第一二話「全員を護るのって楽勝だと思ってました……前編」
危機的状況を脱し、王の間を後にした主人公。
一方……“魔導隊詰所”では
マリアらに対する聞き取りが行われて居た
「主人公さん……無事でしょうか? 」
不安を口にしたマリア
そんな彼女に対し、メルは――
「大丈夫ですっ! ……主人公さんは強いですからっ!
き、きっと……お母さんと私を助けて下さった時みたいに
私達が想像も……出来ない位……きっと……」
マリアが不安に押し潰されぬ様
そう必死に気遣い
自らも不安に押し潰されぬ様、希望を語って居た。
そんな中、ミネルバ団長は――
「……色々と心配事が多い時にごめんなさい
だけど、記憶が新しい内に聞いて置きたいの……
……犯人の人相を、分かる範囲で教えて貰えるかしら? 」
申し訳無さげにそう問うた。
直後、この問いに対しマリアは――
「顔は……頭巾を被って居たので余り
武器は湾曲した小刀だったかと……
……分かるのはその位です」
「そう……使用する武器が分かっただけでも
手掛かりにはなるけれど……」
決定的な情報を得られず頭を悩ませていたミネルバ
だが、そんな中突如として周囲に響き渡った
“轟音”――
「……なっ!?
こ、国王城が……全隊員ッ!!!
お二人の護衛をしつつ、急ぎ国王城へ向かいますッ!! 」
国王城
“王の間”の程近く、大きく空いた風穴
直後、この異常事態にミネルバは隊を引き連れ
マリア、メル両名らと共に国王城へと向かったのだった。
……一方
遡る事、数分前――
◆◆◆
「……っと、拝謁部屋が確か一階で
此処は……」
難を逃れ“王の間”を出た主人公は
周囲を警戒しつつ城からの脱出を試みて居た。
だが……その背後に忍び寄る女の影
それは“エリシア”であった――
「……あれぇ? 主人公さん?
何でこんな夜中に王の間から出て来たの?
呼ばれてたの? ……まさか、エッチな事してたとか? 」
「あッ! エリシアさ……って待て
お前……“誰”だ? 」
「何言ってるの? ……見て分かるでしょ? エリシアだよ~? 」
「もう一度だけ聞くぞ? ……お前は何者だ? 」
「チッ……貴様、何故分かった? 」
「簡単だよ……エリシアさんは俺の事をあだ名で呼ぶんだ
馬鹿みたいに“安直過ぎる”あだ名でな」
「何だと? ……その様な下らん理由でバレようとは
確かに、私はあの女では無い。
魔王様が配下の一人……“ガルベロ”だ
国王を演じて居た“ガルベス”は我が弟だ……貴様には
報いを与えねば成らん……亡き弟の為。
貴様は此処で死に絶えよッ!! 」
言うや否や
主人公へと襲い掛かった“ガルベロ”……だが。
直後、主人公の放った“規格外に大きな”氷刃は
ガルベロの身体をいとも容易く両断し
その後も一切の威力減衰を起こさず城の天井をも
“切り裂き”――
「……げッ?!
こ、この技って範囲が小さい技じゃなかったっけッ?!
って……あッ。
“減衰装備”……着けて無かった」
“不可抗力”とは言え
城の天井に“大穴”を開けてしまった主人公……直後
城の警備は最大限強まる事となり……
……主人公は暫くの間
身を隠さざるを得ない状況へと追い込まれ――
「くっ……賊は何処だ!?
逃がすなっ!!! 探せぇぇぇっ!!! ……」
魔族の成り代わりか
それとも、真実を知らぬ唯の衛兵達であったのか
何れにせよ……一頻り衛兵達をやり過ごした後
再び城からの脱出を試みようと動いた主人公。
……隙を見計らい
正門までの道のりを直走った彼……だが。
門まで後僅かの所で
“酷く騒がしい二人”と鉢合わせする事と成った――
◆◆◆
「あっ! ……マリアさん! 此方ですっ! 」
「えっ? ……って、本当だ!
主人公さぁ~ん! ……って、服ボッロボロじゃないですか?!
“ダメージ加工”なんてレベルじゃ無いんですけどぉっ?! 」
「うわぁぁッ?! ……って、マリア!? メルちゃん?! 」
“酷く騒がしい二人”
それは……“マリアとメル”であった。
彼女達はミネルバ隊に連れ立ち現れ
主人公のもとへと駆け寄ると、その無事を心から喜んだ。
だがそんな中、主人公は“メル”に近付き――
「メルちゃん……ちょっとごめんね」
「へっ? ……きゃぁっ?! 」
瞬間
拳を握り締め、メルの肩を軽く叩いた……だが
その拳は“永久防護”の効果に依って弾かれたのだった。
……直後、胸を撫で下ろした主人公とは裏腹に
呆気にとられて居たメルとマリア。
だが、この異質とも思える行動には
主人公なりの“作戦”が存在して居た――
「イテテ……
……“永久防護”に守られた相手を攻撃すると
逆にこっちが痛いんだな……でも
これで間違い無くメルちゃんが“本物”だと分かったよ
てか、いきなりごめん……何処も怪我は無いかい? 」
「は……はい、無事ですっ!
でも、私が本物かどうかって一体どう言う……」
「……城内に魔族が居たんだ、それで其奴は
エリシアさんの姿をして俺を騙そうとした。
だから……メルちゃんが本物か確認する為に
思いついた方法がこれしか無かったんだ……驚かせてごめん」
「そ、そう言う事だったんですね……でも、怖いです
人間に化ける事が出来るなんて……」
「そうですね~……でも、それで言うと主人公さんの確かめ方も
“サイコパス”過ぎて怖いですけどね~? 」
「ああ、凄く反省してるよ……最強の戦士“マリアーバリアン”様」
「……なっ!?
感動の再会早々何なんですか?! 語呂の悪い!! 」
「その反応……間違い無く“マリア”なんだな?!
良かった……二人共無事で本当に良かったッ! 」
言うや否や
二人を抱き締め、安堵の涙を流した主人公。
彼は――
「ごめん……本当にごめんッ……俺
二人が死んだんじゃ無いかと思って……本当に
無事で良かった……ッ……」
突如として抱き締められた事に驚き
頬を赤く染めて居たメル
だが、彼の懸命さを感じ取り――
「はいっ! ……ちゃんと生きてますっ!
掠り傷一つ負わずに済んだのは主人公さんのお陰ですっ!
主人公さんもご無事……では、無いです……よね
お服がボロボロですっ……何処も痛い所は無いですかっ? 」
「こッ、これはその……“色々”有ったんだ
でも、もう大丈夫……有難う。
……マリアも無事で居てくれて有難う
誰一人欠けなくて……本当に良かった」
「ええ……私も生きてますし、怪我だってしてませんから
もう泣くのは止めてくださいね?
流石にそんな状態の主人公さんを“イジる”気には成れませんし? 」
「ああ、悪かった……って、安心してる場合じゃ無い
伝えて置かないと駄目な事があるんだ……
……今、オルガさんとガーベラさんは
エルフ族を盾に脅され、俺達の敵に成ってしまって居る。
けど、安心してくれ……脅してたのは
国王に化けて居た“ガルベス”って魔族で
其奴は戦いの末、俺が倒したから……」
「そんな、国王様が?! ……で、では
本物の国王様は何処へ居られるのですッ?! 」
当然と言うべきか
この瞬間、血相を変えそう問い質して来たミネルバさんに対し
直後、俺は奴の口にした台詞を出来る限り“控えめ”に伝えた。
……暫しの沈黙の後
彼女はこの事実に項垂れつつも――
「何と言う事なの……国王が成り変わられて居た事に
私すら気付けていなかったとは……主人公さん
余りにも至らぬ私のせいで……」
「い、いえその……お気に為さらないで下さい。
と言うか、あんなに精巧に
人間に化けられる奴を見破る方が難しいと思います。
兎に角……オルガさん達は奴に脅され
敵対して居ただけなので、事情を伝えれば
きっと味方に戻ってくれる筈です、だから
取り敢えず今は、彼らの誤解を解く事と
他にも紛れて居る可能性が高い
魔族の捜索を優先した方が良いかと思います」
「……お気遣い感謝致します。
そうですね……では、魔導通信
カイエルさんッ! ――
――主人公さんを城にて発見、保護致しました。
至急、ミリアに安心する様伝え……」
「おぉ! それは良かった! ……しかし、なぜ城に? 」
「……少し落ち着きなさいカイエル、そうでなければ
この先に話す情報で卒倒しかねませんよ? 」
「し、失礼を……して、情報とは? 」
「良いですか? カイエル……
……我が国の国王は“魔族に成り代わられて居た”のです。
マリアさん、メルさんの両名が襲われた理由も
恐らくは、この国の弱体化を狙い
人間同士の疑心暗鬼を生み出す為でしょう。
……彼らは恐らくこの国を
“人間の養殖場”とでも成すつもりだった。
その最たる物として、我が国へと生まれた
史上二人目のトライスターである主人公さんは
国王に成り代わった魔族に依り囚われて居たのです」
「なんと……」
「……詳しい話はまた改めて、貴方は念の為
エリシアさん、ラウドさんの両名を連れ
ギルドで待機して居て下さい。
それから……もし、二人が普段と違う立ち居振る舞いをした場合は
最低でも直ぐに捕縛を……
……お二人が成り変わられて居る可能性も有ると思いなさい」
「し……承知致しましたッ!
直ぐに魔導通信で呼び掛け、両名をギルドで待機させて置きますッ!
では……通信終了ッ! 」
◆◆◆
「さて……では、今出来る限りの事をしておきましょう。
先ずは主人公さん……オルガ、ガーベラ両名が脅され
“敵側に付いた”……と言いましたね? 」
「ええ……ですが、二人は強いられて居る様でした」
「そうですか……二人が今、何処に居るかは? 」
「……眠りから覚めた時、既に俺は拘束されて居て
“王の間”に居ましたから、二人の行方までは……」
「そうですか……では、一先ずエルフの村へ向かいましょう」
直後
俺達はミネルバさんに連れられ
エルフの村へと向かった
◆◆◆
「……事態は急を要します、此処を通しなさいッ! 」
「ミ、ミネルバ様?! ……何があったんです?! 」
「アルフレッドさん……“族長”とガーベラは? 」
「そ、それが……まだお帰りに成られて居ないのです
まさか……何かあったのですかっ?! 」
「ええ、ですが全てを説明する時間すら惜しい
一つだけ言える事は、我が国の国王が
魔族に成り変わられて居たと言う事……」
「何と!? ……わ、分かりました!
私達に何か協力出来る事は……」
「ほう? ……都合良く全員集まったか」
突如として何処からとも無く発せられた声
直後、俺達の前に現れたのは“頭巾の男”だった。
奴は、警戒する俺達に対し――
“暫し待て”
――そう言うと、直後
異空間から意識の無い“二人”を取り出し
自らの眼前へと放り投げ――
「さぁ、どうする? ……おっと、だれも動くなよ?
お前らが少しでも妙な真似をしたら
大切な族長様とその妻が二人共死ぬ事になるぞ? 」
その脅しで俺達の動きを封じた
そして――
「此奴らを無事に返して欲しくば
其処に居る“トライスター”を差し出せッ! 」
二人を人質に取られ
エルフ達はどうする事も出来ず居たこの瞬間
俺の頭をある考えが過った――
“俺一人が犠牲に成れば”
だが――
「……わ、私がお二人の代わりに人質になりますっ!
ですからっ! ……どうかお二人の事を解放してあげて下さいっ! 」
この瞬間、止める暇さえ無く
そう言ってメルちゃんは自ら頭巾の男へと近づいた。
だが――
「……お前に妙な“防護魔導”が掛かって居る事は先刻承知だ
元より貴様の様な穢らわしい“存在”に
人質としての価値など在りはしない……」
彼女に対する此奴の見積もりが低かった事は幸いだった。
まぁ……メルちゃんに酷い事を言ったお礼は
たっぷりとするつもりだが……兎も角。
……彼女に遅れる事僅か
どうにか間に割って入った俺は――
「なぁアンタ……確か“アサシン”だったか?
俺と取引しないか? ……」
「ふっ、断る……貴様と交換以外の条件など有りはしない」
「ああ……喜べ
それなら“満額回答”だ……俺とその二人を交換で良いんだな? 」
直後
俺の発言に酷く慌てたメルちゃんとマリア
だが、今はこの“作戦”こそが活路だ――
「良いだろう……但し武器を全て外せ」
「ああ、分かった……ゆっくり外すから二人に手は出さないでくれ
……メルちゃん、装備を頼む」
「嫌ですっ! 私も連れて行ってくださいっ! 」
「頼むから言う事を! ……いや、違う
信じてくれ……俺は、必ず全員を助ける。
俺は、誰一人失わない……必ず全員を護るから」
唯の無策では無く
これが俺の作戦である事を気付いて貰いたくて
“真意に気付いてくれ”とばかりに俺は
彼女の瞳を真っ直ぐ見つめそう告げた。
……真意が伝わったのかは判らない、だが
暫しの沈黙の後……彼女は
確かに装備を受け取ってくれた――
◆◆◆
「良し……ゆっくりだ、ゆっくりと此方に来い」
奴が待ち構える場所までは僅か数メートルの距離だった。
一歩ずつ……奴を刺激しない様
まるで、地雷原を歩くかの様な心境で歩んだ俺は
“二人”の回収をマリアに託し
更に歩みを進めた。
そして――
「フ……フハハハッ!
漸くだ……これで私も魔王様に認められる!
ガルベロ様とガルベス様を失ったのは痛かったが
まぁ良い……これ程の戦果を立てれば奴らの手勢さえ全て配下と成る。
……行く行くは千人隊長と成るだろうっ!! 」
この瞬間
俺を手に入れ、ありありと勝ち誇った“アサシン”
だが……甘い
俺には“秘策”がある――
「……掛かったなッ!
固有魔導! “限定管理者権限ッ!!” ――」
「な、何っ?! ……」
◆◆◆
《《――“ERROR”
一日の使用回数上限に達しました――》》
「そ、そんなッ?! ……」
「フッ……フハハハハッ!!
私を罠にハメたつもりが、まさか
自分の固有魔導の仕組みさえ知らなかったとは!
……しかし、固有魔導まで手に入れて居たとはな? 」
「くッ……」
最悪だ。
最低最悪だ……調子に乗り過ぎたッ!!!
不味い、不味い不味い不味いッ!!!
こんな時に限って何の予備案も思いつかないッ!!! ――
「……万が一魔王様の前で無礼を働かれてもかなわん
予定変更だ……貴様はここで死ねぇぇぃっ!!! 」
「なッ?! ……」
嗚呼、終わった。
俺……完全に終わった。
“事故の瞬間”宜しく時間が遅く感じる……
……此奴が振り上げた小刀は
俺の命を刈り取る為、今まさに
正確無比に、振り下ろされんとして居る。
嗚呼……こんな“頻度”で
二回目の神頼みなんて……間に合う訳
無いよな――
◆◆◆
「大地よ微睡め! ……狂泥之沼ッッ!! 」
「何だっ?! ……ぐっ! う、動けん! 」
何が起きた?
俺に振り下ろされんとして居た小刀と“アサシン”は
一体|何処に……いや、見つけた。
……と言っても“沼地”に飲まれ
半分以上が浸かって居る状態だったのだが。
ともあれ――
「……ふぃ~っ! 何とか間に合ったみたいだねぇ~♪
ってか、遅くなってごめんねぇ? 主人公っちぃ♪ 」
既の所で駆けつけ
俺を助けた存在……それは“エリシア”さんだった。
……彼女に遅れる事僅か
ラウドさんとカイエルさんまでもが
増援として駆けつけたこの瞬間
“アサシン”は無事捕縛され――
「いやぁ~っ! ミネルバさんから緊急連絡が届いて
急いで来たんだけどぉ~……良く頑張ったねぇ~っ!
偉い偉ぁ~いっ♪ 」
彼女は
俺の肩を“ポンポン”と叩きながらそう言った。
嗚呼……間違い無い
彼女こそ――
「この“癖の強さ”……間違いないッ!
貴女は本物のエリシアさんですねッ!!! 」
“助かった”と言う安堵と
睡眠不足のダブルパンチとでも言うべきだろうか?
命の恩人に対し、後から考えれば
“まぁまぁ失礼”な発言を繰り出したこの瞬間の俺に対し
彼女は、一瞬|戸惑い
困った様な表情を浮かべ苦笑いをするに留めてくれたのだった。
嗚呼、後で謝っておこう――
「……アサシンと言いましたね?
貴方には知り得る限り全ての情報を吐いて貰いますよ? 」
“アサシン”の頭巾を降ろし
その目を確りと見つめながらそう言ったミネルバさん。
この瞬間……静かだが
確かな怒りを漂わせて居た彼女に対し
アサシンは“威勢の良い”発言を繰り出した。
だが――
「下等な人間が……情報など渡すかよ」
「それは……良い“心掛け”ですね?
ですが、その威勢の良さが何時まで持つでしょうか?
……皆、良く聞きなさい
この者を魔導隊詰所“地下魔導牢”に移送します。
念の為、エリシアさんラウドさんにも
お手をお借りしたいのですが……」
「うむ、了解じゃ」
「ほいほ~ぃ! 任せてぇ~っ♪ 」
「感謝致します……では、主人公さん
“そちら”はお任せしますよ? 」
ほんの一瞬マリア達に目を向け
そう言い残すと“アサシン”を地下魔導牢へ移送する為
ラウドさん、エリシアさんらと共にこの場を離れたミネルバさん――
「……た、助かった~ッ!!
流石はエリシアさんだわ……しかし
まさか俺の固有魔導に回数制限があったとは……って。
ぬわぁッ?! ……メ、メルちゃん? 」
「主人公さんの馬鹿っ!! ……バカバカバカっ!! 」
瞬間
飛び付く様に俺へと抱きついたメルちゃんは
涙を流しながら、俺の胸を弱々しく叩き――
「うわ~……メルちゃんをこんなに悲しませるなんて
主人公さんって、最ィィッッ低ッ!! ……ですね? 」
斯く言うマリアも
俺の無事に安堵した様に涙を流して居て――
「そ、その……二人共、本当にごめん
余りに迂闊だったし
最低だって言われても仕方無いと思う……本当にごめん」
嗚呼、余りにもバツが悪い。
こんな時にどう立ち回れば良いのかさえ判らない
そして、これはきっと“寝不足”のせいでは無い。
嗚呼……“謝るべき相手”が更に増えた気がする。
そんな、ある意味平和な事を考えて居たこの直後
エルフ族の戦士“アルフレッド”は
未だ意識の戻らないオルガさんとガーベラさんに対し
必死に治療を施そうとして居て――
「オルガ様!……ガーベラ様!!
主人公様っ!! ……どうかお二人をお助け下さい!! 」
「は、はいッ!!! ……っと、外傷は無く
呼吸も脈も……ありますね。
これは……多分“気絶”させられているだけかと」
「気絶? ……それにしては余りに顔色が……」
「ええ、其処は気になりますが……兎に角
少し待って下さい……確か、こう言う場合は
治癒魔導よりも……」
この瞬間
マリアの爆睡っぷりに、若干だが“辟易”として居た事もあり
“深い眠りから醒めさせる魔導技”を調べて置いた事が
役立つ時が来た――
「これですッ! ……“目覚めのベル!! ” 」
◆◆◆
「ん……んんっ……此処は……私たちの村? 」
「此処は……なっ?! 主人公?! 」
目覚めるや否や
俺に気付くと直ぐに身構えた二人。
……万が一にも二人が状況を勘違いしてしまわぬ様
俺は――
「落ち着いて下さい……それから、おはようございます。
……因みに国王に化けて居た魔族は俺が倒しましたし
状況は全てミネルバさんにお伝えしましたから
エルフ村に危害が加えられる心配は無くなった筈です。
兎に角……お二人が無事で良かったです」
そう伝え、微笑んでみせた
だが、オルガさんは尚も興奮状態で――
「何? ……国王が魔族だと!?
いや……この際、そんな事は後回しだ。
主人公よ……何故だ? 」
「何故って……何がです? 」
「……私達が御主に対し行った卑劣な行為は
どの様な謝罪の言葉でも許される様な物では無い。
……全てが終わった時、私の命で許されるのならば
どの様な裁きでも受ける積もりで居た。
いや、今も同じ気持ちだ……此処まで言えば分かるだろう
主人公……裏切りには“死を以て”償わせて欲しい」
「私も同じ気持ちです、貴方……」
この瞬間
二人は何かを覚悟した様子で静かに座り込んだ。
“嗚呼、やっぱりだ”
……二人の様子を見て居て確信した。
やっぱり二人は強いられて居たんだ――
「……そうですか。
分かりました、では……」
潔く“裁きを受ける”と覚悟をした二人に対し
俺に“何もしない”と言う選択肢は無かった。
直後……魔導を使用する為
俺は、何時もより大げさに腕を振り上げた……だが。
それに慌てた“アルフレッド”は
二人を庇う様に立ち塞がった――
「主人公様っ!! ……代わりに私がっ!!!
……どの様な責め苦でもお受け致しますっ!
ですからどうかっ!! ……
……どうか矛を収めて下さいませっ! 」
著名なハンターである前に
二人はこの村の重要な存在だ。
アルフレッドさんの祈る様な“懇願”を見れば
それは一目瞭然だ。
だが、この直後オルガさんは
そんなアルフレッドさんを強く窘めた――
「……アルフレッド、引けッ!!
……決して許されるべきで無い行動を取った以上
族長である私には、責任を取る必要があるのだ!!
だが……主人公よ、御主に一つだけ頼みがある
妻だけは……ガーベラだけは見逃して貰えないだろうか? 」
「貴方っ?! ……何を言うのですっ!!
一人残される位なら私は自害致します!
……主人公さん、どうか夫の言葉など気にせず
私も共にお裁きに成って下さいませっ!! 」
「……安心して下さいガーベラさん。
お二人には全く同じ“裁き”を受けて貰いますから
では……お二人共、本当に良いんですね? 」
「……ああ、本当に済まなかった」
「ええ、本当に……」
直後
共に手を繋ぎ、目を閉じ
唯静かに裁きが下る時を待って居た二人。
凍り付く様な静寂の後、俺は――
「では――」
再び振り上げた掌
直後……大量の魔導力を掌に集めた俺は
眼前に座す二人に向け……全身全霊を以て
“魔導”を放った――
◆◆◆
「――“完全回復ッ! ”
裁きは終わりました……もう立ち上がって良いですよ? 」
「何故だ? 」
「何がですか? オルガさん……あ~ッ!
裁かれる側が“不満を語る”とは……
……さては、反省してませんね~ッ? 」
「そ……そうでは無いッ!
何故そこまで簡単に私達を許せる?
私はお前を死地に送ったのだぞ?!
その上……間接的とは言え
メルとマリアを命の危機に晒したのだぞ?!
そんな私達を、何故そうも簡単に許す?! 」
「……ええ、確かに変です。
実際、メルちゃんとマリアの件は失望しました
ハッキリ言って最低ですし
一発位ならブン殴って置きたいし
思い出すだけでも……かなり気に入らないです。
……でも。
俺が戦い方の“コツ”を教わったのも
力の抑え方を教わったのも……オルガさん。
貴方から……ですよね? 」
「それはそうだが! ……その程度の事など
簡単に消し飛ぶ程の重大な裏切りを! ……」
「あ~ッ……こんな夜遅くに“大声”は感心しないですよ?
っと……ガーベラさん、オルガさんが煩いんで
後はお願いしますッ! 」
「え、ええ……でも、待って下さい主人公さん」
「何です? ……まさか
ガーベラさんまで裁きに対する“苦情”ですか? 」
「く、苦情など! ……そうでは無く!
主人公さん……私だってこの人と同じ気持ちなのです。
私達は最低の行動を取った
幾ら種族を守る為だったとは言え
貴方達の信頼を裏切ったのですよ?
……これは私達の我儘かも知れないけれど
せめて何かお礼でもさせて頂かないと
私達の気が落ち着かないのです……」
「う~ん……お礼ですか?
どうしようかな……あッ!
では、今まで通り時々一緒にパーティを組んで下さいッ! 」
「そ……そんな事?
それでは……私達だけが得をして
あなた達は“くたびれ儲け”ではありませんか!! 」
「……妻の言う通りだ!
それならばせめて、報酬の取り分を
“九対一にする”などと言う方法がだな?! ……」
「痛タタ~ッ! ……流石は族長ですねオルガさん
交渉が上手いです……そうですか、そちらが“九”ですか」
「……そんな訳が無いだろうッ?!
御主達が九……」
「……それの何処が“今まで通り”なんです?
過去の過ちがあるからと俺達に気を遣い続け
今後、仮に俺らを優先し無理をしてお二人が死んだとします。
それ……一体、誰が喜ぶと思って居るんです?
メルちゃんは勿論、マリアだって喜びません……当然、俺もです。
……今まで通り、皆で協力しあって
笑ったり怒ったりしながら
オルガさんと俺は色んな店で
素材を高く売る為の策を講じたり
メルちゃんはガーベラさんに色んな事を教えて貰ったり
マリアの戦闘力の高さを全員で――
“バーバリアンみたいだな! ”
“マリアーバリアン様~”
――なんて、褒めてるんだか
貶してるんだか判らない感じで称えたり。
……あの、楽しかった時間が
たった一度の……こんな“つまらない”事で消え去るなら
俺は……何の為に必死で皆を護ろうとしたんですか?!
それこそ本当に“くたびれ儲け”じゃないですかッ!!!
……始めて出来た仲間や友達が
何で全員生きてるのに、何で全員変な気ばかり遣ってッ!!
何でも良いからグダグダ言わずに許されろよッ!!
心が死んで行く様なこんな感覚……
……俺はもう二度と御免なんだよッ!!
俺が良いって言ってんだから素直に許されとけよッ!!! 」
「……主人公、こんな私達を許すと言うのか? 」
「そうよ……私達はまた
貴方達を裏切るかもしれないのよ? 」
「だとしても……バカみたいだと思われても良い
それでも何故か、見放したく無いんですよ。
……メルちゃん、マリア
俺ってやっぱ我儘なのかな?
二人の意見だって聞いて無いしさ……ごめん」
「はいっ……とっても我儘ですっ! 」
「メルちゃんに大賛成です!
多分ですけど、主人公さんって
この国で一番の我儘だと思いますよ?
……ですが。
きっと皆さん……私達も含めて
その“我儘”を聞いてあげたくなるんですよ。
ね~っ? ……メルちゃん! 」
「はいっ! 」
この瞬間
そう言った二人は、満面の笑みを浮かべて居た――
「メルちゃん、マリア……有難う、二人共。
……と言う事なので
俺達は何も問題有りませんが……オルガさん、ガーベラさん。
お二人は……まだ“苦情”があったりします? 」
「……いいや。
主人公よ、本当にこんな私達を許してくれると言うのなら
今まで通り……いや、今まで以上に
深い“仲間”で居させてはくれないだろうか? 」
「私からもお願い致します
主人公さん……どうか、貴方達の仲間で居させて下さい」
「……はい! 喜んでッ!
でも……今度“裏切る”時は
前以て理由と時期を教えて下さい。
そうすれば……“傾向と対策”が出来ると思うので! 」
◆◆◆
この瞬間
そう“すっとぼけた表情”で語った主人公に対し
マリアは――
「主人公さん……それって裏切りじゃなくて
“八百長”って言うんじゃ……」
と言い掛けた
一方、メルは――
「あっ! ……理由に応じて対応を一緒に考えるからって事ですねっ! 」
と
理解を示したのであった――
◆◆◆
「おぉ~ッ! 流石メルちゃん賢いッ!
や~いッ……マリアのアホォ~ッ! 」
「えへへ~っ……主人公さんに褒められちゃいましたっ♪ 」
「い、いや……私の扱いだけ酷過ぎませんっ?! 」
◆◆◆
こうして俺達は何とか危機的状況を回避し
誰一人欠ける事無く、王国に潜んで居た
魔族を打ち倒した……だが、安心は出来ない。
……“国王の不在”と言う
王国の基盤を揺るがす様な一大事と
未だ王国内に潜んで居る可能性が高い残存魔族への対処。
それは、言葉で言う程容易い問題では無くて――
===第一二話・終===




