第十一話「楽に助ける手段を……下さい」
<――国王様への謁見を済ませた俺達は
優しい国王様の粋な計らいで、天文学的数字だった借金を
全て帳消しにして貰える事と成った。
そして……そんな国王様と交わした唯一の約束は
“パレードへの参加”と言うとても簡単な物だった……だが。
パレード三日前の深夜、俺は何故か胸騒ぎを感じていた。
これがマリアの言う“俺お得意のマイナス思考”って奴なのかは兎も角として
その所為で俺は、もう何日もまともに眠れていない――>
………
……
…
「……私が王国特別騎士級自由ハンターのマリアだぁ~
ひれ伏せぇ~……ムニャムニャ……zzz」
「本当に酷い寝言だ……考えられない。
けど……この位プラス思考に成れたら
この胸騒ぎも不眠症も治るのかな……」
「主人公さん……大好き……ですっ……zzz」
「なっ?! ……って寝言か
もし何が遭っても……二人だけは護らなきゃ」
<――そう決意し、必死に眠る為の努力をしていた時
扉の向こうから俺を呼ぶオルガさんの声が聞こえた。
直後二人を起こさぬ様、静かに部屋の扉を開け――
“こんな時間にどうしたんですか? ”
と訊ねた俺に対し――
“人気の無い所で話せるか? ……ここでは不味い”
――と、周囲を気にしながらそう言ったオルガさん。
この事に多少の違和感は感じつつも
言われるがまま、オルガさんに同行した俺――>
………
……
…
「それで……こんな場所で話さなければいけない話とはなんです? 」
「……すまない、我が種族の為だ。
許してくれとは言わん……だが、本当にすまない」
<――話が見えない。
だが、一つだけ確かなのは……オルガさんが俺に対し
良く分からない魔道具の“マズい方”を向けていた事だ。
だがその顔は、後悔と苦悩に歪んでも居る。
何だ? 状況が読めない……クソッ! 睡眠不足で頭が回らない――>
………
……
…
「……嫌な予感が意外な形で当たりましたよ。
オルガさん、一体何があったんです?
俺じゃ解決出来ない問題ですか? もし解決出来る事なら俺が協力……」
「いや……何も聞かず、ここに居てくれればそれで良い」
「足止めが目的? ……ッまさか!?
メルちゃんっ! ……マリアっ!!! 」
「逃がす訳にはッ! ……すまないッ!! 」
「離せ!! ……離してくれっ!!!
マリア!! メルちゃん!!! 逃げ……んぐっ!! 」
<――直後、俺を羽交い締めにしたオルガさん
無論、俺の“黒い粒子”はオルガさん目掛けて迫った……だが
それらは全て、オルガさんの持つ特殊な魔導具に吸い込まれて行った――>
「済まない……だが……」
<――圧倒的な力の差。
物理適性の無さも災いし、拘束を逃れられず居た俺
そんな中――>
………
……
…
「ごめんなさい、主人公さん……でも……ッ!
眠れ、永久に――」
<――何処からとも無く現れたガーベラさんは
悲しげな声で睡眠の魔導を発動させた――>
「どう……し……て……」
………
……
…
「主人公……済まない……」
「あなた早くッ! ……」
「分かっている! だが……」
………
……
…
《――主人公を裏切り
彼を睡眠の魔導で眠らせたオルガ、ガーベラ夫妻
一方で、メルとマリアの眠る部屋には
国王直属の“アサシン”……例の頭巾姿の男が侵入していた――》
………
……
…
「汚れ仕事とは言え……この程度の任務など容易い物だ。
さて、まずは汚らわしいハーフから……」
《――そう言うとナイフを振り上げ
メルの胸部へと勢い良く振り下ろしたアサシン。
だが――》
………
……
…
「何っ?! ……弾かれただと?! 」
「きゃっ?! ……誰っ?! 」
《――衝撃に飛び起きたメルはそう声を上げた。
彼女の体には光の膜……アサシンの攻撃は
“永久防護”に依って弾かれて居たのだ――》
「メ、メルちゃん?! ……ってあなた誰ですっ!? 」
「チッ! 大人しく寝ていれば良い物を……まずはお前からだッ!! 」
「……何だか良く分かりませんけど
そのナイフ……メルちゃんを傷つけようとしましたね?
絶対に許しませんッ! ……」
《――言うや否や
枕元に置いてあった斧を正眼に構えたマリア。
直後……彼女から発せられた闘気は
僅かだがアサシンを威圧し――》
………
……
…
「おりゃぁぁぁぁっっ!!! ……重連環撃ッッ!!! 」
《――直後
勢い良く斧を振り回したマリア。
……だが、狭い室内での斧の取り回しは悪く
彼女の攻撃は調度品を巻き込み威力が半減していた。
だが、それでも彼女はアサシンに僅かな傷を負わせて居た。
そして――》
「クッ! 中々にやりやがる……だが、この程度では……」
「……キャーーーーーッ!! 変態が部屋にぃぃぃぃっ!!
だ~れ~ぇ~かぁ~~~っ!! 」
《――そう、突如として大声を出しながら大きな音を立てたマリア。
一見すれば突飛にも思える行動であったが――》
………
……
…
「なっ!? ……チッ! 騒ぎが大きく成り過ぎたか……」
《――そう言い残すと
煙玉の様な物を使い、何処かへと消えていったアサシン――》
………
……
…
「……ハァッ……ハァッ……って!?
メルちゃん……怪我はッ?! 」
「わ、私は大丈夫ですっ! けど……主人公さんが居ないんですっ!
一体何処に……まさか、さっきの人にっ?! 」
「分かりません、でも一つだけ確かなのは……」
《――状況を飲み込めず居た二人
だが、突如として激しく扉を叩く音が聞こえ――》
………
……
…
「大丈夫かい? 入るよ?! ……って、何があったんだい?!
……主人公ちゃんは?! 」
「……ミリアさん!
その……それが、起きた時には既に居なかったんです
しかも、殺し屋が現れてメルちゃんを手に掛けようと! ……」
「何だって?! ……とりあえず此処に居たら危ないし
主人公ちゃんの事も心配だ……“旦那”に探して貰うからついておいでっ!! 」
《――直後
ミリアに連れられ魔導隊詰所へと向かった二人――》
………
……
…
「……ミリア?!
マリアさんにメルさんまで……一体何があったっ?! 」
「メルちゃんとマリアちゃんが殺し屋に狙われたんだよっ!
その上、主人公ちゃんは行方不明に成ってるんだ!
何でも良いから早く捜索隊を出しておくれっ! 」
「何だと?! ……分かった、直ぐに捜索隊を出す!
だが、一体何が……」
「何事です?! ……」
《――騒ぎを聞きつけ現れたミネルバ団長。
彼女は、カイエルからの状況説明を受けた後
メル、マリアの両名を彼女の隊で警護すると決定し
主人公の捜索をカイエルと
彼が最も信頼の置ける数名の部下のみで行う様指示を出した――》
「……一刻を争う状況と考え
気を引き締めて捜索に当たりなさい! 敵あらば即時撃破を命じますッ! 」
「ハッ!! ……」
………
……
…
《――同時刻
主人公……彼は“王の間”に居た――》
………
……
…
「……ッ?! こ、此処は……マリア! メルちゃん!! ……クソっ!! 」
「ほう……目が覚めたか」
《――拘束具に身を包まれ、必死に藻掻く主人公に対し
蔑む様な眼差しを差し向け、そう言った男。
彼は……数日前の謁見時
一行に対し優しい笑みを浮かべていた筈の“国王”であった――》
………
……
…
「この状況……嫌な予感しかしないな」
「……貴様の想像通りだ。
貴様らの存在は我が王国に不要……“トライスター”などと言う
前時代的で疎ましい存在は必要ない。
理解したのならばここで果て……」
「待ってくれ……幾つか質問をしても良いか? 」
「……良かろう」
「じゃあ……まず一つ目。
暗殺する位なら何故わざわざ城に招いて、借金まで返済し……恐らくだが
“エルフ族を盾にオルガさんとガーベラさんを脅す”様な
……そんな卑怯な手を使ってまで手間を掛けたんだ? 」
「質問だらけだな……まぁ良い、全て答えてやろう。
招いて饗し金を渡した理由? ……簡単な事だ。
“余が暗殺に関わって居る”と国民に思われぬ為。
……その為ならば安い物だ。
それと貴様……“エルフ族を盾に脅した”と言ったな?
中々に良い勘をしている物だ……それについてだが
奴らはどの道“滅ぼす”予定なのだよ……手駒としては優秀だが
この際、仕方が無かろう……」
《――不敵な笑みを浮かべそう言った国王。
一方、主人公は眉一つ動かさず質問を続けた――》
「じゃあ……二つ目だ。
恐らくだが、マリアとメルちゃんにも刺客を差し向けてるよな?
俺は“トライスター”だからまだ分かるよ。
……だが、あの二人まで手に掛ける意味は? 」
「ほう、勘が鋭い……“甲冑女”は装備が目的だ。
あの様な物は破壊しておくべきなのだ……それ以外に意味は無い。
小娘に関しては言うまでも無かろう?
奴は“汚らわしいハーフ”だ……それ以外に何の理由が要ると言うのか」
《――嘲笑うかの様な表情のままそう言った国王。
縛り上げられた拳を静かに握り締め
尚も質問を続けた主人公――》
………
……
…
「三つ……あんた“人間”じゃ無いだろ? 」
《――それまでは平静を装っていた国王。
だが……彼の三つ目の質問を聞いた瞬間
悍ましいまでの表情を浮かべ、主人公を睨み据えた――》
………
……
…
「なあ……答えてくれるんじゃなかったのか? 」
「勘が鋭いとは思って居たが……如何にも。
私は魔族だよ……だが、何故分かった? 」
《――瞬間
人の姿を解き、魔族の姿を現しながらそう言った“国王”
だが、主人公は尚も冷静で――》
「……簡単だよ。
どれだけ暴君な王だとしても、国防に欲しい筈の存在を安易に暗殺なんて妙だ。
人質を取って無理矢理にでも言う事を聞かせるってんならまだしも
国力自体をわざわざ削ぐなんて妙だ……人間を敵視してなきゃ出来ないだろ?
所で……本物の国王は何処だ? 」
「ほう……その様に考えたか。
無能では無い様だな……本物の国王か?
“口に、合わなかった”……と言えば、判るであろう」
「ああ……良く理解したよ」
「質問は終わりか? ……ではそろそろ死んで貰おう、人間。
地獄之業火ッッ!! ――」
「うぐぁぁぁぁぁぁっ!!! ……」
「フッッ! ……苦しめ! ……苦しむが良いッ!!! 」
《――魔族がその指を動かす度
いたぶる様に左右に蠢く炎……
……主人公の全身を襲う炎は
文字通り“地獄の業火”に等しき苦痛を彼に与え続けた――》
………
……
…
「ウグッ……あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!!!
メ゛ル゛ちゃんッ……!! マ゛リ゛ア゛ァ……!! 」
「フハハハッ!! ……叫んだ所で誰も助けには来ない!!
……もっと叫べっ!!
苦しむ様をもっと見せるのだッ!! ……」
「ぐあ゛あ゛ぁぁぁぁぁぁっ!!!!! ……」
「どう足掻いた所で誰も助けには来ないッ!
そろそろ幕引きだ、人間ッ!! ……」
《――直後
炎は更に勢いを増し――》
………
……
…
「うぐっ!! ……誰でも……良い……何でも……ぐっ!!
良い……から……っ……俺に……力を……ちか……ら……を……」
《――業火の中、必死にそう願い続けて居た主人公
だが……直後
彼は意識を失った――》
………
……
…
「……死んだか。
何とも呆気無い物だ……いや、人間などその程度の存在か」
《――そう言うと玉座へと深く腰を掛けた魔族。
だが、その時
怪我を庇いながらこの場に現れた者が居た――》
………
……
…
「ガルベス様……申し訳ございません……」
「珍しいなアサシン、貴様が手負いとは……此奴の仲間は始末したのか? 」
「……いえ、想定よりも例の“甲冑女”が手強く
剰え穢れたハーフは私の攻撃を弾き……」
「何ッ? ……貴様、逃げ帰って来たと言うか」
「……い、いえ! 滅相もございませんガルベス様ッ!
宿の女将が魔導隊に二名を保護させた様なので、その報告をと……」
「そうか……ならば容易い
適当に理由をつけ、城へ招き此処で殺せ。
だが……念の為、城に“仲間”を集めておけ、少々早いが
最早“刈り入れ時”やも知れん……」
「ハッ! ……では失礼をッ! 」
《――直後
王の間を去ったアサシン……だが、彼の残した報告が気に掛かって居た魔族は――》
………
……
…
「しかし……汚れたハーフ如きがヤツの攻撃を弾いただと?
一体どう言う事だ? ………」
「……った」
「ん? ……まだ息があったとはな」
「良……かった」
「……何だと? 」
「まだ二人は……生きているん……だな」
「ふっ……直ぐに殺すがな。
だが、まずはお前をしっかりと殺……」
「煩えッ!! ……黙りやがれッ!!!!
生きてるなら話は別だ!
俺は……何としても二人を救わなきゃ成らないんだよ!!!
頼むよ……神や仏がこの世界に居るってんなら頼む!!
……何だって構わない!
どうやって習得するのかすら俺にはまだ分からない……だけど頼むッ!!
二人を救う為なら何でもすると誓う
俺はどうなっても良い……それでも二人を助けたいんだッ!!!
頼む……頼むから……俺に固有魔導を発現させてくれぇぇぇッッ!!! 」
………
……
…
「……何?
“固有魔導”だと? ……何か策があるのかと思えば
習得すらして居ない固有魔導の話などと……剰え
魔族の前で神頼みとはな……全く、無策にも程が有る。
貴様は只の無能では無いと思って居たのだが
どうやら見当違いだった様だな……」
「っ!! 頼む、頼む、頼むッッ!!! ……グァッッ! 」
「フッハッハッハ!! ……満身創痍では無いか!!
その状態で何が出来ると言……」
「煩い……黙りやがれッ!!
俺はお前みたいな奴と話すつもりは無ぇんだよッ!!
俺はな……メルちゃんの様な優しくて……でも弱くて
人一倍努力して来たのに報われなかった……そんな
地獄に投げ捨てられた一輪の花を……助ける為の……力を……ガハッ!!
ッ……俺みたいな……人生……何をやっても……駄目だった……奴を
信じて……ッ!
ついて来てくれた……マリアの様な……素敵な存在を助けたいんだよ……
ぐっ!……頼むっ!!
ハァ……ハァ……助ける……力……を……
……一度で良い。
俺に……救う力を寄越してくれぇぇぇぇぇぇぇッ!!!!! 」
「フッ……もう良い、黙れ……下等な人間風情が。
不愉快だ、消滅せよ……地獄之業火ッッ!!! 」
「頼む……う゛か゛ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!! ……」
………
……
…
<――苦しい。
朦朧とする意識の中……俺は走馬灯を見ていた。
嗚呼……俺は、この世界でも
何も出来ず、何も成し遂げられないのだろうか?
……ゴメンな。
俺みたいなのに付いてこさせて……
ゴメンな……無責任に護るなんて言ってさ……
マリア……メルちゃん……ごめんよ……
俺……もう、ダメかも
しれない――>
………
……
…
《――今際の際
彼は、守るべき者達の事を強く想い続けた。
……自らの不甲斐なさに苦しみつつも、唯必死に願い続けた。
徐々に薄れ往く彼の意識……
……だが。
次の瞬間……突如として
耳を劈く様な“警告音”が、王の間に響き渡った――》
………
……
…
「な、何だっ!? 」
《――辺りを見回す魔族(ガルベス」
だが、周囲に変化は無く――》
………
……
…
「せん……だ……よ……」
《――息も絶え絶えに
天に向かい……何かを語り掛けた主人公
直後……彼は
火傷だらけの顔で“ニヤリ”と笑って居た――》
………
……
…
「がはっ!! ……ゲホッゲホッ!
……なるほ……ど……これが固有魔導か。
あり……がとな、神様。
早速で悪いけど……早い所……使わせて……貰うよ。
じゃ……無いと……
痛みで……意識が……危ういから……な……」
「なんだと? ……ハッタリならば止めてお……」
「い……くぞ……ッ!!!
“限定管理者権限ッ!!! ” ――」
………
……
…
《《――命令を承認しました。
“対象”へ限定的に管理者権限を移譲します――》》
………
……
…
「誰だ?! ……何処に居る?! ……何処から声が聞こえているッ?! 」
「俺……の……拘束具を……削除」
《《――拘束具を削除します。
削除完了――》》
「なっ……なんだとッ?! 」
「装備を……全部……回収だ……」
………
……
…
《《――全て装備しますか?
YES or NO――》》
………
……
…
「“NO”だッ! ……“減衰装備以外を”全て装備しろッ!!
嗚呼……久しぶりな気が……するよ。
お帰り……“黒い粒子”」
「ばっ、馬鹿な?! ……ならばもう一度この魔具で! 」
「やばっ!? ……あの魔具を削除ッ! 」
《《――“対象物”を削除します。
削除完了――》》
「何ッ?! 魔具が……何だその固有魔導はッ!?
そんな固有魔導聞いた事が!! ……」
「……燃費は……超悪いみたいだけどな。
何せ九九%の魔導力を……消費する……んだからな。
ッ! ……満身創痍の俺には……中々……厳しい条件……だよ」
「ふっ……貴様が仮に余を倒した所で
アサシンの呼び寄せた仲間がもうじき山の様に押し寄せるのだ!
貴様のその固有魔導が切れた時……下手に戦えば
遅かれ早かれ、貴様は“魔導欠乏症”に依って死ぬだろうよッ!
フッ……フハハハハハッ!!! 」
「そりゃ良い事を……聞いたよ。
魔導力を……完全回復ッ!!! ……」
《《――命令を承認、魔導力を完全回復します。
完全回復完了――》》
「なっ?! ……そんなバカな?!!! 」
《《――実行時間終了。
“限定管理者権限”を終了します――》》
………
……
…
「……三〇秒って所か。
思ってたよりは短いな……」
「ふ……ふざけるなぁぁぁぁっ!!! 」
《――激昂し声を上げたガルベス
だが、その瞬間……王の間の扉は開かれ
部下と思われる大量の魔族達が王の間へとなだれ込み――》
………
……
…
「……ま、間に合ったかッ!
よ、良しお前達ッ! ……コイツを殺せぇぇぇっ!!! 」
《――ガルベスの発した命令に
主人公目掛け一斉に飛び掛からんとした魔族達
だが――》
………
……
…
「……“黒粒子”ともさよならか。
寂しくなるな……けど。
お陰で……やっとこの“技”が使えるよ。
亜空間へと飲み込めッ!! ――“暗黒之珠ッ!! ”――」
「なっ?! ……」
《――瞬間
主人公の眼前に発生した“暗黒之珠”は
大量の魔族達をいとも容易く吸い込み……
……必死に足掻き逃れようとする“ガルベス”をも
例外無く飲み込み始めた――》
………
……
…
「貴様ッ!! 只の人間風情が……だが、この力は……ッ!!
貴様は……一体ッ……」
「……悪いけど答える義理は無い。
お前は……メルちゃんみたいな最高の美人を傷つけようとした
お前は……マリアみたいな最強の美人を傷つけようとした
お前は……唯幸せに生きようとしているだけのあらゆる人々を傷つけた。
地獄で反省して、閻魔様に詫びてろ……」
「……フ、フハハハハハハッ!
閻魔だと? ……知らん名だなッ!!
良いか……私を倒した所で魔王様には何の痛手にも成らぬッ!
だが“国王殺し”の汚名は貴様に被って貰うぞ人間ッ!! 」
「ああ……構わない。
俺は……必要なら、この世界全てを滅ぼす選択をしてでも
二人を護るって決めてるんだ……だから。
今後の俺の身の振り方なんて……お前にも、魔王とやらにも関係ないさ」
「なっ?! ……外道めっ!!! ……ぐっ!!
グァァァァァァァァァッ!!! ……」
《――直後
ガルベスを完全に吸い込むと同時に暗黒之珠は消滅した――》
………
……
…
「……流石に魔族から“外道”呼ばわりされるとちょっと悲しいな。
って、黒い粒子もやっと形に……ぬわぁっ?! 」
《――直後
“黒い粒子”は主人公の周りを勢い良く回転し始め……そして
彼の首に纏わり付くと……その姿を“ネックレス”へと変え
彼の首へと収まった――》
………
……
…
「あらら~……また“アクセサリ”の形状だったか。
杖なのに杖じゃ無いのばっかりだな……って、痛ッ?!
あぁ~……“限定管理者権限の女の人”に傷も治して貰えば良かったな。
まぁ、自分で直せるけど……完全回復ッ!
……これで良し。
兎に角、今は急いで二人を助けに行かないと! ……」
===第十一話・終===