン様

水の都からお越しのお客様なのですが……その

マリーン様にもお食事を用意して頂けますか?

俺のは……約束通り“さっき”のをお願いしますッ! 」


「……おや、そうなのかい

他国からのお客さんなら腕に()りを掛けて

ウチでも一番豪華な料理を出さなきゃ

ヴェルツの名が(すた)るってもんさね!

そうと決まったら……ちょっと待ってておくれよっ! 」


そう言うと

ミリアさんはこれ以上無い程に張り切り

凄まじい勢いで厨房の奥へと消えて行った。

だが


「こ、これ女将っ! (わらわ)には余り持ち合わせが……」


「え? ……ああ、ご安心をマリーン様

お代は全て此方(こちら)持ちですので

どうか安心してお召し上がりください」


「そ、そうか……何から何まですまぬ。

しかし……失礼ながら、王国時代と比べ

何故(なぜ)こんなにも寛容(かんよう)になったのじゃ? 」


「それは多分……差別迫害の根絶が目標だからでしょうか?

……少し現実的な話ですが

人間とそれ以外の種族との間で無駄に争って居ては

少なからず国は疲弊(ひへい)し、(すき)を狙う他国や

魔族達から見れば簡単に落とせる国に成り果ててしまう。

ならば、無駄な争いは極力減らし

お互いに協力をしていけたら……そう思いませんか? 」


「成程……それは御主の考えかぇ? 」


「ええ、ですが各種族の皆さんにも協力を頂けて居るので

恐らくは皆さんもそんな状況を望んで居たのだろうと思いま……」


などと話して居たら

ミリアさんが料理を運んで来てくれた


「……おまたせ! ヴェルツ特製スペシャルセットだよ!

マリーンさんも沢山食べておくれよ?

それと……主人公ちゃんのだが、本当にこれで良いのかい?

一応は温めたが……」


「ええ、有難う御座いますッ! ……さて!

マリーン様、どうぞ遠慮無くお召し上がり下さいッ! 」


「何と……斯様(かよう)に豪勢な食事

母上にも食べさせたい……」


この瞬間

そう小さな声で言ったマリーンさん……彼女は

何だか少しだけ切なげで


「……少しでも皆様の生活が楽になる様

全力で協力させて頂きます……ですが。

今はマリーン様が英気を(やしな)う時間です

どうか、ごゆっくりご堪能下さい」


「主人公殿……御主は良い男じゃな

顔も……眉目秀麗(びもくしゅうれい)じゃ。

……(おも)い人は居らぬのかぇ?

居らぬのなら(わらわ)と……」


「だっ! ……駄目ですっ!!! 」


瞬間

立ち上がるや否やそう言ったメルちゃん、だが

直後、我に返った様に


「ハッ!? す、すみませんっ!! 何でも無い……ですっ」


「メ、メルちゃん?! ……びっくりした、どうしたの? 」


「い、いえ……主人公さんが

もしマリーン様とそのっ……け、結婚したら

一緒に居られなく成ってしまう様な気がして

考えたら、怖くて……ご、ごめんなさいっ! 」


「メルちゃん……心配させてごめんね

でも、大丈夫! メルちゃんに寂しい思いはさせないから! 」


彼女の目を見つめそう伝えた俺だったが

これに対し、不満げに返事をするに(とど)めたメルちゃん。


彼女は……俺をどう思って居るのだろう?

彼女のこの強い思いは、俺は


「……き、気を悪くさせたのならば謝る

メルとやら……済まなかったな」


「い、いえっ! ……私の方こそっ! ……」


ともあれ。

(しば)らくの後、大量の物資を載せた荷馬車が

ヴェルツ前へと到着した


「……失礼致します!

物資と荷馬車の準備が整いました!

荷馬車の数が予定より多く成りましたので

我々も同行させて頂きます! 」


「ご苦労様です……ではマリーン様、そろそろ行きましょう。

……ミリアさん! ご馳走様でした~ッ!

お代は全て大統領府宛……と言うか

“ラウドさん宛”でお願いしま~すッ! 」


「あははっ! そりゃあ驚くだろうねぇ!

って、気をつけていってくるんだよ~っ! 」


「はいッ! ……では、行きましょうマリーン様

道案内をお願いします」


「承知した……女将殿、大変に美味な料理であった」


「ありがとねぇ……また来ておくれ!

マリーンさんも気をつけて帰るんだよっ! 」


「うむ、必ずまた訪れよう……では主人公殿、行こうかぇ? 」


直後

俺達を乗せた荷馬車は、物資を満載し

マリーンさんの故郷である、水の都へと向かう事と成った


===第二一話・終===

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