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異世界転生って楽勝だと思ってました。【感謝16万PV突破! 】【六周年&七年目突入! 】  作者: 黒崎 凱
第一章

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第一二話「全員を護るのって楽勝だと思ってました……前編」

危機的状況を(だっ)し、王の間を後にした主人公。


一方……“魔導隊詰所”では

マリアらに対する聞き取りが行われて居た


「主人公さん……無事でしょうか? 」


不安を口にしたマリア

そんな彼女に対し、メルは――


「大丈夫ですっ! ……主人公さんは強いですからっ!

き、きっと……お母さんと私を助けて下さった時みたいに

私達が想像も……出来ない位……きっと……」


マリアが不安に押し(つぶ)されぬ様

そう必死に気遣い

(みずか)らも不安に押し(つぶ)されぬ様、希望を語って居た。


そんな中、ミネルバ団長は――


「……色々と心配事が多い時にごめんなさい

だけど、記憶が新しい内に聞いて置きたいの……


……犯人の人相(にんそう)を、分かる範囲で教えて貰えるかしら? 」


申し訳()さげにそう問うた。


直後、この問いに対しマリアは――


「顔は……頭巾(フード)(かぶ)って居たので余り

武器は湾曲(わんきょく)した小刀(こがたな)だったかと……


……分かるのはその位です」


「そう……使用する武器が分かっただけでも

手掛かりにはなるけれど……」


決定的な情報を得られず頭を悩ませていたミネルバ

だが、そんな中突如(とつじょ)として周囲に響き渡った


轟音(ごうおん)”――


「……なっ!?


こ、国王城が……全隊員ッ!!!

お二人の護衛をしつつ、急ぎ国王城へ向かいますッ!! 」


国王城

(おう)()”の(ほど)近く、大きく空いた風穴

直後、この異常事態にミネルバは隊を引き連れ

マリア、メル両名らと共に国王城へと向かったのだった。


……一方

(さかのぼ)る事、数分前――


◆◆◆


「……っと、拝謁(はいえつ)部屋が確か一階で

此処(ここ)は……」


(なん)(のが)れ“(おう)()”を出た主人公は

周囲を警戒しつつ城からの脱出を試みて居た。


だが……その背後に忍び寄る女の影


それは“エリシア”であった――


「……あれぇ? 主人公さん?

何でこんな夜中に(おう)()から出て来たの?

呼ばれてたの? ……まさか、エッチな事してたとか? 」


「あッ! エリシアさ……って待て

お前……“誰”だ? 」


「何言ってるの? ……見て分かるでしょ? エリシアだよ~? 」


「もう一度だけ聞くぞ? ……お前は何者だ? 」


「チッ……貴様、何故(なぜ)分かった? 」


「簡単だよ……エリシアさんは俺の事をあだ名で呼ぶんだ

馬鹿みたいに“安直(あんちょく)()ぎる”あだ名でな」


「何だと? ……その様な下らん理由でバレようとは

確かに、私はあの(エリシア)では無い。


魔王様が配下の一人……“ガルベロ”だ

国王を演じて居た“ガルベス”は我が弟だ……貴様には

(むく)いを与えねば成らん……()き弟の(ため)


貴様は此処(ここ)で死に()えよッ!! 」


言うや否や

主人公へと襲い掛かった“ガルベロ”……だが。


直後、主人公の放った“規格外に大きな”氷刃(ヒョウジン)

ガルベロの身体をいとも容易(たやす)く両断し

その後も一切の威力減衰(げんすい)を起こさず城の天井をも


“切り裂き”――


「……げッ?!

こ、この技って範囲が小さい技じゃなかったっけッ?!


って……あッ。


減衰(げんすい)装備”……着けて無かった」


不可抗力(ふかこうりょく)”とは言え

城の天井に“大穴”を開けてしまった主人公……直後

城の警備は最大限強まる事となり……


……主人公(かれ)(しばら)くの間

身を隠さざるを得ない状況へと追い込まれ――


「くっ……賊は何処(どこ)だ!?

逃がすなっ!!! 探せぇぇぇっ!!! ……」


魔族の成り代わりか

それとも、真実を知らぬ(ただ)の衛兵達であったのか

(いず)れにせよ……一頻(ひとしき)り衛兵達をやり過ごした後

再び城からの脱出を試みようと動いた主人公。


……(すき)見計(みはか)らい

正門までの道のりを直走(ひたはし)った彼……だが。


門まで後(わず)かの所で

(ひど)く騒がしい二人”と鉢合わせする事と成った――


◆◆◆


「あっ! ……マリアさん! 此方(こっち)ですっ! 」


「えっ? ……って、本当だ!

主人公さぁ~ん! ……って、服ボッロボロじゃないですか?!

“ダメージ加工”なんてレベルじゃ無いんですけどぉっ?! 」


「うわぁぁッ?! ……って、マリア!? メルちゃん?! 」


(ひど)く騒がしい二人”


それは……“マリアとメル”であった。


彼女達はミネルバ隊に連れ立ち(あらわ)

主人公(かれ)のもとへと駆け寄ると、その無事を心から喜んだ。


だがそんな中、主人公(かれ)は“メル”に近付き――


「メルちゃん……ちょっとごめんね」


「へっ? ……きゃぁっ?! 」


瞬間


拳を握り締め、メルの肩を軽く叩いた……だが

その拳は“永久防護(エターナルプロテクト)”の効果に()って弾かれたのだった。


……直後、胸を撫で下ろした主人公とは裏腹に

呆気(あっけ)にとられて居たメルとマリア。


だが、この異質とも思える行動には

主人公(かれ)なりの“作戦”が存在して居た――


「イテテ……


……“永久防護(エターナルプロテクト)”に守られた相手を攻撃すると

逆にこっちが痛いんだな……でも

これで間違い無くメルちゃんが“本物”だと分かったよ

てか、いきなりごめん……何処(どこ)も怪我は無いかい? 」


「は……はい、無事ですっ!

でも、私が本物かどうかって一体どう言う……」


「……城内に魔族が居たんだ、それで其奴(そいつ)

エリシアさんの姿をして俺を(だま)そうとした。


だから……メルちゃんが本物か確認する為に

思いついた方法がこれしか無かったんだ……驚かせてごめん」


「そ、そう言う事だったんですね……でも、怖いです

人間に化ける事が出来るなんて……」


「そうですね~……でも、それで言うと主人公さんの確かめ方も

“サイコパス”過ぎて怖いですけどね~? 」


「ああ、凄く反省してるよ……最強の戦士“マリアーバリアン”様」


「……なっ!?

感動の再会早々何なんですか?! 語呂の悪い!! 」


「その反応……間違い無く“マリア”なんだな?!

良かった……二人共無事で本当に良かったッ! 」


言うや否や

二人を抱き締め、安堵の涙を流した主人公。


彼は――


「ごめん……本当にごめんッ……俺

二人が死んだんじゃ無いかと思って……本当に

無事で良かった……ッ……」


突如として抱き締められた事に驚き

(ほほ)を赤く染めて居たメル


だが、彼の懸命さを感じ取り――


「はいっ! ……ちゃんと生きてますっ!

(かす)り傷一つ負わずに()んだのは主人公さんのお陰ですっ!


主人公さんもご無事……では、無いです……よね

お服がボロボロですっ……何処(どこ)も痛い所は無いですかっ? 」


「こッ、これはその……“色々”有ったんだ

でも、もう大丈夫……有難う。


……マリアも無事で居てくれて有難う

誰一人()けなくて……本当に良かった」


「ええ……私も生きてますし、怪我だってしてませんから

もう泣くのは止めてくださいね?

流石にそんな状態の主人公さんを“イジる”気には成れませんし? 」


「ああ、悪かった……って、安心してる場合じゃ無い

伝えて置かないと駄目な事があるんだ……


……今、オルガさんとガーベラさんは

エルフ族を盾に脅され、俺達の敵に成ってしまって居る。


けど、安心してくれ……脅してたのは

国王に化けて居た“ガルベス”って魔族で

其奴(そいつ)は戦いの(すえ)、俺が倒したから……」


「そんな、国王様が?! ……で、では

本物の国王様は何処(いずこ)へ居られるのですッ?! 」


当然と言うべきか

この瞬間、血相を変えそう()(ただ)して来たミネルバさんに対し

直後、俺は(ガルベス)の口にした台詞(セリフ)を出来る限り“(ひか)えめ”に伝えた。


……(しば)しの沈黙の後

彼女(ミネルバ)はこの事実に項垂(うなだ)れつつも――


「何と言う事なの……国王が成り変わられて居た事に

私すら気付けていなかったとは……主人公さん

余りにも至らぬ私のせいで……」


「い、いえその……お気に()さらないで下さい。


と言うか、あんなに精巧(せいこう)

人間に化けられる奴を見破る方が難しいと思います。


兎に角……オルガさん達は(ガルベス)に脅され

敵対して居ただけなので、事情を伝えれば

きっと味方に戻ってくれる筈です、だから

取り敢えず今は、彼らの誤解を解く事と

他にも(まぎ)れて居る可能性が高い

魔族の捜索を優先した方が良いかと思います」


「……お気遣い感謝致します。


そうですね……では、魔導通信


カイエルさんッ! ――


――主人公さんを城にて発見、保護(いた)しました。


至急、ミリアに安心する様伝え……」


「おぉ! それは良かった! ……しかし、なぜ城に? 」


「……少し落ち着きなさいカイエル、そうでなければ

この先に話す情報で卒倒しかねませんよ? 」


「し、失礼を……して、情報とは? 」


「良いですか? カイエル……


……我が国の国王は“魔族に成り代わられて居た”のです。


マリアさん、メルさんの両名が襲われた理由も

恐らくは、この国の弱体化を狙い

人間同士の疑心暗鬼(ぎしんあんき)を生み出す(ため)でしょう。


……彼らは恐らくこの国を

“人間の養殖(ようしょく)(じょう)”とでも成すつもりだった。


その(さい)たる物として、我が国へと生まれた

史上二人目のトライスターである主人公さんは

国王に成り代わった魔族に()(とら)われて居たのです」


「なんと……」


「……詳しい話はまた改めて、貴方は念の為

エリシアさん、ラウドさんの両名を連れ

ギルドで待機して居て下さい。


それから……もし、二人が普段と違う立ち居振る舞いをした場合は

最低でも直ぐに捕縛を……


……お二人が成り変わられて居る可能性も有ると思いなさい」


「し……承知致しましたッ!

直ぐに魔導通信で呼び掛け、両名をギルドで待機させて置きますッ!

では……通信終了ッ! 」


◆◆◆


「さて……では、今出来る限りの事をしておきましょう。


()ずは主人公さん……オルガ、ガーベラ両名が脅され

敵側(てきがわ)()いた”……と言いましたね? 」


「ええ……ですが、二人は強いられて居る様でした」


「そうですか……二人が今、何処(どこ)に居るかは? 」


「……眠りから覚めた時、(すで)に俺は拘束されて居て

(おう)()”に居ましたから、二人の行方(ゆくえ)までは……」


「そうですか……では、一先(ひとま)ずエルフの村へ向かいましょう」


直後

俺達はミネルバさんに連れられ

エルフの村へと向かった


◆◆◆


「……事態は急を要します、此処(ここ)を通しなさいッ! 」


「ミ、ミネルバ様?! ……何があったんです?! 」


「アルフレッドさん……“族長(オルガ)”とガーベラは? 」


「そ、それが……まだお帰りに成られて居ないのです

まさか……何かあったのですかっ?! 」


「ええ、ですが全てを説明する時間すら惜しい

一つだけ言える事は、我が国の国王が

魔族に成り変わられて居たと言う事……」


「何と!? ……わ、分かりました!

私達に何か協力出来る事は……」


「ほう? ……都合良く全員集まったか」


突如(とつじょ)として何処(どこ)からとも無く発せられた声

直後、俺達の前に現れたのは“頭巾(フード)の男”だった。


奴は、警戒する俺達に対し――


(しば)し待て”


――そう言うと、直後

異空間から意識の無い“二人(オルガ・ガーベラ)”を取り出し

(みずか)らの眼前へと放り投げ――


「さぁ、どうする? ……おっと、だれも動くなよ?

お前らが少しでも妙な真似をしたら

大切な族長様とその妻が二人共死ぬ事になるぞ? 」


その脅しで俺達の動きを封じた

そして――


「此奴らを無事に返して欲しくば

其処(そこ)に居る“トライスター”を差し出せッ! 」


二人(オルガ・ガーベラ)を人質に取られ

エルフ達はどうする事も出来ず居たこの瞬間

俺の頭をある考えが(よぎ)った――


“俺一人が犠牲に成れば”


だが――


「……わ、私がお二人の代わりに人質になりますっ!

ですからっ! ……どうかお二人の事を解放してあげて下さいっ! 」


この瞬間、止める暇さえ無く

そう言ってメルちゃんは(みずか)頭巾(フード)の男へと近づいた。


だが――


「……お前に妙な“防護(ぼうご)魔導”が掛かって()る事は先刻(せんこく)承知だ

元より貴様の様な(けが)らわしい“存在(ハーフ)”に

人質としての価値など在りはしない……」


彼女に対する此奴(こいつ)の見積もりが低かった事は(さいわ)いだった。


まぁ……メルちゃんに(ひど)い事を言ったお礼は

たっぷりとするつもりだが……兎も角。


……彼女に遅れる事(わず)

どうにか間に割って入った俺は――


「なぁアンタ……確か“アサシン”だったか?

俺と取引しないか? ……」


「ふっ、断る……貴様と交換以外の条件など有りはしない」


「ああ……喜べ

それなら“満額回答”だ……俺とその二人を交換で良いんだな? 」


直後

俺の発言に(ひど)く慌てたメルちゃんとマリア

だが、今はこの“作戦”こそが活路(かつろ)だ――


「良いだろう……(ただ)し武器を全て外せ」


「ああ、分かった……ゆっくり外すから二人に手は出さないでくれ

……メルちゃん、装備(これ)を頼む」


「嫌ですっ! 私も連れて行ってくださいっ! 」


「頼むから言う事を! ……いや、違う

信じてくれ……俺は、必ず全員を助ける。


俺は、誰一人失わない……必ず全員を(まも)るから」


(ただ)の無策では無く

これが俺の作戦である事を気付いて貰いたくて

“真意に気付いてくれ”とばかりに俺は

彼女の瞳を真っ直ぐ見つめそう告げた。


……真意が伝わったのかは判らない、だが

(しば)しの沈黙の後……彼女は

確かに装備を受け取ってくれた――


◆◆◆


「良し……ゆっくりだ、ゆっくりと此方(こっち)に来い」


(アサシン)が待ち構える場所までは(わず)か数メートルの距離だった。


一歩ずつ……奴を刺激しない様

まるで、地雷原を歩くかの様な心境で歩んだ俺は

二人(オルガ・ガーベラ)”の回収をマリアに(たく)

更に歩みを進めた。


そして――


「フ……フハハハッ!

(ようや)くだ……これで私も魔王様に認められる!

ガルベロ様とガルベス様を失ったのは痛かったが

まぁ良い……これ程の戦果を立てれば奴らの手勢さえ全て配下と成る。


……行く行くは千人隊長と成るだろうっ!! 」


この瞬間

俺を手に入れ、ありありと勝ち誇った“アサシン”


だが……甘い

俺には“秘策”がある――


「……掛かったなッ!

固有魔導! “限定管理者権限ッ!!” ――」


「な、何っ?! ……」


◆◆◆


《《――“ERROR(エラー)

一日の使用回数上限に達しました――》》


「そ、そんなッ?! ……」


「フッ……フハハハハッ!!


私を罠にハメたつもりが、まさか

自分の固有魔導の仕組みさえ知らなかったとは!


……しかし、固有魔導まで手に入れて居たとはな? 」


「くッ……」


最悪だ。


最低最悪だ……調子に乗り過ぎたッ!!!

不味(まず)い、不味(まず)不味(まず)不味(まず)いッ!!!

こんな時に限って何の予備案も思いつかないッ!!! ――


「……万が一魔王様の前で無礼を働かれてもかなわん

予定変更だ……貴様はここで死ねぇぇぃっ!!! 」


「なッ?! ……」


嗚呼(あぁ)、終わった。


俺……完全に終わった。


“事故の瞬間”(よろ)しく時間が遅く感じる……


……此奴(アサシン)が振り上げた小刀(ナイフ)

俺の命を刈り取る(ため)、今まさに

正確無比に、振り下ろされんとして居る。


嗚呼(あぁ)……こんな“頻度(ひんど)”で


二回目の神頼みなんて……間に合う訳


無いよな――


◆◆◆


「大地よ微睡(まどろ)め! ……狂泥之沼(マッドスワンプ)ッッ!! 」


「何だっ?! ……ぐっ! う、動けん! 」


何が起きた?


俺に振り下ろされんとして居た小刀(ナイフ)と“アサシン”は

一体|何処(どこ)に……いや、見つけた。


……と言っても“沼地(ぬまち)”に飲まれ

半分以上が浸かって居る状態だったのだが。


ともあれ――


「……ふぃ~っ! 何とか間に合ったみたいだねぇ~♪

ってか、遅くなってごめんねぇ? 主人公っちぃ♪ 」


(すんで)の所で駆けつけ

俺を助けた存在……それは“エリシア”さんだった。


……彼女に遅れる事(わず)

ラウドさんとカイエルさんまでもが

増援として駆けつけたこの瞬間

“アサシン”は無事捕縛され――


「いやぁ~っ! ミネルバさんから緊急連絡が届いて

急いで来たんだけどぉ~……良く頑張ったねぇ~っ!

偉い偉ぁ~いっ♪ 」


彼女(エリシア)

俺の肩を“ポンポン”と叩きながらそう言った。


嗚呼(あぁ)……間違い無い

彼女こそ――


「この“(クセ)の強さ”……間違いないッ!

貴女は本物のエリシアさんですねッ!!! 」


“助かった”と言う安堵(あんど)

睡眠不足のダブルパンチとでも言うべきだろうか?


命の恩人に対し、後から考えれば

“まぁまぁ失礼”な発言を繰り出したこの瞬間の俺に対し

彼女は、一瞬|戸惑(とまど)

困った様な表情を浮かべ苦笑いをするに(とど)めてくれたのだった。


嗚呼(あぁ)、後で謝っておこう――


「……アサシンと言いましたね?

貴方には知り得る限り全ての情報を()いて貰いますよ? 」


“アサシン”の頭巾(フード)を降ろし

その目を(しっか)りと見つめながらそう言ったミネルバさん。


この瞬間……静かだが

確かな怒りを(ただよ)わせて居た彼女に対し

アサシンは“威勢(いせい)の良い”発言を繰り出した。


だが――


「下等な人間が……情報など渡すかよ」


「それは……良い“心掛け”ですね?

ですが、その威勢(いせい)の良さが何時(いつ)まで持つでしょうか?


……皆、良く聞きなさい

この者を魔導隊詰所“地下魔導牢”に移送します。


念の為、エリシアさんラウドさんにも

お手をお借りしたいのですが……」


「うむ、了解じゃ」


「ほいほ~ぃ! 任せてぇ~っ♪ 」


「感謝致します……では、主人公さん

“そちら”はお任せしますよ? 」


ほんの一瞬マリア達に目を向け

そう言い残すと“アサシン”を地下魔導牢へ移送する為

ラウドさん、エリシアさんらと共にこの場を離れたミネルバさん――


「……た、助かった~ッ!!

流石(さすが)はエリシアさんだわ……しかし

まさか俺の固有魔導に回数制限があったとは……って。


ぬわぁッ?! ……メ、メルちゃん? 」


「主人公さんの馬鹿っ!! ……バカバカバカっ!! 」


瞬間


飛び付く様に俺へと抱きついたメルちゃんは

涙を流しながら、俺の胸を弱々しく叩き――


「うわ~……メルちゃんをこんなに悲しませるなんて

主人公さんって、(サィ)ィィッッ(ティ)ッ!! ……ですね? 」


()く言うマリアも

俺の無事に安堵(あんど)した様に涙を流して居て――


「そ、その……二人共、本当にごめん

余りに迂闊(うかつ)だったし

最低だって言われても仕方無いと思う……本当にごめん」


嗚呼(あぁ)、余りにもバツが悪い。


こんな時にどう立ち回れば良いのかさえ判らない

そして、これはきっと“寝不足”のせいでは無い。


嗚呼(あぁ)……“謝るべき相手”が更に増えた気がする。


そんな、ある意味平和な事を考えて居たこの直後

エルフ族の戦士“アルフレッド”は

(いま)だ意識の戻らないオルガさんとガーベラさんに対し

必死に治療を(ほどこ)そうとして居て――


「オルガ様!……ガーベラ様!!

主人公様っ!! ……どうかお二人をお助け下さい!! 」


「は、はいッ!!! ……っと、外傷は無く

呼吸も脈も……ありますね。


これは……多分“気絶”させられているだけかと」


「気絶? ……それにしては余りに顔色が……」


「ええ、其処(そこ)は気になりますが……兎に角

少し待って下さい……確か、こう言う場合は

治癒魔導よりも……」


この瞬間


マリアの爆睡っぷりに、若干だが“辟易(へきえき)”として居た事もあり

“深い眠りから()めさせる魔導技”を調べて置いた事が

役立つ時が来た――


「これですッ! ……“目覚めのベル!! ” 」


◆◆◆


「ん……んんっ……此処(ここ)は……私たちの村? 」


此処(ここ)は……なっ?! 主人公?! 」


目覚めるや(いな)

俺に気付くと直ぐに身構えた二人。


……万が一にも二人が状況を勘違いしてしまわぬ様

俺は――


「落ち着いて下さい……それから、おはようございます。


……(ちな)みに国王に化けて居た魔族は俺が倒しましたし

状況は全てミネルバさんにお伝えしましたから

エルフ村に危害が加えられる心配は無くなった筈です。


兎に角……お二人が無事で良かったです」


そう伝え、微笑んでみせた

だが、オルガさんは(なお)も興奮状態で――


「何? ……国王が魔族だと!?

いや……この(さい)、そんな事は後回しだ。


主人公よ……何故(なぜ)だ? 」


何故(なぜ)って……何がです? 」


「……私達が御主に対し行った卑劣な行為は

どの様な謝罪の言葉でも許される様な物では無い。


……全てが終わった時、私の命で許されるのならば

どの様な(さば)きでも受ける積もりで居た。


いや、今も同じ気持ちだ……此処(ここ)まで言えば分かるだろう

主人公……裏切りには“死を(もっ)て”(つぐな)わせて欲しい」


「私も同じ気持ちです、貴方(アナタ)……」


この瞬間

二人は何かを覚悟した様子で静かに座り込んだ。


嗚呼(あぁ)、やっぱりだ”


……二人の様子を見て居て確信した。


やっぱり二人は()いられて居たんだ――


「……そうですか。


分かりました、では……」


潔く“(さば)きを受ける”と覚悟をした二人に対し

俺に“何もしない”と言う選択肢は無かった。


直後……魔導を使用する為

俺は、何時(いつ)もより大げさに腕を振り上げた……だが。


それに慌てた“アルフレッド”は

二人を(かば)う様に立ち塞がった――


「主人公様っ!! ……代わりに私がっ!!!


……どの様な責め苦でもお受け(いた)しますっ!

ですからどうかっ!! ……


……どうか(ほこ)を収めて下さいませっ! 」


著名なハンターである前に

二人はこの村の重要な存在だ。


アルフレッドさんの祈る様な“懇願(こんがん)”を見れば

それは一目瞭然(いちもくりょうぜん)だ。


だが、この直後オルガさんは

そんなアルフレッドさんを強く(たしな)めた――


「……アルフレッド、引けッ!!


……決して許されるべきで無い行動を取った以上

族長である私には、責任を取る必要があるのだ!!


だが……主人公よ、御主に一つだけ頼みがある

妻だけは……ガーベラだけは見逃して貰えないだろうか? 」


貴方(アナタ)っ?! ……何を言うのですっ!!

一人残される位なら私は自害(じがい)(いた)します!


……主人公さん、どうか夫の言葉など気にせず

私も共にお(さば)きに成って下さいませっ!! 」


「……安心して下さいガーベラさん。


お二人には全く同じ“(さば)き”を受けて貰いますから

では……お二人共、本当に良いんですね? 」


「……ああ、本当に済まなかった」


「ええ、本当に……」


直後


共に手を繋ぎ、目を閉じ

(ただ)静かに(さば)きが下る時を待って居た二人。


凍り付く様な静寂の後、俺は――


「では――」


再び振り上げた(てのひら)


直後……大量の魔導力を(てのひら)に集めた俺は


眼前に()す二人に向け……全身全霊を(もっ)


“魔導”を放った――


◆◆◆


「――“完全回復(パーフェクトヒール)ッ! ”


(さば)きは終わりました……もう立ち上がって良いですよ? 」


何故(なぜ)だ? 」


「何がですか? オルガさん……あ~ッ!

(さば)かれる側が“不満を語る”とは……


……さては、反省してませんね~ッ? 」


「そ……そうでは無いッ!

何故(なぜ)そこまで簡単に私達を許せる?

私はお前を死地に送ったのだぞ?!

その上……間接的とは言え

メルとマリアを命の危機に(さら)したのだぞ?!

そんな私達を、何故(なぜ)そうも簡単に許す?! 」


「……ええ、確かに変です。


実際、メルちゃんとマリアの件は失望しました

ハッキリ言って最低ですし

一発位ならブン殴って置きたいし

思い出すだけでも……かなり気に入らないです。


……でも。


俺が戦い方の“コツ”を教わったのも

力の抑え方を教わったのも……オルガさん。


貴方から……ですよね? 」


「それはそうだが! ……その程度の事など

簡単に消し飛ぶ程の重大な裏切りを! ……」


「あ~ッ……こんな夜遅くに“大声”は感心しないですよ?

っと……ガーベラさん、オルガさんが(うるさ)いんで

後はお願いしますッ! 」


「え、ええ……でも、待って下さい主人公さん」


「何です? ……まさか

ガーベラさんまで(さば)きに対する“苦情”ですか? 」


「く、苦情など! ……そうでは無く!

主人公さん……私だってこの人と同じ気持ちなのです。


私達は最低の行動を取った

(いく)ら種族を守る為だったとは言え

貴方達の信頼を裏切ったのですよ?

……これは私達の我儘(わがまま)かも知れないけれど

せめて何かお礼でもさせて頂かないと

私達の気が落ち着かないのです……」


「う~ん……お礼ですか?


どうしようかな……あッ!

では、今まで通り時々一緒にパーティを組んで下さいッ! 」


「そ……そんな事?

それでは……私達だけが得をして

あなた達は“くたびれ儲け”ではありませんか!! 」


「……妻の言う通りだ!

それならばせめて、報酬の取り分を

“九対一にする”などと言う方法がだな?! ……」


(イタ)タタ~ッ! ……流石は族長ですねオルガさん

交渉が上手いです……そうですか、そちらが“九”ですか」


「……そんな訳が無いだろうッ?!

御主達が九……」


「……それの何処(どこ)が“今まで通り”なんです?


過去の過ちがあるからと俺達に気を遣い続け

今後、仮に俺らを優先し無理をしてお二人が死んだとします。


それ……一体、誰が喜ぶと思って居るんです?

メルちゃんは勿論、マリアだって喜びません……当然、俺もです。


……今まで通り、皆で協力しあって

笑ったり怒ったりしながら

オルガさんと俺は色んな店で

素材を高く売る為の策を(こう)じたり

メルちゃんはガーベラさんに色んな事を教えて貰ったり

マリアの戦闘力の高さを全員で――


“バーバリアンみたいだな! ”


“マリアーバリアン様~”


――なんて、褒めてるんだか

(けな)してるんだか判らない感じで(たた)えたり。


……あの、楽しかった時間が

たった一度の……こんな“つまらない”事で消え去るなら

俺は……何の為に必死で皆を(まも)ろうとしたんですか?!

それこそ本当に“くたびれ儲け”じゃないですかッ!!!


……始めて出来た仲間や友達が

何で全員生きてるのに、何で全員変な気ばかり遣ってッ!!


何でも良いからグダグダ言わずに許されろよッ!!

心が死んで行く様なこんな感覚……


……俺はもう二度と御免(ごめん)なんだよッ!!

俺が良いって言ってんだから素直に許されとけよッ!!! 」


「……主人公、こんな私達を許すと言うのか? 」


「そうよ……私達はまた

貴方達を裏切るかもしれないのよ? 」


「だとしても……バカみたいだと思われても良い

それでも何故(なぜ)か、見放したく無いんですよ。


……メルちゃん、マリア

俺ってやっぱ我儘(わがまま)なのかな?

二人の意見だって聞いて無いしさ……ごめん」


「はいっ……とっても我儘(わがまま)ですっ! 」


「メルちゃんに大賛成です!

多分ですけど、主人公さんって

この国で一番の我儘(わがまま)だと思いますよ?


……ですが。


きっと皆さん……私達も含めて

その“我儘(わがまま)”を聞いてあげたくなるんですよ。


ね~っ? ……メルちゃん! 」


「はいっ! 」


この瞬間


そう言った二人は、満面の笑みを浮かべて居た――


「メルちゃん、マリア……有難う、二人共。


……と言う事なので

俺達は何も問題有りませんが……オルガさん、ガーベラさん。


お二人は……まだ“苦情”があったりします? 」


「……いいや。


主人公よ、本当にこんな私達を許してくれると言うのなら

今まで通り……いや、今まで以上に

深い“仲間”で居させてはくれないだろうか? 」


「私からもお願い致します

主人公さん……どうか、貴方達の仲間で居させて下さい」


「……はい! 喜んでッ!


でも……今度“裏切る”時は

(もっ)て理由と時期(タイミング)を教えて下さい。


そうすれば……“傾向(けいこう)対策(たいさく)”が出来ると思うので! 」


◆◆◆


この瞬間


そう“すっとぼけた表情”で語った主人公に対し

マリアは――


「主人公さん……それって裏切りじゃなくて

“八百長”って言うんじゃ……」


と言い掛けた

一方、メルは――


「あっ! ……理由に(おう)じて対応を一緒に考えるからって事ですねっ! 」


理解を(しめ)したのであった――


◆◆◆


「おぉ~ッ! 流石(さすが)メルちゃん(かしこ)いッ!

や~いッ……マリアのアホォ~ッ! 」


「えへへ~っ……主人公さんに褒められちゃいましたっ♪ 」


「い、いや……私の扱いだけ(ひど)過ぎませんっ?! 」


◆◆◆


こうして俺達は何とか危機的状況を回避し

誰一人欠ける事無く、王国に(ひそ)んで居た

魔族を打ち倒した……だが、安心は出来ない。


……“国王の不在”と言う

王国の基盤を揺るがす様な一大事と

(いま)だ王国内に潜んで居る可能性が高い残存魔族への対処。


それは、言葉で言う(ほど)容易(たやす)い問題では無くて――


===第一二話・終===

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