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異世界転生って楽勝だと思ってました。  作者: 藤次郎
第一章

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第二十二話「外交は楽勝?……後編」

<――マリーンさんの故郷である“水の都”を目指し

大量の物資と共に荷馬車に揺られて居た俺達。


その一方で……転生後、初めて政令国家を離れた俺は

揺られる荷馬車の中でマリーンさんを質問攻めにして居た――>


………


……



「水の都ってどの辺にあるんですか? 」


「……御主達の国から東に二山超えた場所が水の都じゃ」


「でも船の上で生活って、酔ったりしないんですか? 」


「船と言うてもいかだの様な物を繋げ土地の様に使い

その上に家を立てておる……まして湖じゃ。


……揺れなどいにひとしい」


「成程、船と言うより陸の様にして居るのですね……


……それなら修繕もしやすいって事ですね! 」


「うむ……じゃが最近は魔物が出るゆえ

修理中に襲われ怪我をする者が後を絶たぬのじゃ……」


「そうなんですね……一刻も早く退治しなければ」


「……頼むぞぇ。


さて、そろそろ水の都が見えてくる筈じゃが……って、何じゃあれは?!! 」


<――窓の外を見るなり慌てた様子でそう言ったマリーンさん。


彼女の視線の先にあった光景


それは――


巨大な魔物……逃げ惑う民達……破壊される家屋……


――阿鼻叫喚の声が響き渡る

水の都の姿だったのだ――>


「くっ! ……マリーン様、あのいかだの上に飛びます!


二人も掴まって! ……転移の魔導


あのいかだの上へ! ――」


………


……



《――直後

いかだの上に転移した主人公のすぐ近くには

タコに酷似した巨大な魔物の姿が有った。


魔物は今にも民の一人を捕食せんとその触手を操り――》


「う、うわァァァァァっ!? 助けてくれぇぇっ!! ……」


《――民の一人を軽々と持ち上げた。


だが――》


………


……



「……くっ! 間に合えっ!!


氷刃ッ! ――」


《――咄嗟とっさに放った攻撃にり魔物の触手を切り落とし

すんでの所で民を救出する事に成功した主人公……だが、その一方で


触手を切り落とされた痛みにより暴走を始めた魔物は

周囲のいかだを大きく揺らし――》


………


……



まずい! いかだの繋ぎ目が外れ掛けておる!

主人公殿! ……御主の転移魔導で民を避難させてはくれぬか?! 」


「……も、勿論そのつもりです!

ですが一人づつでは間に合わない! ……マリア、メルちゃん!

……マリーン様も!


出来るだけ皆さんを一箇所に集めて居て下さい! 」


「……承知したッ!



民よ集まるのじゃ! ……この者に掴まれば避難出来る!


荷物など捨て置け! はよう集まるのじゃッ! ――」


《――直後、民草に向け必死に呼び掛け続けたマリーン。


そして、その声に気づいた民達は――》


………


……



「お、王女様っ?!! ……皆こっちだぁぁぁ!!

集まれぇぇぇっ!! ……」


「あ、ああ! 何だか分からねぇが王女様はあの男に掴まれって言ってるぜ! 」


「……あの男が転移魔導で逃してくれるらしい! 」


「成程! 急ぐぜ! ……おい! 女子供を優先しろ! 」


《――懸命なマリーンの呼び掛けに気付いた多数の民達は

急ぎ彼女の元へと走った……だが、その一方

民達の発した“ある発言”が気に成った様子のマリアは――》


………


……



「えっ? ……王女様?

主人公さん、民の一人が今マリーン様の事を“王女様”って……」


「確かに気になるけど……そんな事は後だマリア!!


……皆さん、俺にしっかりと掴まって下さい!!

掴まれない人は俺を掴んでる人を掴んでください!

いずれにしても危険ですから

良いと言うまでは絶対に手を離さないでください!


よし……行きます!


転移の魔導、馬車の近くへ! ――」


《――百人を優に超える人数を一気に馬車の近くへと転移させた主人公。


そして、初めての転移魔導に驚く民達に対し――》


………


……



「……転移魔導で驚かせてしまい申し訳有りませんが

兎に角、今は此処でじっとしていてください!


っと……そこの衛兵さん! 彼らの保護をお願いしますッ!

俺は引き続き残りの民達を救出して来ますのでッ!!


転移の魔導、いかだの上へ! ――」


《――民達と衛兵にそう言い残すと

蜻蛉返トンボがえりでくずいかだの上へと戻った主人公――》


………


……



「……民達は避難は出来たのかぇ?! 」


「ええ、馬車の近くへ避難させました! ……早く次の民を! 」


《――緊迫きんぱくした状況の中

彼らの居る場所から少し離れたいかだの上では

傷だらけの姿で懸命に魔物との戦闘を続けている

一人の勇敢な王が居て――》


………


……



「来いッ! ……邪悪な魔物め!!!

皆、早く逃げるんだッ! ……マリーナも早くッ! 」


《――剣を振るい、必死に戦い続けていた王は

離れたいかだに居る妻マリーナの身をあんじていた。


……一方、彼の妻マリーナは

逃げまどう民達と共に慎重にいかだを渡り歩いており――》


………


……



「ち……父上っ?! 母上っ!?


主人公殿、頼むッ! 父上と母上をッ! ……」


「は、はいっ! ……今助けますからッ!


氷刃三連撃ッ!! ――」


《――彼の放った攻撃は魔物の触手を数本切り落とし

その瞬間、わずかに魔物をひるませ……その隙を狙い

最も近い距離に居た女王マリーナを含む民達をむかえに走った主人公は

ず彼女達を馬車の近くへと転移させ――》


………


……



「……此処でお待ちに成っていて下さい! 」


《――そう伝えた。


そして再びいかだへと戻ろうとして居た主人公かれに対し

女王マリーナは――》


「魔導師様、民達を……王を……お救い下さいっ! 」


「……はい、必ずッ!


転移の魔導、いかだの上へッ!! ――」


《――そう固い約束をした主人公

その一方で――》


………


……



「ん!? ……マリーン!?


……となりに居るのは魔導師か!

皆逃げるんだ、いかだはそう長くは持たない! ……ぐっ! 」


「勿論です父上っ! ……早く父上も! 」


「ああ、今そちらに行く! ……」


《――直後マリーンの元へと走り出した王。


主人公かれも王を救う為、彼の元へと走り始めて居た……だが。


……触手を切り落とされ、苦痛に暴れる魔物の乱撃により

周囲のいかだは破壊され

不運にも破片の一つが王の太腿をつらぬいた。


……それでも懸命に進む王であったが


“血の匂い”を嗅ぎ取った魔物は……いかだ諸共もろとも


王を飲み込んだ――》


………


……



「ち……父上?


父上?! ……父上ぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!


嫌ぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!! ……」


………


……



「……くっ!

いかだがもう……マリーン様、もう持ちません!

出来るだけ民を集めて飛びますから! ……マリーン様も早くっ! 」


《――そう叫んだ主人公。


だが、マリーンの耳に彼の叫ぶ声など届く筈も無かった……


……どれ程呼び掛けようとも、半狂乱と成った彼女の叫び声は

全ての音をかき消す程だったのだから。


徐々に崩壊していくいかだ、怯える民達……


……この、どうする事も出来ない状況に


主人公は“苦渋の決断”をした――》


………


……



「……くっ。


マリーン様……ごめんなさいっっっ!!!


睡眠の魔導ッ!!


眠れ、永久に!! ――」


「父……上っ……」


「……皆さん、今は何も言わず俺に掴まって下さい。


転移の魔導、馬車の近くへ――」


《――彼がした“苦渋の決断”


彼女マリーンを眠らせ

強制的にこの場から移動させる事を選び、馬車の近くへと転移した。


言うまでも無く……彼は、救えるだけの命を全て救った。


だが、それでも多数の犠牲が出てしまった事

“約束通り”王を救う事が出来なかったと言う自分の無力さ……


……彼は、様々な後悔に

押し潰されそうに成って居た――》


………


……



「クソッ!!! ……クソッ!!

俺の所為で……俺がもっと強かったら……女王様

俺の所為で、王は……王はッ! ……」


「私を含め、多くの民と娘を救って頂いた事……心よりお礼申し上げます。


ですが、もう……顔をお上げ下さい」


《――彼女に対し頭を下げ続け

自らの不甲斐無さを悔い続けて居た主人公かれの事を気遣い

女王マリーナはそう言った――》


「俺が至らない所為で王は……」


「いいえ、断じて貴方の所為などでは有りません。


貴方は沢山の民を救ってくれました……王は

あの人は……あの人らしい立派な最期を飾ったのです。


王として、誇らしい最期を……」


《――崩壊した水の都を眺めつつ、静かにそう言った女王マリーナ。


一方……主人公の放った強力な睡眠の魔導ですら打ち破り

目覚めてしまったマリーンは――》


………


……



「う……ううっ……ハッ! ……父上っ!? ……」


「マリーン様……俺がいたらない所為で……

申し訳……ありませんでしたッッ!! 」


《――そう言うと、マリーンに対し

泥だらけに成りながら土下座をしていた主人公――》


「そんな……父上……父上ぇぇっっ!! ……」


「マリーン……あの人は立派な最期を迎えたのです。


……あの人は最期まで真の王だったのです。


ですが……もう此処には

水の都に住む事は……出来ません」


《――女王マリーナがそう言うと

主人公は泥だらけの顔を静かに上げ、涙を拭いつつ――》


「……こんな不甲斐無い俺の言葉では信用して頂けないかもしれませんが

必ず……皆様を安全な国へとお連れします。


ですが……ですが“あの魔物”だけは

マリーン様のお父上を手に掛けたあの魔物だけは……


……皆の王を奪ったあの魔物だけはッ!!


この通りです……俺の勝手なエゴだとは判っています。


ですがお願いです……王のかたきたせては頂けませんか」


《――そう言って頭を下げた主人公


そんな彼に対し、女王マリーナは――》


「無論……私も貴方と同じ気持ちです。


ですが、並の魔物ではないのですよ?

それに……貴方が其処まで気負う必要などありません。


酷い言葉を投げ掛ける様ですが……“無謀は毒”なのですよ? 」


《――主人公を気遣いそうさとした女王マリーナ


だが……主人公は全ての減衰装備を外すと

彼女の目を真っ直ぐに見つめながら真摯しんしに語った――》


………


……



「恐らく……無謀ではないのですマリーナ様。


かたきは必ずちます……此処からでもしっかりと見える様

派手な一撃をあの魔物にしっかりと叩き込みます。


この国の素晴らしい王と……


……共にったきよらかな民達へのせめてものとむらいとして

俺が今使う事の出来る最上級の技をもって。


では……行って来ます。


転移の魔導、湖のほとりへ――」


《――敵をつ為、なかば強引に転移した主人公


この場に残された女王マリーナは彼の身を案じて居た……だがそんな中

マリアは彼女に対し“心配無用です! ”と伝え――》


………


……



「……兎に角、今は主人公さんに任せてください。


“あの状態”の主人公さんは、絶対に誰にも止められませんから! 」


「そうなの……ですか? 」


「はい! ……間違い無く! 」


………


……



《――湖のほとりに立って居た主人公。


彼は怒りにふるえながら

湖に向けありったけの“文句”をぶつけて居た――》


………


……



「……しいたげられている人々を救おうと

必死で願い動いた人々の努力を……


このひどい世界で珍しく素晴らしい王様に出会えたってのに……


……お前みたいな“タコの化け物”風情が

簡単ににじって良い人達じゃ無かったんだ。


お前みたいな……


……お前みたいなクソ化け物の所為で!!!


絶対に……絶対に……


……お前だけは許さないッッ!!! 」


《――彼の怒り

その殺気に呼応こおうするかの様に


直後、再び姿を表した魔物……そして


全ての触手を一斉に彼目掛け差し向けた。


“だが”――》


………


……



「……愚かな愚者よ

全てを焼き払う傍若無人な爆炎に焼かれろ――


――“滅殺之爆焔デストロイエクスプロージョン”ッッ!!! 」


《――瞬間


湖は黒炎に包み込まれた……湖は跡形も無く消え去り


魔物はその肉の一片すら残らぬ程に焼失した。


その規格外の爆炎はとどまる事を知らず

周囲の気圧を急激に変化させ、周辺の木々を粉々に弾け飛ばし

湖を巨大な“クレーター”へと変貌させた――》


………


……



「……王よ。


ご挨拶すら出来ずお別れをしなければならない非礼をお許しください。


俺の様な者の賛辞さんじでは不足でしょうが

貴方は間違い無く水の都の民達に取っての稀代きだいの王でした。


俺の……この技をもって貴方へのとむらいとさせてください。


……これから先、水の都の民は勿論

女王様も王女様も全員……必ずまもります。


ですからどうか……安らかに御休みに成って下さい。


……転移の魔導


“護るべき人達の元へ”――」


………


……



《――帰還後


仇討かたきうち……ご覧に成られましたか? ”


静かにそうたずねた主人公に対し――》


「うむ……父上も、天でご覧に成られたと思うかぇ? 」


《――涙をこらえ、そうたずね返したマリーン。


そんな彼女の眼を見つめ――》


「ええ……間違い無く」


《――そう答えた主人公。


彼は……静かに目元を拭ったマリーンの顔を

えて見ぬ様、目線を外した。


そして――》


………


……



「な……何ですあの威力は?!

み、湖が跡形も無く……」


《――驚愕きょうがくの声をげた女王マリーナ


そんな彼女に対し――》


「いえ、その……俺が知る中で

恐らく最も立派な王へのとむらいのつもりだったと言いますか……


……驚かせてしまい、申し訳ありません」


《――そう伝えた主人公

だがなおも状況を飲み込めていないマリーナ女王に対し

マリアは冷静に――》


「あの、マリーナ女王様……とお呼びしても宜しいですか? 」


「……構いません、マリーナとお呼び捨てください」


「流石に呼び捨ては……ではマリーナ様と

兎に角……主人公さんの規格外は気にしたら負け。


“慣れる”のが一番ですよ? 」


「そ、そうですか……民を救って下さった英雄の様な魔導師様です。


感謝はしていますから……ですがそれよりも

先程、私達の住処すみかは問題無いとおっしゃりましたね?

何処かに私達が移住出来る国や村があるとでも言うのですか? 」


<――そう問われ


“俺達の国にお越し下さい”


そう伝えようとしていた俺よりも早く――>


「……母上。


主人公殿は王国……もとい。


“政令国家”の教育、外交、法務大臣を兼任される御方

救って下さると約束して頂いたゆえ……こうしてお連れしたのです」


<――と、マリーンさんが代わりに伝えてくれた事で

安心していた俺だったのだが……


……この瞬間、何故かマリーナ様の表情がこおった。


その後、突如として慌て始めたかと思うと――>


………


……



「王国が私達を救う? ……まさか?!

マリーン……まさか、貴女の身を取引の材料に!?

もしそうなのであれば私が代わりになります!!

ですから……娘だけはどうかっ!! 」


《――女王はそう言うと主人公にすがる様に懇願こんがんした。


だが、当の主人公は少し落ち込んだ様子で――》


………


……



「……旧王国が如何いか下劣げれつな取引を行っていたか

嫌と言う程分かってしまう反応で少々辛いですね。


ですが……ご安心下さいマリーナ様。


此方から下劣な要求は何一つしていません……勿論

マリーン様もマリーナ様もとても魅力的な方々ですが

お二人を無理やり手篭てごめにする様なやから

政令国家では存在出来ません……と言うかそんなクズ

もし居たら、俺が絶対に許しませんのでご安心を! 」


「そ、それでは……私達は、一体何をお返しをすれば良いのです? 」


《――そうたずねた女王マリーナに対し

マリーンは微笑みながら――》


「母上……彼らが求めるのは主人公殿いわく――


“感謝と信頼”


――だ、そうです。


主人公殿……うておるかぇ? 」


「ええ……完璧に!


……さて、木材は不要に成ってしまいましたので

持ち帰り皆様の一時的な居住区を作るしにでも致しましょう」


「一時的な? ……木材を使えばそれはもう立派な家では無いのかぇ? 」


「……あくまで予定ですが、皆様には政令国家で一般的な

“石造り”の家をご家庭分ご用意させて頂きたいと思っています。


ただ、完成までにはしばらく掛かりますので

その間一時的に住む場所として……と言う事ですね」


「……であれば、我らの民も後々

“義務教育学校”とやらに通わせても良いのかぇ? 」


「後々も何も……勿論です!

政令国家に元々住んでいる国民と同等の暮らしを保証しますから! 」


《――主人公がそう宣言した瞬間

民の一人は興奮し――》


「お、俺達が王国民……いや。


な、なぁ兄さん……俺達、政令国家って国の国民に成れるって事かい?! 」


「はい、その通りです!


……ですが、この人数です。


荷馬車にはとてもではありませんが乗せきれませんし

皆さんこんな事の後ですからお疲れだと思います。


なので……俺が直接政令国家にお連れしますから

衛兵さん達は荷物を国へ持ち帰ってください。


正直“蜻蛉返トンボがえり”でご苦労お掛けしますが

宜しくお願いします……」


「ハッ! ……主人公様もご無理をさらぬ様ッ!! 」


「……お気遣い感謝します。


では……まずが女王様を含めた百名程をお運びしますので

皆さん手を繋いで頂いて……では行きます!


転移の魔導、政令国家東門前へ! ――」


………


……



「――さ、流石に転移続きで流石に少し疲れて来た。


っと……皆様、無事到着しましたので暫くお待ち下さいませ!


……魔導通信、ラウドさん。


これから東門前に水の都から女王様と王女様を含めた

約三〇〇人程を避難させて来ます。


……皆様かなり疲れていらっしゃいますので

出来る限り丁寧に歓迎して頂けると助かります。


それと……馬車及び荷馬車の荷物と衛兵達は

少し遅れて帰ってくる予定です」


………


……



「何? 避難と言ったか? ……何かあったのじゃな?

細かい話は後で良い! ……救助活動を頼んだぞ! 」


………


……



「はいっ! ……さて、皆様は此処ここで暫く待機しておいてください

残る方々を連れて来ますので……それでは!


転移の魔導、馬車の近くへ! ――」


《――この後、複数回に分け

転移魔導をもちい全ての民を東門へと運び切った主人公。


だが……流石に疲れたのか

げっそりとした主人公の顔を見たメルは――》


………


……



治癒ヒール……では治りませんよね。


本当にご苦労様ですっ……」


「う~ん、メルちゃんの笑顔で治るかも? ……なんちゃって! 」


「へっ!? ……あのっ……そのっ……はぅぅぅ……」


「超高速で旅行したみたいな物ですもんね……って事でお土産カモン! 」


「マリアは本当にブレないな……」


「……えっへん! 」


「いや、一ミリも褒めていないが……ってまぁいいや!

ラウドさんが来たみたいだ! 」


《――直後

現れるなり、挨拶もそこそこに

水の都の民達に対し出来るだけ早く食事を振る舞う為か

大統領城へと招く事を伝えたラウド大統領。


一方……ラウドの優しい言葉と声に

緊張し強張こわばっていた民達の表情は少しずつゆるみ始めていた。


この後……民達が大統領城へ到着する頃には

既に食事の用意は完了して居て――》


………


……



「……細かい挨拶は皆疲れておるじゃろうから後回しじゃ

先ずは皆に食事を楽しんで貰おうと思うて居る! 」


《――ラウドがそう言うと

民達は目の前の豪勢な食事に目を輝かせた――》


「……皆様の疲れを癒やす為の食事です。


テーブルマナーなどお気になさらず

ご自分の食べたい様にお召し上がりください」


《――主人公がそう言うや否や

水の都の民達は久しぶりの温かい食事を思い思いに食べ始めた。


一方、そんな民達の姿を目の当たりにした女王マリーナは――》


「民が皆笑顔に……ラウド様、主人公様

私達は何とお礼を……」


《――そう恐縮し続けて居た女王マリーナ。


だが、主人公はそんなマリーナに対し――》


「……感謝をして頂くのはとても有難いのですが

仮にも女王であるマリーナ様にその様にされますと

民達の手前、俺達も困りますからお気を遣われず

どうかマリーナ様もお食事をお召し上がりに成って下さい。


あっ! ……晩ごはんにはまた“違った物を”味わって頂きますので

楽しみにしていてくださいね!


その為に、マリーン様 ……晩ごはんは“例の願い”を叶えられる店へと

お連れしたいと思って居るのですが……どうでしょうか? 」


「例の願い? ……ハッ。


主人公殿は本当に良い男じゃな……惚れてしまうぇ? 」


《――自らが不意に発した一言を気遣ってみせた彼の優しさに

マリーンは頬を赤らめながらそう言った。


だが、そんなマリーンの態度に

またしてもメルは――》


「……だっ、駄目ですっ! 」


《――と、立ち上がり

慌てて見せた――》


「だからメルちゃん、なんで毎回……」


「ハッ!? ……はうぅぅぅ……」


「ん? ……メル殿は主人公殿を愛しておるのかぇ? 」


「へっ?! ……そ、そんな、でもあの……えっとっ……はぅぅぅ」


《――マリーンの質問に顔を真赤にしてうつむいたメル。


そのいじらしい恋心に、鈍感な主人公かれも少しは気がついたのか

少し話をそらし――》


………


……



「……そ、それはそうとマリーナ様!

水の都出身者の中で政治に関わって居た方は

お二人の他にいらっしゃいますか? 」


「私と娘の他にはもう居りませんが……」


「あっ……申し訳有りません、配慮が足りませんでした。


その……おたずねした理由なのですが

水の都出身者にもこの国の政治に関わって頂きたく思っておりまして

元々政治に関わっていた方が適当かと思い質問した次第なのですが……」


「私達がこの国の政治に?

……私達は今日現れたばかりの新参者ですよ? 」


「ええ……だとしてもです」


「全く何処までも……いえ。


“主人公さんは規格外、慣れてください”……でしたね」


「……細かい事は後々説明致しますが

旧王国の様な下劣げれつな扱いはあり得ないと言う事だけでも

理解して頂ければと思います。


あともう一つ……お二人にこの国の政治に関わって頂きたい理由としましては

“民の苦しみが分かる”方を政治家として迎え入れたいのです。


党利党略など何の役にも立ちません……現実にマリーナ様は

この国をもっと素敵にしたいと思いませんか? 」


「ええ、民が幸せな国を作るのは為政者いせいしゃとして当然の事です」


「良かった……では正式にラウド大統領の認可を頂き

マリーナ様を我が国の大臣として迎え入れたいと思います。


……ラウド大統領、宜しいでしょうか? 」


「うむ……それが良いじゃろうな」


「では……つつしんでお受け致します。


必ずやこの国の為、民の為に

正しき為政者いせいしゃとしてこの身を捧げましょう」


「はい! ……よろしくおねがいします!

これからは正式に此処に居る皆様もこの政令国家の国民です。


共に……民を守って行きましょう! 」


「ええ、私の方こそ宜しくお願い致します」


《――こうして

水の都出身者達を正式に迎え入れた政令国家。


今後彼らの国は一段と大きく成って行く事と成る……だが

この国が主人公かれの理想に近づくにつれ貴族達の不満は溜まりつつ有った。


“光強まる時、闇はなお強まる”


……主人公かれの目指す完璧な国家

だが、その国家運営には少しずつ暗雲が差し掛かり始めて居た――》


===第二十二話・終===

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