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第十三話「全員を守るのって楽勝だと思ってました……後編」

《――エルフ村を去ったミネルバが

ラウド、エリシア両名の協力にって

魔導隊詰所“地下魔導牢”への“アサシン”移送、及び

投獄を無事完了して居た頃――》


………


……



「……ええ、他国からの謁見などには全て

国王は現在病気療養中であるとお伝えを。


……ええ、そうです。


今民草に事実を伝えれば我が国は崩壊の憂き目に……とは言え

民の疑問に答えぬ訳にも行きませんから

城の一部が崩落した原因は全て“城の老朽化”とお伝えを……ええ。


お手間をお掛けします……はい、では失礼を……」


《――深夜、突如として発生した騒動を収束させる為

国王城の衛兵長に対し、情報統制を敷く様指示を出していたミネルバ。


直後……王の間は完全封鎖され

ごく一部の衛兵と執事のみがこの事実を知るに留められる事と成った――》


「……ラウドさん、エリシアさん、ご協力有難うございました。


後は全て我が隊で処理致しますので

お二人は少しお休みに成って居て下さい。


……もしも今、王の不在が民に露見してしまえば我が国は混乱に陥ってしまう

そうならぬ様、何らかの解決策を早急に用意せねば成りません。


今後の国政には聡明なお二人にも必ずご助力頂く事と成る筈

その為にも……今は少しでも休息をお取り頂きたいのです」


《――そう伝え、深々と頭を下げたミネルバ

そんな彼女の憂いに満ちた表情に――》


「うむ……明日からはまた忙しくなるじゃろうな。


とは言え、用があれば何時でも呼んでくだされ! 」


「右に同じぃ~っ! ……直ぐに飛んでくるからねぇ~っ! 」


《――と、えて明るく振る舞った両名の気遣いに

ミネルバは感謝を伝え、二人の背中を見送った。


そして――》


………


……



「……さて、ガルベスとやら。


貴方には聞きたい事が山程ありますが……先ずは

貴方の他に王国内に潜伏している魔族は後どれ程居るのかしら? 」


「ふっ、誰が下等な人間風情に……」


「……素直に答えて貰えるとは思っていませんでした。


ですが、此処で引く事は致しません――


――光の魔導


闇之浄化ピューリファイ・ザ・ダークネスッ!! ” 」


「うぐぁっ!! ……や……めろっ……く……苦しい……ッ! 」


「ええ……お話になるのであれば直ぐにでも止めましょう」


「わ、理解わかった! 話すッ! だから……やめてくれッ! ……」


「……良いでしょう。


もう一度おたずねします。


あと何体、魔族が王国内に潜伏しているのです? 」


「……八体だ、協力者の人間も含めてだが」


「そうですか……詳しく教えなさい」


「魔族が六体、人間が二人だ……どこで動いているかまでは知らん」


「本当ですね? ……嘘を言えば許しませんよ? 」


「ふっ……仮にこれが嘘だとして

お前達の様な下等な生物に見抜けるのか? 」


「……だご自分のお立場を理解していない様ですね。


良いでしょう、あまりこの様な荒い手を使いたくは無かったのですが――


――自白の魔導ッ! 」


《――ミネルバがそう唱えた瞬間

自らの意思に反し、次々と真実を話し始めた“アサシン”――》


………


……



「グッ……帝国……人が……二人


魔族は……ウグッ!! ……感知出来る人数は……七体……だ……

一体を除いて……城に居る……ぐぁぁぁっ! 」


「……やはり嘘を付いて居ましたか。


城では無い所に居ると言った一体は何処に居るのです? 」


「一体は……ウグァッ!!!


フッ……お前の後ろだッ!! 」


「なっ?! ――」 


《――瞬間


急ぎ振り返ったミネルバ……だが

何処からとも無く現れた黒衣の魔族の攻撃を避ける事叶わず

切りつけられてしまった彼女は……浅い傷にも関わらず

程無くして、意識を失ってしまった――》


………


……



「ミネルバ様ぁぁぁぁっっ!!! ……おのれぇぇぇっ!!! 」


「無駄だ、人間ごときの攻撃などには当たらんよ……」


《――そう言うと

黒衣の魔族は、瞬時に全隊員を殺害し――》


………


……



「お……のれ……っ……」


「やはり、人間は弱いな……さて“アサシン”よ」


「おぉ! ……助けに来てくれたのか!

さぁ! 早くここから出してくれ! 」


いな……魔王様はそれを望んでいない」


「な、何だとッ?! 冗談は良い、早く此処ここから……」


「このまま貴様を生かしておけば他の者にも情報を漏らす事だろう――


闇火ダークファイア


――このまま燃え尽きるのが、お前の最期の役目だ」


「や、止めてくれぇぇぇっ!! やめっ……


……ぐあぁぁぁっ!!! 」


《――直後


黒く禍々しい炎に包まれ、深い苦しみの中で絶命した“アサシン”――》


………


……



「……さて、長居は無用か」


《――瞬間


黒衣の魔族は何処かへと消え去り……暫くの後

ミネルバは意識を取り戻した。


だが――》


………


……



「……魔導……通信……カイエル……


エリ……シア……さん……ラウ……ド……さん……

魔族に……牢を……私も……襲わ……ッ!!


か゛は……ッ……」


………


……



《――同時刻


数名の護衛と共にヴェルツへと帰宅していた主人公一行は――》


「皆が無事で本当に良かったよ……主人公ちゃんは服がボロボロだけど

何処も怪我は無いかい? 何か必要な物とか、欲しい物とか

食べたい物だって言ってくれれば、あたしが何でも作って……」


《――女将、ミリアの“愛ある質問攻め”に遭っていた》


「い、いえ……今は特に何もいりませんので!

と言うか、ミリアさんには本当にご心配をおかけしてしまって……」


「……水臭い事言わないでおくれ主人公ちゃん

あたしはアンタ達が無事ならそれで良いんだよ」


「でもでもっ! ……ミリアさんが私達を守って下さったお陰で

主人公さんと合流出来たんですし……」


「メルちゃんったら……そんなに大層な事はしてないよ!

あたしはただ、旦那に助けを求めただけさね」


「そんな事が……やはりミリアさんのお陰で二人が助かったんだと思います。


改めて、俺からもお礼をさせてください。


前に約束した――


“稼いだらミリアさんとカイエルさんのお二人に奢る”


――と言う話を、是非今回のお礼として果たさせてくださいッ! 」


「それは嬉しいけど、旦那はまだまだ忙しいだろうからねぇ……」


「そっ、それもそうですよね! 特に“今”は……」


《――などと話していた一行

だが、この場に大層慌てた様子のカイエルが現れた事で状況は一変する――》


………


……



「ミリア! 主人公君も……皆、無事か?! 」


「噂をすれば……って血相変えてどうしたんだい? 」


「詰所の“地下魔導牢”で……ミネルバ様が襲われたッ! 」


「な、何だってっ?! 」


《――カイエルは続けて


アサシンは暗殺され、魔導隊詰所が壊滅的被害を受けた事

ミネルバは念の為、エルフの村に移送し治療中では有るが

ギリギリの状況である事を一行に伝えた。


その上で――》


「……エルフの村を防衛する為

エリシアさん、ラウドさんの両名にも協力頂いている。


今伝えられる事はこの位だ……」


《――此処まで、その一言一句を聞き逃さぬ様

真剣な眼差しと耳を傾けていた主人公……だが。


彼は、突如として突拍子も無く思える事を口にし始めた――》


………


……



「その……俺、此処ここの所

気持ち悪い位に嫌な予感が当たり続けてるんです。


でも、そんな“嫌な予感”って言う確証なんて何も無い事が原因でも……


……皆さんは俺を信頼してくれますか? 」


「何ってるんだい! ……もちろんさね! 」


《――そう言ったミリアを皮切りに

この場にいる全員が、主人公かれを信頼していると言い切った。


すると――》


「……有難うございます。


じゃあ、今直いますぐ全員エルフの村に付いて来て下さい」


「……それは私もなのかい? 」


「ええ、特に“ミリアさんが”です」


「そうかい……でも、そう言われちまうと何だか怖いねぇ

けど、主人公ちゃんを信じるさ……今日は店仕舞いさね! 」


「有難うございます……では、ミリアさんも俺に触れていて下さい。


……では行きますッ!


転移の魔導……エルフの村へ! 」


………


……



「着きました、此処がエルフの村……ってぬわぁっ?! 」


《――転移直後、エルフの戦士達に取り囲まれてしまった一行。


だが、オルガの指示にり直ぐに包囲は解かれ――》


「……済まなかった、敵の襲来を警戒していた物でな。


だが、どうした? 妙に同行者が多いが……まさか、何かったのか?! 」


「い、いえ……その、御迷惑かとは思いましたが

何故か全員連れて来た方が安心な気がしてしまって……ただ

少なくとも俺の中にあった“不安”はたった今消えました」


「そうだったか……」


<――などと、オルガさんと話し込んでいたその時

遠くでガーベラさんが叫んだ――>


「マズいわ……何故なのッ!?

傷が全く塞がらないッ……どうしてッ?!! 」


<――彼女の目線の先には

意識の無いミネルバさんの姿が見えた――>


「なっ……ガーベラさん、俺の治癒魔導を試させて下さいッ!

完全回復パーフェクトヒールッ――


――おかしい。


この技は傷を完治させる筈……」


「……主人公さん、その技は既に私も何度か試したわ

だけれど、それでも彼女ミネルバの傷は塞がらなかった。


正直、私も見た事の無い症状なの。


一体どうすれば……」


《――主人公かれの回復魔導は勿論の事

王国内でも随一の腕を持つガーベラの治癒魔導ですら

彼女ミネルバの傷は塞がる事は無く……


……浅く切りつけられたその傷口からはじわじわと出血が続いて居た。


だが、そんな中

ミネルバの意識は戻り――》


………


……



「……主人公さん……ガーベラさん……っ!!


この……傷は……呪具にる物……

魔導では……決して……治す事……は……出来ない……“呪い”……」


「そんな……何か方法は無いんですか!? 」


「この……傷を付けた……呪具を破壊出来ない……限りは……


恐らく私……は……


もう……長く有りません……回復魔導はもう……


それよりも……お願い。


私の……話す……全てを……書き……留めて……」


「でもそれじゃミネルバさんはッ!! ……」


「お願い……主人公さん……王国の

いいえ……民達の為……なのです……おね……がい……」


「ミネルバさん……ッ!


……分かりました。


一言一句を聞き逃さぬ様、覚悟して聞きますから……だからッ!!

最後まで諦めないで下さいッ! 」


「ありがとう……主人公……さん……


今……王国内に潜伏している……魔族は……七体

帝国人が……二人……はぁはぁ……ッ! ……」


《――朦朧もうろうとする意識の中

ミネルバは得られた情報を伝える為言葉を発し続けた。


だが、彼女が言葉を発すれば発する程にその呼吸は浅くなり始めていて――》


………


……



「くっ……他には?! 」


「魔族六体と……スパイは城に……残りの魔族は……私を襲った……」


《――其処までを伝え掛けたその時


彼女は、眠る様に息を引き取った――》


………


……



「……ミネルバさん?


ミネルバさんっ!! ……完全回復パーフェクトヒールッッ!!!

くそっ! ……“限定管理者権限ッ! ”


頼む……ミネルバさんを生き返らせてくれぇぇッ!!! 」


《《――“ERROR”

魔導力不足、および禁止事項“死者の蘇生”に該当します――》》


「クソッ! クソッ! クソォッ!!


……完全回復パーフェクトヒールッ!!


完全回復パーフェクトヒールッッ!!! ……何でッ!!


何でッ!!! ……」


《――主人公かれ

既に息絶えたミネルバをなおも救おうしていた。


だが、この直後……そんな彼の肩に手を置き、静かに首を横に振ったカイエル。


彼は――》


………


……



「主人公君……もう良い、ミネルバ様は最後まで立派な方だったのだ……」


「……良くなんか無いッ!!


何で、こんな……ッ!! ……ミネルバさん!!! ミネルバさんッ!!! 」


《――カイエルの制止を振り払い

なおもミネルバに対し回復魔導を使用し続けた主人公。


だが――》


………


……



「主人公さん……貴方が今やるべき事は“落ち込む”事じゃないわ。


……その悔しさを、最後まで立派に職務をまっとうした

ミネルバさんのおもいにむくいる為……彼女が命を掛けてた情報をかす事。


それが……ミネルバさんのおもいにむくいる唯一の行動なのよ」


《――ガーベラは主人公にそうさとした。


暫くの時が流れ……ようや

わずかに冷静さを取り戻した主人公は――》


………


……



「分かっています……けど。


ミネルバさんを手に掛けた魔族がどんな奴なのかを聞く前に……


ミネルバさんは……くそっ……俺がもっと強ければ!!

俺が……もっとッ!! ……」


《――怒りと悲しみに支配され

みずからの太腿を幾度と無く殴りながらそう言った主人公。


だが、悲しみに包まれたエルフの村に

突如として“謎の訪問者”が現れた――》


………


……



「おーい!! ……ここを通してくれオルガ! 」


「んッ?! ……何だ、クレインか

しかし、血相を変えてどうした? 」


《――オルガが“クレイン”と呼んだこの男。


銀髪で長身、褐色の肌と言う

所謂いわゆるダークエルフ族の特徴を持った彼は

現れるなり――》


「……オルガよ、王国内が不味い状況だ。


魔導隊詰所は壊滅状態……飲み屋のヴェルツまでもが荒らされ

二階の宿など酷い有様ありさまだった。


恐らくだが……“何者かを探した”のだろう。


城にもデカい風穴が……ん?

今日はやけにエルフ族以外が……なっ?!


……ミネルバッ?!


この傷は!? ……間違い無く呪具にる物だ。


何がったッ?! 答えろオルガッ!! ……」


《――言うや否やオルガに掴み掛かった“クレイン”


だが……そんな彼に対し

ヴェルツの女将である“ミリア”は――》


「ねぇアンタ! ヴェルツが何だって?! 何かの間違いじゃ……」


「待つんだミリア……残念だが此奴クレインがそう言うなら間違い無い。


主人公の言う“不安”とはその事だったのだろう……」


《――オルガにそう言われた瞬間、肩を落とし項垂うなだれたミリア

そして、そんな姿を見た“クレイン”は……一度、深呼吸をした後

オルガを掴んでいた手を離し――》


………


……



「……それで、オルガよ。


この状況は一体“何だ? ”……全て話してくれ」


《――そうたずねたクレインに対し

これまでの状況を全て伝えたオルガ……だが

説明を終えたその時、主人公は突如として立ち上がり

クレインに対し、わずかに疑いの眼差しを向けながら

“ある質問”をした――》


………


……



「クレインさん……失礼ですが

オルガさんとの間で、お互いしか知らない情報はありますか? 」


「成程……私が“魔族の成りすまし”である可能性を疑って居るのだな?

良かろう、では一つ昔話をしよう。


オルガの体には、ある“傷”がついているのだが……」


《――クレインがそう話し掛けた所で

オルガは大層慌てた様子で彼の話をさえぎった――》


「……その話だけはするなクレイン!!


主人公、私が保証する……此奴は間違い無く本物のクレインだ」


「そ、そうですか……何だか続きがとっても気になりますが

疑って申し訳有りませんでした……」


「構わない、緊急事態だ……警戒し過ぎと言う事も無い、むし

私達ダークエルフも気をつけなければ成らない様だ。


それで……その他に情報は? 」


「……ええ、ミネルバさんが命を賭けてのこしてくれた情報が有ります。


……魔族が七体、帝国人二名がこの国に潜伏しており

城に六体程潜伏しているとの事……ですが、彼女を手に掛けた

魔族の居場所を聞き取る前に……ミネルバさんは……ッ!! 」


《――直後、拳を握り締めくやしさをあらわにした主人公。


だが、そんな彼の背にそっと手を置きつつ

クレインは静かに語り始めた――》


………


……



「……良いかい? 主人公君。


ミネルバはほこり高き魔導師として最期を迎えた

中々出来る事では無い……彼女は、種族は違えど尊敬すべき女性であった。


……我が種族への偏見など微塵も無く

我々に対し家族に接する様に接してくれた彼女の死は

私達にも深い悲しみをもたらしている。


だが、今は彼女の死をいたいとますら与えられぬ状況なのだ

君も辛いだろうが……耐えるんだ」


「クレインさん、気を遣わせて申し訳有りませんでした……」


「何、構わない……しかし城に“六体”とは由々(ゆゆ)しき状況だ。


奴らが“擬態能力”もちい、いずれかが国王に化けた状態で

君達の事を“指名手配”などすれば、それにだまされた国民達は

皆、敵となる可能性が高い……そして、それは必ず起こるだろう」


「そんな……でしたら策略に巻き込まれる前に

国民に真実を伝えたら良いのでは? 」


「……いや、伝える為にはず国民を集める事が必要だ。


だが、皆を迅速に集める事が出来るのは

皮肉な事に“国王”を置いて他には無いだろう」


「それは確かに……あっ!

でしたら、その……スライムの草原で起きた事件はご存知ですか? 」


「ああ、魔王軍が攻撃を仕掛けたと聞いているが……」


「い、いえその……あれ実は“俺の所為”なんです。


あの後、あの地域一帯には野次馬が凄かったとも聞いてますし……兎に角!

ずはそれを利用するんですッ! 」


《――主人公がそう言った瞬間

事情を知らなかった者達の声でエルフの村はざわついた――》


「何と……魔王軍の仕業では無かったか

いや、それよりも……何故あの様な事をした? 」


「……わ、ワザとでは無く

単純に“大失敗”と言いますか……」


「何、失敗だと? ……だとするならば相当に恐ろしい“失敗”だ。


兎も角……あの威力を見せ正当性をとなえれば

逆に“私こそが悪者です”と宣言する様な物では無いのかね? 」


「そ、そうでは無く……あれで一度、草原に人を集め

わずかにでも城の警備を手薄にするんです……それで

その隙に城に潜入し、王の演説場所で真実を語る為の準備を整える。


どう……でしょうか? 」


「……その様に面倒な事をせずとも、転移魔導などをもち

城内部に移動すれば良いだけの話では無いのかね? 」


「ええ……ですがそれだと真実を語る前に取り押さえられる可能性が高く

戦って勝ったとしても、国民がパニックに成ってしまっては元も子も無いですし

少ない防衛力の中潜入し、魔族が居た場合はそれらを全て捕縛して

その間に真実を語らないと駄目なんです。


聡明なエルフ族やダークエルフ族の皆さんは違うのかも知れませんが

人間は“目で見た物”しか信用してくれない。


それがたとえ……見えていない方が真実だったとしても」


《――主人公かれの説明に耳を傾けていた者達の中で

ラウドは、彼の案を良案とした上で――》


「では、わしも一つ提案じゃ……


……睡眠の魔導ならメル殿にガーベラ殿

トライスターである主人公殿も使える筈じゃからして

ずは、城内の者達を出来る限り傷つけず進む為

三人で出来る限り睡眠の魔導を駆使して進むのじゃ。


とは言え……運良く演説の場にたどり着いたとしても

主人公殿が一人で真実を語っただけでは民の多くが耳を貸さぬじゃろう。


……ゆえに、民からの信頼が厚い者が同行者として必要じゃ。


この場所に居る者であればカイエル殿は国防のかなめとして

エリシア殿はハンターギルドの長じゃ……信頼は多分に有る。


そうして、民草からの信頼が厚い物と共に真実を語れば

民草も御主の言葉に耳を傾ける筈じゃ」


「成程……ですが、それなら

発案者であるラウドさんにも同行して貰いたいのですが……」


「ふむ、わしは構わんが……何故じゃね? 」


「それはその……俺がラウドさんに対する信頼を持っているからです」


「……そうはっきりと言われてしまうと何だか照れるのぉ?

じゃが承知した……魔族との戦いは気を抜けん。


戦える人数が多いに越した事は無いからのぉ

……老体じゃが、わしもまだまだやれるじゃろうて! 」


「頼りにしています……それから

エルフの村の警備は引き続きオルガさんに……それと。


済まないが……マリアもここで防衛に加わって居て欲しい

後、ミリアさんもここに居た方が安全だと思います。


俺の“不安”って名前の直感が“そうするべきだ”って……


ミリアさん……もう一度、信じて貰えますか? 」


《――直後


“もちろんさね! ” ……そう

彼の不安な感情すら吹き飛ばす為かの様にこたえたミリア。


暫くの後……作戦を開始する為、その第一段階として

スライムの草原へ向かう事と成った主人公。


だが――》


………


……



「で、ではその……スライムの草原を吹っ飛ばして来ます」


「ううむ……言葉だけ聞いて居ると悪人以外の何物でも無いな」


《――そうオルガに言われ


“スライムも最難じゃのぉ……”


と、ラウドにも言われ


“あ~ぁ! またしばらくスライム関連の依頼が受けられなくなりますね? ”


と、マリアにまで言われてしまった主人公かれは――》


………


……



「い、いやその……辛いんでその視線止めて貰えます?

とっ……取り敢えず行ってきますからッ!

帰ったら城に直行ですから皆さんも準備をお願いしますね?! 」


《――そう半ば強引に皆の発言をさえぎった主人公かれ

少し“急ぎ気味に”スライムの草原へと転移し――》


………


……



「……皆、あんなにイジらなくても良いのになぁ。


んまぁ、兎に角……減衰装備を外してっと。


……同じ技でいいかな?


火環ファイアサークルッッ!!! ――」


《――瞬間

ただでさえ“大失敗”によってえぐれて居たスライムの草原は

この一撃で“壊滅的被害”と成ったのだった――》


………


……



「……げっ。


な、何か最初より強い威力になった様な気が……とっ、取り敢えず戻らなきゃ」


《――直後、エルフの村へと帰還した主人公。


だが、明らかに皆ざわついて居て――》


………


……



「お待たせしました皆さん! ……って皆さん? 」


「ま……間違い無く君だったのだね、今ので完全に理解したよ」


《――冷や汗を拭いつつそう言ったクレイン。


そして、狼狽うろたえる主人公の直ぐ近くでは

エリシアが望遠鏡を取り出し、様子を確認して居て――》


「おぉ~っ……早速、草原方面が騒がしくなり始めてるよ~っ? 」


「で……では城に飛びます! 潜入チームは俺に掴まってください! 」


《――と、転移の準備を始めた主人公。


だがそんな彼に対し、エリシアは――》


「ちょ~っと待ったぁ~っ!


えっとねぇ~……飛ぶなら王の間にある

“バルコニー”に飛んだ方が逆に警備が手薄かもぉ~? 」


「そ、そうなんですか? ……では、転移の魔導! 王の間のバルコニーへ! 」


………


……



《――転移直後、周囲を確認した一行

エリシアの前言通りバルコニーには衛兵が配置されておらず

現王国城の中で最も警備が手薄と成っていた――》


「本当だ……誰も居ないですね」


「まぁ油断は駄目だけどぉ~? ……思った通りだったねぇ~っ♪ 」


《――と、少し満足げな様子のエリシア。


一方、ガーベラは――》


「でも……王の間の扉の直ぐ向こうから数名の気配がするわ

けれど、外からは丸見えな此処にそう長くは居られない。


せめて、眠らせる必要のある正確な人数さえわかれば……」


《――と不安げに語った。


だが、その言葉を聞いた瞬間

主人公かれはこの状況を打破する事の出来る技を

“魔導書”の中から探し始めた――》


「えっと……確かこの辺りに……あった、この技だ! 」


《――直後

“探索の魔導、生体位置捜索”と唱えた主人公


この瞬間……彼は

城内部にけるあらゆる生物の場所や数、形を明瞭に認識し――》


「扉の向こうに三名……隣の部屋に二人、突き当りの部屋に六人

一部の使用人と大臣達はここからかなり離れた

“避難部屋”と思しき場所に居る様です。


ただ……魔族を見分ける方法が分からないので

手当り次第に眠らせ、一度全員拘束して置く必要があるかも知れませんね……」


「ん? ……その必要は無いぞぃ? 」


「ラウドさん……何か方法を知っているんですか? 」


「うむ……擬態ぎたいしておる魔族ならば

眠らせた後に針などで突いてみると

突いた場所の皮膚が魔族らしい色に変わる事もある筈じゃ」


「おぉ、簡単で良いじゃないですか! 」


「しかしのぉ……人型魔族の場合には判断が付きかねる場合もあるのじゃよ」


「成程、完全に見分けるのは無理って事ですか……」


「……じゃが、やらんよりはマシじゃろう?

ずは近くに居る者達を眠らせる事が先決じゃろうて」


「なら……物音を立ててこの部屋に誘い込むのはどうかしら?


扉側の壁に隠れ、隙を見計らって

睡眠の魔導をけるのが最も安全で確実だと思うわ? 」


《――そう発案したガーベラ。


すると、主人公は――》


「成程……では先ず、全員壁側に隠れ

合図をしたら……ラウドさん、あの“椅子”を吹き飛ばして下さい」


《――そう言って彼が指差したのは……何と


“玉座”であった――》


「……なっ?!

あの椅子は国王の椅子じゃぞ?! ……さ、流石にマズいと思うがのぉ? 」


「いえ……魔族が座る位なら消炭にしても良いかと思います。


何よりも……他に物音を立てられる道具が無いですし」


「そ、それはそうじゃが……まぁ仕方あるまい。


……良し、準備は出来たぞぃ」


「では……今ですッ! 」


「風の魔導ッ! ……“風圧砕プレスエアッ! ”」


《――ラウドがそう唱えた瞬間

玉座はミシミシときしみ始めた。


だが――》


………


……



「あの……少しばかり音が小さい様な……」


「……全員、耳を塞ぐのじゃ」


「えっ? 」


《――ラウドが警告した次の瞬間

耳をつんざく程の破裂音が部屋の外まで響き渡った。


そして“反応の遅れた”主人公の右耳は深刻なダメージを受け――》


………


……



「み……耳がぁぁぁぁっ!! ……治癒ヒールっ!!

ちょっとラウドさん!! 耳が死ぬレベルなら先に言ってくださいよ! 」


「シッ! ……走ってくる足音じゃ! 」


《――直後

息を潜め、城内部の兵士達が現れるのを待った一行。


暫くの後……国王の間の扉を勢い良く開いた近衛兵達は

粉砕された玉座を見るなり愕然がくぜんとした。


そして……その一瞬の隙を狙い

彼らに睡眠の魔導を掛ける事に成功した一行は

彼らに遅れて現れた者達すらも、全て眠らせる事に成功し――》


………


……



「近衛一人目……変異無しですっ!

同じく二も……いえ、変異……緑っ?! 」


「そいつだ! ……良くやったメルちゃん!

これで魔族が一体! ……」


《――この後

皆で協力し二体の魔族を発見した一行は――》


「どっちも私が捕縛の魔導で捕まえておくから

一度その二体を起こしてみて、尋問してみたら良いんじゃないかな~っ? 」


《――と言うエリシアの発案に賛同し、二体の魔族らに対する尋問を行った。


当然、目覚めた魔族達は自らが人間であるかの様に演じ続けていたが

針で突いた場所を示され直ぐに観念した……だが

二体のいずれもが魔王への忠誠心堅く――》


「殺すなら殺せ、貴様ら下等な者共に話す言葉など持たん……」


「だろうな……けど、その忠誠心を他の方向に使ってくれたら良かったんだ。


けど、話したく無くても吐いて貰わないと駄目なんだ。


自白の魔導! ――」


《――直後

主人公の発動させた自白の魔導にって

眠らせて居た者達の中から“帝国人スパイ”一名と

人型の魔族を一名発見する事に成功。


この後、人型魔族にも同様の尋問を行った後

新たに得られる情報が無いと判断した主人公は……“氷刃”を放ち

人型魔族を瞬殺し、残る二名の魔族に対しても同様の行為を行った。


だが……ミネルバの一件からだろうか?

魔族に対する彼の対応には少々“冷酷さ”が見られ始めて居て――》


………


……



「……さて。


此奴スパイはどうするべきでしょうか? 」


「ふむ……ならば、国民の前で改めて尋問するのが良いじゃろう

全てを白状させ、これを国民に見せれば国民も納得するじゃろうて。


国王の不在に関しては痛手じゃが……それも何とかするしかあるまいて」


「分かりました……では、国民を呼び寄せた後

もう一度“自白の魔導”ですね、では……」


《――ラウドの指示に従い、準備を整えていた主人公。


だが、この直後……これを強く制止したガーベラ。


彼女は主人公に対し――》


「ねぇ……主人公さん。


その……メルちゃんには刺激が強いから

一度、転移の魔導で彼女をエルフの村に飛ばしてあげるのはどうかしら? 」


《――そう、やんわりとさとした。


直後……ようやく我に返った主人公は

大層慌てた様子でメルを気に掛けた。


だが――》


………


……



「だ、大丈夫ですっ……お気遣い有難うございますっ!

でも……私はこのまま此処に居たいです。


この状況に一番苦しんで居るのは主人公さんだと思うから。


だからっ!! ……たっ、頼りないかも知れないですけど!

私っ……主人公さんを支えたいんですっ! 」


《――そう言った彼女の顔は決意に満ちて居た。


そして、そんな彼女の姿を目の当たりにしたガーベラは微笑み――》


………


……



「そう……なら、余計なお世話だった様で安心していいのね?


でも……やっぱりメルちゃんは主人公さんの事が大好きなのね♪ 」


《――と少し意地悪げに茶化してみせた。


当のメルは――》


「そ、それはそのっ! ……はぅぅぅ……」


《――口籠くちごもり、顔を真赤にして俯き

そんな彼女の姿に何かを意識した主人公も同じく照れた様に頬を赤らめていた。


だが――》


「仲が良い所悪いんだけどさぁ~?

今“潜入中”なの忘れてな~ぃ? 」


《――と、エリシアにさとされ

慌てて体裁を整えた主人公は――》


「あっ……えっとその……ゴホン!


……じっ、自白の魔導を使うのは良いとしても

国民を演説場に集める必要があると思うのですが

その為に再び城を“えぐる”のは流石に問題かと思いますし……」


《――と、真顔でそう言った主人公に引きつつも

ラウドはある提案をした――》


「な……ならば“伝達の魔導”で

国民への呼び掛けを行うのはどうじゃろうか? 」


「そんな魔導が……是非お願いします! 」


「うむ、では……


……伝達の魔導


魔導拡声メガホン”――」


………


……



「……王国の民に告ぐ、城の演説場まで集まられよ!

国家の一大事である! 至急、演説場まで集まられよ!! 」


………


……



「――うむ。


これで国民達が集まってくる筈じゃ……あとは頼むぞぃ主人公殿」


「はいッ! 」


《――暫くの後、ラウドの呼び掛けに

演説場には、多数の国民達が集まった――》


………


……



「皆様、お集まり頂き誠に有難うございます。


本日は皆様にお話しなければならない事が……」


《――国民に対し

現在王国が置かれている状況を説明する為登壇した主人公。


……だが、国王では無い“一般人”の登壇にざわつき始めた国民達


“国王は何処だ”……と騒ぐ者などが出始めた頃、そんな国民達に対し

帝国人スパイに対する自白の魔導をもちいた尋問で

魔族や帝国の魔の手が王国に差し迫っている事を伝えようと試みた主人公。


だがそんな時、民衆の中へ

“国王”に擬態した魔族が現れた事で状況は大きく変化した――》


………


……



「……あの者達を早く捕らえよっ! 」


………


……



「なっ? ……国王様?!

おい皆ぁ! ……国王様がここにいるぞぉ~っ!! 」


「うぉぉおおおお! ……国王様だ!! 」


《――と

“偽国王”の登場にいた民衆だったが――》


「騙されないで!! ……その国王は偽物ですッ!!!

魔族の変身した真っ赤な偽物なのですッ!!


……本物の国王様は魔族の手に掛かり

既にお亡くなりに成られています。


それが何時からかは正確には判りませんが

国王様は魔族に成り変わられて居たのです。


……信じられない事かも知れませんが

このスパイに質問をすれば真実は明らかになります

皆様どうか落ち着いて、俺達の話を聞いてくださいッ!! 」


《――主人公はそう必死に訴え続けた。


無論、彼に耳を貸す民衆も数多く現れ始めて居た。


だが――》


………


……



「……デタラメな事を言うでないわ!!

国王たる我を差し置いてその場に立つなど言語道断!!


者共っ! ……早くあの者達を捕らえるのだッ!! 」


《――と、偽国王は主人公を指差しながらそう言った。


だが、主人公かれはとても冷静で――》


………


……



「成程……俺達が“逆賊”だとおっしゃる訳ですね?

では……見ていて下さい。


自白の魔導ッ! ……あの国王は魔族ですか? 」


「……ええ……間違く魔族でしょう。


本物の国王は……少し前……ガルベス殿が……


“食った”……と聞いていますから……」


《――直後、自白の魔導にもたらされた帝国人スパイの自白に

国民達は慌て始め、慌てて偽国王から離れ始めた。


そして――》


………


……



「クッ、バレてしまっては仕方ない!

こう成ってしまえば、人間共を食らいつくし……」


「やらせない!! ……氷刃ッ!! 」


《――瞬間

主人公の放った攻撃にり国王に化けて居た魔族は絶命。


だが、これを皮切りに国民達はパニックにおちいった

そして……その混乱に乗じ

複数の魔族が続々と姿を表し――》


………


……



「逃さんッ! ……一人でも多く焼き払ってくれるわ!!!


キエエェェェェィッ!! 」


《――瞬間


一匹の魔族が放った火炎の魔導は


逃げ惑う国民達の退路をった……だが

さま水魔導にりこれを消火したエリシア。


だが――》


………


……



「フフフッ!! ……水魔導とは都合の良いッ!

貴様らは皆私の毒に侵されるのだぁぁっ!


……フシャアァァァァッ!! 」


《――瞬間

魔族の発生させた毒性の霧を吸い込んだ大勢の国民達は

毒におかされてしまった――》


不味まずったッ! ……」


「大丈夫よエリシア! ……毒霧は私に任せて!

浄化の魔導ッ! 毒之浄化ヴェノムパリフィケイションッ!! 」


《――直後、ガーベラの放った魔導により毒霧は完全に消滅した。


だが、既に毒霧に侵されてしまって居た多数の民衆は

その場に倒れ苦しみ藻掻もがいて居た――》


………


……



「うぅ……苦しい……肺が焼ける様だ……」


「今助けますからっ!! ……三重治癒トリプルヒール! 」


《――民衆らの元へ走り正確に治療を施したメル

そして、そんな彼女に対し――》


「あ、ありがとう……ってか……ハーフ族って……怖く……無いんだな……」


「え、えっと……その……はいっ!

ちゃんと治しますから、安心して下さいっ!


あっ! そちらの方も今助け……」


「大丈夫よメルちゃん! ……こっちは私に任せて! 」


「ガーベラさん! ……お願いしますっ! 」


《――この後も必死に民衆への治療に奮闘した彼女達。


だが……この事件から数週の後

毒にる後遺症の残った民衆の治療や、ミネルバの葬儀など……


……王国内には悲哀の感情が渦巻く日々が続いたと言う。


そして――》


………


……



「そろそろ潮時の様だな……」


《――帝国人スパイが一人

王国の裏通りから姿を消したのだった――》


===第十三話・終===

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