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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝15万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第一章

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第一四話「異世界政治って楽勝だと思ってました。」

“魔族騒ぎ”から数週の後

様々な問題に()り民達の感情は冷え込んで居た。


それは、普段なら活気に(あふ)れて居る(はず)

“飲み屋ヴェルツ”ですら例外(れいがい)では無く――


「全く……皆、()みに来ないどころか

食事にさえ来ないよ……本当に、困った物さね」


「そうですね……でも

あまりにもショックな事が多過ぎましたから……」


閑散(かんさん)とした店内で

ミリアさんとそんな事を話して居た俺。


……“国王の不在”と言う一大事

“魔導隊団長ミネルバさんの死去”

そもそも全ての魔族を倒せた訳でも無く

“帝国人スパイ”だって、まだ何処(どこ)かに

身を(ひそ)めて居る可能性が高い……だが。


そんな国家の一大事だと言うのに

この()(じょう)じる(ため)か、貴族達の“権力闘争”は

(あき)れる(ほど)、熱気に満ち(あふ)れて居る。


……魔導隊の戦力は大きく失われ

民達は“隣人すら裏切り者なのでは”

“隣人は魔族なのでは”……と、(みな)疑心暗鬼(ぎしんあんき)(おちい)

街行く人達の表情も皆(ひと)しく暗く(しず)んで居る。


嗚呼(あぁ)、何か良い解決策は無いのだろうか。


「大体……この国難だと言うのに

貴族達は皆、国民を煽動(せんどう)して

自分達が得する事しか考えてない……こんな有様(ありさま)じゃ

遅かれ早かれこの国は崩壊しちまうよっ! 」


ミリアさんの言う通りだ。


確かに貴族達の“権力闘争”は目に余るレベルで

それを発端(ほったん)とする事件も

ちらほらと起き始めて居るらしい。


だが……何よりの原因は、恐らく

俺がこの世界を“中世期頃”に設定した事だろう。


……無論(むろん)、言い逃れするつもりは無い

だが、こんなにも(ひど)い状況に成るのが分かって居たなら

もっと現代に近い考え方に成る様“設定”して居ただろうし

自分勝手かも知れないが猛省もして居る。


だが……そんな事を考えて居た俺に対し

突如“突拍子も無い提案”をして来たマリア――


「あの~……一つ思いついちゃったんですけど!

此処(ここ)は思い切って主人公さんが

“国王”に成ったら良いんじゃないですか? 」


「は? ……い、いやそんなの国民が許さないよ

それに俺はそんな(うつわ)じゃ無いし……てか

国王には“跡継(あとつ)ぎ”とか居なかったのか? 」


「おや? あたしは主人公ちゃんが王様でも良いと思うがねぇ?

それと……王に子供は居ない(はず)さね。


……女王様もご病気で数年前に逝去

今回の事で王の血筋は完全に途絶(とだ)えちまったんだ。


にも関わらず、国政に関わる事の出来る人間が

“自己保身の(かたまり)”ばかりとは困ったモンさ……


……国民皆を幸せにする事が出来る様な王を

一体、どうすれば見つけられるんだろうねぇ? ……」


そう悲しげに語ったミリアさん。


この後も、解決の糸口さえ見えない状況に苦悩して居た俺達

だが、この直後……そんな俺達のもとへと

“クレインさん”が現れ――


「皆、暗いな……もしや、また“国王”の話か? 」


「ええ……せめて国の長だけでも決めて

現状だけでも打破しないと、他国は勿論

魔族共が攻めて来た場合、今のままでは()ず間違い無く

この国は飲み込まれてしまいますし

その時、一番最初に傷つくのは貴族でも兵士達でも無く

最も弱い立場である民衆です。


だからこそ、一刻も早く正常な国家運営をさせる(ため)

“早く国王の代わりを! ” ……と、願っては居るのですが

偉い人と言えば貴族位ですし

ミリアさんも(おっしゃ)ってましたが

全員“自己保身の(かたまり)”ですから、いっその事――


大統領(だいとうりょう)(せい)にでも成ったら簡単なのに”


――と、考えはしたんですけど

“王国”って名乗ってる以上、それも難しいのかなと思っ……」


「待て……主人公君“大統領制”とは何だ? 」


「えっと、大統領制は――


“その国の出身者なら誰もが国の長に成れる可能性が有る制度”


――って言うのが、一番分かりやすい説明かも知れません」


「何? ……その国の出身であれば

“生まれ”や“育ち”も関係無いと言うのかね?

だが……それならば一体どうやって選ぶんだね? 」


「それは民の投票で選ぶのですが……そもそも

成りたい人が全員立候補すると大変なので

()ずは国民の信頼が厚いリーダー的な方を

各陣営が擁立(ようりつ)し、立候補して頂いた方々に対し

できるだけ多くの民に投票して頂き

その結果、一番多い得票数の方が大統領……つまり

国を(おさ)める“長”と成る訳です」


「成程……それならば国民の為に成る人材が選ばれ易い

だがそうなれば……私も案を出して構わないかね? 」


「ええ……どの様な案でも! 」


「……ミネルバ()き今、国民の信頼が厚い者と言えば

エリシア・ラウド・カイエルの三名かと思う。


成ればこそ、この三名を擁立(ようりつ)

国民投票で選ばせるのはどうだ? 」


「おぉ! ……とても良い人選ですね!

それで行きましょう! ……では、早速三人にお声掛けしてみます!


魔導通信――


――エリシアさん、ラウドさん、カイエルさん。

折り入って相談が有ります! ――」


◆◆◆


「……いきなり何だ~い? 主人公っち?

は? ……いやいや、そんなの

私がおっけ~した所で国民が認めないと思うよ~っ?

そもそも私は王の血縁じゃないしぃ~? 」


「うむ、わしも同じく血縁ではないぞぃ?

しかし……(やぶ)から棒に何じゃね? 」


「そうですな……そもそも

私は魔導隊を立て直す(ため)の仕事で手一杯なのだが……」


直後

通信越しに、三者三様(さんしゃさんよう)な理由で

(みずか)らは適任では無い”と口にした三人

だが、だからこそ――


「えっと……取り()えず詳しい話をしたいので

(いず)れにしても全員ヴェルツに集まって下さいねッ!


では! ……通信終了ッ! 」


そう伝え

()えて(なか)ば強引に魔導通信を終了した俺。


……(しばら)くの後、三人は“渋々”と言った様子で

ヴェルツへと現れ――


◆◆◆


「全く……“年寄(としより)使い”が荒いのぅ? 主人公殿」


「そうだよぉ~? ……“美女(びじょ)使い”が荒いよ~っ? 」


一応(いちおう)来てはみたが……私に国王など(つと)まる訳が無い

そもそも、私は平民の生まれであり……」


そう、それぞれに同じ様な文句を口にした

だが――


「今回の仕組みには、皆さんの血筋は一切関係ありません

それを理解して頂く(ため)にも()ずは俺の説明を聞いて下さい。


……反対するのはそれからでも遅くは無い(はず)です」


直後

俺は三人に対し大統領制の詳細な説明と

“彼らで無ければ成らない理由”を、誠心誠意説明した――


◆◆◆


「成程のぅ? ……じゃが、皆が立候補出来るのであれば

当然、貴族連中も立候補出来るのじゃろう? 」


「え、ええ……問題でしょうか? 」


「何を馬鹿な……大問題じゃよ!

貴族の中には“土地”や“建物”を

民に貸し付けている者も居るのじゃぞぃ?


……もしもそれを盾に民を脅し

“得票数を有利に”と画策(かくさく)する者が現れでもした場合……」


「あ~……確かに、ラウドさんの(おっしゃ)られる様な事も

考えて居ない訳では有りません、ですが……


……それを“逆手に取る”事も充分可能な(はず)です」


「ほう? ……一体どうするつもりじゃね? 」


「今、(おっしゃ)られた様な方法で行うであろう“脅し”を

代表演説の場で“()えて”取り上げるんです。


そして――


“私達ならば、その様な事を法律で禁止します”


――と、言い切ってしまえば

苦しい立場にある民衆は皆さんにしか投票しませんし

そう言う悪い奴らを罰する権利すら

皆さんや国民一人一人が持つ事も出来るんです。


……これでも()だ、貴族の立候補は問題でしょうか? 」


「成程ぉ~っ! 主人公っちは中々の策士だねぇ~♪

確かにそれなら私達に投票する民が大半に成るかも~っ? 」


と、ラウドさんエリシアさんの二人を説得した俺だったが

残るカイエルさんは(いま)難色(なんしょく)(しめ)して居て――


「確かにそれは良い事だ……だが、そもそも

貴族達は君の提案する“大統領制”自体に反対し

妨害行為を行う可能性もある……


……その上、貴族共(やつら)は国防にも絡む存在だ。


妨害の方法は何も一つとは限らず

それらが引き金と成り、更なる国難を引き起こす可能性さえある。


やはり……君の案は実現不可能では無いだろうか? 」


「それも分かります……ですが

マイナスを考え続けても解決はしません。


一応……やるだけやってみませんか?

大体、このまま俺達が動かず悩んでる内に

悪い考えを持つ奴が長に成ったら

この国は本当に終わりを迎えかねません。


この(さい)、ハッキリ言いますが……俺は

今、この場にいる皆さん以上の適任者を知りません」


この瞬間

俺は心の底から思って居た事を口にした。


すると――


「もぉ~っ♪ 主人公っちったら~♪

嬉しい事言ってくれるじゃ~んっ♪

よぉ~し♪ ……嬉しいついでに協力しよっかなぁ~っ♪ 」


「エリシア殿! その様に簡単に……とは言え

主人公君の(うれ)いも理解はして居るし

そもそも君の提案は素晴らしい……仕方無い。


魔導隊の再建にも役立つ可能性はある

此処(ここ)は……私も協力させて頂こう。


それに、武力に起因(きいん)する妨害への対処ならば

私も多少は“腕に覚えがある”……からね」


「うむ、主人公殿の考えは正当じゃ……わしも協力するぞぃ! 」


「皆さん……有難うございますッ!

(みんな)でこの国を立て直しましょうッ! 」


◆◆◆


……この日、主人公が発案した“大統領制”

その第一歩となる人選を完了させた彼は

ヴェルツでの話し合いの後、直ぐに候補者らと共に城へと転移した。


そして……貴族達に一切の準備期間を(あた)えぬ(ため)

即日中に“大統領選挙”を()(おこな)う事を決めた――


◆◆◆


「……正直、凄く“汚いやり方”ですけど

今から貴族連中が策を()った所で

国民感情を変えるのは難しいでしょう。


さてと……ラウドさん

“伝達魔導”で国民の呼び掛けをお願い出来ますか? 」


「うむ、承知した……しかし、主人公殿も(ワル)よのぅ? 」


「ちょッ!? ……そんな人を

“テンプレ悪代官”みたいに言わないで下さいよ! 」


「テンプ、レ? ……意味が分からんが

兎に角、国民達を呼び出すぞぃ!


伝達の魔導、魔導拡声(メガホン)――


――民達よ!

国王|()き後、皆それぞれに落ち込んでおると思う

しかし、このままでは国が立ち行かなくなる恐れもある。


其処(そこ)で……本日、新たな統治の形

“大統領”を決める選挙を行おうと思っておる。


この選挙は、国民の一人一人が投票権を持ち

国民は(みずか)らが信頼に足る者へと投票をする。


……そうして得票数の最も多かった者に

この国の新たな長として“大統領”と呼ばれる立場を……」


ラウドさんの“呼び掛け”から(しばら)くの後

その“物珍しさ”も相まってか、民衆は直ぐに演説場へと集まった。


無論、大方の予想通り

代表的な貴族家の当主全員が立候補する事態とも成ったこの日

俺は“進行役”を(つと)める事と成った、だが――


◆◆◆


「では、各立候補者の皆様は国民に対し

()ち時間二分以内で、自身が大統領に成った(さい)

利点……つまり“政策(せいさく)”を説明して頂きます。


では、最初の方……どうぞ」


そう(うなが)した瞬間

順番に始められた貴族達の演説。


だが、この直後………その余りの低レベルさに


“引いた”――


「……オッホンッ!!

私が大統領とやらに成った(あかつき)には

私が所有する借家に住んで居る者達の家賃を

今より一〇パーセント値引いてやろう! ……以上だ! 」


◆◆◆


「私が大統領に成った暁には……奴隷を安く売ってやろう!

一〇パーセントなどとケチくさい事は言わんぞ?

何と……“一五パーセント”だ! 」


◆◆◆


「私が大統領に……」


(ちな)みに“最後の奴”に至っては

更に聞く価値も無いレベルだったので割愛するが……兎も角

大方の予想通り、貴族達の演説はどれも自分本位な物でしか無く

民衆が不信感を持つ様な物ばかりで

この場に集まった民衆の表情は曇りに曇って居た。


まぁ、貴族達にはそんな様子など

微塵(みじん)も“見えて居なかった”みたいだが。


ともあれ……そんなこんなで

エリシアさんの番に成った訳なのだが――


「……はぁ~い! みんな~っ! エリシアだよぉ~っ!

私が大統領に成ったらね~……薬草はタダにするよぉ~?

でも“どうやって? ”……って思うでしょ~っ?


その方法はねぇ~ ……私が取ってくるから任せろ~っ!

それと~……ギルドの依頼報酬を

ちょっとずつ増やしてあげる~っ! ……以上っ! 」


エリシアさんの演説では民衆から笑いが起きた。


確かに、国の長としては(いささ)か問題の有る演説だったが

少なくとも、貴族達よりは印象が良かった様に見えた。


だが……その反面

受かったら受かったで色々と不味そうな政策(せいさく)だ。


……まぁ、ともあれ

次はカイエルさんの番だ――


「……私が大統領に成るなど

国民の皆に取って利益に成るとは思えません。


とは言え、もし選出された(あかつき)には

国防力を強化する(ため)、軍の再編を行い

何者にも(くっ)しない強靭(きょうじん)な国家を目指します。


……以上です」


カイエルさんの演説は流石の真面目さで

“国防”と言う、今最も考えるべき事柄に触れて居た事もあり

国民からの支持も上々だった――


「……カイエルさんの演説でしたッ!

続いては、ラウドさんの演説ですッ!


どうぞッ! ――」


いよいよ最後の演説と成ったラウドさん。


だが……この直後、俺は

ラウドさんの演説に“驚愕(きょうがく)する事と成った――


「ううむ……わしが“大統領に成った場合”じゃが。


……仕事の無い者に出来る限り仕事を与える事が出来る様

各自の得意分野を見極めるギルドの“魔導石版”の様に

得意な仕事へと振り分ける事を目指したいと思っておる。


と、言うのも……今までの階級社会に()

一方的な割り振りでは、どうにも

間違って居る様に思えるのじゃよ……それが原因と(おぼ)しき

“不当に高い税”については、わし自身

ほとほと困っておる所じゃからのぅ? ……


……税は上に立つ物の贅沢が為では無く

民草の生活の安定の為に(もち)いられるべきじゃ

皆が仕事にありつければ、暮らす場所の無い者さえも

家と呼べる場所を手に出来る事じゃろう。


その上で、要らぬ差別がまかり通る現状も

少しずつ打破していかねば成らん。


国民の皆を不当に苦しめる者が居れば法で禁じ

罰する必要もあるじゃろう……とは言え

これら全てを直ぐに実現出来るとは思っておらん。


じゃが、出来る努力は全て行い

国民の皆が笑顔で暮らせる様

老体に(ムチ)()ち挑もうと思っておるぞぃ?


以上じゃ……」


ラウドさんの演説中

民衆は皆静まり返り、発せられる言葉の一つ一つに対し

真剣に耳を傾けて居た……そして、演説が終わった時には

民達から割れんばかりの大拍手が送られたのだった。


……“出来る限り公平な立場で居る”様

意識して居た(はず)の俺さえも思わず拍手をして居た位だ。


だが、これで決定と言わんばかりの状況の中

全員の演説が終わった瞬間


ある“問題”が発生した――


「……皆様、有難うございましたッ!

では、早速ですが投票を行いたいと思い……」


俺がそう言い掛けた瞬間

明らかに“()が悪い”事を(さっ)した貴族達は

カイエルさんの危惧(きぐ)した通り

この選挙自体を“拒否”し始めた――


「ふ……ふざけるな!

国民を甘やかす様な事ばかりを語れば

票など(いく)らでも入るではないか! 」


「……ああ、私もその意見に同意する!!

この様なふざけた選挙は無効だ!

第一……貴様、主人公と言ったか?

(いく)ら我が国で二人目のトライスターであるからと言って

平民風情が政治に関わるなど言語道断だ!

即刻(そっこく)この場から……」


つい先程

俺はラウドさんから“テンプレ悪代官”呼ばわりされた訳だが

俺には此奴(コイツ)らの方が余程“テンプレ悪代官”だと思えた。


……まぁ、だからって訳じゃ無いが。


いや……本当は“そう”だが

俺は、こいつらの話を(さえぎ)り国民に多数決を取り

選挙自体を行うかどうかを(たず)ねた。


当然、貴族達は掴み掛からんばかりに憤慨(ふんがい)して居たが

結果は言うまでも無く、国民のほぼ全員が賛成で――


「やはり……賛成多数ですね、では

国王城のエントランスホールに投票箱を設置|(いた)します。


門の入り口で投票用紙をお渡ししますので

“国の運営を任せたい”と思った方の名前を書き

投票用紙を投入してください。


……集計の後、結果を発表し即時大統領を決定します。


それでは皆様、前にいる方から順番に並んで頂き

投票を……」


と、(なか)ば強引に進行したこの瞬間

一人の貴族が激昂(げきこう)(せま)って来た――


「おい待て! ふざけるな貴様ッ!

誰が投票を許すと言ったッ?! 」


だが、あまりの(くど)さに苛立(いらだ)ちを覚えた俺は

怒り心頭な貴族に対し、こう(ささや)いた――


“そんな恐ろしい態度では国民に投票して頂けなく成ります

少しでも愛想を振りまいておけば

貴方が大統領に成れるかもしれませんよ? ”


――と。


すると――


「こ……国民達よ! 必ず私に投票するのだぞ!

投票したら……沢山|()めてやろう! 」


()りにも()ってそう(のたま)った。


当然と言うべきか……この貴族の前を通った国民達は

貴族達に対し苦笑いをしつつ投票場所へと向かって行ったのだった――


◆◆◆


「……では、集計作業を行いますので

国民の皆様は……」


「待て貴様っ!! ……開票に不正が無いとは言い切れん

開票作業は我々貴族の手で! ……」


「いえ……どちらの候補者様も投票用紙に触れる事は禁止です

触れた時点で資格を失う事になりますが

それでも良いのでしたら、開票作業を“手伝って”頂きますが? 」


「ぐっ……ならばせめて、衆人環視(しゅうじんかんし)の状況で開票を行えっ!!! 」


なにはともあれ、投票も終わり

国民達に開票作業を行う旨を伝えた所

貴族からの“指摘”が入ったので、不正が無い事を証明する(ため)

“国民の監視が有る中での開票作業”と、成ったのだが――


「それにしても……大統領って面白い仕組みですっ!

そ、その……どうやって考えたんですかっ? 」


投票箱を開けようとして居た俺へと近づき

こっそりとそう(たず)ねて来たメルちゃん。


だが、(もと)を正せば俺が考えた訳でも無いので――


「えッ?! ……い゛ッ、いやその

苦肉(くにく)(さく)と言うか~……アハハッ! 」


と、完全な“愛想笑い”でこれを誤魔化したのだった

だが、そんな俺の事すら――


「そうなんですか……主人公さんはやっぱり凄いですっ! 」


と、褒めてくれた彼女の純粋さに

少し、申し訳無さを感じ始めて居た俺は――


「あッ、ありがとね……って

メルちゃん、ずっと対応してたから疲れてない?

少し休んでて! ……ってそうだ!

エルフ村辺りから交代人員を頼もうかな? 」


と、気を遣った

だが――


「皆さんの前で開票しないとですから

一人でも人が多い方が良いと思いますっ! 」


と言う正論に何も言えず


更には、国民の前で行われる事と成った開票作業の

ある重大な“問題点”に気付いた――


「票数の事まで考えてなかった……嗚呼(あぁ)、頭が痛い」

(良く考えたら、投票率一〇〇パーセントって凄い事ではあるけど……)


と頭を抱える羽目に成って居た俺へと

静かに近づき――


「……確かに凄い量ですけど、そもそもそんなの

主人公さんお得意の“魔導技”で何とか成らないんですか~? 」


そう

魔導を“四次元なポケット”の(ごと)くに言ったマリア。


……当然、この状況に即した技など有る(はず)も無い

と、考えていた俺はこれに反論しようとした。


だが――


「あ~……一個あるよぉ~っ? 」


直後

そう声を掛けて来てくれたエリシアさん、だが――


「でも……その技を私が教えたら、私が勝ちだった時に

インチキしたみたいにならない? 」


と、万が一にも不正を疑われる可能性を口にした

彼女に対し――


「いえ、エリシアさんはそんな卑怯者では無いと思います」


ときっぱり伝えた瞬間

エリシアさんは何時(いつ)に無く超絶ハイテンションで――


「……わぁ~い! 信頼されてるぅ~♪

嬉しい~っ!! ……じゃあ教えてあげるぅ~♪


復元の魔導:暗号之神(エニグマ)って(とな)えるとぉ~

種類別に整列(せいれつ)して同じ数の(たば)で並ぶと思うからっ♪

じゃ、頑張ってねぇ~っ! ……でも、信頼されるって嬉しいなぁ~♪

嬉しいなっ♪ 嬉しいなっ♪ ……」


と、余りにも状況にぴったりな魔導技を俺に伝えると

直ぐにその場から去ったエリシアさん。


だが、背中に感じたエリシアさんの“喜びダンス”は

正直、これでもかと言う(ほど)マジマジと見つめたかった。


だが……今は開票作業だッ!


我慢だ、俺ッ!! ――


「復元の魔導:“暗号之神(エニグマ)”――」


呪文を(とな)えた瞬間

投票用紙は(ちゅう)()い、記名別に整列(せいれつ)され始めた。


……この、何とも神秘的な光景の後

投票用紙は全て整列(せいれつ)し机の上に並んだ……だが

この時点で、数える(まで)も無くラウドさんの用紙が

凄まじい数“積もって”居た。


とは言え……正直、数えるまでも無い(ほど)の大差なのだが

数えず終われば貴族が騒ぎ立てる事は明白だ。


それを回避する(ため)……俺は仕方無く必死に(たば)を数え続けた。


だが……結局、民の中で貴族に投票した者など

(ただ)の一人たりとも存在しなかった。


と言うか……一枚も無かった事から(さっ)するに

恐らくは、彼らの使用人さえ彼らには投票していない――


◆◆◆


「さて……以上の結果から

ラウドさんが大統領に決定しました。


ラウドさん……引き受けて頂けますか? 」


「ううむ……本当にわしで良いのかのぅ? 」


「良いも何も、国民の皆さんの投票の結果ですから

皆から“望まれてる”……って事ですッ! 」


「ふむ……では、謹んで引き受ける事としよう

それはそうと……もし、わしが大統領と成ってしまったならば

“副ギルド長”の仕事はどうなるのじゃろうか? 」


この瞬間、エリシアさんに対し

少し困った様にそう(たず)ねたラウドさん

すると――


「ん~? ……そっちの方なら

適当に処理するから気にしないで良いよぉ~っ?

てか、いっその事“秘書官”にやらせるからぁ~っ♪

仕事じゃんじゃん割り振って、私の監視を減らすぜぃ! 」


「そ、それは……秘書官殿に相当恨まれそうじゃのぅ? 」


確かに

秘書官さんが余りに不憫(ふびん)で成らない――


「さて、主人公殿……わしはこれからどうすれば良いのじゃね? 」


「……では()ず、壇上(だんじょう)に立って国民に宣言を」


「うむ、では――」


◆◆◆


「――さて、早速じゃが

わしはこの国の安寧(あんねい)と成長を望んでおる。


(ゆえ)に、国民皆が幸せに暮らせる様な国政の為

この命尽きるその時まで、努力を続けて行く所存じゃ

じゃが……同時に、わし一人で

この国の全てを動かす事は不可能とも思うておる。


……そこで、国防を(にな)う要職である“国防大臣”に

カイエル殿を任命しようと思うのじゃが

国民の皆はどう思うかのぅ? 」


ラウドさんがそう(たず)ねた瞬間

国民からは歓声が挙がった。


……直後、満場一致で

“カイエル国防大臣”の誕生が決定し――


「ラ、ラウド様……何を?! 」


「カイエル殿……頼んだぞぃ? 」


「しかし! ……ミネルバ様を失い

魔導隊も壊滅的被害を受けている今

私が“国防大臣”など引き受けてしまって……


……良いのでしょうか? 」


「……何を言う?

御主ほど国防に長けた者は居らんじゃろうて……それに

国防大臣ならば、部隊の再編も容易(ようい)じゃと思うがのぅ? 」


「それは……いえ、承知致しました

国防の(にな)い手……謹んでお引き受け致します! 」


「うむ、決定じゃ……それでは皆の者ッ!

只今(ただいま)(もっ)て、此処(ここ)に居るカイエル殿を

国家国民と領土防衛の(かなめ)

“国防大臣”として正式に任命するぞぃ!! 」


この瞬間


暗く落ち込んでいた王国に

後光(ごこう)が指したかの様な国民達の歓声と拍手は

この国の新たな幕開けを意味するかの(ごと)くに

力強く鳴り響いた――


「……ラウドさん、早速大統領が板についてますね? 」


「そうかのぅ? では“褒められたついで”じゃが……


……引き続き要職に就いて貰いたい者達がおる! 」


この時

ラウドさんは何故(なぜ)か俺の顔を見てニヤリと笑った。


正直“何を言う積もりか”と

身構えて居た俺だったのだが――


「……主人公殿、マリア殿、メル殿の三名には

この国の混乱を収めてくれた立役者として

“大統領公認ハンター”としての地位を与えるぞぃ! 」


「なッ?! ……ラ、ラウドさん!? 」


「……(なお)、この地位は

三名を縛る者では無い事を国民の皆には理解して貰いたい!

今まで通り、自由なハンター生活を送るのじゃ! 」


「……ラウドさん、気を遣って頂いて申し訳有りません」


「なぁに……約束を果たしただけじゃよ。


そして! ……陰ながら尽力(じんりょく)してくれたエルフ族

並びに、ダークエルフ族の皆には後日“特別勲章”を授与(じゅよ)する!


さて……今日、ここに集まった民達よ!

今回の様な混乱を良く耐えてくれた。


……数日後、改めて

大統領制の制定を記念した祭りを行う予定じゃ。


必ず、皆が楽しめる祭りとなる様取り計らう(ゆえ)

今日の所は皆、家に帰りゆっくり休んで置く様に!


では……解散じゃ! 」


この号令を受け、国民達は皆喜びの声を上げつつ

演説場を後にしたのだった――


◆◆◆


「……な、成程

元々パレード用に用意されて居た道具類を“流用”ですか

考えましたねラウドさん」


「うむ……民達は皆精神的にも疲れておったじゃろうし

わしや御主らにも……皆、楽しめる時間が必要なのじゃよ」


「成程……正直ラウドさんには驚き続きですけど

ラウドさんが大統領で本当に良かったです……でも。


……前に話してた“お店”には気軽に行けなくなりますね? 」


「ん? 前に話して居た店じゃと……って。


な、何じゃとぉっ?! ……そ、そういえば

この様な役職がいてしもうては

気軽に“ぱふぱふ”出来なくなるではないか?!

いや……それでもわしは“ぱふぱふ”しに()くぞぃッ!! 」


「ラ、ラウドさん……で、では

その(さい)は……俺も……その……ごッ!

護衛(ごえい)的な意味で”付いて行きますッ! 」


「あの~……主人公さん? “ぱふぱふ”って、もしかして……」


「主人公さんっ……な、何だか鼻の下が伸びてますっ! 」


「い゛ッ?! いやその……マリア? メルちゃん?

これには深い理由が……って。


ふんぎゃあああああああぁッッッッッ!!! ……」


まぁ、何はともあれ。


……沈み込んだ王国を再び国家として立て直す(ため)

新たな第一歩を踏み出した俺達……だが

予想通り、貴族達はこの後直ぐに反対を表明し

それぞれに妨害工作を取ろうと画策(かくさく)し始めた。


しかし、民達から貴族の地位を剥奪(はくだつ)する(ため)

嘆願書(たんがんしょ)”が出始めた辺りで、()の悪さを(さっ)

貴族達の妨害は収まり始めた――


“大統領制”


――これが良策であれ失策であれ

少なくとも、国民の生活は安定した……だが、その一方で

(いま)だ見つけられていない潜伏魔族と

鳴りを潜めたとは言え

決して協力的とは言えない貴族達への対応……果たして

この国の状況は、何時(いつ)快方(かいほう)へと

向かうのだろうか? ――


◆◆◆


主人公(かれ)の発案に()り、新しい長を得た王国

だが、その一方で……(いま)だ王国内に潜伏し続けて居た帝国人スパイは

ある建物の中で、声を(ひそ)め会話をして居た――


「さぁ、貴方の罪を告白しなさい……」


教会:告解室


神父らしき姿をした者は

“帝国人スパイ”に対し静かにそう問うた。


すると――


「潜入して居た者達は全員死亡、残ったのは私と貴方だけです」


「そうですか……良く教えてくれました

ですが、この惨状(さんじょう)……魔王様は

さぞ()(なげ)きに成られる事でしょう……」


「い、いえ……勿論、帝国(こちら)も人員を増員させて頂き……」


「いえいえ……その様な必要はありませんし

そもそも、私はあなたを責めて居るのではありませんよ? 」


「そ、そうでしたか……いやはや、早とちりをしてしまい……」


「しかし……“空腹”ですねぇ?

ああ、丁度良い“食材”を見つけました……」


そう言った神父らしき存在は

直後、恐ろしい“本性”を(あらわ)にした――


「し、食材など何処(どこ)に? ……な、何をする?!

やめろっ! ……止めてくれっ!!


ぐぁぁぁっ! ……」


「……やれやれ。


美味しくは無いですが空腹は(まぎ)れました

さて……一度、魔王様に()報告(ほうこく)をしなければ」


血だらけの口元を手布(ハンカチ)(ぬぐ)った神父

彼の正体は、ミネルバを手に掛けた“黒衣の魔族”であった


===第一四話・終===

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