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第十二話「全員を守るのって楽勝だと思ってました……前編」

《――危機的状況をだっし、王の間を後にした主人公。


その一方

魔導隊詰所では、マリアらに対する聞き取りが行われていた――》


………


……



「……主人公さん無事でしょうか? 」


《――不安を口にしたマリア

そんな彼女に対し、メルは――》


「大丈夫ですっ! ……主人公さんは強いですからっ!

き、きっと……お母さんと私を助けて下さった時みたいに

私達が想像も……出来ない位……きっと……」


《――マリアが不安に押し潰されない様気遣い

そして、自分自身も不安に押し潰されぬ様……必死に耐えていた。


だがそんな中、ミネルバ団長は――》


「……色々と心配事が多い時にごめんなさい。


だけど、記憶が新しい内に聞いておきたいの……


……犯人の人相を分かる範囲で教えて貰えるかしら? 」


《――この質問に対し

マリアは――》


「顔は……頭巾フードを被って居たのでよく見えませんでした。


武器は確か湾曲した大型のナイフだったかと……分かるのはその位です」


「そう、武器が分かっただけでも手掛かりにはなるけれど……」


《――決定的な情報を得られず頭を悩ませていたミネルバ。


だが、そんな中……


突如として周囲に響き渡った轟音――》


………


……



「なっ!? ……国王城に“穴”がッ?!

全隊員……お二人を護衛しつつ国王城へ向かいますッ!! 」


「ハッ!!! ……」


《――直後

マリア、メルの両名を連れ国王城へと向かったミネルバ隊。


その一方――》


………


……



《――数分程前の事

“王の間”を脱出した主人公は、周囲を警戒しつつ城からの脱出を試みていた。


だが、その背後に忍び寄る影……それは


“エリシア”であった――》


「あれぇ~?……主人公さん?

何でこんな夜中に王の間から出て来たの~? お呼ばれしてたとか? 」


「……お前誰だ? 」


「何言ってるの? ……見て分かるでしょ? エリシアだよ~? 」


「もう一度だけ聞くぞ? ……お前は何者だ? 」


「……チッ。


貴様……何故分かった? 」


「簡単さ……エリシアさんは俺の事をあだ名で呼ぶんだよ。


あまりにも“安直過ぎる”あだ名でな……」


「何? ……その様な下らん理由でバレたとは。


確かに、私はエリシアでは無い……魔王様が配下の一人。


“ガルベロ”だ……国王に化けていた“ガルベス”は我が弟だったのだ

よくも弟を葬ってくれたな……貴様には

むくいを与えねば成らん……亡き弟の為、ここで死に絶えるが良いッ!! 」


《――言うや否や主人公に襲い掛かったガルベロ。


だが……この直後、主人公の放った“規格外に大きな”氷刃は

ガルベロを真っ二つに切り裂き……その後も一切の威力減衰を起こさず

城の天井をも切り裂き――》


………


……



「……げッ?! この技って範囲が小さい技じゃなかったっけッ?!


って……


……あっ。


“減衰装備”つけてなかったわ……」


《――“不可抗力”とは言え城の天井に“大穴”を開けてしまった主人公


……言うまでもなく騒がしくなり始めた城内

身動きが取れなく成ってしまった彼は、暫く身を隠す事を選んだ――》


「敵は何処だッ!? ……探せぇぇぇっ!!! 」


《――魔族の成り代わりか

それとも真実を知らぬ只の衛兵達であったのか……何れにせよ。


一頻ひとしきり衛兵達をやり過ごした後

再び城からの脱出を試みようと動いた主人公。


だが、門まで後わずかの場所に居た

“騒がしい声”のヌシ達に見つかってしまった彼は――》


………


……



「あっ、居ましたっ!! ……主人公さぁぁぁんっ!!! 」


「主人公さーーーーーんっ! 」


「マ、マリアッ!? ……メルちゃんッ?! 」


《――“騒がしい声のヌシ達”は、彼を探していたマリアとメルであった。


二人は、ミネルバ団長と多数の魔導隊員達に連れ立ちあらわ

主人公の無事を確認すると周囲の警戒に移った。


……この事で一瞬は警戒をゆるめた主人公だが

次の瞬間、メルに近づくと彼女に対し――》


「メルちゃん……ちょっとごめんね」


「はい? って。きゃぁッ?! ……」


《――主人公はメルの肩を軽く叩いた、だがその拳は

永久防護エターナルプロテクト”の効果で弾かれた。


直後……ホッと胸を撫で下ろした主人公であったが

当然、呆気にとられて居たマリアとメルに対し――》


「イテテ……“永久防護エターナルプロテクト”に守られた相手を攻撃すると

逆にこっちが痛いみたいだ……でも、これで間違い無く本物だと分かった。


良かった……二人共、何処も怪我は無いかい? 」


「は……はい、無事ですっ! ……でも、何故いきなり私の肩を? 」


「え、えっとその……実は、場内に魔族が居たんだけど

その……“エリシアさん”の姿をして俺をだまそうとしたんだ。


だからメルちゃん達が本物か確認する為に……驚かせてごめん」


「そ、そう言う事だったんですね……でも

怖いです……魔族が人間に化ける事が出来るなんて……」


「そうですね~……でも、主人公さんの確かめ方は

“サイコパス”過ぎて怖いですけどね~? 」


「ああ、凄く反省してるよ最強の戦士“マリアーバリアン”様? 」


「なっ!? 感動の再会早々なんですか?! ……語呂の悪い!! 」


「……その反応、間違いなくマリアなんだな?!

良かった……二人共無事で本当に良かったッ! 」


《――言うや否や

二人を抱き締め、安堵の涙を流した主人公


彼は――》


………


……



「ごめんよ……本当にごめんっ!!!

二人が死んだんじゃないかと思って俺……俺ッ……


良かった二人が生きててくれて……二人が……無事で……」


《――突如として抱きしめられた事に驚き頬を赤く染めていたメルだったが

主人公の懸命さを感じ取った彼女は――》


「はい……ちゃんと生きてますっ!

主人公さんの永久防護エターナルプロテクトのお陰ですっ!

主人公さんもご無事で良かったです……でもお服がボロボロです。


何処もお怪我はないですかっ? ……」


「こ、これは……その“色々”有ったんだ。


でももう大丈夫……有難う。


マリアも無事で良かった……誰一人けなくて……本当に良かった」


「ええ……私も生きてますし、大丈夫ですから

もう泣くのは止めてくださいね?

流石にそんな状態の主人公さんを“イジる”気には成れませんし? 」


「ああ、悪かった……って、安心してる場合じゃない

伝えておかなきゃ駄目な事が有るんだ。


……今、オルガさんとガーベラさんは

エルフ族を盾に脅されて敵に成ってる。


けど、脅してたのは国王に化けていた“ガルベス”って魔族だったんだよ。


俺はついさっきまで……そいつに捕まえられて殺され掛けてたんだ」


「そ、そんな?! ……では本物の国王様は何処へ?! 」


<――瞬間

当然だが、血相を変えそうただして来たミネルバ団長。


そして、ガルベスが口にした台詞(台詞)を出来る限り“抑えめに”伝えた俺

ミネルバ団長は、この事実に項垂うなだれつつも――>


「何と言う事なの……国王が成り変わられていた事に

私すら気付けていなかったとは……主人公さん、至らぬ私の所為で

酷い目に……」


「い、いやその……お気に為さらないで下さい。


あんなに精巧に人間に化けられる奴を見破る方が難しいですよ……兎に角

オルガさん達はガルベスに脅されて敵対して居ただけなので

事情を伝えれば味方に戻ってくれる筈です。


だから……取り敢えず今は、彼らの誤解を解く事と

他にも紛れている可能性が高い魔族の捜索を優先した方が良いかと思います」


「お気遣い感謝致します……そうですね。


では……魔導通信


カイエルさんッ! ――」


………


……



「……主人公さんを城にて発見、保護致しました。


至急、ミリアに安心する様伝え……」


「それは良かった! ……しかしなぜ城に? 」


「……少し落ち着きなさいカイエル、そうでなければ

この先の情報を聞いた貴方は冷静では居られなく成るでしょう」


「し、失礼を……して、情報とは? 」


「良いですかカイエル……我が国の国王は

既に魔族に成り代わられていたのです。


……マリアさんメルさんの双方が襲われた理由も

恐らくはこの国の弱体化を狙った人間同士の疑心暗鬼を生み出す為。


彼らは差し詰めこの国を

“人間の養殖場”とでもするつもりだったのでしょう。


その最たる物として……主人公さんは

国王……もとい、成り代わった魔族にとらわれて居たのです」


「なんと……」


「……詳しい話は追って連絡します。


貴方は念の為、エリシアさんとラウドさんの両名を連れ

ギルドで待機していて下さい。


……もしも二人が普段と違う振る舞いをした場合は、直ぐに捕縛を

成り変わられている可能性も有るのですから」


「……了解!


直ぐに魔導通信で呼び掛け、両名をギルドで待機させて置きますッ!

では……通信終了ッ! 」


………


……



「さて……出来る限りの事をしておきましょう。


先ずは主人公さん……オルガ、ガーベラ両名が脅され

敵側に付いたと言いましたね? 」


「ええ……ですが、俺を眠らせる際に

何度も何度も“済まない”と謝っていた様でしたし……


……多分、本当はやりたくなかったんだろうと思います」


「そう……二人が今、何処にいるかは? 」


「……眠りから覚めた時には

既に俺は拘束されていて“王の間”に居ましたから二人の行方は……」


「そうですか……では、一先ずエルフの村へ向かいましょう」


《――直後

ミネルバ団長に連れられ、エルフの村へと向かった一行――》


………


……



「事態は急を要します! ……此処を通しなさいっ! 」


「……ミネルバ様、何があったんです?! 」


「アルフレッドさん……族長オルガとガーベラさんは? 」


「それが……まだお帰りに成られていないのです。


まさか、何かあったのですかっ?! 」


「ええ、ですが全てを説明する時間すら惜しいのです。


一つだけ言える事は、国王が魔族に成り変わられていたと言う事……」


「何と!? ……わ、分かりました!

私達に何か協力出来る事は……」


「ほう? ……都合良く全員集まったか」


《――突如何処からとも無く発せられた声


直後……一行の前に現れたのは“アサシン”だった。


彼は、異空間から意識の無い“オルガ”と“ガーベラ”を取り出し

自らの目の前に放り投げた。


その一方で

この混乱にじょうじ、物陰に隠れたミネルバ――》


………


……



「おっと! ……だれも動くなよ? お前らが少しでも妙な真似をしたら

大切な族長様とその妻が二人共死ぬ事になるんだからな? 」


「くっ……卑怯なッ!!

……オルガ様とガーベラ様を返せっ!!! 」


「ああ、当然返して欲しいだろうなぁ?

なら……其処に居るトライスターを差し出せッ! 」


「ぐっ! ……」


《――族長とその妻を人質に取られ、どうする事も出来ず居たアルフレッド。


だが、そんな状況の中――》


「……わ、私がお二人の代わりに人質になりますっ!

だから……お二人の事を解放して下さいっ! 」


《――そう言うとゆっくりとアサシンに近づいて行ったメル。


だが――》


「……来るな! 汚らわしいハーフめッ!

お前に妙な“防護魔導”が掛かってる事は先刻承知だ!!

そもそも、貴様の様な者に人質としての価値など無いッ! 」


《――人質の首にナイフを近づけそう言ったアサシン。


すると――》


………


……



「メルちゃん……頼む、下がってくれ。


……なぁ、俺と取引しないか? 」


《――メルとアサシンの間に割って入り

そう言ったのは主人公であった――》


「ケッ、何が取引だ!!

……お前と交換以外の条件など有りはしないッ! 」


「ああ、それなら“満額回答”だよ。


……俺とその二人を交換でどうだ? 」


《――当然、彼の発言に慌てたメルとマリア。


だが――》


「良いだろう、ただし……武器を全て外せ」


「……分かった。


ゆっくり外すから……二人に手は出すなよ?


メルちゃん……装備これを頼んだ」


「嫌ですっ! ……私も連れて行ってくださいっ! 」


「頼むから言う事を……いや、信じてくれ。


……必ず全員を助ける。


俺は、必ず全員を助けるから……」


《――メルの瞳をしっかりと見つめそう言った主人公。


……暫しの静寂の後

彼女は静かに装備を受け取った――》


………


……



「よし、ゆっくりだ……ゆっくりとこっちへ来い」


《――アサシンの指示通り

ゆっくりとした足取りでアサシンの元へと向かう主人公。


オルガとガーベラはマリア達の元へ引き渡され

主人公はアサシンの元へと引き渡された――》


………


……



「ふふふッ! ……これで私も魔王様に認められる!

まぁ、ガルベロ様とガルベス様を失ったのは痛かったが……」


《――勝ち誇るアサシン


一方……彼に捕縛されて居た主人公はほんの一瞬

ニヤリと笑い――》


「フッ! ……馬鹿め!


固有魔導!


“限定管理者権限ッ!!” ――」


「な、何っ?! ……」


………


……



《《――“ERROR”


一日の固有魔導使用回数上限に達しました――》》


「なっ?! ……回数制限?! 」


「……フッ。


ハッハッハッハッ!! ……私を罠にハメたつもりが

まさか、自分の固有魔導の仕様も知らなかったとはな!


……しかし、固有魔導まで手に入れて居たとは

そうなれば、万が一にも魔王様にとって障害となるやも知れん。


予定変更だ……貴様はここで死ねぇぇぇっ!! 」


《――言うや否や

アサシンが振り上げたナイフは……主人公の命を刈り取る為


正確無比に、振り下ろされんとして居た――》


………


……



「大地よ微睡まどろめ! ……狂泥之沼マッドスワンプッッ!! 」


「……何ッ?!

ぐっ、足がっ!! う、動けんっ!! ……」


《――すんでの所でけつけ彼を助けた者。


それは……“エリシア”であった。


そして、彼女に遅れる事わず

ラウド、カイエル両名も増援として駆けつけ“アサシン”は無事捕縛された――》


………


……



「ふぃ~っ! ……何とか間に合ったかなぁ~?

遅くなってごめんねぇ~主人公っち~ぃ!

ミネルバさんから連絡受けて急いで来たけどよく頑張ったねぇ~っ!


……偉い偉いっ♪ 」


《――彼女エリシアは主人公の肩をポンポンと叩きながらそう言った。


だが……そんな彼女に対し


主人公は――》


「この“癖の強さ”……間違いないっ!


……本物のエリシアさんですね!! 」


《――と言った。


だが……この、少し失礼な発言にエリシアは一瞬戸惑とまど

困った様な表情を浮かべ苦笑いをしたのだった。


ともあれ、その一方で――》


………


……



「貴方には……情報を吐いて貰いますよ? 」


《――静かにそう言ったミネルバ。


一方、魔族の姿をあらわにしたアサシンは――》


「フッ! ……誰が人間などに情報を話すものか! 」


「そうですか……ですが、その威勢も何時まで持つでしょうか?

さて……この者を、魔導隊詰所の“地下魔導牢”に移送します。


念の為、エリシアさんラウドさんにも移送を手伝って頂きたいのですが……」


「うむ! 了解じゃ!」


「ほいほ~ぃ! 任せてぇ~♪ 」


「感謝致します……では主人公さん、そちらはお任せしますね」


《――そう言い残すと

アサシンを地下魔導牢へ移送する為、この場を離れたミネルバ達――》


………


……



「た、助かった~っ……流石エリシアさんだわ。


しかし、まさか固有魔導に回数制限が有るとは……って、うわっ?!


メ、メルちゃん? ……」


「主人公さんの馬鹿っ!! ……バカバカバカっ!! 」


《――瞬間

主人公に抱きつき、涙を流しながら

主人公の胸を弱々しく叩いていたメル――》


「うわ~……メルちゃんをこんなに悲しませるなんて

主人公さんって……最ィィッッ低ッ!! ですね? 」


《――く言うマリアも

主人公の生還に安堵し一筋の涙を流して居た――》


「そ、その……二人共、本当にごめん。


本当に迂闊うかつだったし、最低だって言われても仕方無いよな。


本当にごめん……」


《――と、少しバツが悪そうに後ろ頭を掻きつつそう言った主人公。


そんな中……アルフレッドは、未だ意識の無いオルガとガーベラに対し

必死に治療を施そうとして居て――》


………


……



「オルガ様!……ガーベラ様!!


……主人公様っ!! どうかお二人をお助け下さいッ!! 」


「アルフレッドさん……落ち着いて!


見た所、大きな怪我は無い様ですし……多分

“気絶”させられているだけだと思いますから!

確か、こう言う場合は……」


《――そう言うと魔導書を確認し始めた主人公。


直後、該当のページを見つけると直ぐに呪文を唱え――》


「……目覚めのベル!! 」


《――直後

二人は眠りから目覚めた――》


………


……



「ん……んんっ……ここは……エルフの村っ?! 」


「ガーベラ……逃げ……ハッ!


……主人公?! 」


《――主人公かれの姿を視認するや否や直ぐに身構えたオルガとガーベラ。


だが、そんな二人に対し――》


………


……



「二人共……落ち着いて下さい。


国王に化けていた魔族は俺が倒しましたし

状況の説明も全てミネルバさんにお伝えしましたから

もう誰からもエルフ村に危害を加えられる心配は無くなった筈です。


それよりも……お二人が無事で良かったです」


《――そう伝え、微笑んでみせた主人公。


だが、当のオルガは――》


「何? ……国王が魔族だと!?


いや、この際そんな事は後回しだ……主人公。


……一体何故だっ!? 」


「何故って……何がです? 」


「……私達が御主に対し行った行為は謝罪の言葉で許される様な物では無い。


全てが終わった時、私の命で許されるならば

どんな裁きでも受けるつもりで居た……いや、今もそのつもりだ。


此処まで言えば分かるだろう……主人公。


裏切りには“死をもって”つぐなわせて欲しい」


「ええ……私も同じ気持ちです」


《――オルガ、ガーベラ両名は

何かを覚悟した様子で静かに主人公の前に座り込んだ。


すると――》


「そうですか……分かりました。


では……」


《――当の主人公も

何らかの魔導を使用する為、何故か何時もより大げさに腕を振り上げた。


だが、それに慌てたアルフレッドは

二人をかばう様に彼の前に立ちふさがり――》


………


……



「主人公様っ!! ……私がどんな責め苦でも受けます!

ですからどうか……どうか矛を収めて下さいませッ! 」


《――アルフレッドがそう言った瞬間

オルガはこれを強くたしなめた――》


「アルフレッド、引けッ!!


……決して許されるべきではない行動を取った以上

族長である私には責任を取る必要があるのだッ!!


だが主人公……御主に一つだけ頼みがある。


妻だけは……ガーベラだけは見逃して貰えないだろうか? 」


貴方アナタっ?! ……何を言うのですっ!!

一人残される位なら私は自害致しますわっ?!

主人公さん、どうか夫の言葉など気にせず私も裁いてくださいませっ!! 」


「……ご安心を、二人共全く同じ裁きを受けて貰います。


ではお二人共、本当に……良いんですね? 」


「ああ……本当にすまなかった」


「ええ、本当に……」


《――直後、共に手を繋ぎ

目を閉じ、ただ静かに裁かれる時を待っていた二人。


凍り付く様な静寂の後――》


「では……」


《――再び振り上げられた主人公の掌


直後、大量の魔導力を掌に集めた彼は


眼前に座す二人に向け……その余りある力で


魔導を放った――》


………


……



「……“完全回復パーフェクトヒールッッ!! ”


っと……裁きは終わりました。


えっと……もう、立ち上がって大丈夫ですよ? 」


………


……



「……何故だ」


「何がですか? オルガさん……あっ!

さばかれる側が不満とは……さては反省してませんね~? 」


「そ……そうでは無いッ!

……なぜそこまで簡単に私達を許せるのだ!?

私はお前を死地に送ったんだぞ?!

その上……間接的にメルとマリアを命の危機に晒した!!

……そんな私達を、何故そうも簡単に許す?! 」


「……ええ。


メルちゃんとマリアの件は確かに失望しました

はっきり言って最低ですし、一発位なら殴っておきたい

本気マジで思い出すだけでも……かなり気に入らないです。


……でも。


俺が戦い方のコツを教わったのも

力の押さえ方を教わったのもオルガさんですよね? 」


「それはそうだが! ……だが、その程度の事など

簡単に消し飛ぶ程の重大な裏切りを! ……」


「あ~……こんな夜遅くに大声は感心しないなぁ。


……っとガーベラさん。


オルガさんがうるさいんで後はお願いしますね」


「え、ええ……分かりました。


……でも、待って下さい主人公さん」


「何です? ……まさかガーベラさんまでさばきに対する苦情ですか? 」


「く、苦情など! ……そうでは無く!


主人公さん……私だってこの人と同じ気持ちなのです。


私達は最低の行動を取った……いくら種族を守る為だったとは言え

貴方達の信頼を裏切ったのですよ?


……私達の我儘わがままかも知れないけれど

せめて何かお礼でもしないと私達の気が落ち着かないのです……」


「う~ん……お礼ですか。


……では、今まで通り

時々一緒にパーティを組んで貰えたらそれで良いです! 」


「そ……そんなの

私達だけが得をしてあなた達はくたびれ儲けよ!! 」


「妻の言う通りだ! せめて報酬の取り分を九対一にするとかだな!! ……」


「アイタタタ……流石は族長ですねオルガさん、交渉が上手い。


そうですか~そちらが“九”ですか……」


「……そんな訳が無いだろうッ?!

御主達が九……」


「……それの何処が“今まで通り”なんです?


過去の過ちがあるからと俺達に気を使い続け

今後、仮に自分達が怪我をしてでも俺らを優先し

結果的に無理してお二人が死んだとします。


……一体誰が喜ぶと思っているんです?

メルちゃんもマリアも喜びませんよ? ……勿論、俺だって。


今まで通り、皆で協力しあって笑ったり怒ったりしながら

……オルガさんと俺は色んな店で素材を高く売る為の策を講じたり

メルちゃんはガーベラさんに色んな事を教えて貰ったり

マリアの戦闘力の高さを全員で――


“バーバリアンみたいだな! ”


“マリアーバリアン様~”


――なんて褒めて笑ったり……あの楽しかった時間が

たった一度のこんなつまらない事で消え去るなら

俺は何の為に必死で皆を護ろうとしたんですか?!


それこそ本当に“くたびれ儲け”じゃないですかッ!!!


始めて出来た仲間や友達が……何で全員生きてるのに

何で全員変な気ばかり遣って……ッ!!


良いからグダグダ言わずに許されろよッ!!

心が死んで行く様なこんな感覚……俺はもう二度と御免なんだよッ!!


俺が良いって言ってんだから、素直に許されとけよッ!!! 」


………


……



「主人公……こんな私達を許すと言うのか? 」


「そうです……私達はまた貴方達を裏切るかもしれないのよ? 」


「だとしても……バカみたいと思われても良い。


何故か……見放したく無いんですよ。


メルちゃん、マリア……俺ってやっぱ我儘ワガママかな?

そう言えば二人の意見だって聞いて無いよね。


ごめん……」


《――そう言うと二人に対し弱々しく頭を下げた主人公。


だが、そんな彼に対し――》


………


……



「はい、我儘わがままですよ? ……とっても! 」


「メルちゃんに大賛成です……この国で一番の我儘わがままだと思いますよ?


……ですが。


きっと皆さん……私達も含めて

その“我儘わがまま”を聞いてあげたくなるんですよ。


……ね~っメルちゃん! 」


「……はいっ! 」


《――そう言った二人の顔は

満面の笑みを浮かべて居た――》


………


……



「……有難う、二人共。


その……と言う事なので、俺達は何も問題有りません。


それともお二人は……まだ“苦情”が有ったりします? 」


「……主人公。


本当にこんな私達を許してくれるのなら

今まで通り……いや、今まで以上の仲間で居させてくれないだろうか? 」


「私からもお願いします……貴方達の仲間で居させて下さい」


「勿論ですよ! ……あっ!


でも……今度“裏切る”時は

前もって理由とタイミングを教えて下さい。


そうすれば“傾向と対策”が出来るんで! 」


《――と、すっとぼけた表情で語った主人公に対し

マリアは――》


「主人公さん、それって裏切りじゃなくて八百長……」


《――と言い掛け


メルは――》


「……あっ! 理由に応じて対応を一緒に考えるからって事ですね! 」


《――と

一定の理解を示したのだった――》


「おっ! メルちゃん賢い! ……マリアのアホ~っ! 」


「えへへ~っ……褒められちゃいましたっ♪ 」


「いや……私の扱いだけ酷過ぎませんっ?! 」


………


……



《――こうして、何とか危機的状況を回避し

誰一人欠ける事無く、王国に潜んでいた魔族の大半を打ち倒した主人公。


だが、安心しては居られない。


“国王の不在”と言う王国の基盤を揺るがす一大事と

未だ王国内に潜んでいる可能性の高い残存する魔族への対処。


彼らと王国を待つのは……破滅か


それとも――》


===第十二話・終===

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